【完結】LOST GENERATION ―NARUTO THE MOVIE―   作:春風駘蕩

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次章 遠き日の約束
∞.贈られた名は


 強い風が、白羽織を揺らし、背に赤く刺繍された『七代目火影』の字が躍る。

 眼下に並ぶ街並みを眺めながら、男は小さく微笑んでいた。心地のいい風だ。里の意思と次世代の忍達を育てる、良い風だ。

 火影は人々を見守りながら、想いに心を浸らせる。

 その時だ。

「七代目様!!」

 背後から、女の声がかけられた。火影は「ん?」と声を漏らし、振り返った。

 金色の長い髪を肩でまとめた妙齢の女性が、布に包まれた何かを抱いて火影のもとに歩み寄ってきていた。微笑みをたたえ、包みを愛おしそうに抱えていた。

 火影はその女性に微笑みを返し、自身も歩み寄った。

「おお。元気そうで何よりだってばよ!」

「はい、おかげさまで」

 火影は女性の前に立つと、包みの中を覗き込んだ。

 そこにいたのは、赤ん坊だった。ほやほやと柔らかい金髪を持った、小さな子供だ。

「…その子か?」

「えぇ…。無事生まれました」

「そーかそーか! 元気か!」

 火影は満面の笑顔を浮かべ、赤ん坊の頬をぷにぷにと突つく。

 赤ん坊は僅かに顔を動かすも、すやすやと眠ったままだった。

「…アンタそっくりだな。シンマさんにも」

「ええ…。祖父譲りのかわいい子です」

「そっかぁ、シンマさんの孫か……」

 火影はうんうんと何度も頷く。

 そんな彼に、女性はある頼みごとをしてきた。

「七代目さま、どうか、この子に名前をつけてあげてください」

「えっ!?」

 女性の頼みに、火影は慌てた。

 自身の息子と娘の名前を考えるのにも苦労したのだ。息子は、亡き友の名を由来にしたが、一からとなるとなかなか難しい。

 頭をかきながら、火影は女性から赤ん坊を受け取った。

「な、名前か……。ン〰〰…」

 安らかな顔で眠る赤ん坊を抱き、その顔を見ながら、眉を寄せながら細目で考え込む。昔から、咄嗟に考え込むのは苦手だ。戦場での思考の回転や勘の鋭さは衰えてはいないはずだが、苦手なものは苦手なままだ。

 今度は別の意味でウンウン言っていると、赤ん坊が火影の指を握ってきた。

「!」

 赤ん坊は火影の指を掴むと、目を閉じたままその顔にへにゃりとした笑みを浮かべた。

「あ、笑った」

「…………」

 女性は笑い、火影は言葉を失った。

 すると徐々に、火影の顔にも笑みが浮かび始めた。赤ん坊の顔を見下ろしながら、火影は微笑を浮かべる。

 決まった。

 もう、これ以外には考えられない。

「……そーだなぁ。いい名前があるってばよ」

 赤子と女性に笑いかけ、火影は言った。

「…俺たち忍が受け継いできた、そしてこれからも受け継いでいく〝火の意思〟。里のこれからを、未来を照らしていく俺達みんなの子供たち……、いつか、こいつも里を、みんなを照らしていく明るい(ともしび)になる。…だから」

 涙ぐむ女性に、火影は言った。

「だから……、俺がこの名をこいつに贈る。……こいつの、名は」

 サァッ……と、風が吹き火影と女性の髪を揺らす。木の葉が舞い、青空に咲く。

 そして、火影の言葉が、いつかの時代と重なる。

 

 ―――アケビ(朱灯)だ!!

 

 過去と未来、親と子、師匠と弟子。

 なんの偶然か必然か、時を超えて出会った二人の時間は、今ここに、

 繋がった。

 

                          ≪完≫




あとがき

 自分でいうのもなんですが、私の小説に出てくるヒロインたちはまったくもってろくな目に会いません。人体改造はもちろんのこと、天涯孤独だったり、記憶を失ったり、とにかくボロックソにされます。アケビは今のところダントツです。一回死んでますから。
 さて、誤解がないように言っておきますが私は別にリョナが趣味とかそういうのではありません(どの口が言うのやら)。私が表現したいのはあくまで、逆境においても諦めない主人公とヒロイン達のど根性が発揮される姿です。ジャンプのヒロインってたいてい強いですから。
 また、私のところのヒロイン達にとって、主人公たちは〝希望〟です。不屈の闘志で這い上がる主人公たちを見て、ヒロインたちのように読者の皆さんにも勇気を与えられたら、と思います。
 最後になりましたが、拙い上に長く更新が途絶えていた私ごときの作品を最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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