ぼっちと九人の女神たちの青春に、明日はあるか。   作:スパルヴィエロ大公

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劇場版早くレンタルして~(´・ω・`)

今回と次回が山場となりそうです。


第二十五話 舞台は山場から、谷底へと転落する。

 

まだ、終わりじゃない。

そう信じていたいからこそ、俺はこの場に踏みとどまり続けている。

 

「「・・・・」」

 

しかし現実はやっぱり冷たくて、二度目の奇跡も未だ起こりえないようだった。

 

「・・・どう、しよう。どうすれば、いいのかな」

 

ようやく口を開いた高坂から出た言葉、それはリーダーらしくもない気弱なもの。

あれほどの手痛い失敗を犯し、病気で寝込んでいた以上は無理もないのだが。

 

ただ、ずっとこのまま前に進めないというのなら、よくないことになるのは確かだ。

 

「あはは・・・。穂乃果、バカだよね。

μ'sだって自分からやろうって言いだしたことなのに、勝手に暴走して滅茶苦茶にしちゃって・・・。

なのに、どうやって後始末をしたらいいか、分からないでいるの」

 

俺は何も言わず、ただ俯いて話を聞く。

 

「・・・こんな事聞くなんて、情けないって自分でも思う。でも、聞いてもいいかな?

 

 

穂乃果がμ'sを続けるのは、許されるのかな、って」

 

・・・・。

 

えらい難問を突き付けてくれるじゃねえか。

人生に正解はないとはよく言ったものだが、この質問はどう答えても×しかもらえる気がしないぞ。

突き放すのも肯定するのも何も、どれもこれも。胃がきりりと痛む。

 

だが、何をしてもダメになると言うなら、結局は腹を決めるしかない。

でくの坊のように突っ立っていても余計辛くなるだけだ。

だから、やれ。やるんだ。

 

「・・・んなこと聞くからには、まだ辞める気はないんだろ。アイドルは」

 

「よく、分かんない・・・。自分のことなのに、自分が何をしたいのかなんて・・・」

 

「分からない、自分じゃ何も決められないってのはそういうことだよ。

お前が本気で辞めようと決心してるなら、はっきりと皆の前でそう言ってるはずだ」

 

そこで高坂は、ついさっきまでの俺のようにうなだれる。

こんなことを面と向かって言われれば自分が責められているのだと、誰もがそう思うだろう。

 

だから、その幻想をぶち壊す。

 

 

「でもまあ、少し安心したわ。

今まで朝に放課後と散々っぱら付き合わされてきたのにそれが全部チャラになるって訳じゃ、今のところはなさそうだからな」

 

 

「え・・・」

 

「俺だって無償で奉仕引き受けてるつもりはない。

あっさり止めますだなんて言われた暁にはお前ん家の和菓子全部を報酬として請求するまである」

 

半分は本気だ。そんなに簡単にやめてもらっては、何のために今まで付き合ってきたのか意味が分からなくなってしまう。

流石に全部は食えないので小町にでもくれてやるつもりだが。いや4分の1が精いっぱいか?それじゃダメじゃん、俺。

 

「あはは、流石に全部は無理だよ~・・・」

 

「知ってる。冗談を真に受けんな」

 

「あー!比企谷くん最初から騙すつもりだったんだね?!ひどーい!」

 

ふぅ。

これで言いたいことは大体言った。

 

さて、今ので少しはこいつを前向きにできただろうか?

高坂は顔を上げ、俺の方を見ながら話す。一応しっかりと耳を傾けてくれていたらしい。

それならあとは暫くこいつだけで考える時間にするべきだ。というか、お互いまだ風邪が治っていないのに居続けるのはマズいしな。

一旦引き上げだ。

 

「―――園田たちは、明日も練習するそうだ。

決心がついたらいつでも来い、その時改めて南と話す機会は作ってやる」

 

「・・・分かった。ごめんね、比企谷くん」

 

「いいから、後はお前も早く治せよ?・・・それじゃな」

 

「うん、またね・・・」

 

そう言い、静かに部屋を出る。

これで少しは事態が進展してくれることを祈るしかない。どうにか、上手くいっていてくれ。

 

階段を中ほどまで下りると、妹の高坂雪穂が心配そうに佇んでいるのが見えた。

そりゃ結構長々と居座ったしな、姉貴の身に危険が及ばないか気にはなるところだろう。いい妹だ。

俺も小町が部屋に男を連れ込んだら、不測の事態に備え即座に撲殺できるよう常に身構えているまである!兄妹愛は素晴らしきもの也。

 

「あ、比企谷さん・・・お姉ちゃん、どうでした?」

 

「・・・体調とアイドル活動のことなら、俺からは何とも言えないっすよ」

 

「でも、色々と励ましてくれてたんですよね?きっとお姉ちゃんもこれで元気になりますよー」

 

・・・・。

それは、神のみぞ知ることだ。今の俺ができるのは祈り、待つことのみ。

 

「じゃ、俺はこれで」

 

「あ、待ってくださーい!お母さんがお礼にお茶菓子渡したいって言ってるんで!」

 

いや、お礼されるようなこと何もしてないからね、俺?・・・そう言う前に厨房へと行ってしまった。

やっぱりああいう強引なところは小町そっくりだ。

 

 

朝。

俺はいつものように神田大明神へ向かう。μ'sの会合があるからだ。

さぞや年末年始らしい静かで厳かな朝を・・・とも思いきやその予測と願いは見事に打ち砕かれた。

 

入り口にはμ'sの面々、そして先頭には仁王立ちの矢澤にこ。

あぁ、これはまた説教から入るパターンだわ。あとどうでもいいがパティーンとか言ってオサレを気取る奴、爆発しろ。

 

「ちょっと!遅いわよ、何やってんの!」

 

「いや、まだ開始まで10分あるだろ・・・」

 

「20分前に来て準備するのが当然でしょーが!ビシッとしなさい、ビシッと」

 

うわぁ、それなんてブラック部活。サビ残ならぬサービス出社かよ。

略してサビ出・・・イマイチ語呂が悪いな。誰かセンスのある奴はさっさと作ってほしいものである。

 

「ふふーん・・・女子の中で一番遅かったんは誰やったかな~?」

 

「ちょっと!?そ、そんなところ、っ、わしわしするんじゃっ、ないわよっ!」

 

いやお前、わしわしするところがないじゃn・・・スミマセンデシタ忘れてください睨まないでにこさん。

 

さて。

高坂の家を訪れてから今日で5日経つ。

その時の成果はといえば―――

 

「・・・高坂さんと南さん、今日も欠席なのね」

 

西木野の呟きで、沸き立っていた場がしんと静まり返る。

 

そう、結局まだ高坂は、冬休み期間中の練習には一度も参加していない。

南も然り。

μ'sの戦力であるメイン2人が戦線離脱したままなのだ。これでは痛手から立ち直るのは難しい。

 

急いてはいけないと思いつつも、どうにも止めようがない。

もっと強硬な手段を取るしかないのか。それはそれでもっと最悪の結末が見える気がする。

 

いつの間にか、多くのメンバーが園田に視線を向けている。

幼馴染なら何か知ってるだろう、知っていてくれそうでなきゃおかしい。そう言いたげに。

俺ですら同じ気持ちで視線を向けていたので責めることはできないが、一歩間違えば園田へのリンチになりかねないマズい状況だ。

絢瀬会長もそれを察したらしく、皆を下がらせて静かに尋ねた。

 

「園田さん・・・高坂さんと南さんから何か連絡はある?」

 

「・・・申し訳ありません、穂乃果にはこちらから連絡をしても返事がなくて・・・。

ことりからは一昨日、留学の準備をしないといかないからと告げられたきりです」

 

皆には許してほしいとも言っていたと付け加え、それきり園田はうつむいてしまう。

こんな状況で下手に嘘をつく理由もない、全て本当なのだろう。

 

「・・・それじゃ、2人はこのまま、辞めちゃうのかにゃ・・・」

 

「そ、そんなはずないよ・・・きっと戻ってくるよ」

 

「でも、園田さんから連絡しても返事を碌にしないなんて・・・向こうから来るとは思えないわ」

 

あっという間に不安が広がっていく。波を打ち壊すことはできない。

 

そしてそこに、さらなる一撃が加わる。

 

「―――そうなってしもたら、もうμ'sはμ'sじゃなくなるっちゅうことやね」

 

「!?・・・ちょっと、希―――」

 

「エリチ、落ち着いて聞いて。みんなも分かっとるよね?

μ'sの由来と意味を。9人の女神が1人か2人でも欠けたら、そんなの女神やないんや」

 

場にさらなる動揺が生まれる。

恐らくそのことも自覚しているはずなのだ。それでもなお東條副会長は続ける。

 

もう、よしてくれ。

 

「穂乃果ちゃん、ことりちゃん、海未ちゃんがいて。

花陽ちゃん、凛ちゃん、真姫ちゃん。エリチににこっち、うちがおって。

その9人と、比企谷くんっちゅう助っ人がいてくれて。これがみんなの、μ'sなんやよ。

 

だから、そこから誰かが欠けるなんてことは―――」

 

「じゃあ、どうするっていうのよ!」

 

爆発。

ついに耐え切れなくなった矢澤が、副会長に食ってかかる。

 

「2人を無理矢理この場に連れてくればいいっての?!

前ににこが今すぐ復帰させるべきだって言ったら、あんたなんて言った!?

本人たちの意思を無視しても余計こじれるだけや、って!それを何を今さら、危機感抱いてるみたいなこと言ってんのよ!矛盾してるじゃない!」

 

「それは、分かっとる。ウチも少し見通しが甘かったとこはあるって・・・。

でも今度はただ見守ってるばかりじゃアカンって、やっと・・・」

 

「その知ったかぶった言い方、やめなさいよっ!なんで・・・あの時止めようとしたのよっ・・・!

今からじゃ、もう・・・手遅れ、じゃない・・・!ラブライブに出る前に、解散だなんて・・・!」

 

「せ、先輩・・・!やめて、ください!落ち着いて・・・」

 

・・・クソ。

 

どうして俺は、何も言えずにいる。こんな形で内輪揉めなんぞ見せられたところで面白くもない。

なのに止めようとすると体がすくんでしまう。どうしてこんな時にメンタルの弱さが露呈してしまうんだ。

 

このままじゃ、せっかく掴みかけたものが、壊れてしまうのに。

 

「矢澤さん、希も!みんな、騒ぐのはやめて!

今はとにかく、練習開始よ!準備急いで!」

 

「「「「・・・・・」」」」

 

・・・・。

 

 

やはり俺は、どこまでも無力なぼっちなのか?

 

 

【side:???】

 

「―――姉さん、久しぶりね。ええ、少し時間がほしいの。いい?」

 

「・・・・」

 

 

「そう、ことりの件で話を―――」

 

 

 




終わった・・・。
スマホの修理が(切実)再設定とかめんどい・・・。

次回からようやく、八幡が解散阻止に向けて行動を開始します。
無能系主人公が嫌いな方、今までごめんなさい。次こそ主人公らしく行動します。

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