島風の唄   作:月日星夜(木端妖精)

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満潮、壊れる。
朝潮成分は薄め。
かなり薄味。


   小話『"肝試シイベント"ヲ完走セヨ!』

「ねえ、ちょっと言っときたい事があるんだけど」

 

 青葉さんが消えていった茂みの方を眺めていると、低めの声がすぐ近くでした。隣に立つ満潮だろう。幼く高い声をわざと低くさせているような、そんな感じ。不機嫌の滲んだ嫌な声。

 

「……何?」

 

 入り口付近で止まったまま話しかけてくる満潮に返事をする。

 もう肝試しは始まってるのに、言いたい事ってなんだろう。

 疑問を抱きつつも茂みの方からは目を離さない。

 満潮という少女は、ちょっと刺々しくて、声や言い方もキツメで、小さいのに威圧感があるから少し苦手だ。朝潮の妹さんなのだから、もうちょっとこうお淑やかにできないのだろうか。

 ……それに、なんかヤな事言われそうだから、彼女に視線を向けないように、じっと茂みの葉の暗い緑色を見つめた。

 

「あんた、朝潮のために戦うとかなんとか言ってたけど、そういうの、いらないから」

「どういう意味?」

 

 前言撤回。

 聞き捨てならない言葉に彼女を見れば、彼女もまた俺を見上げた。強い意志を灯した瞳は、いつか見た空色の瞳と同じ輝き。

 薄黄色の透明質な目の表面に映った俺は、いつもの眠そうな半目をもう少し細めて、まるで誰かを睨んでいるみたいだった。

 満潮か、自分自身か。……なんて。

 

「人のためじゃなくて自分のために戦えって言ってるの」

「そんなの、私の勝手でしょ。それを決めるのは私。私にとって、朝潮のために戦う事が私のためになるの」

「どういう意味よ、それ」

 

 早口でそれだけ言えば、彼女はむっと眉を吊り上げて、余計に怖い顔になった。

 どうも何も……俺にあるのは朝潮だけだ。だから、そういう……。

 ……。……いや、違う、か。

 

 雑木林を見上げて、瞬きする。一瞬閉じた視界の暗闇の向こうに、朝潮の顔が見えた。

 彼女に告白した時の事を思い出す。

 誰かの影を重ねないで。彼女はそう言って俺を拒絶したのだ。

 頬に手を触れる。

 ここまでの道のりでも、俺は朝潮に『寂しげな笑顔』を見せていたのだろうか。

 自覚はない。彼女達の反応も、いつもと変わらない。だからわからなかった。

 

 ……俺は、たしかに彼女に姉さんの影を見ていた。

 彼女の笑顔は姉さんの笑顔だった。

 だけど俺が朝潮に好意を寄せるのは、それがすべてじゃない。

 だって姉さんの笑顔に似てるだけなら、吹雪だってそうなんだ。

 吹雪の満開の笑顔も、姉さんが嬉しそうに笑う時の顔と似てて。

 でも俺は、吹雪には恋心を抱いていない。

 彼女は同じ隊に所属する戦友で、大切な友達で、ルームメイトの女の子。

 そりゃ吹雪は実は結構かわいかったりするから、時々どきっとさせられる事もあるけど。

 でもそれは、恋のドキドキじゃない。

 俺の胸が高鳴るのは、朝潮が相手の時だけだ。

 

 蚊帳の外にされている朝潮を見る。

 当事者なのに口を挟めず、困ったように眉尻を下げてこちらを見る彼女へ、話しかける。

 

 ――あの日、君に言ったね。

 

「…………」

 

 ――俺の生きる理由の全てが君なんだ。

 

 君の笑顔を守るために、俺は俺の全てを捧げる。そう誓ったね。

 だから、君がなんと言おうと……たとえ拒絶されようと、俺は君を守る。

 君のために戦う。

 

 朝潮は、何も言わずじっと俺の目を見つめてきていた。

 見つめ返す。彼女の瞳から目を逸らす気になれなかったから。

 

「……何見つめ合ってんのよ」

 

 ずい、と体を割り込ませてきた満潮によって、朝潮の姿が隠れる。

 ……さすがに、今みたいな台詞は、口に出して言えなかった。さっきの台詞は全部心の中での言葉。

 ただ心の中で反響させて……それって、すっごく格好悪い事だと思う。

 一方的に告げる……いや、告げてすらいない。なのに、もう彼女に言った気になってる。

 駄目だ、そんなんじゃ。ちゃんと言わなきゃ。

 ……でも、なんて?

 さっきの心の中の言葉は本心だ。でもそれじゃ駄目な気がする。

 彼女に姉さんの影を重ねていないって事にはならないし、実際そうだ。

 俺は未だに俺自身でもわかってない。本当は朝潮の何を好きなのか。なぜ朝潮を守りたいのか。

 『好きだから』だけじゃ説明がつかない。それは朝潮に対してでもあるし、自分に対してでもある。

 わからないんだ。なんにも。

 だから口に出せなかった。これじゃあ本当に朝潮を守るとか、彼女のために戦うとか言う資格は俺にはないかもしれない。

 でも諦められないんだ。

 君を諦めたくない。

 好きだからか他の何かかはわからないけど、この体の中にある大きな気持ちは本物だから。

 

「……満潮」

「何よ」

 

 呼びかければ、すぐさま鋭い声が返ってきた。

 彼女に目をあわせ、心の中でだけ言う。

 俺はきっと朝潮を振り返らせてみせる。

 格好良いところをいっぱいみせて、危険な色々から絶対に守って。

 そうしたら、もう一度この気持ちを伝えよう。

 たとえあからさまに満潮が朝潮を庇っているのだとしても。

 ……なんて格好つけてみたは良いものの、朝潮に良いところを見せるにはこの雑木林に踏み込まなければならないのだ。

 ……ぶっちゃけ怖い。特に今は、他の二人と会話できるような状態ではないから。

 

「あんた、もしかして怖いの?」

 

 そんな風に二の足を踏んでいると、隣に立つ満潮が見下ろすようにしてそう言ってきた。

 ……んっん。咳払いで誤魔化しつつ、顔を逸らす。

 さすがの俺も二人も同行者がいるのに夜闇を恐れるほど臆病者ではない。驚かされたらその限りではないけど、朝潮と、ついでに満潮がいるなら普段通り振る舞えるだろう。話しかけづらいのは、そう、そんなの気にしなければ良いのだ。どの道もう俺に時間は残されていないんだし、朝潮に接していられる時は積極的に彼女にアタックしてしこう。今決めた。

 

 ……ところでこの子、少し頭を傾けて見上げているのに見下ろすような話し方してるけど、よく見たらまつ毛が震えてる。

 それともう一つ。

 ……いつまで朝潮の腕を握っているのだろう。

 

「……! ばっ、べ、別に、これはそういうのじゃ……!」

 

 試しに指摘してみると、彼女は面白いくらいに狼狽した。

 

「ひょっとして、怖いのは君の方だったり?」

「そんな、わけ、ないでしょ!」

 

 朝潮の腕を持ち上げてわたわた言い訳するものだから、ああこれはひょっとしてと直球で問いかければ、区切り区切りの強い口調で否定された。

 朝潮を見てみる。

 彼女は苦笑いを浮かべて小さく頷いた。たぶん俺の推測が当たってるって事なのだろう。

 

「バカ言ってんじゃないわよ、艦娘が夜を怖がってどうすんのよ! 見てなさい!」

 

 いきりたって、両手で懐中電灯を握った満潮が指を滑らせ何度か失敗しながらもスイッチを押しあげた。光が灯る。と同時、何かビリビリっとした感覚の膜が体全体を通り抜けていった。

 石像のように固まった満潮と僅かに眉を上げた朝潮を見る限り、今の感覚は俺にだけ起こったものではなかったのだろう。

 では、今のはいったい……?

 

「……ねえ、今の――」

 

――ヒェェェェエエエ

 

「っ!?」

 

 びくりと体が跳ねた。

 どこからともなく響いたおどろおどろしい悲鳴は、空を覆う木々を騒めかせて遠くの方に消えていった。

 な、なに、今の。え、いや、落ち着け俺。驚かし、そう、ただの驚かし……。

 

「そ、そうよ、ただの驚かしよ、なな何びびってのよよ」

「み、満潮こそびびって、舌回ってないじゃん」

「ちょっと寒いのよ!」

 

 嘘つけ。今夏真っ盛りだ。

 だが俺が手を握り込んでしまったりちょっと体が震えたりするのは……寒いからだ!

 いつの間にかまた満潮は朝潮の腕を握っていた。それを見下ろした朝潮が、満潮の手に自分の手を添えていったん離すと、ちゃんと手と手で握るようにした。

 はっとした満潮が朝潮と顔を合わせると、朝潮は優しげな笑みを浮かべて小首を傾げた。

 

「いっ、いいわよ、そういうの」

「そうかしら。たまにはいいんじゃない、こういう風に……」

「いいってば!」

 

 ばっと手を振り上げて繋いでいた手を解いてしまった満潮は、大袈裟に顔を背けて、腕を組んだ。俺と向き合う形になると、俺を見上げて、ばつが悪すな顔をする。せっかく気遣ってくれた朝潮の好意を蹴ったのだからそう思うのは当然。でも、当の朝潮は、こういう風に振り払われる事はわかっていたのか、気分を害した様子はなく笑みを浮かべたままだった。

 

「じゃあ……今度こそ、本当に行くわよ」

「結局腕は握るんだ」

「ばっ、迷子になったら困るでしょ!?」

 

 前へ向き直って道の先に懐中電灯を向けた満潮が、さりげない動作で朝潮の腕を取るのを見逃さなかった俺は、今度もそれを指摘した。すると彼女は大慌てで下手な言い訳をして、それからずんずんと歩き出した。俺から朝潮をガードするくらいだし、朝潮の事が嫌いって訳でもないんだろう。むしろその逆……。並んで歩く二人は背丈もほとんど同じで、髪の色こそ違うけれど、距離感やお互いの気持ちをよくわかっている点はちゃんとした姉妹に見えた。朝潮はいいお姉さんで、満潮は……いい妹?

 って、突っ立って眺めている場合ではない。照れ隠しかどんどん先に進む満潮は振り返る気配がない。あっ、あっ、待って、置いてかないで。まじ怖いんだから。

 内心恐怖に震えつつ、外面はいつも通りを保ち(保てているかはちょっと不安)、朝潮の隣へ並ぶ。勇気がいる行為だけど、積極的を心掛けなければ!

 なんて思っていたら、満潮が回り込んで、俺と朝潮の間に割り込んだ、きっちり彼女の腕までとって場所を確保してしまう。なら反対側に……あっくそ、回り込まれた!

 

「…………」

「…………」

 

 無言で睨み合う。

 その間も歩みは止めなかったから、少し曲がりくねった道を歩く中で草の動く音や木々のざわめきが聞こえてくると、びくりと肩を跳ねさせてそちらを窺う事が何度かあった。

 俺の敵は満潮だけではない。この自然と、軽巡や重巡、戦艦とか、その他の先輩方も敵なのだ。俺はそれらにびくつく事なく、朝潮に『きゃーこわいー』って感じで抱き付いてもらう事を目的に進まねばならなかった。

 ていうか満潮ガード半端ないな。さりげなく朝潮に声をかけようとしたりしても邪魔されてしまう。彼女が隙を見せるのは不審な物音がした時か、不審な人影が近くに現れた時か、不自然な光が見えた時だけだ。

 ……その隙を狙うのは無理だな。むり。

 いくら俺が速いからってね、無理なものは無理なんだよ。仕方ないんだよ。

 

――瑞雲が一機……瑞雲が二機……一瑞雲足りない

 

「あ゛ー! また出たーっ!!」

「オチツイテ満潮、ただの瑞雲だよ!?」

「落ち着いてください」

 

 どこからともなく聞こえてきた日向の声に、満潮が懐中電灯をぶん回す。光のビームが周囲の木々の合間を照らし出すと、何かが潜んでいるような気がして怖くなるからやめて欲しい。

 というか、さすがに今のは怖くないでしょ。思いっきり日向だったよ。なぜか朝潮は俺にまで落ち着けと言ったけど。……落ち着いてる、落ち着いてるから。大丈夫、幹から半分だけ体を覗かせた日向がこっちを見つめてきているのなんて見てないから。怖くなんてないんだから。

 

「あさっ、あ、朝潮、朝潮、朝潮!」

「ここにいるわ」

「わかってるわよ!」

 

 満潮は錯乱とまではいかないまでも、結構テンパっていた。そのうち懐中電灯取り落としそうな気もする。そういえば、傍に慌てている人がいると逆にこっちは冷静になれるって話があるけど、あれ嘘だね。……そろそろ俺の頭も限界が近い。

 苦手な相手だろうと人は人、という事で満潮の傍にぴったりくっついて周囲に目を走らせる。見ない方が怖くないってわかってるんだけど、見てない時に何かが来るかもしれないのは怖すぎるし、変なプロペラ音とか聞こえてくるのも嫌で、ああもう、ああもう、ああもう!!

 

「あっ……人魂(ひとだま)

「ひっ」

 

 あああ、満潮が変なモノ見つけちゃった!

 道の先、少し外れた木々の奥、ふよふよと泳ぐ白く丸い炎のような光は、うそ、あれ、本物じゃないよね、ねぇ!?

 

「本物な訳ないでしょ、ニセモノよ、作り物よっ!」

「でもあれ、動いてる!」

「あああ! なんて事言うのよ! 動いてない、動いてなんかないったら!」

 

 懐中電灯の光を向けられた人魂は、ふらふらっとした動きで右に移動しながら段々と浮かんで行って、生い茂る葉の陰に隠れてしまった。

 あれ、こっち来たりしないよね。なんかで吊るしてるだけだよね。その割には光で照らした時に糸とかそういうの見えなかったんですけど!

 

 見たくないのに目が閉じられない。瞳を濡らす涙がぽろりと零れると、どうしようもなくさ迷わせた手で満潮の腕を掴んだ。普段だったら振り払われてるだろうけど、今は非常事態。彼女は頓着せず、ただ、動かし辛そうに懐中電灯をあちこちに向けていた。

 

「木が揺れた!」

「っ……」

 

 近くの木がぐらぐら左右に揺れるのに、もう声も出なくて満潮の腕にひっしりとしがみついた。砕けそうな腰から下の感覚が曖昧で、ちゃんと歩けてるのかもわからなくて。

 

「ちょっと! 歩きにくいのよ、離れなさいよぉ!」

「ちょっとだけ! ちょっとだけだから!」

 

 歩く際に邪魔なのか、肘を動かして俺の手を振り払おうとする満潮に、今ここで離したら置いてけぼりにされてしまいそうな気がして離すまいと掴み続ける。自分で自分が何言ってんのかもわかんない状況だったけど、力加減だけは気にしていた。目いっぱい握ったらきっとメシャッていくと思ったから。

 でも彼女の恐怖と苛立ちの天秤は、苛立ちの方に傾いてしまったみたい。

 

「ウザイのよ!」

 

 体ごと腕を振り抜いて俺を振り払った満潮が睨みつけてくるのにたじろぐ。

 声を荒げられた事より、彼女達も一緒になって止まってくれた事に頭がいっていて、少しの間動けなかった。

 

「満潮」

 

 囁くように朝潮が注意する。乱暴な払い方をしたからだろう。体勢を崩しかけはしても大事はなかったから、彼女がそうやって俺を気にかけてくれたのは嬉しかった。……と思う余裕は、実はなかったりするんだけども。

 不意に視界の端に青白い光が揺らめいた。

 さっきと同じように、光が木々の合間を泳いでいる。高さは俺の胸くらいのところ。二人も気付いて、懐中電灯を向けた。やっぱり紐やら糸やらはない。

 ああでも、だから、これはそうゆうイベントなんだから、あれももちろん作り物で……!

 あああ、視界がぐるぐるぐる。

 ああああああ。ひとだまが、ひとだまが!

 ひとだま?

 お化け?

 ゴースト!?

 

「仮面ライダーごときに私の偉業は止められない! やがて銀河の王となる男の前ではな……!!」

「意味わかんない事言わないでよぉぉぉ!!」

「お、落ち着いて、落ち着いて二人共!」

 

 くすくすと聞こえる忍び笑い。どこか上の方に感じる気配。ぴゅうっと飛んでくるお水に、道半ばに不自然にあるお地蔵様。

 

「ああああ!!」

「にゃあああ!!」

 

 斜め後ろをザザザザと何かが蠢いて移動する音に、なりふり構わず満潮を捕まえようと両手を伸ばすと、向こうからも手が伸びてきていてがっちり組み合ってしまった。絡んだ両手の指どうしはそのままに背後を振り向けば、くっつくくらいに頬が寄って、喉の震えが直に伝わってきた。

 なんか今横通った、横通ったよ!

 

「……このまま行きますよ!」

 

 前へ出た朝潮が手を振って俺達を誘導する。ようやく手を離して体も離した俺と満潮は、走り出した朝潮に置いて行かれないように最大速でついていった。

 

 

「はー、はー、はー……」

「ふー、ふー……」

 

 奥まった場所にあった人の気配のない社。その前にあった賽銭箱へ十円を叩きつけて、即座に撤退する。社の陰から覗いていた川内先輩はいないものとして扱った。帰りの際、朝潮が三枚の御札を握っている事に気付いてこけそうになった。なんてもの持ってきちゃってんのと突っ込もうとしたけど、彼女の説明では、それが社へ行った事の証明になるらしい。

 命からがらスタート地点まで逃げ帰ってきた俺達は、少し休憩すると、青葉に御札を返却して、ご褒美に間宮のお食事券を頂いた。

 これにて俺達の肝試しイベントはおしまい。雑木林を抜けてもまだ破裂しそうなほど鼓動する心臓を胸を押さえてなだめながら、二人と一緒に鎮守府への帰路についた。

 

「なかなか良い走りだったじゃない、褒めてあげるわ」

「ライト捌きが見事だったね。素直に尊敬するよ」

 

 なんて会話を交わしたりして、満潮とはちょっとだけ仲良く(?)なった。

 ……怖がってた事を必死に隠すためのおべっかであっても、褒め言葉は褒め言葉だ。少し距離が近付いた気がする。

 朝潮のハートキャッチ大作戦は失敗に終わったけどね!!

 いいもん。帰りの道中、まちのケーキ屋さんの屋台が畳まれているのを見て少し気落ちした様子の朝潮に、ケーキを作る約束をしたから。

 明日にでも作ろうと思う。俺には時間がないからね。

 屋台はなくても、そこに立って艦娘の帰りを見守っていた三原先生にケーキ作りを教われる事にもなったし、結果オーライだ。

 先生はプロらしいから、きっちり技術を吸収しないとね。それがたとえ数日の間しか活かせないのだとしても。

 

 帰りは各自自由。先生や先輩方が俺達の動きを見守ってくれていたらしいから、点呼の必要はなく、流れで寮に帰宅する。下の階の朝潮と満潮にお休みの挨拶をして部屋に戻った。

 もしかしたら誰もいないんじゃないかもって怖くなってたけど、叢雲がいてくれた。連装砲ちゃんはまだ点検中みたいでいなかったから、彼女がいてくれて本当に助かった。

 もし一人だったらと思うと、はは、ブルっちゃうね。

 自分で立候補したのに私情で任務をほっぽり出した事を叢雲に叱られて、足の方もブルっちゃったけどね。

 

 トドメにその日は、目が冴えて眠れなかった。暗がりや何かを見てると怖い事を考えてしまうのでうつ伏せになって寝ようとしたのだけど、息苦しくて寝れたもんじゃなかった。ひー、もうやだよう。




TIPS
・朝潮の腕を握る満潮
ずっと朝潮の腕を握っている。必ず朝潮についていく。
視界から外したくないらしい。見えないところに行かれるのは嫌らしい。

・没台詞
「史現ともに私の方があんたよりお姉さんなのよ!」
「満潮……お姉ちゃん?」
「…………さっきの発言は取り消す」

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