【完結】LOST GENERATION ―NARUTO THE MOVIE―   作:春風駘蕩

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第五章 暗き闇の世界で
1.敗北


 ゴウゴウと燃える炎。

 火の壁と壁の間、僅かな空間で大きな瓦礫が動いた。石の壁が浮き上がり、反対側にズンッと倒れていくと、ピンクの髪の娘が汚れた顔を見せた。

「ハァ……ハァ……なんて威力なのよ……」

 サクラは荒い呼吸のまま辺りを鋭く見渡す。

 見れば、カカシたちも無事だ。瓦礫の隙間に身を潜め、柱に掴まって津波をやり過ごしたらしく、探すのに苦労した。

 シンマとレンヤは、彼らの口寄せ獣が盾になってくれたらしい。周りの被害に比べて軽傷だった。

「……すまん、シンマ。ワシはこれまでだ」

 対して、盾になった竜ジイとオオコウモリはボロボロだった。

「すまねぇ、竜ジイ。無理させちまって…」

「…言うな。この老いぼれに」

 皮肉を口にし、竜ジイと大コウモリは白煙に包まれて消えた。

 サクラはすぐに駆け出し、シンマとレンヤの傷を診る。

「今、回復させます」

「ああ…すまん」

「俺も頼む」

 サクラは跪くと、チャクラを手に纏わせて傷跡にあてる。

 回復忍術を施しながら、サクラは思う。アビスと名乗った男のことを。

(アイツ…、味方まで巻き込もうとしてた)

 サクラは顔をしかめ、醜い表情の美丈夫の顔を思い浮かべた。

 あの水遁の威力に味方を気遣うような様子はなかった。むしろ、巻き込んでも構わないようにも感じられた。鎖で縛りつけられた、彼女たちでさえも。

「サクラ!」

 集中していたサクラのもとに、サイがカカシとヤマトを連れて駆け寄った。

 三人とも、目立つ負傷は見られないが、切迫した様子だった。

「あいつらは?」

「もういない。向こうの拠点に戻ったみたいだ」

「こっちも、追いかけるだけの余裕はないしね。危ないところだったよ」

 カカシが肩をすくめ、そう呟く。だが、すぐに真剣な表情に戻って辺りを見渡した。一番目立つ二人が、この場に見当たらなかったからだ。

「ナルトは? アケビも見当たらないようだけど」

「…それが、さっきから姿が見えなくて」

 一応の手当てを終えたサクラが、汗を拭ってから答える。

 チャクラの消費が激しい。このままでは今後の戦闘は厳しくなるだろう。

「……仕方がない。いったん体制を整えて出直そう。今の状態じゃどうにもできない」

「カカシ先生!! ……はい」

 カカシの決断に、サクラは苦しげな表情で頷く。

 仲間を、そして託された少女を置いて退却などしたくない。だが、今のままでは敵にあっという間に殲滅され、潰されるのがおちだ。

 それに、サクラは思う。

 ナルトなら、そう簡単にはやられたりしまい。そう信じている。

「シンマさん、レンヤさんの治療が終わり次第撤収しましょう」

「…ああ。スマネェ」

「分かった。……仕方がない」

 二人は頷くと、目に見えて肩を落とした。

 カカシもまた、右目に悲痛な色を落として俯く。

 と、そこへ、ヤマトが駆け寄った。

「カカシさん、ちょっと……いや、かなり重要なものが」

「何?」

 ヤマトの表情に何かを感じたカカシが、その後を追う。

 瓦礫と炎の障害を乗り越え飛び越え、カカシはそこ(・・)へたどり着く。そして、その目を大きく見開いた。

「……これは」

 自然と、カカシの声が漏れる。

 目の前に広がるもの、それは巨大な穴だった。まるで地獄まで繋がっていそうなほど深く大きな穴が、目の前で広がっている。

 アビスと名乗った男の水遁の技で切り裂かれ、砕けた地にあいた穴が、カカシとヤマトの目の前でぽっかりと口を開けていたのだ。

 その奥に、光が見える。

 淡くしみわたるような怪しい光が、穴の奥の奥から見えていた。

「……なるほど、ここか」

 カカシは、目を細めながらそう呟いた。




今回、短いです。
とはいえ、ようやく物語の半分くらいまで来ました。できればもう少しだけ、本稚作をお楽しみください。

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