無限なる世界   作:在り来たりな〝ネームレス〟

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襲撃

『*・・*・*・・・**!・・*・・*・・・!』

 

「くっ!・・ぬらあぁ!」

 

 ゴウの力み声と同時に、「血毒の斧槍(ベネノ・ハブルト)」が降り下ろされる。

 

「ギギギガカアァァァァ!」

 

 断末魔が周囲に響き渡ると同時に、、【豚頭人(オーク)】の巨体が崩れ落ちる音が周囲に響き渡る。

 

「はぁ、はぁ。・・くそっ、何なんだ。この声・・?鬱陶しい。」

 

 現在、ゴウは数週間前から続く、声の様な幻聴?に悩まされていた。

 

「くそっ・・。一体何なんだ?「白魔法(ホワイト・マジック)」も効か無いし。・・・・・しっかし、何か居ないのか?強いの。此処等(ここら)一帯の主も殺したしな。」

 

 ゴウは、この数年で此処等(ここら)一帯の全種族を殺し、また、此処等(ここら)一帯の主も殺しており、慢性的な相手不足に陥っていた。

 

「仕方無い、雑魚狩りするか。塵も積もれば山となるって、言うしな。・・はぁ、レベル上がらねぇなぁ・・。」

 

そう言うとゴウは、森の奥深くに入っていく。

 

 

 

――村――

 

「いやーっ、今日も平和だね~。」

 

「そうね~。リンさんが居なくても、ゴウちゃんが要るから安心だしね。」

 

 それは、村人達が平和を謳歌している時だった。

 

「あ、アンナーさんーー!!!た、たた、大変ですぅ!!ハァハァ、盗賊か何か分かりませんけどぉ!人の、フゥ、フゥ、人の大群が攻めて来てますぅ!!」

 

 一人の女が村に走り入り、大声で叫ぶ。

 

「「「「「「「ッッッッ!!??」」」」」」」

 

 村に走り入ってきた女の言葉に、村人達の間に、酷い動揺が走る。

 

「落ち着きなさいっ!・・エナ?どうして、攻めて来たって、分かるの?」

 

 村長は、いち早く動揺から回復し、村に走り入ってきたエナと言う女に詳しい情報を聞く。

 

「そ、それがぁ!ミクさんとナリさんが狩りの途中で、襲われたそうですぅ!!」

 

「襲われた!?二人は、無事なの!?」

 

「は、はいぃっ!ちょっ、ちょっとした、怪我はしたそうですけどぉ、無事ですぅ。今は二人でぇ、ゴウ君を探しているそうですぅ!!」

 

「そう。良かったわ。」

 

「まだ、安心出来ませんよっ!村長!リンさんは、夜まで帰らないって言ってましたし、ゴウ君も今日は森の奥深くに行くって言ってましたよ!?」

 

「そうだっわね。・・・兎に角、今は安全の確保が先よ!私の家の地下壕に逃げるわよっ!」

 

「「「「「「「はいっ!!!」」」」」」」

 

(お願い!!二人共速く帰って来てっっ!!)

 

 

 

 

――?――

 

「で、一体何の用?」

 

 リンは、目の前に居る女房(メイド)服を着ている女に、苛立ちながら、問い掛ける。

 

「リン様、本日は態々(わざわざ)()の様な辺境にお越し頂き、有難う御座います。」

 

 女房(メイド)服の女は、何の抑揚も無く、淡々と答える。

 

「そう言うのは良いから、さっさと、要件を言って頂戴。」

 

「本日お越し頂いたのは、リン様の義理の息子―――」

 

 女房(メイド)服の女の言葉は、最後(まで)続か無かった。

 

「何ですって?・・・ゴウの事?・・此処に来るの嫌だったんだけど、来て正解ね。」

 

「?・・どういう事でしょうか?」

 

「・・だって―――」

 

 リンは、【狂愛なる淫魔(マッドラブ・サキュバス)】の特性である、蝙蝠の羽の様な悪魔種の翼と尻尾を出す。

 

「貴方達の様な(ゴミ)を消せるんだからねっ!!」

 

 次の瞬間、凄まじい威圧と凄まじい量の殺気・怒気が辺り一面を支配する。

 

「あの子はね、私の大事な大事な(モノ)なのっ!それを貴方達みたいな、たかが『神之遣い』に、渡すもんですかっっ!!・・・闇の(けもの)よ、我に仇なす者を、暗黒の世界へ、(いざな)えっ!!『暗黒の世界へ導く闇の猛獸(ヴィダ・クレイブ・ダークネス)』ッッッ!!!!」

 

 スキル「暗黒魔法(ダークネス・マジック)」LV8暗黒属性系統魔法『暗黒の世界へ導く闇の猛獸(ヴィダ・クレイブ・ダークネス)』。

 LV8の魔法にしては派手さは無いものの、最低位とは言え、暗黒属性系統の魔法。村の一つや二つ、簡単に破壊できる威力を誇る。更に、スキル「狂愛者(ヤンデレ・バーズ)」により、強化された基礎ステータスに掛かれば、LV9やLV10の魔法にも勝るとも劣らない威力に成る。

 

「ッッ・・・これは。・・さすが、Sランクの種族、と言う訳ですか。」

 

「ふんっ!Sランク?私達【狂愛なる淫魔(マッドラブ・サキュバス)】の討伐ランクは、SSランクよっ!」

 

「ええ、理解しています。貴女方が生まれながらに保有する、「狂愛者(ヤンデレ・バーズ)」。これは、強化系スキルの中でも、最上級と言っても過言では有りませんからね。」

 

「貴方達は、私の大切な(モノ)に手を出そうとしたっ!私の逆鱗に触れた貴方達は、絶対に生かさない!潔く、死になさいっ!!」

 

 そう言い、暗黒の闇で構築された猛獸をメイド服の女に放つリン。

 しかし、次の瞬間、リンは神々しい光を放つ結界に囚われ、暗黒の闇の猛獸は、結界に当たると同時に霧散する。

 

「ッッ!?・・これはっ!?結界!?まさか、「神聖魔法(セイクリッド・マジック)」のっ!?」

 

「『聖光発する黄金宮の領域結界(スヴェーゼント・ゴルデン・バールガ)』よ。貴女の『暗黒の世界へ導く闇の猛獸(ヴィダ・クレイブ・ダークネス)』程度では、破れないわ。」

 

「貴女はっ!」

 

「お久し振り、【狂愛なる淫魔(マッドラブ・サキュバス)】。」

 

「何故貴女がっ!貴女は独立勢力の筈っ。」

 

()の人の主と、取り引きしたのよ。」

 

「取り引き?・・・・“真祖吸血鬼(アリスリー・ヴァンパイア)”の貴女が、何を欲すると言うの?」

 

「貴女だけでは無い、と言う事よ。王を求めているのは。」

 

「ッッ!!・・それと此とは別でしょうがっ!」

 

「貴女の息子、確か・・ゴウだったかしら?その子の正体知ってる?」

 

「・・・知ってるわ、転生者でしょう。」

 

「その子のステータスに、表示されて無いスキルが有るでしょ?そのスキルが、何か分かる?」

 

「転生者に神之加護を持っていると言う事を合わせると・・・勇者(ブレイバー)英雄(フェーザ)でしょうね。しかも、先天的な。」

 

「いいえ、違うわ。あの子は、『帝王(カイザー)』よ。」

 

「ッッッ!!!・・『帝王(カイザー)』・・ですって・・・!」

 

「そうよ。・・神之加護を受け覚醒した『加護者』には、4つの段階が在るわ。あの子は、その中でも1番上の『帝王(カイザー)』よ。・・もちろん、『帝王(カイザー)』の名に見合う力が絶対に付くとは、限らないわ。でも、『王』に成る資格は持っているのよ。」

 

「ッッ・・・!!」

 

 

 

 

――森――

 

「・・・ん?人間が二人?・・盗賊か?」

 

 ゴウは、森で狩りをしていると、人間の気配が二つ自分に近付いている事に気付く。

 

「ふむ。・・・狩るか。」

 

 数秒考えたゴウは、盗賊を狩ることに決めると、森の茂みに隠れる。

 

「はぁはぁっ。・・一体、何処に―――」

 

「死ね―――って、ミクとナリじゃねぇか。・・こんな(ところ)で何やってんだ?」

 

「ッ!?・・何だ、ゴウじゃないか。脅かすんじゃないよ。」

 

「ちょっとっ!そんな事言ってる場合じゃ無いですよっ!!」

 

「そっ、そうだった!ゴウッ!大変何だっ!村がっ、村が襲われてんだっ!!」

 

「ッッ!!・・チィッ!くそったれが!・・フューッ!お前等、集合だっ!」

 

「?・・・一体、何を――」

 

 ミクとナリが、一体何を集めるのかと聞こうとするが、その言葉は途中で際切られる。

 

「ワオオオオオオォォォォォンッッ!!!」

 

「グルロオオオオオォォォォォッッ!!!」

 

 圧倒的二つの咆哮によって。

 

「「・・・・・ッ。」」

 

 ミクとナリの二人は、動きが止まる。いや、動けないのだ。自分達等眠りながら、しかも、片手間で殺せる存在が目の前に存在するから。

 蛇足だが、ゴウとリンは、普段気配を抑えているので、威圧を感じさせて無い。

 

 二つの圧倒的咆哮と共に現れたのは、魔物の群れだった。しかし、自然には絶対に出来ない群れの。

 魔物の群れには、約3つの影が在った。

 

 一つ、35体の体長4,5メートルの黒い狼、ランクC【黒剛牙狼(ブローファング・ウルフ)】達の影。

 

 一つ、6メートルの漆黒の狼、ランクB【冥府狼(ヘル・ウルフ)変異亜種(ミューバリオス)(デッド)(ダーク))】の影。

 

 一つ、7メートルの黒い光沢を放つ熊、ランクB【黒鋼熊(バスティート・ベアー)亜種(バリアント)(ダーク)(フレイム))】の影。

 

 【黒剛牙狼(ブローファング・ウルフ)】と【冥府狼(ヘル・ウルフ)変異亜種(ミューバリオス)(デッド)(ダーク))】は、以前眷属にした【灰狼の長(グレーウルフ・リーダー)変異種(ミュータント))】達が、種族進化(ランクアップ)した種族だ。

 【黒鋼熊(バスティート・ベアー)亜種(バリアント)(ダーク)(フレイム))】は、新たに眷属にした種族だ。

 

「おい、ヘル。【黒剛牙狼(ブローファング・ウルフ)】を数体、ミクとナリの護衛に付けて、村に行くぞ。」

 

「ガガアァウっ。ガガッアァ!」

 

 ヘルの指示と共に、数体の【黒剛牙狼(ブローファング・ウルフ)】がミク達の近くに移動する。

 

「へ?ちょっ、ちょっとっ!ゴウ!?」

 

「お前等達は、ここら辺で待ってろ。・・大丈夫だ。【黒剛牙狼(ブローファング・ウルフ)】に勝てる奴は、この辺に居ない。」

 

 そう口早に言うと、ゴウはヘルに飛び乗り、村へ向かう。

 

「・・・ゴウは、何時の間に、こんな強力な魔物を使役したんだ?」

 

「・・・え、えっと、ブローファング?さん達ですよね?よ、宜しくお願いします。」

 

「「「「ヴォオッン。」」」」

 

 呆然とするミクの横で、ナリが【黒剛牙狼(ブローファング・ウルフ)】達に、律儀(りちぎ)に挨拶していた。

 

 

 

――?――

 

〔不味い・・・時間がもう・・!・・・急げ!ゴウ!〕


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