記憶喪失な雪風と勇者王(改訂中)   作:蒼妃

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序章 第2話

~高速射出甲板空母 タケミカズチ内部~

 

 

「じゃあ、雪風さんは自分の武器の使い方も覚えてないんですか?」

 

 

「むぐむぐ……ごくん。そうなんですよ。

 妖精さんに教えてもらったおかげで、何とか扱えますけど……」

 

 

「そんな状態でよく駆逐イ級を倒せましたね……」

 

 

「運が良かったんですよ~。はむはむ」

 

 

空腹のおかげで一段と料理がおいしく感じます♪

一時はどうなるかと思いましたが、わたしは本当に運が良いようです。

あっ、わたしが居るのはさっきの飛行船の中にある休憩室です。

大鳳さんが曰く、この飛行船は大鳳さんが所属する基地に向かってるそうですが、到着までに少し時間があるので、先に腹ごしらえをすることになりました。

 

 

「ふぅ~……お腹一杯です。」

 

 

「よっぽどお腹が減ってたのね。」

 

 

「はい。もうお腹がペコペコすぎて死にそうでした。」

 

 

「まあ、お腹が膨れて良かったわ。」

 

 

「大鳳さん、料理お上手なんですね。」

 

 

「料理が趣味なの。暇つぶしにやり始めたら、いつの間にか趣味になってたわ。」

 

 

「おう、大鳳。此処に居たのか。」

 

 

「あっ、火麻参謀。」

 

 

お腹が一杯になったので、休んでいると、男の人がやってきました。

独特な髪型に一目でわかるくらいに鍛えられた肉体。年齢は30代後半でしょうか?

 

 

「雪風さん、紹介します。GGG鎮守府参謀長官の火麻 激さんです。」

 

 

「おう、よろしくな。」

 

 

「雪風です!! どうぞ、宜しくお願い致します!!」

 

 

「それで、火麻参謀。何か、緊急事態でも?」

 

 

「いや、基地に着いたから呼びに来ただけだ。」

 

 

どうやら、ご飯を食べてる内に大鳳さんが所属してる基地に着いたそうです。

窓が無いこの場所からだと、外の景色が一切見えないので気付きませんでした。

 

 

「そうですか。じゃあ、私は雪風さんに一通り説明してから向かいます。」

 

 

「おう。長官にそう伝えておくぜ。ついでにメディカルチェックも済ませておけよ」

 

 

そう言って、火麻さんは何処かに行ってしまいました。

 

 

「さて、と。じゃあ、続きの説明しないとね。」

 

 

「お願いします!!」

 

 

大鳳さんは、何も覚えていない私に色々教えてくれました。

 

 

私や大鳳さんは“艦娘(かんむす)”と呼ばれる存在で、かつての軍艦の魂が人の姿を成したモノ。私は、陽炎型駆逐艦の八番艦で、かつては「奇跡の駆逐艦」という称号が与えられるような船だったそうです。覚えはありませんが……。

そして、艦娘の役目は、この世界に突然現れた“深海棲艦”を倒すこと。

 

深海棲艦の正確な目的は不明。でも、海に出る船舶を頻繁に襲撃してくる上に陸地を侵略することもあるそうです。

また、深海棲艦よって海路だけではなく、空路も制圧されているせいで物資の流通がかなり滞るような事態になって、地球の人口も結構減っているみたいです。

 

 

「それと、深海棲艦は基本的に人の姿に近い種ほど手強くなるわ。

 相手の艦種や強さを把握することも、深海棲艦との戦いでは重要になるわよ。」

 

 

「ふむふむ。あっ、そういえば、深海棲艦に普通の武器とか効かないんですか?」

 

 

「効果はあるわ。でも、艦娘が戦うより圧倒的に被害が大きくなるの。」

 

 

「どういうことですか?」

 

 

「深海棲艦は、サイズが小さい上に個体数が非常に多いの。

 だから、攻撃が当てにくく、迎撃に失敗して懐に入られたら終わり。

 過去には、駆逐イ級一体を倒すのに、3隻の軍艦がやられたらしいわ。」

 

 

そこまでで一区切りして、大鳳さんは湯飲みに口を付けました。

 

 

「そう言った経緯もあって、今は深海棲艦の対処は艦娘に一任されているわ。」

 

 

「ふむふむ。」

 

 

「さて、取り合えず、説明は一先ずこれくらいにしておきましょうか。

 私たちの長官に会う前にメディカルチェックも受けてもらわないといけないし」

 

 

「はい、わかりました!!」

 

 

 

■    ■    ■    ■

 

 

 

健康診断の後、大鳳さんに連れて来られたのは、この基地の司令部。通称、メインオーダールーム。

この先に所属する艦娘をサポートしてくれる人たちが居るそうです。

怖い人じゃないと良いけれど……

 

 

「大河長官。大鳳、ただいま帰還しました。」

 

 

「うむ、御苦労。」

 

 

「それと、偵察任務中に保護した駆逐艦娘の雪風を連れてきました。」

 

 

「は、初めまして!! 陽炎型駆逐艦、八番艦の雪風です!!」

 

 

「GGG長官の大河 幸太郎だ。ようこそ、雪風くん。」

 

 

大鳳さんに紹介されたのは、長い金髪に黒い眉のナイスミドルな男の人です。

年齢は……火麻さんと同じぐらいでしょうか? 取り合えず、怖い人ではなさそうです。

 

 

「それから、このGGGを支える皆を紹介しておこう。

 まずは、艦娘及び深海棲艦の研究を行っている獅子王 雷牙博士だ。」

 

 

「ヨロシク~。」

 

 

最初に紹介されたのは、とても鼻が長いおじさんです。

とても気さくそうな人ですが、艦娘や深海棲艦については地球上で一番詳しい人物らしいです。

 

 

「それから、諜報部の猿頭寺 耕助くん。」

 

 

「深海棲艦の解析ならお任せください」

 

 

次に紹介されたのは、だらしない服装の男性。

よれよれの制服に乱れた髪……身だしなみは整えた方が良いと思うのですが……。

 

 

「そして、さっき会っただろうが、参謀の火麻 激くん。」

 

 

「おう。」

 

 

「他にもスタッフは大勢居るが、追々紹介していこう。

 さて、大鳳くん。雪風くんには、どこまで説明したのかな?」

 

 

「基礎知識だけです。艦娘の詳しい生体については、雷牙博士に説明してもらった方が良いと考えまして。」

 

 

「ほいほいっと。じゃあ、ご希望に応えて、僕ちゃんが説明しちゃうよー」

 

 

雷牙さんが手元で何かコントロールすると、司令部の正面に大きなモニターが出てきました。そこに映し出されたのは、私でも大鳳さんでもない艦娘です。

 

 

「知っての通り、艦娘はかつての……それも、第2次世界大戦期に存在した軍艦の魂が人の姿を成した存在だと、言われておる。しかし、それだけない。」

 

 

モニターを使って、雷牙さんは分かりやすく艦娘のことを詳しく教えてくれました。

 

雷牙さんの話によると、艦娘は“霊水晶(セフィラ)”と呼ばれる結晶を持っていて、そこから放たれるエネルギーが艦娘を艦娘たらしめるそうです。

生み出されるエネルギーは常に全身を巡って、艦娘の肉体を強化しているだけではなく、艦娘が使う武装に供給されて、威力を増大してくれるみたいです。

だから、私の12.7cm連装砲も小さい割に駆逐艦に搭載されていた本物と同程度の威力を発揮できるのも、そのおかげです。

あと、海面に浮いたり、身体全体に張られている防御シールドのようなモノにも、このエネルギーが使われているそうです。

 

 

「それと、この霊水晶(セフィラ)には、無限にエネルギーを生み出せる訳ではない。

 外部から燃料を補給せんと、エネルギーは生成されんのじゃ。」

 

 

「それから、戦闘中の主機の破損やエネルギーの枯渇は艦娘の死を意味する。これをよく覚えておいてほしい。」

 

 

「はい!!」

 

 

「まあ、分かってるのはこんな所じゃな。何分、まだ研究途中でな。何か質問はあるかい?」

 

 

「あの……艦娘って、どうやって生まれてくるんですか?」

 

 

「おっと、説明してなかったのう。艦娘は妖精が生み出しておる。

 一度だけ自然発生の例があるが、基本的に妖精によって生み出されるんじゃ。」

 

 

「だが、妖精は秘密主義でな。どういう原理で生み出しているかは、俺たちにも分からん。」

 

 

「そうなんですか?」

 

 

「うむ。どうやら、向こうにも知られたくない事情があるらしい。

 だから、我々も深く追究しないようにしているんだ。」

 

 

「ふむふむ。」

 

 

む~……覚えることが多くて、大変です。

 

 

「さて、此処までで何か質問はあるかい ? 」

 

 

「えっと……雪風はこれからどうすればいいんでしょうか ? 」

 

 

「雪風くんの事情は把握している。記憶が戻るまで、GGGに在籍してもらおうと思っているのだが、どうかね ? 」

 

 

「はい、よろしくお願いします !! 」

 

 

「うむ、元気が良くて結構。

 大鳳くん、このまま雪風くんの案内を任せて構わないか ? 」

 

 

「はい、お任せください !! 雪風さん、ついて来て。」

 

 

「あっ、はい。失礼しました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Another Side

 

 

「さて……猿頭寺くん。彼女が所属していた鎮守府に関する情報は ?」

 

 

雪風と大鳳が退出した後、今まで笑顔だった大河長官の表情が真剣なモノに変わる。

 

 

実を言うと、彼らは雪風に対して1つ嘘を言っていた。

彼女の記憶に関する手がかりを1つ有しているのだが、とある事情からそのことを意図的に隠しているのだ。

 

 

「諜報部隊が調査した鎮守府の中に該当の鎮守府はありませんでした。

 現在、諜報部隊を向かわせていますが、少し時間が掛るかと……」

 

 

「鎮守府もそこそこの数があるからのう。仕方ないじゃろう。」

 

 

コーヒーを飲みながら、雷牙が言う。

 

鎮守府というのは、深海棲艦に対抗するために設立された組織であり、艦娘を統括・運用して、日夜深海棲艦と戦い続けている。その上には、大本営という統括組織がある。

しかし、GGGは他の鎮守府とは異なり、完全に独立している。さらに言えば、その存在を認知されていない秘密結社なのだ。そのため、自由な行動ができる反面、艦娘の運用に必要な資材や食料を自分たちで調達する必要がある。

 

なお、GGGは大本営や他の鎮守府の動向を探るために諜報員を派遣している。

 

 

 

閑話休題

 

 

「そういや、アイツの記憶喪失の原因、心的要因なんだってな。」

 

 

「はい。メディカルチェックの結果、頭部に外傷は見られませんでしたから、ほぼ間違いないかと。」

 

 

「ふむ。心的外傷による記憶喪失、か。」

 

 

そう言って、大河もコーヒーが入った紙コップを口元に運ぶ。

 

 

「艦娘として顕現した後か、それとも船であった頃の記憶によるものか。」

 

 

「大鳳の報告通りなら前者だろうな。

 やれやれ、アイツといい問題を抱えた奴がよく集まるな。」

 

 

火麻の言葉にその場に居た男2人は苦笑いを浮かべた。

 




ガオガイガーの時系列はFINAL後です。
ES空間が消滅する前にジェネシック・ガオガイガーのガジェットツール、ギャレオリアロードでES空間を脱出。その後、艦隊これくしょんの地球に流れ着いている、という設定です。

2016.3.27 改訂。
雪風の一人称を「私」→「わたし」に変更。
艦娘に関する設定の矛盾点を修正。

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