麦わらの副船長   作:深山 雅

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ご都合主義を発動し、アラバスタ上陸後しばらくはアニメ沿いで行きます。



第114話 アラバスタ上陸

 ドラムを出て5日経った。今日はルフィとウソップが並んで釣りをしている。

 別に食糧難でもないのに釣りをしているのは、趣味だからだろう。

 エサはカルーだ……本来のエサはルフィが食べちゃったから。いや、ウソップもちょっと食べたらしいけど。

 当然、そんなことをしてタダで済むわけがない。

 

 「あなた達、カルーに何してんのよ!」

 

 何か釣れたかと様子見に来たビビが、驚いて制裁を加えている。けどビビ。どうせならエサにされたままのカルーを助けてやりなよ。カルーも怒ってるぞ。

 俺? 俺は黙って観察している。だって中々面白い見世物だし。安心しろ、カルー。本当に食われそうになったら助けてやる。だから今は楽しませてくれ。

 ニヤニヤとしながらその光景を見下ろしている俺は、多分相当意地が悪いんだろう。

 と、そうこうしている間に前方に煙のようなものが見えてきた。あぁ、もうそんな時か。

 

 「あれは何?」

 

 ビビもすぐに気付いたらしい。その声に反応して、ルフィとウソップもそれを見た。

 

 「何だありゃ」

 

 「わたあめかな」

 

 んなわけあるか。

 

 「ユアン。あれ何だ?」

 

 ルフィがくるっと振り向いて聞いてきた。何故そこで俺に聞くと思わないでもないけど、一応答えは持っているから教えることにする。

 

 「ホットスポットだろうね。まぁ、危険は無いから大丈夫だ」

 

 「食えるのか?」

 

 んなわけあるか。

 俺たちのやりとりの中、ビビが船内に入って行った。多分、ナミに意見を聞きに行ったんだろう。

 

 「マグマのせいだよ。あそこには海底火山があるんだろ」

 

 ちょっと詳しく説明したら、ルフィは一瞬で興味を失っていた。食べられないから。

 

 「海底に火山があるのか?」

 

 いつの間にか出て来たらしいチョッパーに聞かれる。見るとチョッパーだけじゃなく、ナミも出てきている。あ、これもう俺が説明する必要無いんじゃね?

 ……でも、聞いてきたのがチョッパーだったからちゃんと答えよう。

 

 「あぁ、海底火山はあちこちにある」

 

 言うとナミも頷いていた。

 

 「むしろ陸上よりもたくさん、ね。こうやって何千、何万年後にはこの場所に新しい島が出来るのよ」

 

 時の流れは偉大だねぇ。

 

 「何万年後って……おれ、生きていられるかな」

 

 ルフィ……お前は何を目指してるんだ?

 

 「そこは死んどけよ、人として」

 

 ウソップのツッコミを背中で聞きながら、俺は船内に足を向けた。

 

 「俺は中に入ってるよ」

 

 「え?」

 

 ヒラヒラと手を振ると、ナミが意外そうな声を出した。

 

 「ホットスポットには危険は無いって、自分で言ってたじゃない」

 

 いやまぁ、そうだけどさ。

 

 「危険は無くても、ホットスポットの蒸気は硫黄臭いらしいからね。中で本でも読んでるさ」

 

 硫黄の匂いって、アレだろ? 腐った卵みたいな匂い。俺ヤだよ、そんなの。

 それに、Mr.2……ボンちゃんと遭遇する可能性があるもんな。マネマネショーは見たい気もするけど、もしもこの顔をコピーされてしまったらと思うと身の毛もよだつ……というのは言い過ぎだけど、喜ばしいことじゃないのは間違いない。

 でも、本当にマネマネショーは惜しいよなぁ、うん。

 

 

 

 

 男部屋のハンモックに仰向けで揺られながら本を読む。腹の上では大福が寝てる……こいつ、本当に俺にべったりだ。毛皮の肌触りがいいから許すけど。あと可愛い。

 

 リトルガーデンで疑問に思った火とマグマの温度のことだけど、調べてみた結果、やっぱり火の方がマグマよりもよっぽど高温になるみたいだ。

 そうなると問題は……それが悪魔の実の能力でも通用するかってことと、エースがそれを出来るかどうかってことなんだよな……。

 前者はその時にならないと解らないけど、後者はもうじき会うことになるだろうからそれとなく伝えたい……伝えて、実際にやってくれるかどうかは解らないけど。

 

 

 

 

 Mr.2との遭遇(俺は会ってないけど)からまた更に航海は進む。既にアラバスタまでは秒読みと言っていいだろう。

 え? 何で解るのかって? そりゃあ。

 

 「海ねこ!!」

 

 「っぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 「海獣だ~~~~~っ!!」

 

 はい、今まさに海ねこが出現したからですね。

 でもまぁ、何度も言うけどこの船は別に食糧難じゃないから、目の色を変えて捕獲に走る必要なんて無い……。

 

 「メシだぁ!!」

 

 ……はずなんだけどね。

 何だ、あいつは未知の生物を見たら取りあえず食べたくなるっていう習性でもあるのか? あ、あいつって勿論、ルフィのことだよ。周囲の白い目なんて何のその。

 

 「進路よし、と……」

 

 ナミに至ってはガン無視だ! スルースキル高ェ!

 

 「メシー!!」

 

 「ダメッ!」

 

 ビビがルフィをぶっ叩いて鎮めた……けどその金棒どこから出した!?

 

 「食べちゃダメなの! アラバスタで海ねこは神聖な生き物だから」

 

 海ねこが神聖、ねぇ……アラバスタってのはつくづくエジプトっぽい国だな。確か、古代エジプトでも猫は神聖視されたたはずだ。

 ハッ! ということはまさか……。

 

 「ビビ……アラバスタで国王のことを『ファラオ』って呼んだりするか?」

 

 ふと疑問に思って聞いてみたけど、ビビは首を傾げた。

 

 「ふぁ……?」

 

 チッ、違ったか。ディアハとか出来たら面白そうだったのに。

 俺は内心で舌打ちした。特に意味は無いが……って。

 

 「チョッパーに法螺話を吹き込むな!」

 

 「ぶへっ!?」

 

 背後で、ウソップが何故かチョッパーに『カームベルトで大型海王類と戦った』とかいう法螺話を吹き込んでいたので制裁を与えておいた。

 格好つけたい気持ちは解るけど、限度ってもんがある。

 

 「法螺なのか!?」

 

 チョッパー……ルフィ並に純粋だ……すっかり信じちゃってたんだね。何とも言えないショックを受けた表情をしている。

 けど正さねば。純粋な人間(?)に法螺を吹き込んだらどうなるか……例えば、病気なのに寝かしてくれなかったりするような事態になったりするかもしれないんだ。俺はそれを身を以て知った。

 

 「そんな顔するな。ほら、飴やるから」

 

 ポケットに入ってた飴玉をあげたらチョッパーの機嫌は治った。ウソップ? あいつは寝てるみたいだからそっとしといてやろう。

 そんな中、船の後方を見ていたゾロの皮肉げな声が聞こえた。

 

 「後ろに見えるアレも、アラバスタが近い証拠だろ」

 

 その視線の先には、バロックワークスのマークが入った船が大量に並んでいる。アラバスタに向かってるんだろうけど、帆にあんなに堂々とマークを入れるなんて……『秘密』犯罪結社じゃなかったのか?

 まぁそれはそれとして、確かに数は多い。10隻以上はある。乗っているのがビリオンズだとすれば、数はおよそ200人。けど、いくらウィスキーピークの賞金稼ぎよりは質がいいとはいえ、所詮は雑魚だ。

 

 「一々相手にする必要は無いな」

 

 ポツリと呟くと、他のみんなも頷いていた。

 

 「要はクロコダイル、それにオフィサーエージェントたちさえ倒してしまえばいいんだ」

 

 

 

 

 左腕に×印を付け、その上から布で巻く。

 

 「そんなに似ちまうのか? そのマネマネの実で変身されちまうと」

 

 きっちりと固く布を巻き付けながら、俺と同じくその現場に居合わせなかったもう1人、サンジが疑問の声を上げる。 

 

 「そりゃもう、『似る』なんてもんじゃねェ。『同じ』なんだ。惜しいなー、お前らも見とくべきだったぜ」

 

 けれどそのウソップの意見にサンジは眉根を寄せる。

 

 「おれはオカマにゃ興味ねェんだ」

 

 そんなこと言ってられないと思うけどな……お前、オカマとものすっごく縁があるから。

 

 「見とくべきって言うけど、そのおかげで俺たちの顔は今のところメモリーされてないわけだし」

 

 苦笑しながらウソップを見た……ら。

 

 「ゴメンナサイ! 敵と一緒に踊ってゴメンナサイ!!」

 

 ……何故か土下座せんばかりの勢いで謝られた。何故だ。

 

 「そりゃあ、あれだけ死線を彷徨わされればな。」

 

 俺の不思議そうな顔に気付いたのか、サンジが微妙な顔で答えをくれた……あれ、俺ってばやりすぎた? ……何かに怯えてるようなウソップはスルーしようそうしよう。

 

 「なぁ、おれは何をすればいいんだ?」

 

 しまった。ウソップがネガティブループに嵌ってるから、チョッパーの素朴な疑問に答えるヤツがいない。

 

 「自分に出来ることを精一杯すればいいんだ。決して無理はしないようにな」

 

 なので俺が答えてみた。微妙に名言奪ってゴメン。

 

 「おれに出来ることか……解った!」

 

 おお、チョッパーやる気だな!

 そのまま船を進ませると、やがてアラバスタの港へと近づいて行く……やっと着いたか。

 

 「よし!」

 

 一同で円を組み、布を巻いた左腕を突き出しあう。チョッパーがわざわざ台に乗って高さを合わせているのが微笑ましい。

 

 「これから何があっても、左腕のこれが仲間の証だ!!」

 

 ルフィはその宣言に続き、号令も掛ける。

 

 「じゃあ、上陸するぞ!」

 

 そう、すぐに上陸だ。

 まずは物資調達の傍らで、かっぱらった物品を売り払ったり、エースを捕まえたりしないといけない……って、地味に忙しいな。

 考えてみれば俺、ローグタウンでそうしてたように髪を染めればいいんじゃね? そうすればサンジや変形したチョッパーのように、刺客に狙われることも無いだろうし、手配書でバレることもない。気楽に行動できるようになるからそうしよう。

 これからのことを考えていたけど、続くルフィの言葉に少し脱力した。

 

 「メシ屋へ!」

 

 おい、お前そこまで飢えてないだろ! ……いや、飢えてるのか? ミニ化してやらなかったから。

 

 「……あと、アラバスタ」

 

 うん、覚えててくれて良かったよ。

 本来の目的であるはずのことがまるでついでであるかのような発言に非難囂々になってるけど、俺はそれに加わらなかった。だって言っても無駄だろうし。

 俺は取りあえず、上陸前にこの髪を染めよう。

 

 

 

 

 案の定というか何というか、上陸した途端にルフィは『メシーーーー!!』と叫んで弾丸の如く飛び出して行ってしまった。もうあいつは放っとこう。

 

 上陸した『ナノハナ』という町は香水で有名というだけあって、確かに多少匂いがした。とはいえ俺はチョッパーのように鼻がいいわけじゃないから、少し香る程度でしかないけど。

 ルフィが飛び出した後で、Mr.3の船が近くの入り江に泊まっているのを発見……生きてたのか、アイツ。いや、その方が後々都合は良いか。

 どちらにせよ、万一Mr.3に出くわせばリトルガーデンでのクロコダイルへの報告が嘘であることが早々に露見してしまう。ビビに至っては、何しろ王女で顔が知られているからただ歩くだけでもヤバい。なのでビビ・ゾロ・ナミ・ウソップには布をかぶせて町に入り、物陰まで急ぐ。ある意味、余計に目立ってるけど。

 

 あ、俺は髪を染めたから多分大丈夫なんじゃないかなってことで普通に歩いてる。

 ちなみに大福は船番だ。というのも、アイツも鼻が利くもんだから香水の匂いが嫌なのか上陸したがらなかったんだ。猫サイズから通常の虎サイズに戻してあるので、不審者が来たら退治するようにとも言ってあるよ。ただし、無理はしない事とも言ったけど。

 

 ナノハナは見た感じでは特に不穏な空気も何も無い。人も多いし、店も立ち並んでいる。特別ピリピリもしていないし、この町を見ただけじゃあ戦争……内乱寸前だなんて予想できないだろう。

 さて、まずは何をするべきかって、それはユバへ行くために砂漠越えをするのに必要な水・食料などの物資調達、それにこの国の庶民の服に着替えて目立たなくなること。

 物資に関しては、俺の能力を使えば通常よりも多く装備できる。ルフィがいる以上、水にしろ食料にしろいくらあってもいい。むしろ不安が尽きないぐらいだ。

 ただ、大量に仕入れようと思えば金もより必要になる。

 

 なのでまずは服の調達をサンジとチョッパーに任せ、俺は別行動を取らせてもらってウィスキーピークからこっちで色々と手に入れてきた物品を売っ払って金に換えることにした。

 まぁ、俺も道すがらで自分用に外套を買って着ておいたけど。中の服を着替えてなくとも、外套を着てボタンもキッチリ留めておけば当座はどうとでもなる。

 店に着いたら着いたで一通り目録を作っておいたのが良かったのか、ローグタウンでの換金所よりも随分とすんなりと取引が成立した。まぁ、貴金属類は殆ど無かったからか大きな金額は動かなかったけど。あえて言うなら、武器類はそこそこ高値で売れたかな。

 

 けど、すんなり済んだとはいえそれはあくまでも前と比べての話で、それなりの時間は掛かっている。

 元の物陰に戻ろうかと思うと、案外近くで知った気配を感じたからそこに向かってみる。

 しばらく歩くとそこには。

 

 「やっぱりいたな」

 

 ゾロ・ナミ・ウソップ・チョッパーがいた。しかも、何やら難しい顔で大きな壺の後ろに隠れて……その上、声をかけるとゾロ以外の3人がビクッと震える。

 あれ? 俺、何かしたっけ?

 

 「ユアン! 海軍がいたのよ!」

 

 なるほど。良かったー、俺が何かしら怖がられたわけじゃなかった! ……って、海軍。

 

 「あのローグタウンの大佐だ」

 

 ゾロは落ち着いているような参ってるような微妙な様子だ。ということは多分、たしぎも来てるんだろう。

 それにしてもやっぱり追って来たのか。ストーカーかよ!? スモーカーだけに! 執念深いなぁ。

 

 「へぇ」

 

 「反応薄いな、オイ!」

 

 ウソップにビシィッとツッコまれたけど、俺は肩を竦める。

 

 「随分とボロクソに言ったからね。執念深く恨まれてても不思議じゃない」

 

 いや~、俺ってば色々と要求を突き付けたよね。あ、でもあれ以降『あかがみ』とは呼ばれなくなったし、律儀にも伝えてくれたんだろうか。だとしたら礼を言わないと。

 

 「それだけじゃねぇぞ」

 

 今度は人型に変形したチョッパー……って、チョッパー大きいな、オイ! 何だこの悔しさは!

 

 「ルフィとユアンを探してる変な男もいた」

 

 変な男……変な男、ねぇ……まず間違いなくエースなんだろうけど。変……うん、変かな……半裸だし。

 

 「そうだぜ、お前らの手配書を持って探ってたんだ!」

 

 いや、別に構わないんだけど。俺たちの手配書を使う分には一向に構わないんだ。妙な引き合いを出しさえしなけりゃ。

 

 「……『白ひげ』のマークを背負ってたぜ」

 

 元海賊狩りだからか、ゾロはその辺のことにそこそこ詳しい。しかも、その情報でエース確定だ。

 でも、一応確かめておこう。

 

 「それってさ、コイツだったか?」

 

 取り出したのは、エースの手配書。ちゃんと持って来ておきました、ハイ。

 

 「白ひげ海賊団2番隊隊長、『火拳』のエース」

 

 渡して見せると、4人とも頷く。よし決まり! 解りきってたけど決まり!

 

 この手配書、俺は保管はしてるけどあんまり写真は見ないように気を付けてる。だって半裸だぜ!? 差し替えてくれないかな? ……無理か。ちなみに手配額は現在、5億2000万ベリー。

 5億5000万じゃなかったっけ? とも思ったけど、よくよく思い出してみればエースはこの後、ビリオンズの船を沈めたり、『エースの黒ひげ大捜査線』で海軍基地に潜入したりするんだもんな。食い逃げの常習犯でもあるし……多分それで原作では、捕まるまでに金額が多少上がったんじゃないかと考えてる。

 

 「………………クロコダイルより高ェな」

 

 ウソップが何だか現実逃避をしているかのような目になっている。けどそうだな、今この国で1番の高額賞金首ってエースなんじゃないか?

 

 「そりゃあね。以前、七武海への勧誘もあったぐらいだし。蹴ってたけどさ」

 

 七武海って称号は『名声』になり得るけれど同時に、『政府の狗』という側面もある。そんなものを受けるエースじゃない。

 まぁ実際には、クロコダイルがそうであるように七武海の面々は裏では好き勝手にやってる。ゲッコー・モリアしかり、ドンキホーテ・ドフラミンゴしかり。

 くまだって実は革命軍だし、ハンコックも何気に略奪働いてるし。ジンベエやミホークはそこまでではないかもしれないけど、白ひげ海賊団と懇意だったり赤髪海賊団の宴に混じってたりと何気に四皇と親交持ってる。

 こうして考えると、政府は七武海の手綱を握れてないよね。向こうも承知はしてるだろうけど。

 閑話休題。

 

 それにしても久しぶりだな、エース。3年ぶり。楽しみだ……どうか、このまま普通の再会が出来ますように。

 俺が内心で祈っていると、手配書を返しながらウソップが聞いてきた。 

 

 「やけに詳しいな? あ! まさかお前、ファンか?」

 

 何というか……まるでからかうような口調だけど、その効果は無きに等しいぞ。

 

 「うん。大ファン」

 

 即答させて頂きました。

 

 「そーかそーか、大ファン……って、真顔で肯定するなァ!」

 

 いや、だって事実だし。

 

 「しょうがないだろ? 『火拳』のエースは俺が世界で2番目に尊敬する海賊なんだから」

 

 そうなんだよな。ありとあらゆる全ての海賊を思い浮かべた結果、そうなるんだもんな。仕方が無いって。

 1人で納得していると、何だか周囲は微妙な雰囲気になっていた。

 

 「……1番はルフィ?」

 

 ナミ、何でそんなに疲れたような顔をしてるんだ?

 

 「いや、ルフィは…………………………7番ぐらいかな? 何でそんなこと聞くんだ?」

 

 「だってアンタ、ブラコンじゃない」

 

 ………………いやいやいや。

 

 「それとこれとは話が別だろ? 単に『尊敬してる海賊』ってだけなら、会ったことが無くても、もう死んでたりしたっていいんだし、例えば『海賊王』ロジャーや『冥王』レイリーだって入るよ」

 

 ちなみに、クロッカスさんもランクインしています。それに。

 

 「逆に聞くぞ? お前ら、普段のルフィの様子を見てて心酔できるか?」

 

 「「「「………………。」」」」

 

 見事に全員黙ったな! そして視線を逸らした! まぁ、2言目には『メシ!』か『肉!』だから、これもしょーがないっちゃあしょーがないんだけど。

 尊敬してないわけじゃないんだよ? ただ、日頃の行いがアレだから……。

 

 「あーでも、ちょっとホッとしたぜ」

 

 まるで無理やり話題を変えるかの如く、ウソップが苦笑いを浮かべていた。

 

 「おれァてっきり、お前は何でも兄貴が1番の真性のブラコンかと思ってたんだが……そうじゃなかったんだな!」

 

 ウソップはバンバンと俺の背中を叩いた。『真性のブラコン』って何だよ。

 

 「んで? お前ェらとコイツはどういう関係なんだ?」

 

 「………………」

 

 エースも兄貴なんだけど……って、言い難い雰囲気がひしひしと漂っているような気がする。

 俺は苦笑いで視線を逸らし、さっき得た金をナミに渡した。何故ナミかって? 1番しっかりしてるからだよ!

 

 「あ~……俺、ちょっと行ってくるな。後よろしく!」

 

 「え!? あ、ちょっと!!」

 

 どの道後で説明しなければならないけど、今は時間が惜しい。

 『手配書を使って人探しをしていた』なんて情報が入れば特に! もしもここでも相手が『この手配書じゃ解らない』的なことを言ったりしたら……嫌な想像が頭を過ぎるよ、うん。

 これは悠長に構えず、早々に接触した方がいい。

 多分メシ屋にいるだろうし、ストーカー……じゃない、スモーカーやルフィが出て来る前にちょっと話をしておこう。

 俺はそう考えて、一路メシ屋へと向かったのだった。

 

 




 Q,問題です。ユアンの『尊敬する海賊』トップ10を答えよ。

 執筆当時、おふざけでこんな問いを後書きに乗せたら、想像以上の反響がありました。そしてお答えいただいた全員が1位を完璧に当てるというね。ちなみにトップ10は決まっています。今後変動することはありますが。

 余談ですが実はユアンの『尊敬する海賊』ランキング、番外にバギーもいます。『よくあれだけ不憫な人生をめげずに懸命に送って来られてるな』的な。

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