【完結】LOST GENERATION ―NARUTO THE MOVIE―   作:春風駘蕩

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『この世界には、お前より年下で、俺より強いガキもいる』

          ―――はたけカカシ


4.蒼の炎と黑の鎧

 夜の闇の中、突如青い炎が噴き上がる。

「ぐあああああ!!」

 その炎に包まれ、一人の男が転げ回った。断末魔の悲鳴を上げ、蒼炎に包まれる体でバタバタと暴れるも、火の勢いが衰えることはない。

 時期に男はピクピクと痙攣した後、永遠に動かなくなった。

 見れば、辺りには黒い塊が何体も転がっている。表面には、同じ蒼い炎がくすぶっていた。

「ひっ……、ヒィィ!!」

「バッ……化け物か!?」

 生き残った忍たちが恐れ戦きながら後退していく。その額には、傷の付けられた額あてが巻かれていた。里を抜け、闇を生きる道を選んだもの―――彼らは皆、抜け忍だった。

 その時、ゴウッ!! と激しく音を立て、蒼炎が膨れ上がった。

 メラメラと揺らめく炎の中、細くなだらかな一つの影が姿を現す。

「……雑魚が」

 影が呟き、炎の中で一歩踏み出す。ガシャン、と音を立てて、真っ黒な鎧が姿を現し、青い炎を反射させた。真っ白な髪を熱風に揺らし、鎧を纏ったその少女はその中の誰にともなく言い放つ。

「貴様らに用は無いが……、練習台ぐらいにはなってくれよ……?」

「おのれ……馬鹿にするのも大概にしろ!!」

 赤い瞳をめぐらし、怯える忍たちを一瞥する見下した目に、抜け人の一人が憎々しげに顔を歪めた。

 抜け人の一人は印を結び、指の先からチャクラの糸を伸ばす。

 途端に、地面が大きく盛り上がり、木製の大きな人形が姿を現す。六本の太い腕を持った傀儡(くぐつ)〝熊蜂〟を操り、男は少女に向かわせる。腕が展開し、いくつもの暗器が少女に襲い掛かる。

 男に続くように、生き残った抜け忍達が自身の忍術を発動させる。口寄せ、体術、幻術、暗殺術……。ありとあらゆる武器を用いて、目の前の脅威を滅さんと果敢に立ち向かう。

 しかし。

「……この程度か」

 少女が呟くと同時に、その全てが、蒼炎で吹き飛ばされる。

「!?」

 抜け忍達は悲鳴を上げることもできずに地面に落とされ、激痛に呻く。

 少女は顔を歪め、抜け忍達を睨みつける。

「お前ら程度では、力試しにもならないな」

STRIKE VENT(ストライク・ベント)

 少女の左腕の手甲が変形し、少女は一枚の札を隙間に挿入した。低い男性の声とともに、少女の右腕に黒い竜の首が装着された。

「邪魔をしたな。……黙って消えるといい」

 ゴボッ、と竜の顎から蒼炎が漏れる。「ヒィッ」と悲鳴を漏らし、忍たちは脱兎のごとく逃げ出した。だが、少女は逃げる者にも容赦はしなかった。

「火遁・龍皇閃火(りゅうおうせんか)

 少女は竜の首を振るい、竜の口から猛烈な勢いで蒼炎が発射された。

「ギャアアア!!」

 絶叫とともに、男たちは炎に呑みこまれた。間もなく声は途切れたが、僅かな余韻が静寂の中に残された。

 少女は気にすることもなく、構えを解く。

「……どこだ」

 炎に照らされながら、少女は呟く。

「オレの器は、どこにいる……?」

 小さく呟かれたその言葉。

 少女の横顔は、何故か、ひどく寂しげだった。

 

 

 朝。

 一面黒く染まった森の中心で、カカシは険しい表情を浮かべていた。

「……カカシさん」

「ん? シンマ、それにレンヤか」

 手に持った人の手の形をした炭を捨て、カカシは立ち上がって二人の上忍に向き直った。

「この先にも、同じような状態の焼け跡がありました」

「おそらく、同一犯の仕業かと」

「やっぱりねー」

 カカシは腕を組み、辺りを大きく見渡す。

「……シンマくん。目撃情報のことどう思う?」

「…………青い、炎ですか」

 シンマは表情を硬くし、唇を噛む。

「……オレの一族には、確かにそんな奥義があるという話は聞きます。ですが、誰も一度もその炎を具現化させた者がいるという話は聞きません」

「……あっそう。もしやって思ったんだけどねぇ……」

 カカシはため息をつき、その惨状。

 半径1~2キロが尽く焦土と化した、森の残骸を見渡した。

「…こりゃ、簡単にはいきそうもないねェ」

 言いようもない不安が、暗雲のようにカカシの胸中に広がっていった。


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