IS/Zero   作:小説家先輩

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幕間

━━━side 布仏本音

 

「私はえみやんがいいと思うなー」

 

クラス代表を決める投票で、私は衛宮くんに票を入れていた。

 

衛宮切嗣。ISの二人目の男性適合者。素性は一切不明。

 

一人目の適合者である織斑一夏とは全く異質の存在。同い年のはずなのに周りにまとう空気が全く違うのだ。まるで一般人の中に、一人だけ戦場から帰ってきたばかりの兵士が混ざっているような。

 

(あの子、どこか危ういんだよねー)

 

そう思いつつ、ふと、生徒会長から言われたことを思い出していた。

 

 

「━━━それで、私に話ってどんな話なんですかー?」

 

春休みが終わる直前、私は更識家を訪れていた。

 

「わざわざ、休暇中にごめんなさいね。実は切嗣くんのことについて頼みごとがあるんだけど」

 

会長は申し訳なさそうに口を開く。実のところ会長がこんなに困った顔になるのを私が見たのは、初めてかもしれない。

 

「ほら、彼って見ての通り雰囲気が暗いじゃない?しかもいつも目が死んでるし。わたしは2年生で虚ちゃんは3年生だし生徒会役員であの子のことを見ていられないから、今年入学する貴方が同じ部屋でルームメイトとしてあの子を支えてあげてくれないかしら」

 

「それは、全然問題ないですけどー」

 

私はふと気になっていたことを言ってみる。

 

「どんな生活を送っていたら彼みたいな目になるんですかねー?」

 

会長は少し考えてから、らしくない事を言ってきた。

 

「これは私の勘なんだけど、あの子は相当な数の戦場に立ってきたんじゃないのかな。私は更識家の人間として様々な人と接してきたけど、あんな目をした人間はほとんど見たことがないし。だから、彼にはせめてIS学園にいる間くらいは普通の学生として過ごして欲しいと思っているの。生徒会長としてあんな暗い目をしている人間を放っておくことは出来ないし」

 

なので、私もすこし探りを入れるつもりで

 

「そう言いつつ、会長は彼のことが気になっているんじゃないですかー」

 

と冗談交じりに返答を返したが、

 

「そう……かもしれない。実際、あの子のことが気になり始めているみたいだし」

 

予想外の返事が返ってきた。

 

「え?それはどういう━━━」

 

「……さて、用事はこれだけだからもう帰っていいわよ。今日はわざわざ家に足を運んでくれてありがとう、本音ちゃん」

 

私は会長の答えが気になりつつも、更識家を後にした。

 

……彼がどういう経歴を辿ってきたのか、私が知ることはおそらく不可能だろう。けど、この学園にいる間は私が彼のことをサポートするつもりだ。それが、会長から託されたたった一つの願いなのだから。

 

まずは、彼をクラスに馴染ませることから始めてみようかな。




取り敢えず、幕間を入れてみました。ぼちぼちvsセシリア辺りに差し掛かってくると思います。

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