ぼっちと九人の女神たちの青春に、明日はあるか。 作:スパルヴィエロ大公
・・・どっちをラブライブとクロスさせるか迷いました。JUMの方がスペック的に分はありそうですが(裁縫)、僕は八幡を選びました。
来月はインターンだ・・・執筆できるかな・・・。
「―――それが、学校側の決断ですか」
放課後。
生徒指導室には眩しい夕日が差し込んでくる。ドラマなら青春の一ページとして絵になるんだろうが、生憎ここにいるのは俺とアラs・・・平塚先生のみ。
おまけに表情を見れば、誰もが俺たちの間で何か深刻な話をしているんだと気づくだろう。
やっぱり、俺に青春なんて言葉は似合わないんだ。
「・・・ああ。先日君のご両親とも話した通りだ。
比企谷、本校としては君に転校を勧める。これ以上"被害"が大きくならないうちにな」
被害。被害ねぇ・・・。
生憎小学生の頃からその手のことには慣れっこなんだがな。
しかも、今回の件は100パーセント、自業自得だ。こうなっても仕方ないと覚悟したうえでのことなんだから。
話は文化祭の時に遡る。
やりたくもない文化祭実行委員の職務をやらざるを得なかった俺。
それだけだってぼっちには苦痛なのに、加えて奉仕部にとんだ案件が持ち込まれたのだ。
―――ウチ、委員長の仕事自信なくて~。でもみんなに迷惑かけるわけにいかないじゃん?
そう、文実委員長の相模の件だ。
自分から立候補したのに職務を果たせそうにないとみるや、奉仕部にサポートの依頼を頼んできた。
潔いのか、怠慢なのか。まあそれはどうでもいい。
問題はそこから。
雪ノ下は理念に反してあっさり依頼を承諾、そして相模を上回るリーダーシップを発揮して文実を回していった。
途中で骨格外強k・・・陽乃さんの介入でなんやかんやあったりしたが、それでもどうにか立て直し、本番まで順調に・・・。
進むかと思った。
俺が失念していたのは、この過程で自分の無能さに打ちひしがれ、いたくプライドを傷つけられた相模の存在。
開き直って雪ノ下らにすべてを一任し、自分はいいとこ取りして美味い汁を吸うかと思っていたら、最後の最後になってあいつは逃げ出した。
よりによってエンディングセレモニー開始前に、だ。
捜索に割く人員はほぼゼロ。できることは校内放送の呼びかけ。刻々と迫る時間。
埒が明かない。
なので、俺は雪ノ下や由比ヶ浜を振り切って相模を探しに行った。
途中見かけた葉山と相模の取り巻き連中は、ただ他の生徒に相模を見かけなかったか尋ねるだけ。それじゃあ甘いぜ、リア充の紳士淑女の皆さん方。
餅は餅屋。心を傷つけられたやつが黄昏たいときに行く場所を、俺は知っている。そこを探せばいい。
ソースは例によって俺の経験。
屋上。ビンゴ。
そこに相模は蹲っていた。白馬の王子を待つ姫の様に。
だが、現実とファンタジーは違う。そんな都合のいい展開が待っていると思うか?否。
だから俺は言ってやった。
相模に現実を直視させるために。
怒りを炊きつけ、失われた誇りを呼び起こしてやるために。
―――お前に関心がない俺が真っ先にお前を見つけた、つまり誰もお前を本気で探してなかったってことだろ。
―――なあ、どんな気分だ?こんな奴に好き勝手言われてる、今の気分は。
結論を言おう。
この作戦は、無残にも大失敗に終わった。
相模は発奮するどころかむしろ絶望し、集計表を投げ捨てて走り去ってしまった。
あれから葉山も取り巻きも相模を見つけられず、結局エンディングセレモニーは雪ノ下とめぐり先輩の手で執り行われた。
文化祭は無事終わったが、その後の影響は計り知れないものとなった。
まず相模。
エンディングセレモニーのドタキャン劇をサボりと見なされ、クラス、いや学校での居場所を失った。
いつどこでも、敵前逃亡した情けない将とレッテル張りをされる。一週間で学校に来なくなり、その後転校したと伝えられた。
そして俺。
相模の取り巻きか、文実で俺のやったことを知っている奴か、あるいは両方か。
そいつらの手によって俺が相模に嫌がらせをしたと広められた。半分以上当たっているので弁解のしようもない、いや無実だとしても世間は俺をクロと言うだろうが。
今度は俺が学校での居場所を失う番だ。
それが行き着くところまで行ったのが3日前。
一人飯をしに屋上へ向かったら、待ち構えていた見知らぬ同学年らしい男子三人組に取り囲まれ、ボコボコにされた。
そういえば、屋上って不良共のたまり場でもあったな。すっかり失念していた。
怪我自体は大したこともなかったし、相模と仲が良かったらしい三人は即座に停学処分になったが、その後も俺への憎悪は止まる気配を見せない。
学校側も、じき修学旅行だというのにこれはまずいと思ったのか。
それが、俺に転校を勧めるということになった。
「・・・君にも罪はあるが、元を辿れば相模にも原因がある。何より彼女の件で君が皆から嫌がらせをされていいということにはならん。
そう言っても無駄だった。大事になる前に被害者を転校させた方が傷が浅くて済む、とな」
誰の傷なんだか、と言いたげに先生は舌打ちをする。
そりゃ、学校のメンツに決まっている。未だにいじめ事件が起きればニュースで騒ぎになるご時世だ。
校長を含め教員の多くは責任を取らされるだろう。世間の好奇の目にもさらされる。
だが、現時点ではこれが最良の選択肢だ。
受け入れない手はない。
「別に構いませんよ。先生の仰る通り、俺にも責任がありますし」
「・・・本気か」
「最大多数の最大幸福、ですよ。俺は嫌がらせをされなくて済む、周りの皆は嫌なやつが消えて清々する、先生方は俺の件で惑わされなくて済む。
葉山とかもこう言うんじゃないですか?"みんなが笑って幸せならそれでいい"って」
「ッ・・・!」
いや、絶対そう言うだろうねあいつは。
葉山はいついかなる時でも皆のことを考える。マジョリティのことを考える。つまり徹底した民主主義者なのだ。
先生は俺の意見に正論すら返せなくなったのか、ただ悔しさを滲ませるだけだ。
流石に俺の所為でいつまでも苦労を掛けるわけにもいかない。そろそろ先生を解放するときでもある。
「先生、美人が台無しですよ」
「・・・今さら世辞はいらん。本当にいいんだな?」
「俺も人の子ですし、いつまでもこの状況に耐えられるとは思えません。大人しく新天地を見つけますよ」
「新天地、な。
・・・私はつくづく、教育者としてどうなのかと思うよ。大人しく実家で花嫁修業でもしていれば良かったのかもな」
「悔やむくらいなら、いっそ俺を恨んでくれた方がマシです」
そこで平塚先生は、クスリと笑った。
実に捻くれた君らしいなと言って。
それはまるで、今生の別れの光景のようだった。
二週間後 東京都千代田区神田
「・・・遠いな」
電気街兼オタクの聖地アキバを超え、いざ行かん新天地へ!
・・・どこの海賊王だそれは。麦わら帽子被った人?
目が腐ってるから案外似合ってたりして、いや怖いなそんな俺。
その後両親を交えて話し合った結果、国立音ノ木坂学院への転校が決まった。
場所は東京、元女子高で去年から共学になった伝統校とのこと。
・・・ぼっちにとって条件キツすぎじゃね?男子は圧倒的マイノリティ、ぼっちはさらにマイノリティ。悪目立ちすること間違いなし。
全然嬉しくない。俺の精神力も女子社会でやっていけるとは思えん。
とはいえ隣の海浜総合ではすぐ俺の情報が洩れ、そこでまた嫌がらせ再発になることは流石に予想が着く。
私立高は学費の件で無理。となると、近場には俺の行ける高校などない。
なら、ということで俺は東京で一人暮らしをしつつ音ノ木坂へと通うことになったのである。編入試験、手続、引っ越し、この二週間やることは多かった。
因みに小遣いは4割カット。なにそれバイトするしか・・・ああ社畜へのフラグが・・・。
まあ、どのみちバラ色の青春なんて待ってるわけがないのだが。
嗚呼、世知辛い世の中よ。もういっそ、トマス・モアばりに新天地どころかユートピアを求めたくなるまである。
「―――いっけなーい!今日も遅刻しちゃうよ~!」
げ。
なんか災難の元が背後から近づいてくるぞ。
「穂乃果がまた寝坊するからです!いつになったら自分で起きられるようになるんですか!」
「怒ってる場合じゃないよ、あと五分で一時間目始まっちゃうよぉ~」
さらに二名、喧しいのがいる。
あー、なんかすごいリア充してそうな奴らなのは分かった。あと脳筋熱血のイケメンがいれば完璧だ。
あれ、いつからリア充って動詞になったん?
そんな三人―――一人は春香サン、二人目は千早、三人目は・・・あずささん?てかなぜアイマs・・・―――は俺を省みることなく、横を猛スピードで過ぎ去っていく。
バイクかお前ら。制限速度くらい守れよ。
と思いきや、オレンジ髪のサイドテールのくせにどこか春香さんぽい一人が振り返った。
「そこの目が腐った人ーー!急がないと遅刻するよーーー!!」
・・・絶賛遅刻中のお前が言うか。つか不審者って勘違いされるだろうがどうしてくれる。
案の定千早似の連れに頭を叩かれ、引きずられていった。
てか俺はいいんだよ、理事長さんと話あるんだし。
とはいえ一刻も早くここを離れたいのと、完全シカトするのも体面が悪いとあって、俺は小走りで音ノ木坂へ向かっていった。
前置きが長くて済みませんでした。俺ガイル文化祭編ともちょっと設定変えてますし。
凝り性なのが僕の欠点(てへぺろ(・ω<)
次回はも少しゆるーくいきます。
・・・だからってμ'sをアイマスキャラに例えるなんて二度とするなよ?!