ぼっちと九人の女神たちの青春に、明日はあるか。 作:スパルヴィエロ大公
ガルパン×ラブライブのクロス作品、求ム!賞品はマッカンと干しイモ一年分!
・・・落ち着けよ僕。
だって絶対誰かやってると思ったのにないんだもの・・・。劇場版公開されたんたぜ、なあ?
さておき本編です。話が進んでないとか言わないで(泣)
「・・・それじゃあな」
「・・・うん。またね、比企谷くん。ごちそうさま」
アキバでのライブ翌日。
ファミレスで安いコーヒーとケーキを食した後、俺と南は別れた。
まあ想像は付くと思うが、女子と二人きりだというのにそれはそれは重苦しいティータイムであった。
何だよ放課後ティータイム()って、あんなキャピキャピしたもんじゃ断じてねえよ。
せめて砲火後ティータイム()にすることを要求するまで・・・どこぞの金剛型似非英国淑女を連想するからやっぱダメか。
俺は俺で先日綺羅ツバサと最悪の出会いを果たし、別れ際には俺の職務怠慢ぶりをクソミソに貶された。
南は南で――会う前に園田から連絡を受けて知ったのだが――矢澤たちに海外留学のことをゲロった結果、当然の如く何故黙っていたのかと責めたてられていたらしい。
そんなブルーな二人が集ったところでロマンスが生まれるはずもない。どころか、席に着くや否や南が震えながら泣き出す始末。
周囲の客は別れ話は外でやれ、飯がマズくなる・・・とでもボヤいたことだろう。
そんなことで俺から話を聞くことはなく、少ない懐からスイーツを奢ってやるのに留めておいた。
それでも南の精神が完全に落ち着いた、ということはない。HPにすれば10も回復していないと思う。
いつもニコニコあざとい笑顔の南が、今日はとうとう一度も笑うことがなかったのだから。
そして別れる前に、南はポツリとこう言った。
―――私が、μ'sを抜けて自分の夢を追いかけるのは、許されるのかな・・・?
これがただの部活動なら、自分で考えろと言って終了だ。
しかしμ'sの活動は、廃校危機に陥っている音ノ木坂の命運を懸けたもの。メンバーの脱退に関しておいそれと答えを出せるものではない。
特にμ'sのリーダーたる高坂の幼馴染であり、衣装製作を担当している南が抜けるというのは大きな痛手だ。
本当のことを言うなら、抜けてほしくないに決まっている。
南ことりという人物をそれなりに信頼しているということもあるし、何よりμ'sを――俺が"本物"だと信じたものを、壊れてほしくないと願っているのもある。
もう一度信じてみようと、この新天地でやってきた。ある種の利己的な行いだと分かっていても。
なのに、自分が創ってきたもの――俺はせいぜい、建材を提供しただけにすぎないだろうが――それが、実はただの砂上の楼閣に過ぎないと気づいてしまったら?
心に残るのは、虚無。そして後悔。
やっと掴み上げたはずの"本物"は、これまでの人生の中でもひときわ激しい黒歴史として擦り付けられるだろう。
ああ、くそ。
これなら転校してからも、俺らしく斜に構えたひねくれぼっちとして生きていけばよかったのだ。
「・・・・」
いかん、また自棄になっている。
思わず空を見上げる。冬らしい、どんよりとした曇り空。
昨日から全く変わっていない。そこにお前の求める答えなどないというように。
そして、俺も事態も停滞したまま何一つ変わっていないということも。
しばらく歩くと、いつの間にか「穂むら」の前に居た。
・・・やってることがストーカーっぽいとか言うなよ?そうだ、これは偶然なんだ。
何度か訪れたこともあるんだ、だから普通にしていれば客として見られる・・・と、思いたい。
「?あれ・・・比企谷、さん・・・ですよね?」
すると、店から店員らしき少女が出てくる。
高坂雪穂、あいつの妹。俺も以前何度か顔を合わせたことがあったな。
その度に雰囲気があまりに小町そっくりなので戸惑っていたが・・・。
上のきょうだいが駄目な奴だと下はみんなこうなるのかもしれない。は?俺はって?いやいやいや、今は違いますから。
「もしかして、お姉ちゃんのお見舞いに来てくださったんですか?」
「・・・どうも。見舞い品とかはないっすけど」
ところで、なぜ見舞い品というと籠に入ったフルーツなのか。バナナは兎も角、リンゴや梨は切らなきゃいけないしマジ面倒臭い。
病人に丸齧りしろと言うのは酷だし、かと言って本人や家族、看護師に切ってもらうというのもそれはそれで余計な手間を与えることになる。
相手を気遣ったつもりがこれでは本末転倒だろう。・・・俺の場合はそれすらなかったとか・・・言うなぁ・・・。
母ちゃんと小町には今後贈り物が届かない呪いをかけてやろう、そうしよう。
「いえいえ、そんなお気になさらず!お姉ちゃんももう熱は下がってますから。
会ってあげてください、きっと喜びますよ」
そう言うと背中を押され、無理矢理店内へと押し込まれる。
・・・あーうん、この強引なところもやっぱり小町そっくりだわ。
何より高坂が俺に会ったところで喜ぶはずもない。それは自分でもよく分かっているはずだった。
それでも――会いたい、ではなく会わなければいけない様な気がした。だから引き寄せられるようにここへ来た。
・・・ストーカーを通り越して電波系か。俺も末期だな・・・。今ならキモ谷と呼ばれても怒らないまである。いやそれもちょっとおかしくね?
案内されるがまま、家の階段を上る。
登り切って少し歩けば、すぐあいつの部屋だ。妹が部屋の扉を叩く。
「お姉ちゃーん!比企谷さんだよー!お見舞いに来てくれたよー!」
「・・・ぅ、ぇ・・・?ひきがや、くん・・・?」
中からか細く、高坂の声が聞こえた。
―――大丈夫じゃなさそうだな。
熱は下がったかもしれないが、心身ともに健康を回復したとは到底思えない。
今日会った時の南と同じだ。
それでも今、会って少しだけでも話をするべきだろうか。それとも―――
その時だ。
「―――・・・いいよ、入ってきて・・・」
なんと。
俺は高坂雪穂と顔を見合わせる。流石にこの辺りは小町ほど図太くもなかったようで、不安が感じ取れる。
ただ、俺が高坂と会うことを否定してはいないようだった。
ならここは遠慮なくいくとしよう。
「・・・お邪魔します」
中に入る。
病人の、とはいえ、女子特有の甘ったるい香りと整頓の行き届いた部屋は以前訪れた時と何ら変わりない。
そこは腐っても女子の部屋と言うべきか。
「・・・比企谷くん」
そして高坂は、ベッドの上に腰かけていた。
まだ表情にいつものような、最初に会った時のような光は戻ってはいない。病み上がりの俺が言えたもんじゃないが。
そこで高坂雪穂はお茶を持ってきますと言い残し、部屋を出ていく。
二人。重い沈黙。
一瞬眩暈がするほど気分が悪くなった。いかん、落ち着け比企谷八幡よ。一言も声を掛けずにどうする。
「・・・よう。具合、どうだ」
「へへ・・・今は、だいじょぶ、かな・・・」
うん、大丈夫じゃないね。そもそも普段のお前ならそんなこと言うまでもなくオールオッケーっぽいし。
それはともかく。ならば何を話すか?
のこのこ勝手に人様の家を訪れておきながら、今更こんなことを考えているとはと分かってはいるのだが。分かっていても実行できない、そこがコミュ障の悲しい一面である。
誘われるまま合コン参加してもちびちび酒呑むだけで話しかけられても「アッハイ」しか言えないとかな。絶対にあんなの参加しねえと改めて決意したのであった。
「・・・私ね、聞いちゃったんだ。
今回のライブ、敗者復活戦に参加できたのに、みんな穂乃果を気遣って取りやめたって。
それに、ことりちゃんのことも。私が夢中になってアイドルやってるのに、それに水を差すみたいなこと言えなくて、ずっと怖くて悩んでたって・・・
みんなっ、私のせいで、こんなことに・・・っ!」
「・・・・」
水を差す云々はこいつが付け足したことだろうが、あとはすべて真実だ。
安易にお前は悪くないよなどとは言えたもんじゃない、むしろ過剰な肯定は却って反発を招くだけだ。
それが通じるのはせいぜい葉山あたりだろう。イケメンは存在そのものが(無)罪ってはっきり分かんだね。
ふと何の気なしにジャケットのポッケを漁ると、マッカンが一本あった。・・・いつから青狸の四次元なんちゃらになった?
まだ手を付けてないし温かい。それなら問題ないか。
「・・・おい、取りあえず落ち着け。これでも飲め」
「あ、ありがと・・・ってこれ甘すぎだよ!?コーヒーじゃないよ?!」
あ、素に戻ったな。てかお前前も飲んだだろ。
やはりマッカンの力は偉大であった。ジークマッカン、千葉県民全てに唱和の義務を課さねば。
さて、次。どう話を保たせるか?
「昨日のライブのことはひとまず忘れろ、園田が言うにはSIFに励ましのメッセージがいくつか来たぐらいで大した騒ぎにはなってない。
あと南のことで必要以上に罪悪感を感じるのもやめろ。話し出せなかったあいつにも、同じ幼馴染の園田にも、俺や他のメンバーにも罪はある」
「ううん、それは――」
「チームで活動するってのはそういうことだろ。
リーダー一人だけが全責任を負わされてあとの残りは無罪、それが健全って言えるか?」
高坂が独裁的な権限を握っているのなら話も変わってくるが、μ'sの場合一応は合議制で動いている。
だから、責任は全員に帰すのがまっとうな考えだ。良くも悪くも平等というのはそういうこと。
誰か一人がいいとこ取りして状況が悪くなったらトンズラというのは許されない。幸いそんな奴はいないというのが奇跡だったが。
「・・・そっか。そう、だね。
ごめんね、比企谷くん。この前の、ことも・・・」
「そのことも気にしてないから忘れろ。
それよりこれから先のことだが・・・南の留学の件は、余程のことがない限りはもう覆らないはずだ」
「・・・うん」
「それで―――お前はどうする?あいつなしで、μ'sを続けていくつもりはあるか?」
今後の方針。
こればかりは、グループにおいてリーダーが決定しなければ円滑に活動が進まない。
勿論周りもサポートするなり物申す必要はあるが、まずはこれと決めていただかなければならないのだ。
だから俺は聞いた。
高坂穂乃果よ、お前の未来は何か、どうするのかと。
「「・・・・」」
答えは、まだ出ない。
【side:雪穂&ほの母】
「いらっしゃいませー・・・って、おかーさんか・・・」
「・・・あんた、親が仕入れ先から戻ってきたってのに気遣いのひとつもないのかね。お父さんは?」
「薬局。お姉ちゃんのお薬切れたから買ってくるって」
もう熱も下がってるのに本当親ばかなんだから、そう言って雪穂はため息をつく。
全くの善意からやっている行いなだけに、本人の前では嫌味も言いずらい。どうしてこうも世の父親は娘を持つと揃って親ばかになるのだろう。
「ま、お父さんいると初めてのお客さんがぎょっとして買わずに帰っちゃうこともあるし。たまには出てもらった方がありがたいか」
「・・・お母さんも大概だよね、お父さんへの態度。あ、今比企谷さんがお姉ちゃんのお見舞いに来てくれてるよ」
「ほほう?あのちょい悪そうなオトコノコが、穂乃果に、ねぇ・・・」
あ、また変な事考えてるな。雪穂は直感する。
大方病気の姉を八幡が気遣い、そのうち二人は恋に―――そんなところか。
今時の少女漫画だってそんな早くから恋愛フラグを立てるものか。
加えて姉も八幡も、恋愛面では間違いなくヘタレと言える。過去、一緒にいるときの様子を観察していればお見通しだ。
仮に二人がお互いに好意を抱いているとして、恐らく先に進みだせないままこじらせる公算が・・・可哀想だからここまでにしておこうか。
「ちょい悪って・・・比企谷さんに失礼でしょ、普通に親切で真面目な人だよ」
「そこがお父さんと似てんのよ~、外見は悪っぽいのに実は人見知りなだけのいい男ってとこ。
どうにかしてウチの店継いでくれないかね?案外お父さんともうまくやってけそうだと思うけど」
「・・・それ、まだ本人の前では言わない方がいいよ。嬉しさと悲しみのダブルパンチで心臓発作起こすから」
「ん?悲しみって何さ?
別にお母さん、あんたか穂乃果が比企谷くんに嫁ぐだなんて言ってないけど?」
「だっ、そうじゃないってばーもう!私宿題片付けるから、これで店番終わりね!」
雪穂はエプロンを脱ぐと小走りで階段を駆け上がっていく。
母はそれを見てクスリと笑う。まだまだ中学生、所詮は子供。この手の冗談を受け流すだけの余裕はないらしい。
「・・・ま、それはそれでいいとして、ね」
穂乃果のやっているスクールアイドル活動。それが今、岐路に立っているということは知っていた。
単に失敗しただけなら叱咤激励してやれば済む話。
しかしなんと、幼馴染が留学のために抜けるときた。これは知人とは言え他所の家の問題でもあるし、自分が深入りすることはできない。
さて、穂乃果はどうするんだろう。
あの娘のことだ、今頃ことりちゃん抜きで続けるなんてできない、本人に申し訳ないとでも思っているんだろう。
実際衣装作りなどで散々協力してもらっているのだ。
その恩人を無視してでもアイドルを続ける、そんなある種非情な決断が、果たして娘にできるだろうか?
「・・・ふぅ」
親である自分にも、簡単に答えが出せることじゃない。本人たちはもっと苦しいだろう。
そうしてもらうしかない。人は悩んで大きくなる、どこかの偉人の名言にもある通り。
「ま、お母さんは子供にゃ楽しく学校生活を過ごしてもらいたいだけなんだけど。・・・小中学校みたいなことがないように、ね」
そうため息をつくと、母は厨房に入り、残りの仕事を片付けに取り掛かった。
終わりです。
ほのママのキャラはこれで大丈夫かな?変なところあったら言ってください。
今後の予定をもう少し。
次話は穂乃果の過去話(この部分は作者の創作)に触れ、他のメンバーの動向を追っていきます。
その後は2話でこのシリアス編を終わらせ、そしてエピローグ1話で一期のおはなしはおしまいです。
正直僕自身もシリアス展開を考えるのがきつくなってきたので、そろそろ締めに取り掛かりたい。
読者の皆様にもこの流れを望んでいない方がいらっしゃるでしょうし、何とか頑張っていきます。
・・・ご都合主義で収束させるという悪夢もあるのですが。
では、読んでいただきありがとうございました。