【完結】LOST GENERATION ―NARUTO THE MOVIE―   作:春風駘蕩

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7.アケビの戦い

 両親が、死んだ。

 ある集落で土砂崩れが起きて、その救命活動の最中だったらしい。遺体は損壊が激しく、最期に顔を見ることも許されなかった。その気遣いが、今は苦しかった。

 葬儀の後も、両親の墓の前に立っても、涙は出なかった。あまりの悲しみに、心と体が別々になってしまっていたようだった。

 人はそれを、気丈な子だとか、心無い子だとか好き勝手言っていたが、そんなことを気にする余裕すらもなかった。

 そんな時、〝あの人〟は来てくれた。

 火を象徴する石碑の前で立ち尽くしていた時、何も言わずに頭に手を置き、撫でてくれた。〝あの人〟の家族も、何も言わずに手を握ってくれた。

 その優しさを、温もりを受けて、温かさを感じて。

 ようやく、思い切り泣けた。

 泣いたら、もう立ち上がれなくなりそうだと、思っていたから。

 

 そうだ。

 全てはあの時からようやく、始まりを迎えたのだ。

 あの時から、全て始まったんだ。

 

 

 気づけば、アケビはそこにいた。白と黒だけで彩られた、無機質な塊があちこちに鎮座する殺風景な空間。アケビはそんな空間の中心に一人、立ち尽くしていた。

「……ここは、私の記憶……心の中?」

 思わず漏れる、アケビの声。

「……なぜだ」

 突然背後から、木霊(こだま)のように自分の声が聞こえた。

 アケビは最初から分かっていたように驚く様子も見せず、ゆっくりと振り向いた。そして、その青色の瞳に、リュウガの姿を映した。

「オレにはお前が分からない。……なぜ、お前は屈さない」

「……私は」

「それだけではない。…今のお前は、力の大半を削がれた脆弱な存在。なのになぜ、オレの前に立ちはだかり、あまつさえオレを受け入れた? …喰われると、分かっているはずだろうに」

「…………」

 リュウガの問いに、アケビは目を閉じて黙り込む。

 そして、その口元に微笑みを浮かべた。リュウガはそれに気付かず、再び口を開く。

「ここにはオレ達以外来られない……お前に助けは……」

「だからだよ」

「!」

 その言葉を聞き、リュウガはようやくアケビの意味深な笑みに気付いた。

「ここなら……誰にも邪魔されない。邪魔できない。……私たちだけだよ」

 リュウガは眉をひそめ、無言で剣を召還した。

 気にせずアケビは、先を続ける。

「これは私の戦い。……私自身が決着をつけなきゃいけない問題。だから、私はここに来たんだ。……あなたと、真っ向から向き合うために」

「…………」

「私は私を知りたい。まだ……、何も思い出せない。だから、あなたと話すためにここに来たんだ」

「……戯言を」

 リュウガは刃を掲げ、一歩ずつアケビに近づいていく。刃に青い炎を纏わせ、大気を陽炎で揺らめかせながら、アケビに少しずつ迫っていく。

 アケビもまた、一本の剣を呼び出して構える。

「我らは今やともにチャクラのみの存在。在るべき器はただ一つ。手にできるのはどちらか一方のみ。……故に、共に在ることなどあり得ない。……残るのは、オレだ」

「……リュウガ」

「構えろ、わが半身よ。望み通り決着をつけようじゃないか」

 唇を引き結び、アケビは俯く。

 けれど、何かを振り払うように目を閉じ、首を振る。今度は目に決意の炎を灯し、リュウガをじっと見つめ返す。

 互いが剣に手を添え、闘志を胸に灯して対峙する。迷いは既にない。剣は鞘から解き放たれ、止める者はいない。

 リュウガは徐々にスピードを速め、アケビは姿勢を低く落としていく。

 そして―――。

 

「ハァァァ!!」

「おぉぉぉ!!」

 

 二人の剣が、激突した。


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