戦姫絶唱シンフォギアー狂ったココロー   作:マンセット

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第十一話 繋ぐ歌

 

 

先ほどから立花の攻撃を防いでいるが、状況は芳しくない。

なにしろ防戦一方なのだ、良くなるはずがない。

そこに、フィーネから挑発の言葉が投げかけられる。

 

 

「どうだ、立花響と刃を交えた感想は?お前の望みだったろう?」

 

「黙れ、私はこのような形での戦いは望んでいない!」

 

 

確かに私は立花と刃を交える事を望んだ。

だがしかし、それは立花の決意を知る為の物。

断じて、このような無意味な争いがしたかったわけではない。

 

 

「まぁそんな事、私にとってはどうでもいい話だ。それより、そろそろだぞ?」

 

「何?っ!まさか!」

 

「そうだ、カ・ディンギルが次なる一撃を。今度こそ、月を穿つ一撃を放つのだ!」

 

 

フィーネは勝ち誇るように声を上げる。

そして、その声に呼応するかのように輝きだすカ・ディンギル。

私の前には暴走し我をなくした立花が居る。

このままでは、カ・ディンギルの次なる一撃を止める事は出来ない。

しかし、このままで良いはずがない。

雪音は命を賭してカ・ディンギルを一撃を阻止したのだ。

 

 

「だが、お前を倒せばカ・ディンギルを動かす者はいなくなる」

 

「どうやって倒すのだ?立花響すら止めれぬ程度の力で」

 

 

確かに私は立花を止める事も、正気に戻すことも出来ていない。

だが、手が無いわけではない。

危険は伴うし、今の立花を止めきれるかは不明だが1つだけ方法がある。

迷っている時間は無い、私はここで諦めるわけにはいかないのだから。

 

私が決意を固めると、再び攻撃してくる立花。

それに対して、私は地面に己の剣を突き刺した。

これから私がする事に、邪魔になっては困るからだ。

そんな私の行動に気にもせず、立花は突っ込んできてそのまま私の胸にその

一撃を振り下ろした。

 

飛び散る鮮血、私は少なくないダメージを負ったがこれで立花の動きを

止められる!

私は立花をそのまま胸元に引き寄せ、片方の手で素早くギアから小刀を取り

だし立花の影に突き刺した。

 

             [影縫い]

 

その間、立花からの抵抗は無かった。

私を傷つけたことで、心に迷いが生じたのだろうか?

だが、今はそれを考えている暇はない。

 

 

「ふん、影縫いか。どちらか倒れるかで続くかと思ったが、つまらん結果だ」

 

「待たせたな。決着をつけさせてもらう」

 

「じゃれ合ってればいいものを。まぁ、いい。剣と豪語する貴様1人で私を

止めれるのか、みせてもらおうじゃないか」

 

「ならば私の剣、その身で受けてもらう!」

 

 

そう言って、私は勢いよくフィーネに向かい飛び上がった。

そんな私を迎撃するために放たれる2本の鞭。

私は剣でそれを打ち払い、フィーネ目がけて剣の雨を降らせる。

 

               [千ノ落涙]

 

伸びきった鞭では防ぐことが出来ず、フィーネは横に飛ぶことで回避する。

当たりこそしなかったが、態勢を崩すのには十分。

更に追撃する為、相手の着地前にその場所を予想して次の技を放つ!

 

               [蒼ノ一閃]

 

相手の着地と同時に着弾する斬撃。

フィーネは吹き飛ばされ、カ・ディンギルに叩きつけられる。

私はそれを確認した後、一度着地し再度跳躍。

剣を巨大化させ、フィーネに対して投げつけ自身もその剣の上に乗り突撃する。

 

               [天ノ逆鱗]

 

吹き飛ばされ態勢を建てなしたばかりのフィーネだが、この攻撃に反応し鞭の陣

を組み防御の姿勢に入る。

しかも今回は念を押したのか、三重に重ねての展開で…だ。

激しくせめぎ合う剣と陣、このままではらちが明かない。

この間にもカ・ディンギルはその光を増し、その一撃を放たんとしているのだから。

ならば!

 

私は陣に阻まれている剣を足場にし、一気にカ・ディンギルを壊す為に跳躍、二振り

の剣を出し炎を纏わせ炎の鳥のように飛翔した。

 

               [炎鳥極翔斬]

 

カ・ディンギルを壊す為に天高く飛翔する私、遅まきながら目的に気が付いたフィーネが

鞭による渾身の一手を放つ。

どんどん私に近づく2本の鞭、だがそれに捕まるわけにいかない!

 

鞭と接触使用とした時、私は体を捻る事でその攻撃をギリギリで回避した。

そしてついに、カ・ディンギルに対して必殺の一撃を解き放つ!

 

               [蒼ノ一閃]

 

蓄えられたエネルギーに私の一撃が加わり、カ・ディンギルは強力な光と轟音を放ち

つつ崩壊する。

その凄まじい勢いに、半ば特攻のような攻撃をした私は飲みこまれていった。

 

 

 

 

 

馬鹿な、ここまで来て!

計画は完璧だったはずだ、なのに何故カ・ディンギルが崩れるというのだ!

私の胸には、ただだた理不尽な現実に対して気持ちが追いついてなかった。

クリスは地に堕ち、立花響は暴走し、残るは風鳴翼ただ一人。

たかが玩具1つにこの完全聖遺物を身に纏った私と、カ・ディンギルが敗れ去るなどと!

 

これでは、私は何のためにここまでやってきたのだ…?

夢の為に周りを欺き、他者を踏み躙り、クリスを捨て、ようやく後一歩の所まで来たと

言うのに!

何故だ、何故私がこの様な目に合わねばならないのだ!

私は想いを届ける事すら出来ないのか!

何故ここまで苦心し、犠牲を払った私に更なる試練が与えられねばならないのか!

私が甘かったから?

私がクリスを生かし、立花響を開放したのがいけなかったのか?

私のわけのわからぬ感傷が、この結果を招いたとでもいうのか?

次第に私は、胸に怒りの炎が湧き上がってくるのを感じた。

 

そんな私の視界の先に、ギアが解除された立花響の姿が映った。

あいつを、あいつを生かして帰したから私の計画が狂ったのだ!

私は怒りに任せ、立花響を何度も蹴りつけた。

 

まるで抜け殻のような立花響は、私に抵抗する事無く蹴られ続ける。

その事が、私を一層苛立たせる。

この様な奴等に私の想いを砕かれたというのか!…と。

 

…もういい、まだデュランダルは失われてないのだ。

こいつを殺して、一旦ここは隠れればいい。

ソロモンの杖・デュランダル・ネフシュタンの鎧3つの力があれば

カ・ディンギルの再建とてできよう。

この国で無理なら米国、それでも無理なら最悪私が直接月を叩いてくれる!

恐らくそこまですればこの肉体は持たぬだろうが、次を待てばいい。

私の魂は不滅なのだから。

 

放心した立花響に対し、その身を二つに引き裂くため私は鞭を振り下ろす。

ガングニールと融合してる為か、無駄に頑丈な体だが生身でこれは耐えれまい。

しかし、その試みは銃弾の雨によって防がれる。

その発射元に視線を向けると、そこにはボロボロになったイチイバルを纏う瀕死としか

言いようのないクリスの姿があった。

 

 

 

 

 

「何呆けてんだ、響」

 

「クリ…ス?」

 

「生きてたのね、クリス」

 

「勝手にあたしを殺すんじゃねぇ。ま、見ての通り喋るのも辛い状態だけどな」

 

 

意識がきちんと覚醒したから急いで響の所に向かったんだが、響はなにやってんだ。

人気者の姿もねぇし、おまけにカ・ディンギルは壊れてるときた。

恐らく人気者がカ・ディンギルを壊したんだろうが、まさか壊した勢いで

瓦礫にでも埋まったのか?

 

響はあたしの方に首を向けてるが、眼に生気がねぇ。

あれが響の目だってのか?

ふざけるんじゃねぇ!

あたしは響を問い詰めたかったが、フィーネの方は待ってくれそうになかった。

 

 

「ボロボロになって、その状態で何ができる」

 

「確かに、いつ死んじまってもおかしくないね。あたしは響の声が聞こえたから

無理してきてやっただけだ、フィーネとやり合うだけの力は残ってねぇよ」

 

「ならそこで見てなさい、私の想いを邪魔した者の末路を!」

 

「そいつは出来ない相談だね。まずあたしが響を問い詰めなきゃいけねぇ

んだからな。…響、なんでギアも纏わず呆けてるんだ?響は皆を守るんじゃ

なかったのか?答えろよ響!」

 

「それ…は。私、翼さんを傷つけた。それで、翼さんが居なくなった。クリスも居なくなった

し、学校も壊れて皆も居なくなったから…」

 

「だから諦めたってのか?確かに学校は壊れてるし、あたしも姿を見せれる状態じゃ

無かった。だけどな、あいつがそんな事きにするのか?本当に人気者は居なくなったのか?響が

守りたい皆は本当に居なくなったって思ってるのか?確かめもせずに諦める気かよ、響!」

 

「ごちゃごちゃと…。耳障りだ!」

 

 

カ・ディンギルが潰れて頭に血でも上ってるのか、全く余裕が見えないフィーネがあたし

目がけて2本の鞭を振り下ろしてきた。

何とか避ける事だけは出来たが、その先で身体から地面に激突した。

 

元々、ここに来るだけでも何度意識を失いそうになったかわからない状態だ。

ギアを纏えてるだけ奇跡と言ってもいい。

だけど、あんな響をほっとくわけにはいかない。

 

そんな焦る気持ちと裏腹に、あたしの体はもう指1つ動かす力が無い。

更に、フォニックゲインを維持出来ずギアすら解除された。

これであたしに響を助ける手立ては無くなった。

 

もう駄目なのか…?

そう思った時、何処からともなく歌が聞こえてくる。

 

1人2人じゃない、何人もの人間による歌だ。

一体誰だ?

何処から歌っている?

何のために歌ってるんだ?

 

その答えは、すぐわかる事になる。

 

 

 

 

 

学校が壊れてて、皆が居なくなって、クリスも居なくなって、私が

それに耐えきれなくなったのを翼さんが止めてくれて、でもその翼さん

も居なくなってどうしていいか私には分からなくなってた。

 

でも、違った。

クリスは生きていた。

ボロボロになってたけど、私の為に無理して来てくれた。

 

そして、この歌。

私立リディアン音楽院の校歌を歌ってるのは、私が守りたかった皆だ。

皆生きてた、そして多分私の為に、私達の為に歌ってくれている。

 

だから…

 

 

「まだ歌える、頑張れる、戦える!」

 

 

 

 

 

ようやく、響の復活か。

あたし1人の力じゃ無理だったのが悔しいが、響は今の方が絶対にいいからな。

 

フィーネの奴は突然復活した響に狼狽えてやがる。

心が折れてたのにいきなり復活とか、フィーネにしてみれば理不尽な事だから

仕方がないか。

 

見ればカ・ディンギルの瓦礫の方から青い光が見える。

あの歌は、人気者にも効果があったんだな。

 

アニメならここであたしも復活!

…なんだろうが、あいにくもう意識すら危うい。

だから、最後に響に声をかけるとしよう。

 

 

「響、あたしはもう見て無くても大丈夫だよな。あたしは

限界だし、一足先に休ませてもらうぜ」

 

「クリス…。わかった、私が絶対皆を守るから!」

 

「それだけ意気込んでれば大丈夫だな、後は人気者と2人で任…せ……」

 

 

あたしは言いたい事だけ言って、その意識を手放した。

目をあければ、きっと響が勝っていると信じて。

 

 

 


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