ぼっちと九人の女神たちの青春に、明日はあるか。   作:スパルヴィエロ大公

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まきりんぱな後篇。てか真姫ちゃん回。

・・・勢いとノリで書いた、反省はして(ry
あ、あと独自設定も増えてます。


第十一話 中高生の男女の青春は、やっぱり恋と汗でできている。

「はぁ・・・キャラ作りの練習、ね・・・」

 

場所を移し、新生"音ノ木坂アイドル研究部"部室。

高坂、南、園田、矢澤・・・そして俺の5名は騒音被害の件で西木野に謝罪中。その横では小泉と星空がオロオロ。

ひたすら頭を下げている様は、どこぞの汚職政治家か粉飾決算をやらかした企業の役員さながらである。

こういうときだけ偉い人の真似ができてもちっとも嬉しくねぇ・・・。だったら一生庶民でいいわ。

 

「迷惑かけたのは謝るけど・・・あれぐらいしないと、ちっとも練習になんないのよ!」

 

「下手したら職員室の先生にまで聞こえてたわよ?先生怒らせて部活動停止にでもされたらどうするつもりだったのよ」

 

「ぐ・・・」

 

正論、いただきました。

俺も少々浮かれすぎていて取り潰しの可能性を失念していた。部活動にもルールはある。

「青春ウェーイwww」なんて馬鹿なリア充がはしゃぎ過ぎているような部活やサークルは、大抵しょーもない騒ぎをやらかして潰れていく。

その轍をここで踏むわけにはいかない。

 

「・・・まあ、その、すまんかった。とにかく以後は気を付けさせる、これでいいか?」

 

「まあ・・・仕方ないわね。あとで先生にも謝っておきなさいよ」

 

特に山田先生とかな。

高坂はともかく、最近は俺まで目を付けられている気がする。最近は別段居眠りもしてなければその他の生活態度も問題ない、はずなんだが。

何というか面白がっているというか・・・やはりあの先生、どこか平塚先生に似てるな。ドSなところとか。

 

「ああそれと、実は私からも聞きたいことあるんだけど・・・貴方たち、新曲はどうするつもりなの?」

 

「あ・・・うーん、そっちはまだ・・・」

 

唐突な西木野からの質問に、高坂が戸惑う。

 

もっとも、俺としても楽曲面での今後の活動については気になっていたところだ。

ライブをやれるほど大規模な学校行事がそうぽんぽんとある訳でもない。文化祭は毎年5月にあり、当然先の話だ。

一番近い行事は12月上旬の沖縄への修学旅行・・・が、まさか向こうでゲリラライブを敢行するとかそれはいくらなんでも無理だろう。

第一、1年である小泉と星空が参加するのはかなり難しい。

 

とはいえ、行事に絡めてでないとライブをやるにも注目される可能性は低い。

なんてったってμ'sは"スクールアイドル"なのだ。音ノ木坂の顔の一部だ。

関係ないところで独自に活動しても、実りある結果になるとは思えない。

 

「・・・まあ、今度の新曲はPVにしてネットで公開すればいいと思うけど。ただあんまし時間空けすぎるわけにもいかないわよね」

 

・・・はい?

矢澤さん、何言ってんの?

 

「ちょっと待て・・・ネットで公開する意味、あるか?まだ知名度なんてそんなにないんだぞ」

 

「そう?"SIF"に登録してんでしょ、アンタ達も。だったらちょいちょい曲をアップしてけばそこそこフォロワーは付くはずよ」

 

・・・はい?

SIF?何かの情報機関ですか?日本語でどうぞ。

 

「?・・・まさか・・・アンタ、"School Idol Festa"知らない訳!?」

 

「はい、全く。ソシャゲかなんかか?」

 

・・・パッコーン!

脳天で星が炸裂したかと思ったら、顔を真っ赤にした矢澤が丸めた紙をこちらに構えている。

おい、暴力はいかんぞ暴力は。暴力系ツンデレは今時流行らんぞ。

 

「ああもう!そんなんでよくもみんなのマネージャーやってられるわね!

いい!?"School Idol Festa"ってのはね、スクールアイドル専門のSNSで、動画共有サイトも兼ねてるの!

こんくらいスクールアイドルに携わるんなら知っときなさいっ!」

 

だからマネージャーなんて誰が決めたんだよ。

こっちはちょこっと手伝ってやってるだけなんだが・・・。知らないところで誤解が広まるのは恐ろしい。

 

「ほえ・・・?そんなのあったんだ、穂乃果知らなかったー!」

 

「・・・はああ!?」

 

「え、っと・・・ことりも初めて知ったかな・・・」

 

「ほぇぇぇ?!」

 

「前に読んだ雑誌には、その手の情報は載っていませんでしたしね・・・」

 

「ぐ・・・ぐぅぅぅぅぅ!!」

 

あ・・・これにこにー噴火寸前だわ。つうかもう噴火してるまである。

 

その後俺と高坂、南と園田は、矢澤からありがたいお説教をさんざ聞かされる羽目になったのであった。

 

 

「・・・ふぅ」

 

「落ち着いた?あんまり興奮しすぎると体に毒よ」

 

「分かってるわよ・・・もう・・・」

 

あ、こりゃデレたな。やはり矢澤、お前はツンデレだったか。

 

再び場所を移し、音楽室。

今日は取り敢えず練習を中断し、西木野の優美なピアノソナタ鑑賞会となった。

そりゃあんだけ矢澤が怒りまくってりゃ、練習なんて身に入らんわな。総統閣下並に相当カッカしてたぞ。

・・・寒い?ああ失礼しましたね。

 

「今の曲って・・・ショパンの『夜想曲』、だよね・・・」

 

すると、急に小泉がおずおずと口を開く。

そういやこいつも星空も全然存在感なかったな・・・。新入部員なのにちょっと可愛そうではある。

 

「そうね、夜想曲第2番、所謂"ショパンのノクターン"ね。貴方も知ってたの?」

 

「かよちんも小学生の頃、ピアノ教室に通ってたんだにゃー!」

 

「うん・・・その曲を聴いてると、なんというか、すごく落ち着くの」

 

「まあ、そこはノクターンの語源からして、キリスト教会の晩祷だもの。

お祈りの場で使うのには、やっぱりこういう落ち着いた曲の方が向いてるわよね」

 

はあ・・・。

話が高度で付いていけん。高坂なんか船漕いでるぞ。

不信心者であることをまたもや後悔する。別にモテる必要はないんだが、集団の中で会話に入れないというのはなんだかんだツラいのだ。

しかもそれはコミュ力の問題でなく自らの知識の問題とくると、一層ツラいものがある。

 

そこで同じく会話に付いていけてないらしい矢澤が、そこでおずおずと口を開く。

こいつもなんかお喋り好きみたいなところはあるしな、会話に入れない苦しみはぼっち以上だろう。

 

「・・・ま、とにかく。あとでSIFに登録するとして、やっぱりすぐには新曲なんてできないわよね?

だったら、アンタ達3人のこないだの曲でPVを作って、当座を凌ぎましょう」

 

「PVって・・・この前のライブの映像を投稿すりゃいいんじゃないのか」

 

「それだけじゃ流石に安直すぎるわよ、それに講堂でじゃ"音ノ木坂の"アイドルだってアピールできないでしょ」

 

・・・一理ある。

となると、どこで撮るか?一番分かりやすいのは校門だろうな。

もっとも桜の木は次第に葉が落ちていて、このまま時間が経てばますますみすぼらしくなっていくだろう。

 

つまり、時間はない。

 

「そうと決まれば・・・明日にでも撮影開始ね!それと、動画の編集できる知り合いがいるから、そいつに当たってみるわ」

 

「了解・・・んじゃ、取り敢えず今日は解散でいいか?」

 

「うん!それじゃ・・・お疲れ様でした!」

 

「「「「「お疲れ様でしたー!」」」」」

 

・・・これだけ見ると、部活動ってか立派に青春してるんだよな。

はぁ、変われば変わるもんなのか。

 

 

デジャヴ。既視感。

俺のようなぼっちにとって、それはある種死亡フラグとも言える。

二度あることは三度あるって言うだろ?特に悪い方向で。

 

で、今回は―――

 

「どうしたの?何か考え込んじゃって」

 

「あ、いや・・・何でもない」

 

西木野と2人で下校。向こうから誘われた。

前にも高坂と帰り道を共にしたことがあったが・・・あの時とはまた別の意味で気まずい。

何せ、話を振ってくるのが西木野ばかりで俺はひたすら答えるだけ。なんかすごく甲斐性なしっていうか・・・。

 

つまり、その、恥ずかしい。

 

「・・・比企谷さんは、将来どうするとか考えてる?」

 

「・・・特にはな。取りあえず普通に大学行って就職さえできれば、それ以上を望むつもりはない」

 

強いて言うならば専業主夫。ヒモではないから勘違いしないように。

 

「ふふ、堅実なのね」

 

「・・・夢がないとは言わないんだな」

 

「夢があるっていうのも、案外考えものよ。・・・私も今、すごく迷ってて」

 

「何を」

 

「前にも言ったでしょ?両親が総合病院の院長をしてるの。

表立って強制はしてこないけど、それでも内心は私が後を継ぐのを期待してると思うのよね」

 

そりゃ、この辺ではかなりの規模を誇る大病院だ。

俺も以前近くを通る機会があったが、大学病院に匹敵するんじゃないかと思うほどである。

一族経営・・・というと少々アレだが、西木野の両親としても一番信頼できる人間に後を任せたいと思うのは当然だろう。

即ち、一人娘に。

 

「・・・でも私、本当はピアニストになりたい。中学の頃から、ずっと夢だった。

大学もニューヨークのジュリアード音楽院とか、パリのコンセルヴァトワールとか、その方面に行きたいと思ってて。

一度、両親にもそれとなく言ったりしてみた」

 

「・・・それで?結果はどうだったんだ」

 

「『うん、まあ・・・いいんじゃないか』・・・それだけ。たったの一言二言。

なんていうか、反対はしないけど賛成もしない、みたいな・・・すごく曖昧なのよ。

もし猛烈に反対してきたら、押し通してでもやろうって決意できたかもしれない。でもそうじゃなかったの」

 

つまるところ。

西木野は、誰かに背中を押してもらいたがっているということだ。

 

別段甘いとも言えない。

どこぞの人生相談だか哲学者だかの受け売りだが、勇気を持って決断できる人間などごく少数だ。

大抵の奴らは、迷い、もがき、苦しみ、その果てに決断する。それでもその結果がよい物だとは限らないし、後悔もする。

 

だから、西木野。

お前もせいぜい足掻いてみろ。答えは恐らく、その先にある。

 

・・・なんて気のきいたセリフは言えない訳で。

それができたらぼっち卒業ですよ、ええ。

 

「・・・なあ。俺は音楽については碌に詳しくないし、お前の進路についてもどうこう言えないが」

 

一呼吸置く。西木野が真剣な表情でこちらを見つめてくる。

さあ、ここでいっちょやってやるか。

 

 

「―――もし、答えが出せないってなら、お前もμ'sで活動してみたらどうだ」

 

 

「・・・ヴぇぇぇ!?」

 

ちょ・・・なんじゃ今の声は。

バルカン星人だって人語は喋れるはずだぞ。確か。

 

「な、なんでそうなるのよ?!」

 

「アイドルもピアニストも、音楽に関わるって事では同じだろ。それにこっちも、また時々作曲を依頼するかもしれないしな。

だから・・・歩調を合わせるというか、一緒にいた方がやりやすくはある」

 

「い、一緒にっ!?」

 

いやホントごめんなさい。

別に他意はないんだよ?他意は。うん、八幡嘘つかない。

 

「それで、お前に曲を作ってもらって、お前もあいつらと歌ったり踊ったりいていれば・・・その、なんだ。

インスピレーションが湧くと思うんだが」

 

・・・言っててなぜか悲しくなる。

とうとう俺も意識高い系の仲間入りか。everyoneとtogetherしちゃってenjoyだナ!・・・うわ、キメえ。

しかも使い方間違ってるし。

 

「・・・・」

 

・・・あー、こりゃきっと失望してるんだろうな。

あとは進路相談の教師にでも相談しろと勧めるか。

 

「別に俺も強制はしない。だから―――」

 

「ううん。私、μ'sに入ってみる」

 

・・・はい?

 

「ここまで背中押してもらって、まだうじうじ迷ってるなんてみっともないもの。

いっちょやってやろうじゃない」

 

・・・い、いきなりすぎね?

俺、喜んでいいのか困惑すべきなのか、そもそも何していいのか分からないんですけど。

 

「いや、ホントにいいのか?即決即断ってのも考えものだぞ」

 

「何よ、誘っておいて。意気地ないわね」

 

うるせえ。

そりゃぼっちだもの、意気地があったらリア充してるわ。

 

「ま、その代わりに・・・」

 

「あん?」

 

すると突然、西木野のお嬢様は俺の手を握ってくる。

・・・いやおいちょっと待って勘違いしちゃうだろがくぁwせdrftgyふじこlp・・・

 

 

「―――私と一緒に、夢を追いかけてよね♪」

 

 

ウインク。

昇天。

 

・・・神様、今日も俺の青春ラブコメはまちがっているようです。

 

 

「ふふ・・・ついに動き出したようやね。ウチも乗るしかない、このビックウェーブに・・・!」

 

 

 




真姫ちゃんやっぱりかわいいな!

・・・いや、どうしてこうなった。マジで。
特定ヒロインを優遇するつもりなんてワイにはなかったんや・・・!

もしまたはち×まきを書くとしたら、おそらく外伝になると思います。
これ以上はキケン。大変。

次回は希が意外な方向で活躍したりして。
あとにこの過去も少しずつ解き明かしていこうかと思います。

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