戦姫絶唱シンフォギアー狂ったココロー   作:マンセット

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第五話 突然の開放

 

 

 

あの後無事デュランダルを強奪してきたが、正直な話あたしは一杯一杯だった。

適合しているとはいえ、イチイバルとあたしの相性はいいとは正直な話言い難い。

あいつとの勝負で加熱していたとはいえ、あれはやりすぎだった。

我武者羅な攻撃は、バックファイアであたしを蝕む。

あの攻撃で倒れて無ければ、負けてたのはあたしだっただろう。

 

また、フィーネにも怒られてしまった。

あたしがアーマーパージした事で、二課にあたしの正体と聖遺物「イチイバル」の

存在がばれてしまったからだ。

 

フィーネ曰く、一度目の襲撃は本部にハッキングし、あたしの顔が分からない

ようにしていたらしい。

何故そんな手間をしたのかは教えてくれなかったが、これであたしは行方不明者

からお尋ね者になったわけだ。

 

散々やらかしているのだ、今更気にすることではない。

あたしの治療があったせいで多少の遅れが出たが、今は大事な作業をしているのだ。

集中しないと、あたしでも失敗するだろう。

 

なにせ完全聖遺物「デュランダル」を起動するのだから。

 

 

 

 

『それで、準備はいい?』

 

「ああ、大丈夫だ。いつでもいけるぜ」

 

「は、はい。私も大丈夫です」

 

『そう。それじゃ、さっそく初めて頂戴』

 

 

今回の起動実験には、信じられない事に響も一緒だ。

なんでも、この実験を最後に返してやると約束したらしい。

 

あたしとしては完全聖遺物相手に慣れない二重奏(デュオ)より

は独奏(ソロ)の方がいいんだが、フィーネは此方をご所望の様だ。

 

そして始まる、初めての二重奏。

だが、響と2人だと何処までも歌える気がしてくる。

響の方を見ると、響もあたしと同じような事を思っているのだろう

表情をしている。

 

高鳴る想いを歌に込め、私は歌う。

初めての友達である響と共に。

その想いは歌に乗り、デュランダルに力を与えていく。

そして、ついにその時は訪れた。

 

 

『…実験は成功よ。デュランダルは起動したわ』

 

「そっか。なら響はどうすればいいんだ?あたしが解放すればいいのか?」

 

『ええ、それでお願い。勿論、目隠しして離れた場所で解放なさい。ここがばれる

のは、まだ困るわ』

 

「了解。で、あたしはその後どうすればいいんだ?」

 

『…好きになさい。ここに戻ってくるのはダメよ。もうすぐ手癖の悪いお客様を

迎えなきゃいけないから。それと、イチイバルは餞別としてあげるわ』

 

「そーかい。ま、今までありがとよ」

 

 

あたしにとって、これは意外だった。

どうせ響はだまして米国辺りに渡し、あたしはノイズでお陀仏だと思ってたのに。

 

響の方は突然の開放と、あたしとフィーネの破局に目を白黒させている。

何か言いたげだが、あたしが強く引っ張るとおとなしくついてきてくれた。

そして、あたしは響と共に長らく生活の拠点であった屋敷を後にした。

 

 

 

 

 

「ま、このあたりでいいだろ。ほら、仲間の下に行くなり好きにしろよ」

 

「クリスはどうするの?」

 

「あたしか?あたしは暫く身を隠すさ。お尋ね者だし、とっ捕まりたくは無いからな」

 

 

あたしは適当な街の近辺で響を開放しようとしたが、響の方から待ったが入った。

お人よしの響の事だ、あたしの事が気になるのだろう。

 

 

「なら、私と一緒n…」

 

「おい、響。てめぇ、いい加減にしろよ?あたしはあんたを襲ったし、あいつ等から

デュランダルだって強奪したんだ。今更どの面下げていけっていうんだ?言っとく

が、あたしはフィーネを売らないぞ」

 

「そんな事わかってる!」

 

 

こいつは驚きだ…、まさか分かった上で言ってるとは。

あたしがこいつと共に行く場合、最低でもデュランダルの手掛かりは掴めないといけない。

完全聖遺物だ、明確に強奪されたとなれば諦めるはずがあるまい。

ならば、あたしの口を割らせるしかないはずなのだが。

 

 

「で、響はどうするってんだ?」

 

「私が皆を説得してみせる!クリスは私が守るんだ!」

 

 

あたしは響の言葉に眩暈を覚えた…。

確かに、あたしは響と友達だ。

だが、この想いはまっとうな友達と呼んでいいのだろうか?

 

それに、もし本部に戻って響の気でも変わったらどうなる?

説得できなかったり、響が騙されたりしてらどうなる?

その時は、あたしが間違いなく破滅するだろう。

どんな目に合うかは不明だが、ろくでもない事は間違いない。

 

だけど…、あたしは響を信じてみたくなった。

何と言っても初めての友達なのだ。

その友達の言葉を疑うなんて、あたしには出来ない。

あたしのココロのバランスの為にも…

 

 

「…わかった。だが、あたしは直接は向かわない。響が説得できたと

確信を持ってからだ」

 

「そうだよね、クリスだって不安だよね」

 

「ああ。だから、その時の待ち合わせは…ここでいいか?」

 

「ここって…、ふらわー?」

 

「ああ、響の付近だとここのお好み焼きが一番うまいからな」

 

 

待ち合わせは、響が分かりやすそうな場所にした。

危険は承知の上だ、それに響が分からなければ意味がない。

幸い響はこの場所を知っていたようだった。

その後、響と少し話してからこの場を離れる事にした。

 

 

「んじゃ、あたしはいくよ」

 

「うん、待ってて。私、必ず説得してみせる!」

 

「ああ、期待せずに待ってるさ」

 

 

 

 

 

「響君が見つかっただと!!」

 

「はい、現在こちらに向かっています」

 

「指令、響ちゃんは相手から解放されたようですが、いったい

どんな目的なのでしょうか?」

 

「俺にもわからん…」

 

 

長らく行方の分からなかった響君の発見。

これは喜ばしい事だ。

だが、敵の狙いはなんだ?

何故突然開放する?

ただでさえ貴重な適合者、しかも初症例である

融合症例の響君をだ。

 

その正体が知れれば、米国だって黙ってはいないだろう。

二課の総力を持って遮蔽には気を使ってるが、この状況。

一連の敵の敵の動きが、俺には理解できん。

 

程なくして響君は戻ってきたが、彼女はとんでもない事を言いだした。

 

 

「響君は、雪音クリス君の保護を俺達に頼みたいのか」

 

「はい!私約束したんです、絶対説得するって!!」

 

 

響君が言うには、一連の黒幕はフィーネという女性らしい。

雪音クリスは彼女の為に行動していたが、デュランダルを起動させた

事により響君と共に放逐、その為俺達に保護をしてほしいと言う。

 

保護自体は俺としても賛成だが、条件が問題だ。

1つは彼女に対し、一切の質問をしないで欲しい。

もう1つは、彼女のギアを取り上げないで欲しいというものだった。

 

ギアついては別にかまわない、彼女は貴重なノイズと戦える適合者だ。

多少問題はあるが俺達には手が足りてないのだ、あって困ると言う事無い。

 

だが、質問をしない…この要求は飲めない。

彼女は響君だけじゃなく、「デュランダル」も強奪している。

あれはEUとの国際問題になりかねない物だ、政府からも奪還を厳命されている。

 

そのデュランダルの手掛かりである彼女に対して、不問というのは余りに

虫が良すぎる。

それに、翼も納得しないだろう。

雪音君の事は俺も気になっていたが、状況が状況だ。

ここは響君を説得するしかないが、彼女は極度の興奮状態の様だ。

 

一旦、落ち着いて話をしてもらう為に部屋に帰ってもらった。

響君の帰りを待つものがいるのだ、この判断は間違いではないとこの時の

俺は思っていた。

 

だが俺は、響君の精神状態を見誤っていた。

それが、響君を追い詰める事になるとも知らずに…

 

 


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