魔法使いが魔法の世界に行ったのに何かおかしい   作:粉プリン

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第13話

フーケを縛り、捕まえた後自分とタバサは急いでアルビオンへと向かった。と言ってもタバサの竜は船ほど持久力はない。ここで急いでも体力がなくなって途中で休息をとる事になり、余計に時間を潰す事になる。よって船よりかだいぶ遅い速度で進んで行ったため着いた頃には二度目の朝を迎えていた。

 

『魔の者、遠方にて、万の蠢く無機』

 

「敵も相当固めてるようね……タバサ。先に行かせてもらうわ」

 

そのままタバサの使い魔の竜の背から飛び降りる。流石に驚いたのかタバサもこちらを見ていたが、即座にクトゥルフが翼を生やし捉えてくれたためそのまま行く事にした。しかしどうでもいいけど触手で腹を抱えるのはどうなのだろうか。せめて掴むか抱えるかはして欲しかった。脚は触手で六本腕に頼んでもそれはそれで嫌だけど。

 

 

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「……平気かしら?」

 

「……誰かな……敵では、なさそうだ」

 

クトゥルフに人の気配を探させると礼拝堂に尽き掛けの命があると言われ見てみると、見る限り位の高そうな人物が胸から血を流しながら倒れていた。

 

「名は聞かないわ。今はそんな時でもないし」

 

「そうかい……ならば、このまま、私は死んでいくと、しよう」

 

「……未練はないのかしら?」

 

「……ふふっ、……情けないが、いざ死を前にすると、やはり私も人の子のようだ。……頭の中にあの娘、アンリエッタの事が浮かぶ……もう、私の中では、諦めたと思ったのになぁ…」

 

「……そう、生かしてあげる。って言ったらどうする?」

 

「……そうだな、……もしそんな事ができるなら……もう一度、アンリエッタと、話したかった」

 

そこまで言って男は目を閉じた。後数分もしないうちに出血多量で死ぬのだろう。自分と関係ない、ましてや今初めて会ったばかりの男だ。別に死のうが究極的に言えば全く問題ない。しかし

 

「アンリエッタ、ねぇ……。姫殿下の恋人を死なせたらまた面倒な事になりそうね。クトゥルフ」

 

『血の儀式、贄の肉を持って、原初を否定』

 

クトゥルフの足元から生えている触手が男の胸元の傷に入り込んだ。それでも反応してない事から既に限界なのだろう。触手はある程度まで体の中に埋まると中程から切り落とされた。それを確認してからポケットに入れてあるクリスタルに魔力を通す。

 

「ジョゼフ、聞こえてるなら返事をして」

 

『……おぉ!パチュリーか、久しぶりだな!このけ……けい、なんとやらもちゃんと聞こえておるぞ!』

 

「今から要点だけ言うわ。今私の使い魔がそっちに怪我人を運んでるから私の部屋で寝かせておいて頂戴」

 

『怪我人ならば、医療室があるが』

 

「訳あってあまり人前に顔を出せないような人物だから、出来れば貴方以外には知られたくないわ」

 

『……訳あってか、わかった!他ならぬ余とパチュリーの仲だ。その頼み、聞き届けた!』

 

「助かるわ、それじゃあまた」

 

『待つのだ!ここ最近の姪の活躍をまだ聞いて』

 

ジョゼフがまだ何か喋っていたが切らせてもらう。それに時間もそうないだろう。外から既にたくさんの足音が聞こえ始めていた。

 

「クトゥルフ、ここから外に出てその男を私の部屋まで運んで頂戴。ガリアの私の部屋は分かるかしら?」

 

『魔の者、神経接続、時の埋没から選定、確認した』

 

「なら連れて行って頂戴。それとくれぐれも青髪の王様みたいな人以外には見つからないで」

 

『了承した』

 

クトゥルフが穴から出て行った瞬間、礼拝堂の入り口が魔法で吹き飛ばされた。そこからぞろぞろと傭兵のような者や、メイジと思われる者が後から後から続々と入ってくる。おそらくここが最後なのだろう。窓の外からも弓や杖で狙われているのが分かる。

 

「なんだぁ?老いぼれ貴族がいなくなったら最後はこんなガキンチョ一人残してたのかよ」

 

「大方逃げ遅れたんじゃねえのか?」

 

「ちげえねえ」

 

何が面白かったのかは分からないが男たちは笑い出すとニヤニヤと双眸を崩しながらこちらに近寄ってきた。なので実際に双眸を崩した(・・・)

 

「……あっ?」

 

「貴方たちは凄いわね。どうしたら頭を斜めに切り裂かれた状態で笑えるのかしら?良かったら教えてくれないかしら?」

 

自分の問いかけに帰ってきた答えはズシャ、ともグシャ、ともつかない脳が床にぶち撒けられる音だった。そこでようやく事態に気がついたのか、今更のように周りの敵が慌てだした。

 

「こ、こいつ今魔法を唱え「遅いわ」」

 

相手の出方をいちいち待つのも癪なため、全方位に向けて風魔法をぶつける。風五つで構築したオリジナルの魔法『エア・ドーム』。主に瞬間的な防衛や囲まれた時に使えるのだが、魔力をほとんど消費しない体なので最大限まで魔力を込めて解放する。すると

 

「……やり過ぎたかしらね?」

 

礼拝堂の壁や天井すら吹き飛ばしてドームが広がり、壁の外で待機していた敵もろとも彼方まで吹き飛ばした。しかし遠くの方にはまだまだ途方もないくらい敵が見てる。依然終わりが見えないため自然とため息がこぼれた。いつになったら帰れるのやら。

 

 

続く




ゼロ魔テンプレ、ウェールズ生存ルート。しかしこの作品ではウェールズは邪神の愉快な仲間たちに属するので恋人のアンリエッタのSAN値がピンチです。

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