無限なる世界 作:在り来たりな〝ネームレス〟
「ッ―――――――」
声がした方向を向き、
―――――コイツは一体何だ、と。
その麗人、いや、生物はまるで、どうしようも無い天変地異を、世界の真理を、抗おうとも思考出来ない『創造神の力』を、無理矢理人間の形に組み換えた様な
だが、ヘルとボルグは一度、この圧力を感じた事が有った。それは数年前、ヘルを筆頭とする狼達が修行へと出て、帰還した時の事。元々、ボルグの種族【
それは――――
「ッッッ・・・ぅ・・・ァ、ゥ・・っ・・・ぐ・・・ぅァゥぁ・・・っ・・・ぅ。」
ゴウが恐怖していた。いや、恐怖と言うより、絶望に限り無く、近い感情だ。その時、ヘルとボルグが抱いた感情はこうである―――有り得ない。
確かに、ゴウは世界基準で見るとまだまだ弱者である。しかし、ゴウの精神力は世界基準で見ても、最上位に組する強さである。事実、リンの精神干渉系の魔法やスキルを、全て完膚なきまでに
そして、以上の事から判明するのは、二つ。目の前の生物が、ヘルとボルグが測っている以上の力を持つ事。ゴウが、戦闘を出来無い事。
そう理解した二体の動きは、速かった。直ぐ様、【
「止めなさいっっ!!!」
しかし、ヘルが指示を出す直前に、リンの大声が響く。
「一体何のつもりっ!?」
「?・・何の事かしら?」
リンから怒声を浴びせられた麗人は、心底分からないと言う顔をする。
「
麗人の態度に、リンは更に激怒しながら詰め寄ろうとするが、突如としてゴウのを見る。リンの視線がゴウに向けられた為、必然的にヘル達の視線もゴウに向かう。
多くの視線が向けられたゴウは、先程の感情を感じさせず、それどころか、不気味と言っていい程の雰囲気を
「殺す。」
その音は、ゴウに意識を集中させている者ですら聴こえるか聴こえないか、と言う程の音量だった。しかし、ヘル達をも越える驚異的な身体能力を持つ、リンと麗人には、聴こえていた。
ゴウは、恐怖を跳ね返し、
怒りにより強化された肉体を使い、ゴウは、一瞬にして麗人に駆け寄り、拳による打撃を放つ。
「ゴウッ!待ってっっ!!」
リンの制止も
だが、次の瞬間、いや、一秒すら経たない内にゴウは、氷漬けにされる。
「ッッ!何て事をっ!!」
「大丈夫よ、中まで凍らせてないから。」
麗人が言葉を言い終わると同時に、パリッ、バリバリッ、と、氷像に次々に
「っっ・・・・・ッウゥ、
「あら?私の事知ってるの?それに、貴方が先にしてきたんでしょう?」
「はっ!よく言うぜっ。先に仕掛けたのはテメェだろうがよっ!」
「・・・ゴウ。」
冷戦の
「ん?」
「ッ・・・その人、知ってるの・・・?」
ミーセは、麗人の視線に一瞬
「あぁ、知ってる。」
一瞬、何故割り込んで来るのかと、疑問に思うゴウだったが、目の前の麗人が放つ威圧のせいと理解したゴウは、ミーセの疑問に正確に答える。
「
ミーセは、いや、この空間に居る者達は、一筋の希望に賭けて、ゴウの声を聴いていた。
だが、現実は無情で残酷。ミーセ達の希望は、見事に打ち砕かれた。
「「「「「「「「ッッッ!!??」」」」」」」」
ゴウの言葉に、その場に居る殆んどの者が、驚愕する。それもその筈だった。
「・・・しかも?」
「・・・・。しかも
「・・・アリスリー・・・ヴァンパイア・・・?」
「世界に7体しか居ない
ゴウは、最後に思わずと言った風に呟く。
「仕様がないでしょうっ。種族は、どうやったって、変えれないんだからっ。」
麗人は、
「・・・疲れた。そろそろ帰ろう。」
「・・ちょっと、無視?・・ん?・・・んん?・・帰るって事は・・・。」
「どうせ来るんだろうか。」
「ふっ、フフッ!やっぱりっ、私の眼に狂いは無かった見たいねっ!」
「「「「「!!!」」」」」
このやり取りに、周りの者達は、またもや、驚愕する。何せ、あの
「ちょっと待ってっ!!その人も連れて行くのっ!?それにっ、さっきから訳が解らない事が、有り過ぎて、皆混乱してるの。説明してくれるわよね?」
幾ら話に着いていけ無いと言えど、
「・・・。あぁ、そうだったな。じゃあ、まずは、帰ってからその話をしよう。それと、
「・・・・・。」
「大丈夫だ。
ゴウの言葉の前半には納得し、後半には納得していないと言う、顔をしているアンナに気付いたのだろう。ゴウは、再度、声を掛ける。
「・・解った。」
その会話を最後に、帰路の間は、会話が無かった。 様々な理由が在るだろうが、一番の要因は、やはり、ゴウが疲れているからだろう。
廃村と言っていい程荒れた村の地下壕《ごう》に着き、ゴウが、説明を始めた数時間後、説明の終わりが訪れようとしていた。
「――――訳だ。解ったか?」
ゴウの問いに頷く、アンリー達。
「他に質問は?」
そう問いながら、ゴウは、再び周りを見渡す。
「無いな。だったら、さっさと飯でも喰って寝ろ。お前等、自分が思っている以上に、疲れてるからな。後、俺の分は要ら無い。疲れたから寝る。俺の部屋に入って来るなよ。特に、母さん。」
「ッッ!?何でっっ!?」
「言ったろ、疲れてるって。絶対だぞ。解ったな?」
「うぅ~~・・・。」
「解ったな?」
ゴウは、確りと承諾させなければ、忍び込んでくると、身をもって理解しているので、再度問う。
「うぅ・・・解ったわ。」
その言葉を聴いたゴウは、足早に己の部屋に去っていく。一度、視線を横に移してから。
「・・・・来たか。」
「あら?まるで、始めから私が来るの解ってたみたいじゃない?」
深夜、地下壕の一番高い位置に在るゴウの部屋に、一人の客人が訪れる。
「あぁ、解ってた。直感でな。」
「直感?」
「「
「200%?」
「そうだ。この世界の生物の能力は、全てステータスに支配されている。例えば、力が『50』在る者は、『50』以上の力を出せない。だが、殆んど者が、その『50』の力すら出せない。」
「・・・――ッ。」
「それくらい知ってるだろう?」
「フフッ!・・・アッハハハハッ!!想定以上っっ!!!まさかっ、その歳でそこ迄、たどり着いているなんてっ!」
想定を越える結果を叩き出されれば、普通は、動揺するものだが、【
「ふふっ・・・・それで、用は?まさか、こんな話をする為に、待ってた訳じゃ無いんでしょう?」
「無論だ。今のは、序章ですら無い。」
「ふ~ん。じゃ、さっさと話して。どんな話か、とっても気になるわ。」
「じゃあ、質問だ。女を手中に収めるには、どんな方法が在る?」
「女を手中に収める?・・・そうね。金・宝石・男、ぐらいかしら。」
「そうだ。他にも在るが、代表的なのは、その三つだ。そこで、二度目の質問だ。お前は、何を望む?」
ゴウの言葉が終わるのと同時に、ランチェルの顔が、不快の感情で満たされ尽くす。
「・・・詰まり、私を手中に収めると?・・・・解らないわね。私は、貴方の眷属に成ったのよ?貴方に、攻撃どころか、敵対すら出来ないわよ?」
「俺は、
(・・・・。確信が持てないのか、単なる鈍感か、それとも、確信犯なのか、解らないけど、意外と意地悪ね。)
「・・・ハァ。解ったわよ。」
観念した用に呟いた、ランチェルは、服を脱ぎ始める。
「服を脱ぐって事は、俺を選んだって事で、良いんだよな?」
ゴウは、負と正が入り雑じった、複雑な表情をしながら、話す。
「馬鹿っ、女にこんな事させるなんて。こんな事してたら、女が離れていくわよ。」
「んな、
「あら。私も同類と思わないの?」
「ハハッ・・・抜かせ。
「・・・ゴウ?」
そこには、紫黒の霧を
「っ・・まさか、〝瘴気〟・・・?」
〝瘴気〟魔力の上級
「・・かっ・・・さっ・・んっっ」
ゴウは、既に瘴気に侵食去れている身体で、声を絞り出す。
(何時の間に〝瘴気〟をっっ!?)
「何のつもり?」
ゴウの驚愕と苦痛を余所に、ランチェルは、ゴウを護る様に、リンの前に立つ。
「・・・退きなさい。」
「だから、一体―――」
「ランチェルッッ!・・っ・・・退くんだっ。」
「・・・・・っ。解ったわ。」
ゴウの言葉に、反論しようとするランチェルだったが、ゴウの表情を見て思い止まり、リンの前から退く。
「・・・何で?ゴウ。何で?ねぇ、何―――」
リンは、退くランチェルに視線すら合わせず、ゴウに問い掛けながら、詰め寄る。しかし―――
「・・ちゅるっ、ちゅぷっ、ちゅぱっ、・・・じゅるるるる。」
「んんぅ!?・・んっ・・・っっ!?・・・んっ、んんぅ、んんんっ。」
「ん、ちゅっ・・・え、ええ・・・?」
「ごめんな、母さん。母さんの気持ち、忘れてて。」
「・・・許さない。」
「ははっ。だったら、
リンは、決して許した訳ではないのだが、ゴウは、何かを感じたのか、嬉しそうに語る。
「ふふっ、絶対よ。」
「あぁ。」
「ちょっと、何見せ付けてくれちゃってるのよっ。」
目の前で繰り広げられるイチャコラに
「それに、私を忘れてるわよ、私を。」
「・・ククッ・・・だったら、さっさと始めようか。」
そう言うと、ゴウは、移動する。
「たっ、大変だっ!皆に知らせなくちゃっっ!!」
その一部始終を見て居る者の存在に気付かず。
回数を重ねる事にご都合主義を歩んでいる気がする・・・・・・・。