勇者さんのD×D   作:ビニール紐

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これも全て……


第22話

妙だな、とヴァーリは思った。

 

時刻は深夜、駒王市に訪れたヴァーリだが、ジークフリートの魔法力反応を見つけられないでいた。

 

「……あれだけ強大な魔法力の持ち主だ、例え魔法力を封印していても俺なら見つけられると思ったのだが」

 

今のヴァーリは魔法感知系の感覚も聖杯で強化されている、例え相手が隠れていても見つけられる、その自信がヴァーリにはあった。

 

しかし、見つけられない。

 

これはつまり……。

 

 

「ジークフリートは駒王市に居ないのか?」

 

ヴァーリは落胆した。

 

そういえばジークフリートと戦ったのは駒王学園だが、別に彼が駒王市に住んでいるとは限らない、それに思い当たりヴァーリは頭を押さえた。

 

 

「こんな簡単な事に気が付かないとは、苛立って冷静ではなかったか……まあ、いい、ならば知ってそうな奴にジークフリートの居場所を聞けばいいか」

 

そう言ってヴァーリは気を取り直すと、魔の気配が集中する場所ーー兵藤家に向かうのだった。

 

 

 

 

 

「今更かも知れないけど、悪魔ってハードな生活だな、俺、悪魔になってからの数ヶ月で100回くらい命の危機を体験してるんだけど?」

 

「ハハ、イッセーくん、それはジークフリートの模擬戦も命の危機に含まれていなかい?」

 

「おお、落ち着き過ぎですよぉぉぉッ!? イッセー先輩ッ! 祐斗先輩ッ! 分かってますよねこの異常な魔力にぃッ!?」

 

そう、ギャスパーはいつも通りの感じで会話する二人に突っ込みを入れた。

 

深夜に現れた異常に巨大な魔力、それに飛び起きたリアス眷属は家の外へ出て、様子を伺っていたのだ。

 

で、その魔力の持ち主は、まるで意図を隠す事なくその強大な魔力を放出しながらイッセー家へと向かっていた。

 

リアス達は即座にこの襲撃者と思われる者の力量を悟り、自分達だけでは対処困難と魔王と堕天使総督に応援を要請したのだ。

 

 

「ギャスパー、焦っても仕方ないだろ? むしろお前は落ち着け、怖いのは分かる、それは俺も同じだ、でも落ち着かないと力を発揮出来ないぞ?」

 

「ーーッ!?」

 

ギャスパーは見た、そう彼にアドバイスするイッセー、その顔に若干の恐怖心が浮かんでいるのを。

 

当たり前だイッセーはこの魔力に思い当たりがある。

 

かつて神器も使わずに自分を圧倒したあのヴァーリのモノだ、しかも、以前より二回りは力を増している。

 

そう、イッセーにも直ぐに分かる程、魔力の波動は強大になっていた。

 

それでも、イッセーは冷静さを保とうとしているのだ。

 

 

そんなイッセーの姿を見てギャスパーも勇気付けられ決意を固めた。

 

「……はい、そうですね、すみません、突然の事で焦りました、もう大丈夫です!」

 

「よし! それでこそ男だッ!」

 

「偉いよギャスパーくん……それで部長、副部長、サーゼクス様とアザゼル総督の増援到着予定は?」

 

木場はギャスパーを褒めると視線をリアス、朱乃に重要な質問を投げかけた。

 

「……お兄さまの、魔王様の軍勢到着予定は役一時間後よ」

 

「……アザゼル総督は40分ほどで到着するそうです」

 

木場の質問に若干顔を青くしてリアス、朱乃が答える。

 

その軍勢到着予定は絶望的だった。

 

 

 

「ハハ、参りましたねこれは」

 

「そうだな、本当に参った……と言う事で、あと一時間くらい待ってくれね?ーーヴァーリ」

 

 

 

 

「却下だな」

 

そう言って、宙に浮かぶ銀髪の少年ーーヴァーリはイッセーの意見を却下した。

 

 

マジかよ、それがヴァーリを見たイッセーの感想だ。

 

イッセーは少しだけ期待していたのだ、ヴァーリから以前より遥かに強い魔力を感じるのは彼が全力ーーつまり『白龍皇の光翼』の禁手化状態『白龍皇の鎧』を纏っているが故に放つモノであると。

 

しかし、蓋を開ければヴァーリは神器未使用状態、つまり、ここから更に大幅パワーアップ出来る訳だ。

 

笑えねぇよッ! イッセーは内心で厳しい現実に唾を吐いた。

 

 

「で、お前は何しに来たんだ? もう、ライバルの俺には興味がないんだろう?」

 

「そうだな、兵藤一誠には興味がない、ただ聞きたい事があったから聞きに来たんだ……ジークフリートはどこだ?」

 

そう、強い戦闘意欲を滾らせてヴァーリは言う。

 

それにイッセー達は内心で呻いた。

 

「……それを聞いてどうするんだよ?」

 

「決まってるだろ? リベンジさ」

 

「はは、相変わらずの戦闘狂、また負けちまうぞ?」

 

「今度は負けないさ……とは言い切れないか。しかし、今回は最初から油断も慢心もしないで戦うつもりだ。そうすれば多分、今の俺なら勝てる」

 

嘘や冗談ではない、ヴァーリは本当に油断も慢心もしない気だとイッセーは感じ取った。

 

そして、多分勝てるという彼の言葉も強がりではないと。

 

 

「……じゃあ、もしジークフリートの居場所を言えば俺たちに危害は加えないか?」

 

「せっかく来たんだ、ウォーミングアップついでに戦うつもりだが?」

 

「いや、そこは『雑魚に興味はない』とか言えよッ!」

 

「悪いな、俺は力が拮抗した勝負が好きだが、気分が悪い時は蹂躙戦もしたくなるんだ」

 

「お前、最低だなッ!?」

 

「ハハハハ、悪かったな、だがもっと悪いのは弱いキミ達だ……さて、お喋りはそろそろ終わりにしようか? やったな、この長話で俺相手に3分近くも時間を稼げたぞ、嬉しいだろ?」

 

「ああ、涙が出るほど嬉しいぜ! ……部長ッ! 朱乃さんッ!」

 

そのイッセーの言葉にリアスと朱乃が両手をヴァーリに向ける。

 

 

次の瞬間、ヴァーリの足元に魔法陣が現れる。

 

そして、閃光が辺りを照らし出し……ヴァーリが消え去った。

 

「転移、成功ですか?」

 

「ええ、問題なく戦闘フィルードに送ったわ」

 

この前の会議襲撃やニューヨーク壊滅の事件を受けて周囲に被害を出さないようにテロ対策用に悪魔陣営はレーディングゲームの技術を応用した強制転移付き特殊戦闘フィールドを空間の狭間に作っていたのだ。

 

「白龍皇がフィールドを破壊して出てくる予想時間は?」

 

リアスの言葉に朱乃が高速で魔法陣を操りヴァーリの脱出時間を予測する。

 

「…………魔王級単独がーーセラフォルーさまがフィールド破壊で脱出するのに四時間かかる戦闘フィールドです。もちろん、魔法が得意な者なら転移でもっと早く逃げ出す事は可能です。セラフォルーさまも転移の場合は30分で脱出してしまいました、禁手化状態の白龍皇の予測最大魔力値はセラフォルーさまの約3倍、魔法が得意な場合、最悪10分で脱出されてしまいますわ」

 

朱乃の説明にリアスが頷く。

 

「分かったわ、では、私達は8分後にフィールドに突入、そこで白龍皇を応援が来るまで足止めするわ、絶対に駒王市に出してはダメよ? あのレベルの存在なら一瞬で街が壊滅する。今回は命懸けよ、でも、絶対誰も死んではダメよッ!」

 

「「「「「「はい、部長ッ!」」」」」」

 

「それと、小猫」

 

「はい」

 

 

 

 

 

「貴女はここに残って」

 

「え?」

 

リアスは静かに、だが有無を言わさぬ口調でそう言った。

 

「貴女は応援が来たら迅速に転移出来るように、転移座標とフィールド内に入る為の空間封印の解除コードを教えてね、通信で教えると他の、そうリゼヴィム達に傍受される恐れがあるわ」

 

「……サーゼクスさまとアザゼル総督は無条件で突入出来るはずです」

 

「そうね、でも、他の応援は無条件では入れないわ、解除コードは毎回ランダムで変わる、その解除コードを知ってるのはこの場にいた私達だけ、それは分かるわね?」

 

「……はい、でもそれなら使い魔を残せば」

 

なおも小猫は食い下がる、その声色は縋るようで、彼女の目には小さく涙が溜まっていた。

 

 

それでもリアスは……。

 

「小猫、主として命じるわ、残りなさい」

 

小猫に残るよう命じた。

 

「……今回は相手が悪過ぎるの、多分敵の軽い攻撃ですら当たればイッセー以外は重症、あるいは致命傷になるわ、だから接近戦はイッセーと祐斗に完全に任せる、そして、私と朱乃、ギャスパーが遠距離から二人の補助と攻撃を行う、アーシアは殆ど休みなく『聖母の微笑』を使い続けてもらうわ」

 

「それなら、私は一緒に入ってアーシア先輩を守ります!」

 

それはもはや懇願だった。

 

小猫はポロポロと涙を流しリアスに連れて行って下さいと願い出る。

 

それを見て、リアスは辛い表情となる。

 

だが、それでも彼女は首を縦には振らなかった。

 

「ダメよ、アーシアは私と朱乃、ギャスパーが魔法障壁で守るわ……この障壁は硬い分、あまり大きく作れないの」

 

「……ッ、私は、お役に立てません、か?」

 

「そんな事はないわ! 残るのも大事な役目なの、だからお願い、分かって小猫」

 

その言葉に、小猫は俯く。

 

「…………はい、分か、り、ました」

 

それは嗚咽交じりの震える声だった。

 

 

 

 

 

8分が経過し、リアス達はフィールド内に消えていった。

 

それを悔しさと悲しさと、自分の情けなさで歯を噛み締めながら小猫は見送った。彼女の目は以前とし涙で濡れている。

 

 

 

 

そんな小猫に……。

 

 

「あらら、白音は置いていかれたの? 」

 

ーー声を掛ける者がいた。

 

 

 

 

それは懐かしい声だった。

 

 




英雄派の所為なんだッ!



ヴァーリ「本当にたったの3倍かな?」

セラフォルー「ーーッ!?」


天○飯「小猫は置いてきた居ても戦力にならないと思ったからな」

小猫「ーーッ!?」

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