ぼっちと九人の女神たちの青春に、明日はあるか。   作:スパルヴィエロ大公

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今回はラブライブ要素薄目。つかシリアス回・・・なのか?
そろそろ総武高sideの話も書いていきたいです。

サブタイの由来はアフガニスタンの諺、らしい。


第八話 戦争は終わったが、本当の戦いはこれから始まる。

「みんなー!今日は来てくれてありがとうー!!」

 

 

演奏が終わり、高坂が客席に向けて手を振る。

その瞬間、

 

「「「うおおおおおおおーーーーー!!」」」

 

「「「こっちこそありがとうーーーー!!」」」

 

「「「海未ちゃん結婚してくれーーー!!」」」

 

・・・ウゼェ。

外野がウザい、どのくらいウザいかというとクリスマスにツリーの下でいちゃつくバカップルぐらいウザい。

やっぱり材木座呼んだの失敗したわ、お前の愉快なお仲間なんか勝手に連れてくんな。しかも本人は気絶してるし。アヘ顔ダブルピースってやつか?キモい。

 

横の西木野達はと言うと、当然ながら背後からの大歓声に茫然としている。

まあアレだよな、ぼっちがリア充グループに溶け込めないのと同様、オタク特有のノリに付いていけないんだろう。

実のところあのお仲間さん達とは、以前無理やり材木座に夏コミに誘われた時に一度会っている。もっとも軽く挨拶を交わしただけだが。

そしてその後はアニメやら同人ゲーやら、濃密なオタクトークを開始、俺は背後からそっと付いて行くだけだった。

 

ま、要するにどこに行こうがぼっちはぼっち。これが血の定めである。

ちょっとアニメやマンガ、ゲームが好きなぐらいでオタ連中と仲良くなってぼっち脱出とか、それ甘い。向こうはプロ級の知識量なのだ、にわかが渡り合える訳がない。

 

さて・・・さっきから矢澤がジト目でこっちを見ている。

・・・ちょっと待て、お前は何か酷い誤解をしているぞ?まあ何をどう弁解したって今まで信用されたためしがないんだが。

もうテロもインフルエンザも全部俺の所為にされるまである。

 

「・・・アンタがドルオタ連中と知り合いだったなんてね」

 

「いや違うから。友達の友達だから。こっちは殆ど会ったことないから」

 

「友達の友達って、普通に友達じゃない・・・」

 

言うな西木野、これには複雑なぼっちの事情というものがあるのだ。

さらに正確に言うなら、材木座だって体育の時間に強制的に組まされ、向こうが勝手に友人認定しているだけなんだが。

ただ流石にそこまで言うと角が立つので言わないだけだ。

 

「ふふん、持つべきものは友、やで?比企谷くんもそんな冷たい言い方せんでもええんやない」

 

「いや本当で・・・って副会長、いたんですか」

 

「ああそれ、実は壁をすり抜けてきたんや。演奏中にドッタンバッタン出入りなんてできひんやん?」

 

「え・・・本当かにゃ?!」

 

「ウソや☆」

 

純粋すぎて最早アホの子と化している星空はさておき、東條副会長・・・神出鬼没だったり飄々としたところはやはり陽乃さんそっくりだ。

これじゃとても同じ学年だからと気軽に話せるような相手とは思えん。実は3年でしたとかOBだという方がまだ真実味がある。

 

「で、なんで貴方がここに?」

 

「そりゃ一応、ノルマもウチらが課したんやしな。きちんとチェックもしておかんと」

 

「下っ端に任せてもいいんじゃないですか」

 

「あー、彼女らは別な仕事しとるよ。今日はあくまで学校公開がメインやし・・・あれ、さっきまでエリチもおったのに、いつの間にか消えとる」

 

会長もか・・・。

まああの人はどうもライブなんて上手くいくわけないと疑っていたようだし、それがこの様ではそそくさと退散したくなる気持ちも分かる。

 

なんと言っても、今回の賭けは俺たちが勝ったんだしな。

 

「おっす比企谷くーん、お疲れー」

 

「・・・おたくら、ステージの音響と照明はどうしたんだよ」

 

「それ?うちらの後輩に任せちゃった」

 

ミカさんがテヘ☆と舌を出す。黒い、黒いぞ。どこぞの961プロみたいに。

彼女らも、いつの間にか観客席でライブを見ていた。今はフミコさんが、ステージの高坂達に飲み物を配り、奮闘をねぎらっている。

 

そうか、ならあとは彼女らに任せよう。

 

「悪い、俺あそこの連中に声掛けてくる。・・・ああそれと副会長」

 

「何や?」

 

「明後日、昼休みに高坂達と生徒会室に行くんで。決着はそこでつけましょう」

 

「・・・ふふ、了解や。楽しみにしてるで」

 

「え?比企谷くんと穂乃果たち、生徒会と勝負でもしてたん?ヤバくない?」

 

「まあな」

 

さて、いつまでもアンコールだなんだと五月蠅い連中をさっさと追い出さなければ。

・・・スーツ着てるそこのアンタ、まさか会社抜け出してきたんじゃないだろうな?

もしそうなら、俺が言えた立場じゃないが、働け。

 

 

「・・・ふぅ」

 

時刻は午後3時過ぎ。

材木座の大きなお友達には丁重に速やかなご帰宅を促し、ステージの片付けを一通り終えたところでマッカンで一服。

屋上の秋風が心地いい。

 

「ぐふぅ・・・我の体には舞台を清め岩を運ぶなどという重労働は堪えるな」

 

「コミケじゃ一時間以上立ちっぱだって平気だっただろうが。あとお前仮にも剣豪将軍なんだろ?あの程度でヘばるな」

 

もちろん材木座にもしっかり手伝わせた。

掃除以外にも、ヒデコさん達にデカい機材を持たされひたすら放送室と講堂を往復させられたらしい。うわ、ご愁傷様。棒読みだけど。

なんか雪ノ下が下々の連中を見下すときの気分がよく分かった気がする。

 

「わざわざ千葉から遠路来てくれたのは感謝してやるが、友達連れて来るんならメールで伝えとけよ」

 

「ハッ!貴様がSOSの信号を発信しておるというに、悠長に返信などしている場合か!まず駆けつけるのが先であろう」

 

・・・あー、なんだろう。

アクション映画とかアニメなら感動のシーンなのに、こいつが言うと途端に胡散臭くなる。

というかギャグにしか聞こえん。もう芸人養成所にでも入れよ、いじられキャラで終わるかもだけど。

 

「一応修学旅行の準備とかもあんだろ?もう来週の半ばなのに大丈夫だったのか」

 

げ・・・いつの間にか俺、材木座くんを気遣っちゃってるぞ。

ヤバいこれ調子乗るパターンだわ。

 

と思いきや。

 

「・・・・」

 

急に材木座は、下を向いて黙り込む。

・・・そう言えば、平塚先生が修学旅行の件で何か宣言を発したと、こいつから聞かされていた。

その内容は、確か。

 

「・・・修学旅行の件、なのだが。平塚女史がクラスの状況が改善されなければ我らだけ参加させないと宣言したのは、以前貴様にも話しておろう。

彼女は、それを実行に移した」

 

「・・・は?」

 

おい・・・マジか?

どうせ脅し程度で本当に実行するはずなどないと思っていたが。

というか、実際にそんなことをしたら大問題になる。旅行代金の返金がどうとか、せっかくの高校生活の思い出がとか・・・まあ後者は俺にはどうでもいいが。

それを覚悟で、本気で平塚静という人は、2年F組の生徒を修学旅行に参加させなかったというのか?

あまりに突拍子もないと評するべきか、信念を貫き通したことを褒め称えるべきなのか。

 

「・・・はぁ、で、なんでそんな事態になった?まあ大体想像はつくが・・・」

 

「状況が、一向に改善しなかったのだ・・・貴様が去ったあと、我らのクラスでいじめが起きていると校内で噂が立つようになってな。

全校集会でもそのことが取り上げられて、それで皆も大人しくなったかに見えたのだが・・・」

 

その後の経緯を、材木座はぽつりぽつりと話し出す。

 

全校集会でいじめ問題のことを全生徒の前で晒され、大恥をかき、意気消沈したクラス。

その後の昼休みのことだ。

葉山が唐突に、これ以上のいじめを防ぐためにも皆で解決策を話し合おうと言いだしたらしい。

 

やはり、やはりなのか葉山。だとしたらお前は本当にバカだ。

どうせ本当は皆いい奴で、ちょっと今回は道を踏み外してしまっただけとか、そんな風に考えてるんだろうが。

俺に危害を加えていた連中が皆から糾弾されて、そいつらが今度は苛められるという可能性は全く頭の中にないのか、ないんだろうな。

 

で、実際に話し合いの場でそんな雰囲気になった時。

海老名さんがこんな話し合いは無意味だ、皆自分勝手な正義感をぶつけて人を攻撃するはけ口にしたいだけじゃないか―――そう主張したらしい。

無論それは、葉山のやり方を真っ向から否定することになる。

 

「それで、今度は海老名さんが皆から嫌がらせを受けたわけか・・・」

 

「・・・うむ、三浦の姐御が彼女を必死で庇っておったが・・・無力だった、多勢に無勢ではな。

平塚女史のあの宣言も何ら効果がなかった。それで、本当に実行したという訳だ」

 

おい、勝手に姐御と呼ぶな、刺されるぞ。

ともあれ、つい3日前にはその件で緊急の保護者会が開かれたらしく、当然ながら随分と大荒れだったそうだ。

リア充どもの親が寄って集って平塚先生を糾弾する様子は実に見苦しかったと、材木座は吐き捨てた。

 

まあ、親たちは何も事情を知らなかったわけで、急に知らされては混乱するだろうし、担任教師に詰め寄るのも分からんではない。

おそらく先生もそれぐらいは覚悟しているだろう。下手をすれば転任させられることも。

 

それでまた皆、意気消沈して大人しくなったようではあるらしい。

その代わり、クラスからは談笑が消え、メールのやり取りすら誰もしなくなった。グループの連中同士でつるむ光景も消滅した。

授業を受け、昼飯を食い、掃除をして、放課後になれば皆、さっさと部活に行くか帰宅する。その間、誰も一言も発さないし誰とも組まない。

 

皆が孤立し、ぼっちになることで、事態は沈静化した。

 

「・・・確かにまあ、気味は悪いがな。それが最善策ではあるだろ」

 

「うむ・・・」

 

材木座が何か違う、と言いたいのも分からんではない。

というか、俺が千葉村で鶴見留美という苛められていた少女をどうにかしようとした時に使った方法と、クラスが辿った結末も似ている。

いじめグループを仲たがいさせ孤立させ、そうしていじめそのものを亡くす。

結果的にはそれでいいじゃないかと言えるかもしれないが、俺だってあんな手は使いたくはなかった。

 

俺も、本当は鶴見が皆と和解し、また仲良くなれるような結末の方が良かった。

ワイワイ賑やかにやっているクラスの雰囲気など壊れてしまえとは、心の底からは考えていない。

でも現実は甘くない。人間とは常に欲求不満の塊だし、それを解消するはけ口を求めている。だから些細ないじめですらなくならないのだ。

 

「・・・というより、貴様が雪ノ下氏や由比ヶ浜氏からこの件について何も聞いていないのが意外なのだが。

あやつらとなら心置きなく話せるのではないか?」

 

「無理に決まってるだろ・・・雪ノ下はそもそもあの性格だし他所のクラスだし。

由比ヶ浜はもっと無理だ、下手に接触するとあいつに被害が及ぶ可能性がある」

 

実の所、由比ヶ浜とは一悶着あって、とてもこっちから連絡を取れる状況ではない・・・というのが真相なのだが。

・・・え、戸塚?もっとないな。天使の口からそんなことを聞くわけにはまいりません、穢れてしまいます。

 

というか、聞いたところで俺にはどうしようもない。既にあの学校では過去の人なのだし。

ただ心残りというか、罪悪感というか。そのせいかは知らんが、事情だけは把握しておかねばという気持ちがある。

それだけ・・・なんだよな。そうであってほしい。

 

・・・また俺は、自分から地雷原に足を踏み入れる気でいるんだろうか。

 

「そうか、分かった。また何か変化があったらこっちに伝えてくれ」

 

「承知した。・・・おっと、我は同胞と同人誌ショップで待ち合わせておる、これで帰るぞ。

それと次回作の件なのだが―――」

 

「頼むから20ページで済む内容を100倍に水増しするなよ」

 

「げぽぉっ!?」

 

泡拭いて気絶すんな、キモい。

 

 

 

「ひっきがっやくーーん!なんで屋上にいるのさー!」

 

材木座が出ていって一分後、今度は高坂たちがやってきた。

あんだけ歌って踊って、まだはしゃぐ元気あるとかこいつは化け物か。

 

「・・・男には黄昏たい時ってのがあるんだよ」

 

「え?今比企谷くんなにか言った?」

 

「別に・・・」

 

うわ、高坂さんいつから難聴ヒロインになった?ウケねーよそんなの。

そして俺はいつからツンデレに(ry

 

「それで?何か用か、片付けは済んだだろ」

 

「うん、今から穂乃果ちゃん家でお祝いしようと思うの。比企谷くんも、一緒に来る?

一緒にお茶したらきっと楽しいと思うな~♪」

 

・・・今、気のせいか「来るぅ?」って言わなかった?

それなんて瑞鳳さんですか。おまけに「思うな~♪」なんて・・・やっぱり南ことり、お前は小悪魔だ。

 

「・・・もし、断ると言ったら?」

 

「勿論、駄目です。

比企谷くん、貴方も立派なμ'sの一員なんですよ?

何より比企谷くんがお友達を呼んで下さったおかげで、ライブは成功したんですから」

 

園田さん、「駄目です☆」の下り、笑顔が黒いです。

なんで女子の笑顔って怖いんだろうね。

 

それにしても・・・成功。

成功か。

 

こいつらもそう思っているなら、本当に大成功なんだろうな。

 

「分かった、付き合おう」

 

「よっしゃーー!そうと決まったら早速穂乃果の家に急げーーー!!」

 

「おいちょ、腕を引っ張るな・・・」

 

やはり、俺の青春とは誰かに腕を引かれることで始まるようだ。

その終点がどこに行きつくかは、知る由もないが。

 

 

"考えるな、感じろ"。

 

 

今日もまた、この有名なアクション俳優の助言に従って、身を委ねてみようと思う。

 

 

 

 




終わり。
次回は由比ヶ浜主観で総武高sideの話をやろうか、それともまきりんぱな加入の話をやるか、ちょっと考え中です。
・・・インターンあと2日残ってるんでまた更新遅れそうですが。月末にもまた別のインターンあるし・・・頑張ります(小並感)

あ、感想大歓迎、とくに駄目なところとかガンガン指摘してやってください。
べた褒めばかりされると作者は調子に乗るタイプなので。
・・・あ、サイトの規約は守ってね?お兄さんとのお約s(キモい)

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