戦姫絶唱シンフォギアー狂ったココロー   作:マンセット

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あたしは自分でいうのもなんだが、ずれた子供だったと思う。
皆と笑顔で遊んだりして日々を過ごしてたが、どうしても何処か
物足りなかったのだ。
まるでパズルのピースが欠けたように、いつも心に隙間があった。

何故?と問われたらあたしにも答えられない。
別に両親とも仲が悪いわけじゃない、むしろ愛されてると断言できる。
両親は有名らしく忙しいが、あたしに時間の限りかまってくれる。
普通に暮らしてたら、あたしのこの胸につかえる思いもそのうち無く
なっていたかもしれない。

だけど、あたしは知ってしまった。
大好きなパパとママの命と引き換えにして…。


第1章 歪む心ー私、未来の友達じゃいられないー
第一話 出会いと誘拐 


 

 

 

「貴女が攫ってくるのはこの少女よ。出来るわよね、クリス」

 

「あぁ、楽勝だ。で、こいつを抑える手錠とかねーのか?」

 

「そんなのは無いわ、貴女が痛めつけて連れて来ればいいだけの話よ」

 

「おいおい、無茶言わないでくれよ。こいつ聖遺物がくっついてる化物だって、フィーネ

が教えてくれたんだろ。もう一人相手しつつとか、あたしでも厳しいぜ」

 

 

あたしは今、育ての親とも言うべきフィーネからとある人物の誘拐を命令されている最中だ。

楽勝とはフィーネには言ったが、相手はギアが身体にくっついてるびっくり人間だ。

幸い素人らしいが、もう一人余計なおまけ付きときてる。

手っ取り早く「枷」が欲しいんだが…

 

 

「それをどうにかするのが、貴女の役目よ」

 

「なら、こいつに家族とか友達とかいねーのかよ?それ、口実に脅すからさ」

 

「そうね…。なら、この子なんてどうかしら?随分仲がいいみたよ」

 

 

そう言ってフィーネは、簡単なプロフィール付きの写真をあたしによこしてきた。

最初から用意していたのだろう、相変わらず性格の悪い奴だ。

 

 

「なんだよ、あるなら最初から渡してくれてもいいじゃねーか」

 

「唯でさえ最近発見されたばかりの適合者、しかも初症例。こんなの使ったら疑ってくれ

と言ってるような物。貴女はそんな事も分からない子じゃないでしょう?」

 

「はっ、そんなのこいつを狙う時点で思いつかなきゃただの無能だろう?

あたしを試したって無駄だぜ」

 

 

フィーネとあたしの悪態の応酬が続いているが、何時もの事だ。

「痛みこそ絆」とのたまう奴だ、これくらいが丁度いい。

 

 

「本当に可愛げがない子ね」

 

「そりゃ、あたしの生まれつきとフィーネの教育のおかげさ。普通に暮らして

たら…、今なら失笑ものだが唯の心優しい女の子って所か」

 

「笑えない冗談ね」

 

 

フィーネは一蹴したが、あたしにとってはそれが真実だ。

昔と今、大分変ってしまったがあたしはあたしだ、それくらいわかる。

 

 

「後、出撃は「鎧」で行きなさい。あれはまだ伏せときたいし今回には不向きよ」

 

「げ、あの欠陥品かよ。派手にぶっぱなそーと思ってたのに」

 

「完全聖遺物を欠陥品扱いなんて貴女位よ」

 

「完全にしたって性能が地味すぎるだろ。あんなの欠陥品で十分だ」

 

 

あの「鎧」は硬いのだけが取り柄だからな、あたしの性格にあってない。

やはり戦うなら派手にやらねーとな。

ま、あの鞭は自体は良い線いってるんだが…

 

 

「ともかく。この日、目標をここまで攫ってきなさい。あぁ、ギアはきちんと

解除させてからよ。一応ジャミングはしてあるけど、完全じゃないわ」

 

「りょーかい。こいつは…、立花響ってのはどんな面を見せてくれるのか今から楽しみだぜ」

 

「そうそう、「杖」も持っていきなさい。貴女がしたい「脅し」には有効でしょう?」

 

「こいつはまた、大盤振る舞いだね。今から楽しみでならねーよ」

 

 

流石フィーネだ、あたしの事を良くわかってくれている。

後は、あたしが餓鬼の使いを果たすだけだ。

融合症例第一号、ある事から生まれた正に奇跡と言っていい適合者。

つい最近まで一般人だったはずのこいつは、いったいどんな思いで戦ってんだか。

 

 

 

 

 

未来と流れ星を見るはずが、何時ものように突然発生したノイズの襲撃。

私は今、1人でノイズを追いかけている。

翼さんは遅れてくるそうで、現在ここにはいない。

ノイズさえいなければ、未来との約束を破る事も無かったのに…!

 

逃げるノイズを追いかけている私は、地下鉄から地上にまで出る事になる。

そこで、私は彼女と出会ったのだ。

私とも翼さんとも違う、第三のシンフォギアを纏う少女に…

 

 

 

 

 

ノイズを放ち、誘い出してみたらなんだこいつ?

いきなりあたしを笑い殺す気なのか?

 

 

「守りたいものだぁ?ぽっと出の力を手に入れたてめぇが何を守るってんだ?」

 

「え…?」

 

「誰だ!―――ネフシュタンの、鎧?」

 

「あたしが誰かなんて、あんたらにはどうでもいいだろ?ほら、あんたの仲間が犬死した

原因の鎧と再会だぜ?ちっとは喜べよ」

 

 

黄色い奴は見るからにトロそうな間抜け面を晒していたのでので、まずあたしは青髪の

人気者を挑発してやる事にした。

そして、その効果は覿面であり、相手は我をなくし斬りかかってきた。

 

 

「お前に…、お前に奏の何が分かる!その鎧を返しなさい!」

 

「おっと、いきなり斬りかかって来るなんて危ない奴だ…な!」

 

「翼さん!」

 

 

激高し、構えもせずに斬りかかってきた奴の一撃なんて怖くねぇ。

あたしはそれを余裕をもって回避し、その腹を思いっきり蹴って人気者を吹っ飛ばしてやった。

突然の戦闘に、もう一人の間抜けは全くついてこれてない。

 

 

「そうそう焦るな人気者。あたしの用はあんたじゃない。そこの間抜けそうな奴、あたし

と一緒に来てもらおうか?」

 

「い、嫌です!どうして、こんな酷いことするんですか!!」

 

「あたしの頼みを断ってるんじゃねーよ!てめぇの大事な親友、小日向未来を

ぶっ殺してやろーか?」

 

「未来を、殺す…?」

 

「私を無視して話をするな!!」

 

 

せっかく間抜けの心をえぐってる最中なのに、タフな人気者はもう復活して

あたしに向かってきやがる。

 

              [蒼ノ一閃]

 

斬撃を飛ばしてきたので、左の鞭で叩き落としてやった。

ただ、ぶんぶん刀を振っときゃいいのに多芸な奴だ。

 

 

「おせぇ。あんたの攻撃は遅くて話にならねーよ!」

 

「ほざけ!!」

 

「ったく。なんてしつこい。まるで狂戦士(バーサーカー)だな!」

 

「私は防人!狂戦士などではない!!」

 

 

きゃんきゃん喚きながら再び斬りかかってくる人気者を、先ほどの焼回しの様に

迎え撃ち、再び腹を蹴って遠くの方に吹っ飛ばした。

今度は鞭による追撃のおまけ付きで…、だ。

 

 

「翼さん!!」

 

「ふん、そこで寝てな。さて、話の続きだが…。あんたが抵抗したら殺す。逃げ出しても

殺す。そのままギアを纏っていても殺す。あんたはただ、あたしに無抵抗で掻っ攫われて

ればいいんだよ。出ないと…、こいつで死体すら拝めない姿にしてやる」

 

 

そう言って、一気に畳み掛けたあたしは背中に背負っていた「ソロモンの杖」を

使い、適当にノイズを展開した。

選択肢なんて与えないが、こいつはどうでるか。

 

 

「ノイズ…!」

 

「そう、ノイズだ。死体すら残らないクリーンな奴だぜ。親友を炭には代えたくないだろう?」

 

「う…、あ…」

 

「ぐずぐずすんじゃねぇ!あたしに従うのか、従わないのかどっちなんだ!!」

 

「待て!そのような事、私が許さん!!」

 

 

回復の早い人気者は、今度は逆立ちしながら突っ込んできやがった。 

 

               [逆羅刹]

 

こいつ、馬鹿なのか?

どうみても雑魚用と思われる技で突っ込んでくるなんて。

三度の焼回しなんてあたしの趣味じゃないが、適当に攻撃を止めるとその無防備な腹に

思いっきり鞭を叩き込んで吹き飛ばしてやった。

 

 

「まったく、しつこい奴だ。で…、どうするんだい?」

 

「…従います。だから、だから未来を巻き込まないで!」

 

「ふん、てめぇさえ手に入れたら手出しなんかしねーよ」

 

「立花、よせ!!」

 

 

間抜けは仲間の制止も聞かず、変身を解きあたしに近づいてきた。

あたしは近づいてきた間抜けの無警戒の腹を殴り、気絶させた。

無用かとも思ったけど、仲間の声で下手に戦意を取り戻されたら堪らないからな。

 

 

「はっ、これでミッショッンコンプリートってね。んじゃ、そこで打ちひしがれてな人気者」

 

「ま、待て!!」

 

 

人気者が三度立ち上がり、あたしに制止の声を投げかけるがそんな声に答える馬鹿ではない。

あたしは間抜けを肩に乗せると、そのままこの場を離れた。

 

 

 


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