魔法科高校の転生者、あるいは一般人、しかし不良、もしくは問題児、または異端者、のちにチート   作:tomato

5 / 17
第五話

振り返った生徒会長に続いて、集団もゾロソロとその後に着いて行く。何人かは振り返る際に義飾に強い一瞥をくれたが、目が合ったらすぐに逸らした。先程までは、大勢で同じ方向を向いていたからこそ強気でいることが出来たが、既にバラバラに振り返っているので、心理的優位はない。

そんな中で、目が合っても逸らさない者はいる。生徒会長の隣に侍ったいた男子生徒だ。義飾と目が合っても逸らすどころかさらに、睨みを強くする。視線に物理的な影響があったら、義飾を射殺せそうなほどだ。

義飾をその殺気の混ざった視線を、笑って受け止めた。その笑顔に敵意はなく、また害意もない。ただ、にじみ出る余裕をそのまま顔に出してるだけだ。その顔がさらに男子生徒の神経を逆撫でる。

 

義飾は理解していた、男子生徒が何も言ってこれないことを。

生徒会長が謝罪して場を収束させたのに、ここで何かを言って騒動をぶり返せば、生徒会長の顔に泥を塗ることになる。これ以上の失態は本人が一番許容出来ないだろう。

もし、何かを言ってきたとしても、それは男子生徒の頭の出来が悪い事になる。そんな人間なら、非難の言葉をでっち上げてさらに追撃することは容易だ。

義飾の予想通り、結局、男子生徒は何も言わず視線を外した。しかし、後姿からでも分かるほどギンギンに敵意を尖らせている。噛み付かれなかった事を残念に思いながら、その敵意を肌に感じて、義飾は笑みを深くした。

 

 

 

 

 

生徒会長達が去った後、その場には沈黙が支配していた。誰もが、先程のやりとりが尾を引いて口を開けないでいる。会話のキッカケを探すために深雪達がそれぞれの顔を見合わせるが、結局、何も言わず、自然とこの沈黙を作った人物に視線が集まった。

義飾は深雪達に背を向けているので、どのような顔をしているかわからない。ただ、その後姿から異様な気配を出していた。

約一名がこの雰囲気に焦れだした頃、ようやく沈黙は破られた。

 

「フゥーー---。・・・・・・さて、帰るか」

 

火照った身体から熱を逃がすように、大きく息を吐いた義飾が振り返る。その顔にはもう侮蔑と愉悦の色はない。ただ、人好きする笑顔を浮かべるだけだ。

その笑顔に安堵を覚え、みんなが小さく息を吐く。そして、最初に義飾に声を掛けたのは、沈黙に焦れていたエリカだった。

 

「・・・・・・あんた大丈夫なの?めちゃめちゃ目付けられたんじゃない?」

 

「だろうな」

 

エリカの言葉にざっくり返す義飾。その様子に何かを気負ってる素振りはなく、普段通りの気配を発している。その様子に、逆にエリカ達が心配を抱いた。入学早々上級生に、それも生徒会役員に目を付けられれば、これからの学校生活が過ごしづらくなるのは想像に難くない。その事をわかっているのかと、視線に心配と、少しの非難の色が帯びる。

その視線を受けて義飾が苦笑いして、頭を掻きながら言葉を続けた。

 

「ぶっちゃけ、目付けられるなんて今更なんだよ。小学校の時から、頭を染め直せだの、目付きが悪いだの言われてたからな。目立つのは慣れてる。それに、そんなのが気になるならもっとお行儀のいい格好するよ」

 

最後におどけた仕草で自分の制服を指して言葉を締めくくる義飾。それが功を奏したのか、固かった空気が少し柔らかくなった。それに感化されて、幾人かの表情も柔らかくなる。しかし、それでも表情が変わらない者はいる。無表情が張り付いてる達也だ。

 

「慣れている、と言っても、あんな言い方をする事はなかったんじゃないのか?わざわざ、自分から敵を作る必要もないだろ」

 

その口調は、無表情と同じで感情の起伏がなく、どこまでも平坦なものだ。しかし、義飾を咎める意図は十分伺える。

達也にしてみれば、問題を起こすなら自分とは関係ない所でやってほしい、という思いが強い。義飾を咎めたのも義飾を心配してのことではなく、自分達に飛び火する事を恐れてだ。自分はともかく、妹に火の粉がかかるようなことは断じて許さない。義飾に向ける視線が段々と鋭くなっていくのを達也は自覚した。

しかし、達也の睨みを受けても義飾は表情を変えない。それどころか、さらに口角を釣り上げた。

 

「違うな、司波、それは違う。敵を作るも何も、ああいうのは元々、俺の敵だ。特に、会長の隣にいた男は逆立ちしたって仲良く出来ねーよ。それに、俺は喧嘩を売ったんじゃない、買ったんだ。仕掛けてきたのはあいつらだよ」

 

顔だけ振り返り、生徒会長達が去った方向を見ながら語る義飾。口は大きく弧を描いたままなので、その横顔から負の感情は感じられない。

義飾の弁は確かに正しい。しかし、もっと平和的に対応していれば、あそこまで事態は大きくならなかったのも事実だ。

事態の発端が別にあったとしても、義飾は進んで問題を大きくしようとしているように見えた。

義飾と言葉に軽い苛立ちと呆れが湧いてきて、達也の顔がさらに強張る。それにともなって、二人の間の空気も少し触れがたいものになった。しかし、

 

「まぁ心配すんな。目付けられたのは俺だけだ。お前も、お前の妹にも、敵意は向いてねぇよ」

 

顔を元に戻した義飾の表情はどこまでも楽観的だ。その表情に気を削がれた達也は、小さく息を吐いて脱力した。

義飾の言葉にはまだ納得しかねる部分は多々あるが、妹に被害がいってないなら、もう終わったことを気にしていても意味は無い。それに、今日会った人物にこれ以上忠告をするのも面倒だ。

達也が脱力したことで、二人の間の空気も一気に弛緩した。

 

「あ~~、話終わった?終わったなら場所移さない?」

 

義飾と達也、両者の間に流れていたピリピリした空気に割って入るようにエリカが声をかけた。割って入る、といっても一応、話が一段落着いたのを見計らってだ。物怖じしない性格のエリカだが、男二人が作り出す剣呑な空気には躊躇したらしい。

その言葉に、周りが見えていなかったと反省して、達也は小さく笑って頷いた。

 

「だったら、近くに美味しいケーキ屋さんがあるらしいからそこに行かない?お昼も食べられるらしいし」

 

「それはいいですね。せっかくですからもう少し、皆さんとお話したいです」

 

エリカの提案に美月が強く賛同する。騒動の時からずっと、表情に不安の色が抜けなかった美月だが、ここにきてようやく、それが晴れた。不安や心配が完全に消えたわけではないが、周りを気遣って表情に出さないようにしているのだろう。

 

「お兄様、どういたしましょうか?」

 

「いいんじゃないか。せっかく知り合いになったことだし。同姓、同年代の友人はいくらいても多過ぎるということはないだろうから」

 

二人の誘いに、深雪は達也に伺う。それに対して、達也はすぐに同意の返答をした。

兄妹であるならば、帰宅するまで行動を共にするだろうから、達也の意見を聞くのは何もおかしなことではない。しかし、義飾はそこに、深雪の達也への依存性を垣間見たような気がした。

そして達也にも、深雪に対して一般的な兄弟愛を逸脱した感情を抱いている事がわかった。

達也は主人公であるから、もしかしたら深雪はヒロインに位置するのかもしれない。

創作物ではよくある近親相愛だが、実際に見るとコメントに困ってしまう。

 

 

 

(兄弟愛ってな~~~、肉欲が絡むと一気にヤバくなるよな。さすがにそこまではいってないだろうが、少なくとも共依存はしてるな。まぁ、俺が気にすることでもないか)

 

二人の関係性に大きな呆れのような感情が湧いてくるが、さすがに口にだすような事はしない。というより、口を出せる立場じゃない。二人については、離れた所でイチャついてるのを見るのが精神衛生上いいだろう。

 

思考が一段落着いた所で、意識を今に持ってくる。

達也の返答の言葉に、エリカと美月が褒めているのか呆れているのかよくわからない言葉をこぼしている。二人も、達也が度の超えたシスコンだと理解したのだろう。言われた本人である深雪は嬉しそうに微笑んでいる。

先ほどまでの剣呑な空気が嘘のように和やかだ。

その和やかな雰囲気に水を差す事になって、少し罪悪感を持ちながら、義飾は頭を振って誘いの返事をした。

 

「俺はパスだ。これから中学の時の友達と会う事になってるんだ」

 

「あ、そうなの?」

 

義飾の断りにエリカがそっけなく応える。気分を悪くした様子はないが、少し意外そうだ。

時間が押しているので、他の三人にも断りの入れてこの場を去ろうとした義飾だが、それより早くエリカが言葉を続けた。

 

「その友達ってまだ学校にいるの?どうせだったら、その友達と合流して、みんなで行こうよ」

 

エリカの言葉に、義飾の眉が寄り怪訝な表情が作られる。勿論、言葉の意味がわからなかった訳ではない。内容に理解できない部分があったからだ。

しかし、怪訝な表情を浮かべたのは一瞬。すぐに理解して納得したように「あぁ」と声を漏らした。

 

「友達は一般科の高校だよ。中学で魔法科に進学したのは俺だけだ。」

 

「へぇ~~」

 

すぐに理解できたのは、こういう反応をされる事を予め予想していたからだ。

魔法科高校に入学しているなら、友達も同じように入学していると考えるのは無理はない。義飾の説明にエリカが納得したような声を出す。その声には先程よりも強い意外の色がある。エリカだけでなく、他の三人も、声には出さないが表情に意外に色が見えた。

予想出来ていても、実際にこういう反応をされると変な気分になる。

その気分と空気を誤魔化すように、おどけた口調で言葉を続けた。

 

「なんだよ、俺に友達がいるのがそんなに意外か?」

 

「いや、そうじゃないさ。ただ、非魔法師の友達がいる事に驚いただけさ」

 

「・・・・・・まぁ、そうかもな」

 

おどけた口調の義飾だったが、返ってきた達也の言葉に、視線を端にやって、それ以上何も言わなかった。

 

この第一高校には、一科生と二科生の間の大きな壁がある。そして、世間にも同じようなものが存在する。

それは、有る者と無い者の差別だ。

魔法は、後天的に習得は不可能だと言われている。使えないように生まれた者は死ぬまで使えない。

高校で、“優劣”だけで差別が発生しているんだ。“有無”で発生している差別はそれよりもずっと大きい。

実際、魔法師と非魔法師の差別は世界単位の社会問題だ。

 

 

 

そんな中で義飾のように、魔法科高校に入学出来るだけの魔法力を有していて、非魔法師と仲良くしているのは確かに珍しい。高校が別れても会う程なので、浅い仲でも無いだろう。

純粋に尊敬の念を抱いて返答した達也だったが、返ってきた反応に困惑せざるおえなかった。

こちらから視線を外した義飾の顔に、怒りや悲しみといった負の感情は見えない。薄く笑って口を閉ざしているだけだ。その表情にはあらゆる感情が混在しているように見えた。

 

義飾が黙った事で、場にもう一度沈黙が降りようとする。しかし、義飾が表情を変えた事でそれは防がれた。

何かに気付いた顔をして右手をポケットに入れる義飾。そこにある通信端末を出して、画面をみて苦笑してから顔を達也達に向けた。

 

「悪い、もう時間みたいだ。催促のメールがきた。また明日な」

 

それだけ言って、義飾は急いで振り返る。走りはしないが、少し早足なので本当に時間が無いのだろう。その様子はこの場から逃げるようにも見える。

義飾の急な変化についていけなかった四人だが、なんとか義飾の後ろ姿に別れの言葉を投げる事は出来た。

その言葉に、義飾は通信端末を持った右手を後ろ手に振ることで応えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入学式が終わり、その後の中学の時の友達の集まりもつつがなく終わらせた義飾は自宅に帰っていた。

出迎える者はおらず、静寂な空気が義飾を包むだけだ。

慣れない手つきでリビングの電気を点け、そこにあるソファーに勢い良く座り込む。そして、疲れを吐き出すように大きく息を吐く。

吐いた息は広い部屋に溶け込みきれず、虚しく響いた。

 

「伯父さんの勧めだけど、さすがに広すぎるな・・・」

 

淋しさを誤魔化すために独り言ちるが、大して効果は無い。一人暮らしに慣れていても、広い部屋に一人きり、というのはあまり経験がなかった。

義飾が一人暮らしを始めたのは、中学に進学したのと同時だ。

 

父とは死別し、母も入院していて一緒に暮らせなかったので、小学校五年生の時から叔父の家に厄介になっていた。しかし、中学に上がる時、それまで入院していた母が退院することになった。退院するといっても、全快した訳ではない。母にはどうしても、身の回りの世話をする人物が必要だった。父は既に亡くなっていたので、母は伯父の家に引き取られ、伯父の奥さんがその役を引き受けた。

そうなれば、義飾が伯父の家にいる事は出来ない。最初は、お手伝いさんを数人雇って家を新しく買ってそこに住む、という話が出てたが、義飾が全力で拒否した。唯でさえ迷惑になっているのに、これ以上世話になることは許されない。第二の両親と言っても過言ではない伯父夫妻だが、それでも、受ける恩は返せる範囲しか許容できなかった。

結局、義飾が拝み倒して、学校から近いワンルームの安いアパートを借りる事になった。成績を学年十位以内に収め続ける、という条件があったが、そんなものは有って、無いようなものだ。

 

奮闘の末に、気を使わない快適な中学生活を手に入れた義飾だったが、それは終わりを迎える。高校進学だ。

その時住んでいたアパートからでは、魔法科高校は距離があったので引っ越す必要があった。

進路を魔法科高校に決めた時から、近くのアパートを調べ、入居候補を決めていた義飾だったが、伯父の企みによって、その計画は水の泡になった。

 

『あ~~あ、合格祝いにいっぱい家具買ったのにな~~。チラッ ワンルームのアパートじゃ入りきらないな~~。チラッ 返品したらさらにお金かかっちゃうな~~。チラッ チラッ』

 

『・・・・・・』

 

明らかに一人着らしに必要ない程大量にある家具を背に、白々しい物言いをする伯父に義飾は何も言えなかった。ちなみにこの時点では試験も受けていない。

 

一人暮らしを許したくれたと思っていた伯父だが、内心では全然そんなことはなかった。

一応許可を与えたのは義飾が一人暮らしの辛さと淋しさに、すぐ音を上げると思っていたからだ。だから安いアパートを借りたし、厳しい条件で保険もかけた。

すぐに家を買い、メイドを雇う準備をして、義飾が助けを求めるのを待っていた。しかし、予想に反して義飾は一人暮らしを満喫していた。

友達に恵まれていた義飾は、淋しさを覚える暇はなかったし、アパートの住人も良い人ばかりで、ご近所付き合いは良好。ある程度は家事は出来たので辛さも感じなかった。保険に付けた条件も、終ぞ意味はなかった。義飾は中学三年間学年一位だった。

何度か、粗を探すために伯父がアポなしで来たことがあったが、キレイ好きの義飾の部屋からは見つけられなかった。

 

認めざるを得なかった。

我が子同然に、いや、自分の子供は娘ばかりなので、ある意味、我が子以上にかわいがっていた義飾の、早すぎる独り立ちに一抹の淋しさを覚えながら、伯父は義飾の一人暮らしを許した。

しかし、それでも譲れない一線はある。

毎月送っている仕送りがあまり使われていない。その事から伯父は、義飾が貧相な生活を送っているのではと思ったのだ。

小さい頃から見てきたので、義飾の考えている事はわかる。自分達に迷惑をかけないために節制に節制を重ねて、質素倹約に過ごしているのだ。あの子は真面目で賢く、なにより優しい子だ。そんな優しい子が自分達に遠慮するのは、考えるまでもなくわかることだ。

この遠慮も、自分達を気遣ってのこと。その気遣いは素直に嬉しく思う。しかし、それはあまりにも寂しいではないか。

結局、自分は義飾にとっては母の兄。両親の代わりには成り得ない。特に、義飾は両親の事が大好きだった。自分では力不足も甚だしい。

その事に、義飾が独り立ちした時以上の淋しさと、無力感に苛まれながら伯父は決意した。

 

多少強引でもいい。義飾に不自由な思いはさせない。

 

この誓いは、今は亡き義飾の父と、事情があって一緒に暮らせない義飾の母、そして、甥に何もしてやることが出来ない、無力な自分に立てたものだった。

 

 

 

 

ここで、この伯父の心情を聞いた時の義飾の弁を述べておこう。

 

“全然、そんなことはない”

 

まず、節制に節制を重ねた質素倹約な暮らし、これを否定したい。

はっきり言って義飾の感覚からすれば、かなり贅沢に過ごしたつもりだ。確かに、遠慮した部分もある。しかし、伯父の気持ちと性格はある程度理解していたので、遠慮が過ぎれば逆に心配をかけてしまうことはわかっていた。なので、常識が許す限り贅沢をした。

受ける恩は返せる範囲まで、そう考えている義飾だが、厚意を無下にする事の失礼さは理解している。それに、受けた恩がお金だからといっって、返す物もそうでなければならないということはない。伯父もそれは望んでいないだろう。

なら何故、伯父は義飾が貧相な生活を送っていると思ったのか?そりゃ、毎月送っている仕送りが四分の一しか使われていなかったら、そう思うのは無理もない。その送られる仕送りが、平均の五倍の額でなければ伯父の考えは正しかっただろう。ただの中学生がどう使えっちゅーねん。

後で伯父の子供、義飾にとっては従姉妹に当たる、にこの事について聞いてみたところ、伯父の子煩悩なところは昔からの悪癖で、仕送りの件は従姉妹も経験したらしい。従姉妹のときは、直接強く言って止めさせたとのことだが、援助を受けている身分の義飾では強く言う事は出来ず、結局、仕送りは中学を卒業するまでこのままだった。

 

そして次に、自分では両親の代わりには成り得ない、これにも物申したい。

この考えはある意味正しい。義飾は伯父の事を両親の代わりだと思ったことはない。しかし、それは伯父を蔑ろにしている訳ではない。誰かを誰かの代わりとして見るなんて、片方だけでなく、両人に対しての侮蔑だ。

小学校五年生の時に伯父の家に引き取られたと言ったが、伯父との付き合いはもっと長い。それこそ普通であれば物心が付いてない時に抱き上げられた記憶がある。

義飾にとって伯父は両親と同じように、誰も代わりにならないほど大事な存在なのだ。

 

そして最後に、無力な自分、これには強く否定したい。ここまでしといて何言うてはりますの?

 

 

 

 

 

そんな義飾の思いだが、伯父に伝わることはなかった。さすがにそこまであけすけに内情を語るのは気恥ずかしい。伝えていれば結果も違っていただろうが、もう過ぎてしまったことを後悔しても仕方ない。

伯父の勘違いによる暴走で、大量に用意された家具を前に義飾が首を横に振れるはずもなく、義飾の高校生活は中学の時とは比べ物にならないほど豪華になることが決定した。

試験を受け、合格通知が届いてからは話が早かった。伯父が所有している中で、第一高校に近い五〇階建てのタワーマンション―――は交通の便を理由に義飾が全力で拒否し、それより第一高校の近くにある一九階建てのマンションに入居することになった。

入居してまだ二週間も経っていないので、この部屋の全てが未だ新鮮だ。2LDKの間取りには伯父が買ってくれた家具がそこらに置いてある。サプライズのために義飾の嗜好を無視して選ばれたが、義飾は強いこだわりを持っている訳ではないので問題はなかった。

 

真新しい弾力を提供してくれるソファに身を沈めながら、義飾はこの部屋に入居することになった経緯を思い浮かべた。

嫌ではない。しかし、伯父の強引な手段に納得していないのも事実。

自分のためにしてくれたことなので文句が出てくるはずもないのだが、家に帰る度に辟易とした気分が積み重なっていく。それを溜め息として吐き出そうとしたが、なんとなくそれも憚られてすんでの所で飲み込んだ。

そろそろ晩御飯の準備に取り掛かろうと、ソファから身体を起こそうとした義飾だが、通信端末が突然鳴り出した事で出鼻を挫かれた。再びソファに身を沈めて端末の画面を見ると、さっきまで考えていた伯父の名前が表示されていた。

それを見て先程飲み込んだ息が堪らず出てくる。勿論、伯父を嫌っての事ではない。ただ、電話に出なくても用件がある程度わかるからだ。

高校に入学して、伯父の子煩悩というか過保護ぶりはさらに磨きがかかった。もし、数字に表せたとしたら余裕でカンストしているだろう。

その理由を義飾はわかっている。だから無下には出来ない

 

端末の呼び出し音が二コール目に入った所で、義飾は呆れつつも、嬉しさを隠し切れない表情で電話に出た。




遅れてすいません。

一日千文字書いたら、一週間で七千文字。
週一更新イケるやん!って思ってたけど、チョコラテの様に甘い考えでした。
まず一日千文字ってキツイ。そして一話が毎回七千文字で終わる訳じゃない。
タグの不定期更新は保険のつもりだったのに・・・。
遅くても二週間に一回は更新するようにします。

それと書き方が安定しないのは大目に見てください。
小説書くの初めてなんで、探りながら書いてます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。