麦わらの副船長   作:深山 雅

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第9話 逃亡中の出来事

 サボと出会ってから、更に2年近くが過ぎた。俺はもうすぐ6歳である。

 能力制御の方は結構順調だと思う。今は1/50ぐらいにまで小さく出来るようになった。

 

 

 

 

 前回から課題とした体力面だけど……まぁ、地道に鍛えた。

 ランニング、腹筋、腕立て、スクワット……毎日少しずつノルマを増やしながら地道にこなしたよ。

 んでもって、努力は俺を裏切らなかった。継続は力なり!

 にしてもその伸びが異常にいいんだけど……やっぱり『ONE PIECE』世界の補正でも掛かってるのかな? ジジイも鍛えれば鍛えるだけ強くなれるって言ってたし。

 

 毎日コルボ山と『不確かな物の終着駅』の間を往復するのにも、もう慣れたものだ。去年ぐらいからは、エースたちの海賊貯金の手伝いもしてたりする。

 それでもやっぱり俺はまだまだ2人には敵わない。試合しても即行負ける。

 ……いいよ、俺はまだ体力付けてるだけだし。本格的に戦う力を付けるのはこれからだし……ゴメンナサイ、強がりました。本当はちょっと悔しかったりします、はい。

 目標は六式! 特に月歩が使えるようになりたい。いいよね、スカイウォーク! 日記に書いてあったから俺が知ってても可笑しくないし、理論も何となくだけど解るから再現可能なはずだ。

 覇気は……習得方法までは解らないからなぁ。俺の知る限り原作にも書いてなかったし、日記にも無かったんだよ。でも何とかしたい…他に自然(ロギア)系を何とかする方法が思い付かない。クロコダイルに水、エネルにゴムっていう風に弱点を突ければいいんだろうけど、一々それを見極めるのも大変だし。要努力だな。

 

 

 

 

 猛獣とも戦ってみた。戦いっていうか、狩りだな。こうして捕まえたのが食事に出てくるわけだし。

 でもその成果は、あんまり芳しくなかった。俺が出来たのなんか、エースの補助ぐらい。道は険しいね。

 能力で相手を小さくすればよくね? とも思うかもしれないけど、実は能力使用から実際に小さくなるまでに僅かなタイムラグがあるんだよ。食事時のエースのようにそうなることを受け入れてくれてるヤツだとか、無生物だとかが相手なら何の問題も無いんだけど、生きた敵が相手だとそうもいかない。小さくしようとすればするほどそのタイムラグも長くなるし……もとのサイズに戻すのは一瞬で済むのにさ。これじゃあそのスキを突かれて終わりだ。

 ……実際、猪相手にそうしようとして逆に吹っ飛ばされた時なんか、『あ、コレ俺死んだかも?』とか思っちゃったよ。うん……あの時は、本当にヤバかった。偶々打ち所が良かったから助かったようなモンだったよ、アレは。

 もっと制御に磨きをかければこのタイムラグも減らせるんじゃないか、と現在模索中である。

 

 

 

 

 さて、最近俺たちはちょっといいご飯が食べられる機会が増えた。ゴア王国の町のレストランに通うようになったから。ダダンのところじゃ焼くか煮るかの簡単なものばかりだったからかなり嬉しい。

 ……勿論、食い逃げなんだけどね! 最近食い逃げに全く抵抗が無くなってきている自分が怖いよ!

 数日に1度、町に入って食い逃げして……これはそんなある日のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「食い逃げだー!!」

 

 憤怒の形相で叫ぶレストランの従業員。必死で逃げる俺たち。

 ゴメンね、いつか宝払いで払うから! ……って、追いかけて来とる!?

 クソッ、いつもならこれだけ距離を取れば諦めてくれるのに!

 

 「オイ、二手に別れるぞ!!」

 

 走りながらエースが提案してきた。

 

 「サボ、おれが囮になるからユアン連れて先に行け!!」

 

 「分かった!」

 

 俺が一方的に庇われているのは正直情けないけど、仕方が無い。何しろ、俺の足が1番遅い。いや、言わせてもらうなら、年齢を考えればかなり早いとは思うよ。でも、比べる相手がこの2人だし、この追われてる状況は辛い。

 

 「来い、ユアン!」

 

 サボに腕を引っ張られながら俺たちは脇道に逸れ、そのまま全力疾走でその場を離れたのだった。

 

 

 

 

 走って走って、もういいか、と思ったのはそれから10分ぐらい経ったころだ。

 

 「エースは大丈夫かな?」

 

 俺が聞くと、サボは肩を竦めた。

 

 「エースだからなぁ。多分、心配するだけムダってモンだろ」

 

 うん、俺も内心そう思う。むしろ、あの従業員をフルボッコにしてないかの方が心配だ。何だかんだ言っても、悪いのはこっちの方なんだし。

 

 「どうする? 探す? それとも、先にグレイターミナルに戻ってる?」

 

 あんまりうろうろしてても、また見つかったりしたら面倒だしなぁ。

 

 「戻ろうぜ。エースだって、先に行けって言ってたし」

 

 サボのその判断に納得して、俺たち2人は先に町を出たんだけど……それは正しかったのか間違ってたのか、よく解らない。

 

 

 

 

 エースがグレイターミナルに戻ってきたのは、俺たちよりも大分遅れてのことだった。

 驚いたのは、エースが何かボロボロになってたことだ。いや、もう、マジで驚いたよ。そこまでひどい怪我は無さそうだったけど、全体的に小さな傷をたくさん作ってた。

 

 「どうしたんだよ、エース!?」

 

 サボも目を丸くしていた……が、当のエースはえらく不機嫌だった。

 

 「……何でもねぇよ」

 

 いや、それ明らかに嘘だよね!? そんなボロボロで不機嫌で、何も無かったなんて誰も信じないからね!?

 

 「あのオッサンに捕まっちゃったのか? それでシメられたのか?」

 

 に、してはおかしい。もしそうならこうして戻ってこられるとは思えない。それにこの不機嫌さも、『捕まってしまった苛立ち』というより『何かすごく腹立たしいことがあった』かのようだ。

 エースは笑った……明らかに無理矢理と解る笑みを浮かべた。

 

 「だから、何でもねぇって言ってんだろ? ……ユアン、帰るぞ。サボ、またな!」

 

 「え、ちょ、おいエース!?」

 

 その急な様子にサボが慌てたけれど、エースは構わず俺の腕を掴んでずんずん歩いていった。

 

 「……またな、サボ!」

 

 俺は少し迷ったけれど、もう何も聞かないことにした。

 

 

 

 

 聞いても、エースは答えてくれないだろう。それは、エースにとっての俺が守るべき庇護対象だからだ。だからエースは、多分意地でも俺に弱音なんか吐かないし傷ついた様子も見せないだろう。それなら……ここは、別の人に任せてみようと思うんだ。

 運がいいのか悪いのか、もうすぐその時期になるしね。


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