同調率99%の少女 - 鎮守府Aの物語   作:lumis

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那珂たちは、隣の鎮守府との初の合同出撃任務に参加することになる。

リアルプレイにて那珂を一度轟沈させているため、この物語ではそんな初代那珂を書いています。
初代那珂はリアルプレイでは運良くクリティカルをバンバン発揮して本当に活躍してくれたので、そんな彼女を
具現化させるために話を考えてみました。

艦娘(になった少女)たちは実在したらこんな感じなんだ!身近にいそうだな!という感覚を味わっていただきたいため、
オリジナルの本名・学校生活・友人関係を作って日常生活をリアルに描いています。
可能な限り原作に近づけていますが、かなり性格の違う艦娘も出てきます。ご了承ください。
初代那珂は、"まだ" お団子ヘアをしていません。


鎮守府の日々2
初の合同の出撃任務


 那珂にとって最初の出撃任務からしばらく経った後、鎮守府Aにとって初めて他の鎮守府との合同出撃が発生した。といっても対等な参加ではなく、あくまでその鎮守府の艦隊の支援という立ち位置だ。隣の担当海域の鎮守府との合同で、日本本土から少し離れた、どこの鎮守府の担当でもない海域に集結しているとされる深海凄艦の集団の撃破だ。この任務は西脇提督が隣の鎮守府に掛けあって実現した。

 

 

 艦娘の出撃任務の別のパターンは、大本営から発せられる内容による出撃任務である。

 この任務の場合、学生艦娘はその艦隊に職業艦娘が入っていないと、中規模以上の任務にはつけないようになっている。(この場合の職業艦娘は、部の顧問たる先生でなくともよい)

 その理由は、大本営からの任務の場合しばしば日本本土を離れた海域への本気の出撃になるからだ。学校側は、その出撃に関して責任をきちんと負えると証明できる立場の人間(この場合は職業艦娘)がいないことには生徒の身の安全を委任できないとしているためだ。

 なお、普通の艦娘はこの種の制限は一切ない。

 

 今回は東京都からの依頼ということで、中規模だが国からの依頼ではないため職業艦娘等の諸々の制限はなく、当初から考えていたメンバーで参加することができる。旗艦五月雨、時雨、夕立、村雨、五十鈴、そして那珂の6人だ。

 隣の鎮守府からは吹雪、深雪、白雪、天龍、龍田、そして羽黒の6人。鎮守府Aの面々は初めて見るわけではないが、新鮮で珍しいと感じる、重巡洋艦の艦娘がいた。(なおその羽黒担当者は五月雨達の黒崎先生とはまったくの別人である)

 

 提督は作戦の草案時点では旗艦を那珂にと提案したが、那珂はそれを断った。他の鎮守府との合同ということなら秘書艦であり鎮守府の別の顔である五月雨を売り込むべきで、自分を売り込むべきではないという態度を崩さなかったからだ。

 その代わり那珂は五月雨に、自身が考えうる限りのサポートをすると約束した。五月雨が旗艦として実際にどれくらい実力を発揮するか知る由もないが、聡明な彼女のことだ。焦ってパニクってドジやらかさなければ、そつなくこなしてくれるだろうとふんでいた。

 なお、提督からは現場での指揮全権は五月雨と那珂に分担で委任された。

 

 

 目的の海域付近までは海上自衛隊から1隻の護衛艦が用意され、そこに両鎮守府からの艦娘計12人(と整備士など数人)が乗り込んで行くことになる。

 

 

--

 

 今回は合同任務であるため、鎮守府Aからの出撃ではなく、一旦海上自衛隊の基地へと集合する手はずになっている。那珂たちが所属する鎮守府Aから目的の海上自衛隊の基地までは車でスムーズに行けたとしても40~50分かかる。普通なら1時間は超える。午前8時少し前、鎮守府Aの工廠前に6人+提督、工廠長が集まっている。

 提督は大きめの車を借りてみんなを送っていこうと提案したが、那珂や夕立、村雨は突飛な提案をして提督を困らせる。その提案とは次の内容である。

 

「てーとくさんてーとくさん!せっかくあたしたち艦娘なんだし、海自の基地まで海を進んで行きたいなぁ~。」

 その提案に真っ先に乗ったのは、那珂と村雨であった。

「おぉ!夕立ちゃん。それいいねぇ~なんか本格的に艦娘してる気分になれるね~。」

「それいい~!私はゆうの提案に乗るわ~。」

 

 ノリノリな3人に対し、残りの3人、五月雨、五十鈴、時雨はテンションが低く乗り気でない。

 

「それ、どうなんでしょう。提督?」

 五月雨はチラリと提督を上目づかいで見上げる。旗艦である五月雨が心配する理由を提督は察している様子。

「あぁ。勝手に海自の港湾施設に艦娘が入って行くとめちゃくちゃ怒られる。というか、任務があるとはいえ無断入港は禁止。ヘタすると自衛隊と関係ない民間出身の提督の俺でも、首が飛ぶ。んで本業の会社にもめちゃ迷惑がかかる。」

 

「えーダメなの~?じゃあ近くまでならいいでしょ?それもダメっぽい?」

 それに反論したのは時雨だ。

「近くまでって。僕達艦娘が上陸してただで済む場所ってあのへん無い気がするよ……。」

 時雨も五月雨・提督と同様の心配をしていた。それは五十鈴もだった。

「任務前に海自の人に怒られるようなことはいやよ?おとなしく提督に送って行ってもらいましょうよ。」

 

 

 提案した3人(主に夕立)はブーブー文句を垂れるが、提督の一言でおとなしくなる。

「どうせ行くなら現地まで俺が送って行って見送ったほうが君たちも安心できるだろ?せっかくの初めての合同任務なんだ。提督の俺にも最初くらいは雰囲気だけでも参加させてくれよ。」

 

 夕立の頭を撫でながら言った。そしておとなしくなった3人を含め、提督は借りてきたトラックに全員を促す。

「さ、せっかくトラックも借りてきたんだし、艤装運び出して乗ってくれ。」

 

 

 6人は整備士に手伝ってもらい、各自の艤装をトラックの荷台に乗せ、自分たちは提督の運転する車に乗った。なお、トラックは工廠長が運転し、提督の車に続く。

 

 

--

 

 海上自衛隊の基地に到着した。門のところで提督は今回の合同任務の旨を伝え、艦娘制度上の深海凄艦対策施設の責任者および、艦娘責任者の証明証を見せ許可を無事もらい、基地内に入る。隊員の案内により車は護衛艦があるところギリギリまで進んでもいいことになった。まずはトラックだけ先に行かせ、提督の車は駐車場に置き、7人揃って護衛艦のところまで歩いて行った。

 

 隣の鎮守府の艦娘たちはすでに揃っており、都の職員や海上自衛隊の隊員と話をしている。そこにいるのは艦娘6人だけで、隣の鎮守府の提督の姿はない。

 提督は駆けて行き、到着した旨伝える。鎮守府Aの6人を預けるため五月雨たち6人を側に寄らせて紹介する。

「この度はうちの者たちを宜しくお願い致します。○○鎮守府の艦娘の皆様の活動のご迷惑にならないようしっかり注意をしておりますので、どうか宜しくお願い致します。」

 提督の丁寧な挨拶に、都の職員および同行する士官、護衛艦の艦長も挨拶を返す。

 

 鎮守府Aのメンバーの艤装も護衛艦にすでに積み終わり、出港間近となった。提督と、トラックを運転してきた工廠長が艦娘たちに一言ずつ言葉をかけ、彼女らを元気づける。

 

「じゃ、6人とも。行ってらっしゃい。俺らはここまでだから。あとは適時電話なりメールなり入れてくれれば。今日は俺ずっと鎮守府いるからさ。あ、そうだ。泊まりになるかもしれないから寝間着は持ったか?あと洗面用具も……」

 さながら、提督は心配症の父親っぽく、娘たちを見送る光景になっている。

「提督、少し離れるっていっても日本なんだからさぁ、そんなに心配しないでって。あと海の上じゃ電話通じないでしょ。通信くらいはさせてもらえるんじゃないの?」

 那珂がツッコミを入れると、提督はハハッと笑う。

 

「なんだかてーとくさん。パパっぽい~。パーパ!行ってきま~す!」

 夕立が冗談を言うと、他の艦娘らからアハハと笑いがこぼれた。夕立の冗談にノッて村雨と五月雨も提督に声をかけた。

「パパぁ!行ってきますぅ~」甘えた猫なで声で言う村雨。

「パ…お、お父さん!行ってきま……す……!」続いて五月雨は、ノったはいいがやはり恥ずかしさの方が前面にあるのか、照れ混じりに言った。

 この3人は違う反応こそすれど、ほぼ揃ってノッて来ることがしばしばなので提督には想像できた。わかってはいたが、提督は対応しきれずに照れまくりながらリアクションした。

「むず痒いし外でそういうこというのやめなさい。俺困っちゃう。」

 3人ともクスクスとさらに笑う。

 

 

 提督は気を取り直して6人に言葉を言い直す。

「ともかく、君たちの無事を信じてるから。思う存分活躍してきてくれ。」

 

「「「「「「はい。」」」」」

 

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「それじゃ、暁の水平線に勝利を!」

「「「「「「暁の水平線に勝利を!」」」」」」

 

 鎮守府Aで出撃時に言われる旅の安全を祈る掛け声を提督が言うと、那珂たち6人も同じ言葉を同時に言い返した。そして6人は隣の鎮守府の艦娘の後に続いて乗り込んでいった。

 その場には提督と工廠長、数人の海上自衛隊の隊員が残るだけとなった。

 


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