戦姫絶唱シンフォギアー狂ったココロー   作:マンセット

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第六話 破局

 

 

私は弦十郎さんを説得しなくちゃいけないのに、半ば強制的に部屋に帰された。

そして、今扉の前に居る。

 

この先には、きっと未来がいる。

私の事は、既に弦十郎さんから聞いてるらしい。

 

間違いなく怒ってるだろう、そしてそれ以上に苦しかったはずだ。

私はこのままだと、間違いなく未来を苦しめ続ける。

だから、私から伝えないと―――

 

 

「ただいま。…未来、いる?」

 

「何?私に話しかけないで。私、全部知ってるんだよ?響が

私に内緒でしてた事」

 

「うん、弦十郎さんから聞いた」

 

「なら、なんでそんな声が出せるの!答えて、響!」

 

「そうだよね、おかしいよね。でも、私未来に伝えなきゃい

けない事があるんだ」

 

「言い訳なんて聞きたくない!」

 

「言い訳じゃないよ。だって、お別れの言葉を伝えたいんだ」

 

「え…?」

 

 

未来は私の突然の言葉にその動きを止めた。

 

 

「私、未来を一杯傷つけた。そして、このままだと、ずっと未来を傷つけ続けないと

いけない。私そんなの嫌だよ。だから…。私、もう友達でいられない」

 

「響…?」

 

「私の人助けで未来が苦しむなら…。私、未来の友達じゃいられない」

 

「嘘…、だよね?」

 

「私は本気だよ?だって未来の友達じゃなくなれば、未来は暫くは落ち込むだろうけど、絶対

皆が助けてくるって信じてる」

 

「嫌、嫌だよ。響…」

 

「私、助けなきゃいけない子がいるの。だから、もう私達さよならしよう?」

 

「もう、駄目なの?本当にお別れしなきゃいけないの?」

 

「私だって嫌だよ、苦しいよ、悲しいよ。でも、これ以上私未来を傷つけたくない!私は、クリス

を見捨てたくない!」

 

「…わかった。響が決めたんだよ、もう戻れないんだよ?それでもいいだよね?」

 

「うん、今までありがとう未来。そして、さよなら」

 

 

その言葉を聞いた未来は、泣きながら下のベットに潜り込んでしまった。

これで良かったんだ、もう未来は私に縛られる事は無い。

でも、この胸にあいた穴はどう埋めたらいいんだろう?

クリスなら答えてくれるだろうか?

 

 

 

 

 

「度重なる失敗を重ねてきたのに、良く予算がおりましたね」

 

「私達後が無いもの。なりふり構ってられないわ」

 

「残った聖遺物は2つ、1つは響ちゃんのガングニール。でも、これは

今は取り出せないイレギュラーな物。残った正式な聖遺物は第一号聖遺物

「 天羽々斬 」だけですからね」

 

「これが敵の手に渡るのだけは、何としても阻止しなければならない」

 

 

こうは言ったが…。

正直な所、俺にはこの工事が必要だとは思えん。

ハッキングこそ許しはしたが、まだ1度も侵入された事が無い本部を

増設してなんになる?

 

ここ最近の了子君の動きは不審な点が目立つ。

まさかとは思うが、了子君が内通者なのか…?

米国が動いているとの情報も掴んでいる以上、ここは警戒するべきか。

 

俺は湧き上がる疑念を払いつつ、次の指示を出す事にした。

 

 

 

 

 

あれから数日たった。

響は、今だあたしの前に姿を現しては無い。

やはり響の言葉は嘘だったのだろうか?

 

いや、ここに響が来ていないし、あたしの事もばれた様子は

無い以上疑う事は早計だ。

それに、元々困難な話なのだ。

拒否されてたって何らおかしな話じゃない。

 

だけど、この胸に燻る思いはどうすればいいんだ?

あたしは響と出会って、弱くなってしまったのかもしれない。

でも、それが間違いだとあたしは思わない。

だから早く会いたいよ…響。

 

 

 

 

 

「どうしてですか!どうしてクリスを保護できないんですか!」

 

「少し落ち着きたまえ、響君」

 

「私は落ち着いています!」

 

 

ここ数日彼女と話を続けているが、話し合いは平行線をたどっている。

彼女の主張は一貫して、雪音クリスの全面保護である。

 

俺だって彼女の気持ちはわかるつもりだ。

だが、今回は気持ちだけでは解決しない問題がある。

 

「デュランダル」に至る手掛かりは今だ手に入っていない。

米国も不穏な動きを見せている今、彼女からの情報は何としても欲しい。

 

だが、ここまで頑な響君を説得するのは無理だろう。

俺は響君に嘘をつくかどうかで迷っていた。

 

嘘を着くのは簡単だ。

だがその結果は間違いなく響君の心を壊すだろう。

そう、「壊す」だ。

 

報告によると、響君とその友達との間に何かあったのか不明だが

仲違いしたのだろう。

今、響君は学校で完全に孤立している。

いや、響君の方から望んで孤立しにいってると言っていいだろう。

一体何が彼女をそうさせているのか俺には分からないが、いい傾向と

はいえないだろう。

そんな状態でここで心の支えにしてる雪音君を自分の行動によって失

えば、確実に壊れてしまう。

俺の想像以上に追い詰められた響君を帰したことで、取り返しのつか

ない結果になってしまった。

 

その為、既に発見した雪音君に手を出せずにいた。

下手に手を出した場合、響君がどうなるか予想できないのだ。

 

進退窮するとはまさにこの事だ。

 

一分一秒が惜しいこの状況で何を馬鹿な事を言われるかもしれない

が、俺は大人だ。

子供を騙すことが仕事じゃない。

 

結局の所、この話し合いはパフォーマンス。

今も朔也が関係各所に根回しを進めているはずだ。

これさえ終われば雪音君を迎え入れる事ができるだろう。

 

だが、その時に俺はこの場にいるだろうか?

そんな考えても無駄な事を、ふと思ってしまった。

 

 

 

 

 

「ノイズの出現を確認!」

 

「通報によるとノイズは現在、移動を続けてるとの事です!」

 

「更に複数のノイズの反応を確認!」

 

「複数のノイズは、いずれも東京スカイタワーを

目指してるようです!」

 

「翼と響君を向かわせるんだ!」

 

「了解!」

 

 

突然のノイズの出現、現在3か所でノイズが確認されてるが

いずれも何か目的でもあるかのように移動を続けている。

 

しかも、これまでより明らかに遠い。

この意味がもたらすのは明白、あれは陽動だろう。

唯でさえノイズは放置できない上、東京スカイタワーに被害が

出れば、俺達の行動が大きく制限される。

 

だが、これはチャンスでもある。

敵が動いたと言う事は、向こうの準備ができたと言う事だ。

 

どの様な事が起こるにせよ、ここは1つ乗ってみるべきだ。

その結果どの様な事が起こるにせよ、ここで決着をつける。

 

 

 

 

 

ウー!

 

「ノイズ警報が発令されました。付近の方は最寄りのシェルターまたh…」

 

 

鳴り出すサイレンとノイズ警報の避難勧告。

フィーネの奴、とうとう動きやがったな。

居場所は分かってるが、あたしは響が心配だ。

 

響はきっと、陽動にあてられるはず。

あたしは響を見殺しにしない為にも駆け出していた。

 

 

 

 

 

ヘリで向かう道中、私と翼さんは無言だ。

私はクリスを庇っている、その事が翼さんの逆鱗に触れたのだ。

 

翼さんにとって、私はノイズとさほど変わらないのかもしれない。

それでも今は味方と思ってるのか、斬りかかられはしない。

必死にこらえているのか、ただ徹底的に無視されているだけだ。

 

私はクリスと出会って、様々な物を失ってるのかもしれない。

でも、それでも私はクリスを助けたいんだ。

一度知ってしまったからには、無視することなんてできない。

 

 

 

 

 

今、私は必死に堪えている。

出ないと立花に斬りかかりそうだからだ。

 

立花が庇ってる「雪音クリス」

彼女のせいでおじ様は窮地に立たされている。

 

彼女が奪った「デュランダル」

その責任追及の声が上がっているのだ。

 

考えてみれば当然の話だ、せっかく護送の計画を建てたのに

みすみす奪われた組織の長なぞ、どうして残しておけるのか。

 

今交代するのは事件の尻拭いが有るので、あまり大きな声が上がって

いないが、この事件が終わればおじ様は間違いなく指令の座を追わ

れるだろう。

 

私は…、不甲斐ない自分を許せない。

そして、このような事態を起こした雪音クリスを許さない。

彼女は唯の先兵に過ぎないが、実行したのは彼女だ。

 

おじ様も彼女の事は庇っているが、関係ない。

見かけ次第捕縛して、その背後の人物を吐かせてみせる。

立花が邪魔立てしたとしても構うものか。

そうしないと、おじ様の立場が無いのだから。

 

 

 

 


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