勇者さんのD×D   作:ビニール紐

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独自設定あり。


20××年、世界はリゼヴィムの悪意に包まれた!

海は枯れず、地も裂けず! 全ての生命が特に問題ない様に見えた。だが、人類だけは死滅していたっ!


【新世紀救世主伝説 勇真の剣】







嘘です。



第31話

「さて、ルミネア、出掛けようか」

 

勇真は優しげな天上の神々さえも惚れてしまいそうな美少年スマイルでルミネアの手を引いた。

 

「え、どこにでしょうか?」

 

そんな勇真に一瞬ドキリとしたルミネアだが、すぐに彼女は困惑した様な顔をする。

 

当然だ、どこに出掛けようと言うのか? 人類は既に殆ど絶滅している。その情報は彼女も知っていた。

 

そして、その責任の一旦が自分にあるとも。

 

「もちろん、ネット環境が…つまり娯楽が生きてる異世界にさ!」

 

そう言って勇真は異世界転移魔法陣を発動する。

 

「こんなこともあろうかと、ミルたんとの修行の旅の間に密かにマーカーを設置していたんだ。そしてその中の一つにネット環境が整った地球の並行世界がある。そこに行けばこの世界にいるよりはマシな環境なはずだ。残念ながら読みたい漫画や小説の続きは読めないけどね」

 

そう言う勇真は相変わらずの美少年スマイルだが、その目はどこか淀んでいた。

 

「勇真さん、育った世界を簡単に捨てたらいけませんよ」

 

「……そうは言ってもね、もう、人類ほぼ壊滅だよ? 今残ってる人間はたったの十数万人、しかも大半が男だ。多分繁殖管理とかしなければ確実にこのまま滅ぶね」

 

地球最後の2人、とかになったら笑えない。そう勇真は呟いてルミネアを転移魔法陣に連れ込もうとする。

 

「ちょ、ちょっと待ってください! 今回の責任は私が勇真さんに修行しろなんて言ったから起こった事ですよ!? その私が責任も取らずにこの世界を離れるのはいけないと思いますッ!」

 

ルミネアのそんな責任感溢れる言葉に勇真は首を振る。

 

「ルミネア、初心を思い出そう。作戦【命を大事にだ】というか今回の責任はルミネアに一欠片もないからね、全部悪魔が、リゼヴィムが悪いッ! つまり俺も悪くない!……でもこの惨状を見たら異世界から帰ってきたミルたんに俺は殺されてしまうんだ! だから逃げようッ!!」

 

もう、とっくにミルたんの呪いは解呪されてしまってるんだッ! と勇真が必死の形相で訴える。

 

ちなみにこの男はこれでも勇者だ。

 

「その場合異世界に逃げても殺されてしまいませんか!?」

 

「…………まあ、そうなんだけどね、でも少しは長生き出来る。その間に俺はルミネアの安住の地を探すから安心してくれ」

 

希望の異世界はある? 超科学文明? ファンタジー世界? それともやっぱり地球の並行世界? 暗い顔をした勇真はルミネアにそんな質問を投げ掛けた。

 

「勇真さんと一緒にこの世界で暮らしたい、それが私の希望です」

 

「とても嬉しいよ、でもね、もう人間は終わりだよ……ああ、悪魔になって生きるって方法もあるか、確か冥界はネット環境もあるし。でもなぁ、主要な娯楽ドラマ?が『魔法少女レヴィアたん』だからなぁ、そんなハイセンスな連中に俺は合わないと思うんだ」

 

マジつまらん。勇真は真顔でレヴィアたんを批判した。

 

内容が内容だから仕方あるまい、なんたって水戸黄門魔法少女バージョンだ。ちなみにキャストは悪党とレヴィアたん(レヴィアたんとは黄門様とスケさんとカクさんとその他お助けキャラとお色気キャラを合体させた様な存在)で戦いは常に元気100倍のアンパ○マンvsバイキ○マン様な状態だ。

 

どっちがアンパ○マン? そんなの決まってるでしょう?

 

勇真はこのドラマ? を見た時ありきたりすぎて逆に笑が込み上げてきた程だ。

 

「……本当に人類はお終いなんですか?」

 

勇真がレヴィアたんのつまらなさを思い出していると、ルミネアが真剣な顔で勇真に問いかけて来た。

 

それに対し、勇真も顔を引き締める。

 

「うん、さっきも言ったけど誰かが繁殖管理しないと無理なレベル。俺ヤダよ、悪魔か何かに繁殖管理された世界で暮らすなんて」

 

「それは、私も嫌ですが、でも、例えばあり得ない事でしょうが、死んだ人間を生き返らせるとか出来ないんですか?」

 

「いやいや、そんな都合の良いドラゴ○ボールみたいな展開」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あるじゃん、なんで忘れてた?」

 

「え…本当ですか!?」

 

ルミネアは取り敢えず言ってみました! な意見が肯定されて驚いた。

 

「聖杯だよ聖杯、リゼヴィムが使ってた幽世の聖杯! アレを使えば人間を生き返らせる事も可能なはずだ。魂は天界が管理してるはずだからいけるッ!……あ、でも、無神論者の日本人は復活出来ない…いや、他にも………う〜ん、多分半分くらいは生き返れないけど半分生き返らせれたら上出来かな?」

 

さよなら田中くん、さよなら加藤くん。勇真は遠い目で呟いた。

 

「上出来ですよ! それなら人は滅びませんよね!?」

 

「もちろん、ついでに聖杯で人類を強化すれば寿命も大幅に伸びるだろうし、これは案外いけるかも……でも、俺の主要な娯楽は殆ど全部日本人が提供してくれてたんだよなぁ、ああ、マジでリゼヴィム殺してぇ、もう一度徹底的に嬲り殺しにしてぇ」

 

深い深い猛毒の沼の様なドス黒い憎悪を秘めた瞳で勇真は語る。

 

そして勇者の底知れぬ殺意は一瞬にして呪詛と化し、ルミネアを除く周囲の全てを呪い始めた。

 

「ちょ、勇真さん呪ってます! 周囲を呪ってますよ!?」

 

「あ、ごめん、リゼヴィムへの殺意でうっかり。しかし、そうだね、異世界に行くにしてもその前に人類を復活させてから行こうか? じゃなきゃミルたんに殺されるし」

 

だが、例え人類を復活させても日本人作者のミルキースパイラルは……もう、復活しない。

 

もしかしたら無駄な足掻きかも知れない。そう思いつつも勇真は未来への希望を信じた。

 

 

「……ミルたんさんてそんなにすぐ人を殺す方なんですか?」

 

「いや、そんな事はないよ。でもね、ルミネア、アリを潰さずに踏むのは難しいんだよ? ミルたんのちょっとした怒りは世界の破滅を誘発するんだ、ミルキースパイラルが復活しないと知ったらミルたんはそこそこ強く俺を殴るかも知れない。そうなったらお終いだ、もう、100%俺は死ぬ。だから出来うる限りミルたんを怒らせたくないんだ」

 

「そこまで言いますか、すみません、そこまで恐ろし方とは知らず、修行しろなんて言ってしまって」

 

ちょっとルミネアが申し訳なさそうに言う。そんな彼女を勇真は笑って許した。

 

「いや、良いんだ。他の奴だったら嬲り殺しにしてたけどルミネアは良いんだ。まあ、俺の恐れ方もちょっと大袈裟かも知れないね、でも仕方ないんだよ。元々、トラウマだったのに修行を受けて更にトラウマになった。ああ今思い出しても本当あの修行はあり得なかった。特に最初の一カ月のミルたん無限組手は一万回は死に掛けたから、もう、辛くて辛くて、一週間はリゼヴィムへの憎悪でなんとか保たせたけどそれ以降はもう全力で逃げたからね」

 

「……私は勇真さんに三カ月修行したと聞いたんですが?」

 

「ああ、そうだよ。俺の “身体” は三カ月ちゃんと修行したよ」

 

「身体は?」

 

「うん、最初にルミネアに会った勇真はね、俺が修行から逃れる為に魔導人形の技術を応用して作り出した第二人格だったんだ」

 

「え、どういう事ですか?」

 

「つまり、ルミネアが最初に会ったのは鍛練大好きで正義感が強い超真面目くんに作った俺の第二人格だ。まあ、その人格はもう魔導人形にしてリゼヴィムを倒す布石になってもらったんだけどね」

 

「え………な、なんて事をしてるんですか!? 身体を乗っ取られたらどうする気だったんですかッ!?」

 

ルミネアが怒って叫ぶ。勇真はそれをまあまあと宥めた。

 

「大丈夫大丈夫、そこら辺はランスロットくんで懲りた。でも主導権はあげてたよ? じゃなきゃ楽できないし、それにね、もう、乗っ取られても良いかな? ってくらい俺は追い詰められていてね、ほんとミルたんの修行は常軌を逸した辛さだったんだ。今でも俺がした判断は間違って無かったと確信しているよ、じゃなきゃ今頃…俺は精神崩壊を起こしていたはずだ、確実に」

 

勇真はげっそりとした顔で言った。

 

彼にここまで言わせるとは、ミルたんの修行はそれほどヤバかったのだろう。

 

「そ、そんなに、ですか?」

 

「そう、詳しくは思い出したくないから聞かないで。ただ、魔法少女コスさせられるのが癒しの時間だった。それくらいヤバイ環境だったとだけ覚えておいてね」

 

「は、はぁ」

 

いまいちピンとこないルミネアは困惑した様な微妙な返事を返した。

 

「まあ、修行の話はもう良いんだ。まず、人々を生き返らせる作戦を練らないと」

 

それは置いておいて作戦作戦、そう言って紙とペンを取り出した勇真はサラサラと何かを書き始める。

 

紙には人の名前と “死” の文字が多数書かれていてまるでデス○ートの様な惨状だ。

 

「さ、作戦も何も、幽世の聖杯を探して使うだけなのでは?」

 

「無理無理、数十億人を生き返らせるんだよ? 力が足りなすぎる。俺の力でもそこらの神の力でも無理だ。こんな事をするには……無限の龍神の力が要る」

 

勇真の言葉にルミネアは心底驚いた。

 

何故なら彼はこの世界最強のドラゴンを利用すると宣言したのだから。

 

「む、無限の龍神って、本気ですか?」

 

「もちろんだ。龍神を捕まえて電池にして人類を復活、強化させようか」

 

龍神を電池代わりにするという正に神をも恐れぬ事を言う勇真にルミネアは戦慄した。

 

「か、勝てるんですか、無限の龍神にッ!?」

 

「普通にやったら無理だね、でもね弱点がない存在はいないし、本当に無限の存在なんて存在しないんだよ」

 

ミルたん以外はね、と勇真は付け加える。

 

「え、無限の龍神なのにですか?」

 

名前に無限ってついてるのに? ルミネアは問う。

 

それに勇真は当然とばかりに頷いた。

 

「もちろんだよ。もしオーフィスが本当に無限なら禍の団なんて作らずに赤龍神帝をさっさと排除している筈なんだ。オーフィスは別に本当に無限の力を持っている訳じゃない。アレは超々々強過ぎるだけのドラゴンに過ぎない」

 

「じゃあ、なんで無限なんて呼ばれてるんですか?」

 

「次元の狭間、無の世界から生まれた存在だからと言われてるけど実際は違う。誰もオーフィスの力の全容が分からなかったからそう呼ばれてるんだよ」

 

「分からなかった、つまりは無限ではないんですか?」

 

「違うよ、1の力しか持たない者は億の力を持つ者の全容を把握出来ない。この1が神で億がオーフィス、そう、ただこの世界の存在では彼の力の全容を把握出来なかった。だから無限なんて呼ばれてるんだよ」

 

そう、自信を持って断言すると勇真は紙とペンを置き大きく伸びをした。

 

早くも作戦が出来たらしい。

 

「勇真さんはオーフィスの力の全容を把握したんですか?」

 

「もちろん無理だ。でもオーフィスが有限だという事だけは分かる。なら勝ち目はあるんだ例え俺の一億倍力が強くても限界があるならば……でもねそれはオーフィスが一人で居る場合に限る」

 

 

 

 

 

「つまり、禍の団が邪魔だ。ふふ、これも人類の為、彼等には早急に退場してもらおうか」

 

テロリストなんて居ない方が世界の為でしょ? そう言って勇真は透き通った優しい笑みを浮かべる。

 

その笑みは言ってる内容と全くマッチしない、まさに完璧な善人が浮かべる笑顔で、敵意も悪意も欠片も抱いていない “様に” 見えた。

 

そんな勇真を見てルミネアは外面って怖い、相手が笑顔だからって油断しない様にしよう。と心に決めた。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、でも冷静に考えたら危険だから、やっぱり止めていい?」

 

そう、呟く勇真にルミネアは両手でバッテンを作って抗議した。

 

 

 




本当にオーフィスが無限なら何個に割られても無限ですよね。

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