勇者さんのD×D   作:ビニール紐

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ジーク「義によって助太刀いたす」


第11話

和平会議への旧魔王派襲撃事件は佳境へと入っていた。

 

ついに、その主犯格、カテレア・レヴィアタンとクルゼレイ・アスモデウス、シャルバ・ベルゼブブ、そして彼 旧魔王派と三すくみトップを捕食しようとエキドナが現れ、それぞれセラフォル、サーゼクス、ミカエル、アザゼルと戦闘になっていたのだ。

 

そして、その一方で。

 

 

 

「ぐはぁ!?」

 

「これが俺のライバルか? ハハハハ! 困っな、弱いよ弱過ぎる!」

 

二天龍、堕天使を裏切った白龍皇ヴァーリと赤龍帝イッセーの激突も起こっていた。そして、その激突は戦いとは呼べない一方的な蹂躙劇となってしまっている。

 

アザゼルに与えられた腕輪を使いイッセーは一時的に禁手へと至り、『赤龍帝の鎧』(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)を纏って戦っていた。

 

しかし、相手のヴァーリは禁手を使っていない、いや、それどころか神器を全く発動させずにイッセーを圧倒していたのだ。

 

「どうした、本当にその程度なのか? 兵藤一誠、君の評価を改めよう、以前俺はキミを不完全な鎧込みで世界で千〜千五百の間と言ったがこれでは一万も怪しいところだ、はぁ、俺のライバルなんだからもう少しは強いと思ったのだが」

 

「く、うるせぇ、俺はライバルなんて興味ないっての!」

 

「そうか、だが、俺にはあったんだよ、まあ、もうまるで興味がなくなってしまったが」

 

そう言ってヴァーリはイッセーの右ストレートをスウェーバックで躱すとイッセーの脇腹に痛烈な回し蹴りを叩き込んだ。

 

「がはっ」

 

魔力がたっぷり乗った強力な蹴りに鎧の一部が砕け散る。蹴りの勢いでイッセーは吐血しながら地面へと叩きつけられた。

 

「イッセー!?」

 

そんなイッセーにリアスが悲鳴を上げて駆け寄る、それをつまらなそうに一瞥するとヴァーリは右手を倒れたイッセーとそれを抱き締めるリアスへと向けた。

 

「さて、この程度の実力、才能ではいくら待っても強くはなれないだろう、という事で、俺は次の赤龍帝に期待するよ」

 

ヴァーリの右手にとんでもなく強大な魔力が収束する。その魔力はイッセーの全魔力を万倍しても到底太刀打ち出来ないほど強大だ。そして、この場でそれに対処出来る味方は全員戦闘中……ようするに詰みである。

 

「さよなら兵藤一誠、来世ではもっと強く生まれるといい」

 

リアスが目を閉じ、イッセーが無意味と理解しつつもリアスの盾になろうと前に出る。

 

そしてヴァーリの右手から強大な魔力砲が放たれ、その魔力砲は唐突に横合いから来た更なる威力の攻撃に消し飛ばされた。

 

 

「危ないところだったね」

 

そう言って現れたのは白髪に黒い騎士甲冑を纏った優男だった。

 

「あ、あんたが助けてくれたのか?」

 

「そうだけど気にしなくていいよ、当然の事だからね、あと僕はジーク、知り合いは『ジークフリート』とか『魔帝ジーク』と呼んでいるけど、ま、好きに呼んでくれてかまわないよ」

 

そう、優男ーージークフリートは多くの女性を魅了しそうな爽やかな笑みでイッセーとリアスに笑いかけた。

 

「ハハハハ、乱入者か? いいね強い魔の波動を感じる、キミと戦うのは面白そうだ!」

 

イッセーへのトドメを邪魔されたにも関わらずヴァーリの口調は楽しげだ。おそらく新たな強敵の予感に子供の様にワクワクしているのだろう。

 

「僕はキミが引いてくれるなら戦う気はないよ」

 

「残念だったな、俺は引くつもりはない」

 

ヴァーリの言葉にジークフリートが肩を竦める。そのジークフリートの姿には全くと言って良いほど緊張感が感じられなかった。

 

まるで自分が負ける筈がないと思っているような、あるいは自分の命などどうでも良いと思っているそんな態度であった。

 

『ヴァーリ、奴の右手の剣には気をつけろ、あれは魔帝剣グラム、最強の魔剣にして最悪の龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)の一つだ、まともに喰らえば一太刀だけで死にかねんぞ』

 

そこで神器に封じられた白き龍アルビオンがヴァーリに忠告を入れる。

 

「なりほどッ、アレが有名な魔帝剣か、直接見るのは初めてだ」

 

ヴァーリは嬉しそうに笑うと背中に白龍皇の翼を展開させた。とても致命的な武具が敵の手にあると聞いた者の反応ではない、まるで新しいオモチャを貰った子供の様な反応である。

 

「魔帝剣グラムが相手なら不足はないだろう、見た感じ使い手も一流だしねーー禁手化(バランス・ブレイク)

 

『Vanishing Dragon (バニシング・ドラゴン)Balgnce Breaker(バランス・ブレイカー)‼︎‼︎‼︎』

閃光が辺りを照らし、次の瞬間にはヴァーリは白銀鎧に包まれていた。それを見たイッセーは血の気が引く感覚を覚えた。

 

先程自分が遊ばれていた時ですら強大極まりないオーラを纏っていたヴァーリだが、鎧を纏った彼はその比ではない。明らかに桁が一つ、あるいは二つ違う強さを持っている、そう素人に近いイッセーにも分かった。

 

にも関わらず。

 

「ほう、これは凄い」

 

ジークフリートは鎧を纏ったヴァーリを見て平然とそんな感想を口にした。

 

その顔に焦りはない、剣を構えてすらいない。自然体でありながらまるで隙が見出せない佇まい、否応にも分かってしまう、その実力があのヴァーリにすら匹敵しているのだと。

 

そしてイッセーが分かった事をヴァーリが分からない筈がない。彼は兜の奥で獰猛な笑みを浮かべると一瞬にしてジークフリートに接近した。

 

光と見紛う超速、その速度にイッセーもリアスもヴァーリの影すら追うことが出来なかった。

 

だが、ジークフリートはその動きを普通に捉え反応する。

 

ジークフリートは半身を引くとヴァーリの突撃からの右ストレートをグラムの斬り上げで迎撃する。

 

右腕を斬り落とさんと迫るグラムにヴァーリは尋常じゃない反射神経で対応、右ストレートを途中で止める、そしてグラムが空を切った瞬間再び放たれるストレート、それをジークフリートはグラムを持たない左手で難なく鷲掴みにして止めてしまった。

 

ジークフリートに握られた手首の鎧が僅かに歪む、人間とは到底思えない常軌を逸した腕力と握力、そして発動させた筈の半減の能力が弾かれた。それに驚愕しヴァーリは一瞬動きを止めてしまう。

 

そこに、ジークフリートの斬り下ろしが襲い掛かった。片手を握られて逃げられないヴァーリは咄嗟に左手からの至近距離で魔力砲を放つ。

 

溜めなしのノータイムながら先程以上の威力の攻撃、ヴァーリとジークフリートの間で凄まじい爆発が巻き起こる。

 

爆発によって二人の距離が離れた。

 

「クッ」

この行動でなんとか致命の一撃を貰わずに凌いだヴァーリ、しかし、彼の鎧は掠った魔帝剣で大きく破損、身体に刃が触れてもいないのにそのオーラだけで強大な魔力で守られたヴァーリに確かなダメージを与えていた。

 

だが、この攻防がヴァーリの闘争心に火をつける。

 

「フッ、面白いッ!」

 

ヴァーリは兜の奥で獰猛に笑うと一瞬にして鎧を再構成、新品同様のソレに戻すと超速で飛翔し更に距離を取る。

集中力が増し正真正銘本気となったヴァーリは今だ、もうもうと煙が立ち込める爆心地を睨みつけた。

 

あの一撃で敵が死んだ、などとヴァーリは欠片も思っていない。そしてヴァーリの予想は正しかった。

 

煙の中からのんびりとジークフリートが姿を現わす、その姿にダメージは確認できない、鎧の破損すらない完全な無傷。それを見てヴァーリは更に口の端を吊り上げた。

 

「危ないな、至近距離で魔力砲とか自分も巻き込むよ? もう少し回避に余裕を持ったらどうだい?」

 

そう軽く冗談を飛ばすとジークフリートは虚空からフルフェイスの兜を取り出し自分に装着する。

 

「ああでもしなければ俺は今頃真っ二つだっただろう?」

 

「僕としては余裕を持って真っ二つにされてくれれば嬉しかったんだけどね」

 

『ヴァーリ、あまり奴と会話するな、奴が口を開くたびに何かしらの呪いが飛んできている効力は不明だが、良いものではないのは確かだ』

 

「ッ!? 意外とキミはセコいんだな」

 

「失礼だな、戦術と言ってくれないかい? むしろこんなのを喰らう方が間抜けなのさ」

 

つまりキミは間抜けだ。そう言ってジークフリートはヴァーリを嘲笑った。

 

「言ってくれるッ!」

 

その挑発にヴァーリの顔が引き攣った。ヴァーリは挑発をよくするが、された事は殆どない、当たり前だ、誰が白龍皇、それも歴代最高の彼に挑発などするだろうか?

 

だが、それはつまり挑発に慣れていないと言うこと、その時、ヴァーリは集中力が低下し、若干冷静さを欠いていた。

 

「まあ、敵が間抜けなのは僕としては助かるんだけどね」

 

そう言ってジークフリートは一歩踏み出し……石に躓いて倒れこんだ。

 

「は?」

 

強敵の突然の転倒に、ヴァーリは一瞬、呆然となる。

 

 

そんな状態になったヴァーリに……。

 

『避けろヴァーリィィィッ!! 後ろだッ!!』

 

危機感を孕んだアルビオンの叫びが飛んだ。

 

相棒の忠告に無意識で動いたヴァーリ、それが彼の命を救った。

 

背後から放たれた剣閃にヴァーリの右手が宙を舞う。

 

ヴァーリは右手の付け根から焼き鏝を押しつけられたような激痛を感じた。

 

「ーーッッ?!」

 

「外したか、良い相棒だね」

 

呪詛をたっぷりと込めてジークフリートはヴァーリに笑いかけた。

 

『マズイッ! ヴァーリ、距離を取って体制を立て直せ!』

 

「させないよ」

 

超速で距離を取ろうとするヴァーリ、それにジークフリートは超速の飛翔術で追い縋りトドメを刺す為、剣を振るう。

 

しかし、飛翔速度は若干ヴァーリの方が速い、ジークフリートの剣閃は空を斬りトドメとはならなかった。

 

「残念」

 

ジークフリートは大して惜しくもなさそうに呟くとヴァーリを追うのを諦める。代わりに斬り落とされ地面に転がったヴァーリの腕を千切りの様に切り刻み、腕の再生を不可能とした。

 

「貴様ッ!!」

 

「はは、そう怒るなよ、大事なら早めに取りに来れば良かっただろ?」

 

「クッ『我、目覚めるは、覇の理にーー』」

 

『待て、ヴァーリッ! いくらお前でもその怪我と精神状態で『覇龍』を使うのは危険だッ!』

そんな二人のやり取りを隙と見たジークフリートは眼前に三つの魔法陣を作り出し、そこを通過する軌道で右手に持った黒鉄の剣を全力でヴァーリに投げつけた。

 

超速で投擲された剣は魔法陣を通過すると更なる加速を得て音速の数十倍という高位の人外でも知覚困難な超々高速に達する。

 

 

そのまま黒い魔弾と化した剣がヴァーリの胸の中心に直撃、彼の上半身を木っ端微塵に吹き飛ばした。

 

 

 




ジーク「真面目に真正面から正々堂々戦いました!」

ヴァーリ「…………」

歴代最高の才能を持ち、幼い頃より戦い続けてきたヴァーリと歴代最低の才能しか持たず悪魔になるつい数ヶ月前まで戦闘とは無縁の生活を送っていたいたイッセーならこれくらいの実力差があってもいいと思う(おっぱいが絡まなければ)

まあ、原作よりイッセーが弱いのはコカビエル戦が無かったので経験値が足りなかったということでお願いします。

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