魔法少女リリカルなのは~踏み台、(強制的に)任されました~   作:妖刀終焉

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すみません、ちょっと遅れました。

そして意外な人気に驚きました。


第3話

 なのはから確実に嫌われたあの日から数日後。俺は真昼間になる頃、海鳴病院に侵入していた。

 なのはがオリ主と会ったからにはもう小学生になるまで近づくのは難しいかもしれない。だから別のところで人知れずなのはからオリ主への好感度を上げてみようかなと思う。あとちょろっとやけくそになった。

 

<それと病院に行くのと何の関係があるんだよ?>

 

「いいからいいから」

 

 誰にも気づかれてないとはいえ大声は出せないから小声で皇帝(エンペラー)を諭す。

 

 俺は現在王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)の中にあった気配遮断効果のある仮面と姿を消すことが出来るマントをつけて病院の中を闊歩している。そして手にはどんな鍵も開けることが可能な鍵とどんな怪我や病気も治す事が出来る霊薬がある。これらの宝具で士郎さんの病室まで誰にも気づかれずに侵入して士郎さんを治療してしまおうと思う。

 

 そうすれば

 

士郎さん全快

   ↓

なのはが「オリ主君のお陰でお父さんが治るまで頑張れたよ」と感謝

   ↓

オリ主は「なのはが頑張って耐えたから奇跡が起こったんだよ」と二人の仲はますます良くなる

   ↓

高町一家は寂しがってるなのはと遊んであげてたオリ主に好意的になる

   ↓

フラグが立った! フラグが立った!

 

 という図式が出来上がる……多分。

 全く俺が得しない結果が生まれるが、功績を根こそぎ奪われていくのも踏み台の役目の一つだ。大なり小なりポイントは稼げるだろう。

 

「ここか」

 

 しばらく歩き回ると高町と書いてあるドアが見つかった。

 ドアに耳を当てて他に誰かいないかを探る……うん、機械音がするだけで他には誰もいないようだ。

 鍵が掛かってるので最後の鍵(俺命名)でドアを開ける。

 

「失礼しますよ~……うへぇ」

 

 士郎さんは全身に包帯を巻いて色んな管に繋がれている。所謂意識が重体という奴だ。さっさと治してしまおう。

 霊薬の入ったビンを開けて、士郎さんに軽く、満遍なく振りかける。霊薬はまだ何本もあるけどだからって一本丸々使うのは憚られた。それに少量でも傷口を塞ぐのには事足りる。多すぎてもどうなるか分からないし、ほどほどに、適量に。

 

「うっ……ううん……」

 

 やったねなのはちゃん! お父さんが治ったよ!

 

 でもはやっ、もう目が覚めたのか。効き目良すぎだろこの薬。流石はギルガメッシュが一生かけて集めた宝具の一つだ。プレシアさんの病気もこいつで治しちまおうかな。

 

「こ……こは? 病……室?」

 

 さて、俺はそろそろ退散させてもらおうかね。

 

 踵を返してゆっくりとドアノブに手を掛ける。

 

「誰だ……そこにいるのは?」

 

 ……はい?

 マサカ、ミエテルンデスカ?

 

「恭也か……? 桃子……? ……いや、小さいな……なの、は?」

 

 まだ意識が朦朧としているのかはっきり視えている訳では無い様子。

 気配遮断が弱かったか? それとも御神の剣士は気配遮断を破れるのか?

 戦闘民族高町パねえっす。

 

 一先ず……よし逃げよう。

 

 病室から出て廊下を早歩きで移動し病院から出ることに成功した。人気のない草むらまで着たら着けていた仮面とマントを脱いで蔵の中にし仕舞って一息ついた。

 

「……はぁ」

 

<おつかれさん、今ので合計13ポイントになったぜ>

 

 皇帝(エンペラー)から発生したポイントについて聞かされる。

 

 3ポイント……か。相変わらず危険度と得られるポイントが割に合わない。裏で小細工してもポイントは低いのかな?

 だとすれば本格的に動くべきは小学校入学してから、そして無印編がスタートしてから。それまでは修行に専念して力をつけようか。

 

「にしても、踏み台は踏み台で大変だなぁ」

 

<『踏み台を演じる』、『ハッピーエンドを目指す』。“両方”やらなくっちゃあならないのが“旦那”の辛いところだな>

 

 なまじ結果を知ってるだけに出来ることならハッピーエンドで終わって欲しいな。プレシアさんとフェイトには和解して欲しい。プレシアさんの病気は薬でどうにかなるとして、アリシアは……どうしよう。死者の蘇生って軽々しくやってもいいもんなんだろうか。う~ん、よくわからん。

 

 今日はもう帰ろう。

 

 

 

 

 私、高町なのは5歳。最近嬉しいことが2つもありました。

 

 一つは新しい友達が出来たことです。お父さんが事故で入院してからは家族の皆は急がしくて、なのはのことを構ってなんて言えなくて。私が我慢すれば、と思って公園にいたけど、やっぱり寂しくて。

 最近になって変な男の子に変なこと言われたりして嫌な思いもしたけど、それを助けてくれる格好良い男の子がいました。

 名前は折木(おれき) 和人(かずと)君っていいます。私に初めて出来た友達です。

 

 もう一つは、なんとお父さんの怪我が治って、近いうちに退院出来るそうなのです。お姉ちゃんに頼んで病院に連れて行ってもらったら元気そうに笑っているお父さんが。

 私は嬉しくて嬉しくて思わず泣いてしまいました。

 

「よかったな、なのは」

 

「うん!」

 

 和人君もお父さんの怪我が治ったことを知ってとっても嬉しそうにしてくれます。

 

 お医者さんは「信じられない、奇跡が起こったとしか思えない」と言ってとっても驚いていました。

 

 そういえばお父さんがとっても不思議なことを言っていました。病気が治って目が覚めたら私と同じくらいの男の子を見たそうです。病院の人は誰も男の子なんて見てないそうですけど。

 

 もしかしたら和人君が魔法とか超能力でお父さんを治してくれたり……なんてそんなことないよね。でもそうだったらいいなぁ。

 

「和人君と友達になってからいいことが続いてるなぁ」

 

「そんなことない。なのはがいい子にしてたからきっと神様がご褒美をくれたんだよ(間違っても俺を転生させた神様はそんなことしないだろうなぁ)」

 

 あの男の子もあれからこの公園に来なくなりました。もし来ても和人君が守ってくれるから、安心して遊べます。

 

 それからお母さんやお姉ちゃん、お兄ちゃんともちゃんと話すようになりました。和人君も一緒に来てくれたお陰で、皆に今まで我慢してたこと全部話す勇気が出ました。お母さんもお姉ちゃんも「気づいてあげられなくてごめんなさい」って、お兄ちゃんは「放っておいてすまなかった」って口々に謝っていました。私がちゃんと皆に言っていたらもっと違った結果になったかもしれない。言葉にしなくちゃ伝わらないこともあるんだなぁ。

 

 私はとっても弱虫で、臆病者で。いつか和人君の様な優しくて勇気のある格好良い人になりたいって、気がついたら思うようになってました。

 

「今日は何して遊ぼうか?」

 

「う~んと、じゃあ鬼ごっこ!」

 

「鬼ごっこ? 二人しかいないのにか?」

 

「じゃあかくれんぼ!」

 

「同じだ」

 

「じゃあ公園の皆も誘おう」

 

 ちょっと前までの私だったらそんなこと出来なかったかもしれない。

 

 今日も日が暮れるまで和人君や公園の皆と遊びました。

 こんな日がいつまでも続くといいな。

 

 

 

 

「だだい゛ま゛あ゛」

 

 疲れた。精神的にも、肉体的にも。

 

 先は長い。今は録画したスクライドでも観て精神力を回復しよう。

 

「あら、おかえり」

 

 テレビのある居間へ行くと銀色のふわっとした髪とルビー色の瞳をした美少女……の様に見えるが、れっきとした俺の母、神代 エリスが録画したドラマを観ている。今年30歳になる筈なんだけど十代で通るだろこの人。

 

 チッ、一足遅かったか。これじゃあスクライドが観れん。

 

「何処行ってたの?」

 

「……散歩」

 

「散歩好きねぇ」

 

「ドラマいつ終わる?」

 

「今いいところだからあと一時間待って」

 

 母はどうやらテレビの視聴権を俺に譲渡するつもりはないらしい。最近は韓国ドラマに嵌ってるらしく、現在観ているのが『宮廷女官になった少女が数々の策謀に翻弄されつつも強く生き抜こうとする』というお話。権力争いのドロドロした部分がなかなか面白い。一週目は智葉と一緒に観てたけど母さんは何度も観直して今回で3週目。流石に俺も智葉も一緒に観ようとはしなかった。

 

 仕方ないので部屋に戻ってこれからのことを考えよう。幼少期にやれることは粗方やった。アリサ、すずかと会うには小学生になってからの方が良さげだよな。いきなり見ず知らずの子どもがやって来て会ってくれるわけない。嫌われる以前の問題だ。フェイトなんてどうやって時の庭園に行けばいいことやら。はやてはまだ猶予もあるしいいだろう。

 

「お兄ちゃん? 帰ってたんだ」

 

 部屋のドアを開けようとしたら、智葉に声をかけられる。

 

「智葉か……」

 

「最近様子がおかしいけど、何かあったの? 誕生日もあんまり嬉しそうじゃなかったし。もしかして私があげた誕生日プレゼントが気に入らなかった?」

 

 誕生日プレゼント……ああ、あの蛇の抜け殻か。渡された時はビックリして腰を抜かしたよ。何処から拾ってきたんだろうあんな立派な抜け殻。財布に入れるとお金が入ってくるらしいけど1メートル位あるから入らないし。

 

 現在は宝具を使って壊れないように固定した後、去年にカブト虫を飼ってた虫かごを綺麗に洗って、それに入れて部屋に飾ってある。

 

「違うよ、スクライド観ようと思ったら母さんが」

 

「ああ、テレビ占領してたの」

 

「それでやることがなくなってな」

 

「それじゃあさ、オセロやらない?」

 

「……そうすっか」

 

 二人は夕飯までの時間をオセロで遊んで潰した。

 熱中していたら思わず本気(ガチ)でやって智葉を泣かせてしまい、母さんに怒られた。

 

 そして智葉の機嫌を直すために俺の夕飯の唐揚が三個犠牲になったのだった。

 

 ……本当にどうしてこうなった。

  

 

 

 そして時は進み、俺と智葉は私立聖祥大附属小に入学することになる。




王の財宝って基本なんでも出来そうですよね。

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