転生して主人公の姉になりました。SAO編   作:フリーメア

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今月二回目の投稿ですよっと
和葉「珍しく早いですね」
まぁ、今回は友達が、ね


※今回は友達の考えたオリキャラが出て来ます。それが苦手な方はブラウザバックです。
友達のオリキャラが出る関係で一回の話で終わらせようとした結果、いつもよりだいぶ長いです
想像しやすいように、先にオリキャラの姿貼っておきます。

【挿絵表示】




後、今回は和葉の歪んだ感性が出て来ます。ご注意ください。


辻斬り☆

「というわけで、二人に休暇を与えてください」

 

 ヒースクリフに報告をした直後、キリハはそう言った。因みに、ここにいるのはキリハとヒースクリフだけであり、幹部達はいない。

 

「何がというわけなのか分からないのだが…」

 

 珍しく困惑している様子を見せたヒースクリフ。キリハは訓練場所で何があったのかを説明しただけで、理由を説明していないのだから困惑するのも当然と言える。

 

「いえ、二人とも今まで働きづめだったので長期休暇を与えてもいいのではと思ったので」

 

 それに、と付け加える。

 

「今回はそちらに非があるので、頼むには丁度良いかと」

 

 と言った。つまりキリハは、キリトが殺されそうになったのだからこっちの要件を聞け、と言っているのだ。ふむ、とヒースクリフは顔の前で手を組む。

 

「良いだろう、君の要求を受けよう。あの二人にはしばらくの休暇を命じる。そうだな、ボスの討伐戦には戻ってきて貰うとしよう。それでいいかね?」

 

「いいもなにも、反対する理由がありませんね。あぁそれと、二人がいない間は僕が代わりを務めましょう」

 

 僕達三人とも抜けるのは辛いでしょう、と目だけで伝える。ヒースクリフは否定はせず苦笑をした。否定出来るわけないのだ。アスカとキリト、二人が抜けるだけでも攻略スピードが目に見えて落ちるだろう。それに加え、キリハまでもが抜けてしまったら大変なことになる。

 

「では、僕はこれで」

 

「あぁキリハ君、一ついいかね」

 

 背中を向け出て行こうとしたキリハを呼び止める。キリハは顔だけをヒースクリフへ向けた。それを了承ととったヒースクリフはそのまま言葉を続けた。

 

「君は、『辻斬り』と呼ばれるプレイヤーを知っているかね?」

 

 

 

 

 

 あの後、二人に休暇が与えられたことをメールで報告し、キリハは現在、七十五層迷宮区前にある森を歩いていた。

 

(『辻斬り』、ですか…)

 

 『辻斬り』、そう呼ばれているプレイヤーがいるのは知っていた。会ったことはないが。そもそも『辻斬り』は中層プレイヤーだったはずなので会えるわけがないのだ。だがヒースクリフ曰く、最近は最前線でも出没しているとのこと。攻略組の何人かが出会ったらしい。

 『辻斬り』と言われている由縁は、誰これ構わず斬りかかっていくことから。噂では、プレイヤーの前に突然現れ襲撃をするらしい。最初はレッドプレイヤーかと思われたが、誰も殺されていないことからその線は消えた。今ではただの戦闘症だと言われている。だが、何人かのプレイヤーは「殺されそうになった」と言ったらしい。命乞いをしたら、まるで興味がなくなったかのように去って行った、とも。

 突然、ピタリとキリハは足を止めた。索敵範囲にプレイヤー反応があったのだ。しかもキリハの後ろに、だ。近づいてきてはいない。噂の『辻斬り』が現れたか。

 

「そこに隠れている人、出て来たらどうですか?」

 

 後ろを振り返りながら声をかける。いつ襲われてもいいように刀に手をかけながら。しばらく動く気配がなかったが、木の陰から一人の人物が出て来た。

 その人物は、陸軍のような服を着ており左腰に刀をさしている。顔は帽子で隠れて見えず、僅かに見える口元はニヤケていた。

 

「おぉ、まさか抜く前に(さと)られるとは。ふむ、あまりいい気はしませぬな」

 

「貴方が最近噂の『辻斬り』ですか?」

 

 相手の台詞を無視してキリハはそう問いかけた。目の前の人物は首を傾げて答える。

 

「何のことでありますか?」

 

 どうやら心当たりがないらしい。

 

「最初は中層で、最近は最前線で、誰これ構わず斬りかかっているプレイヤーのことです」

 

「あぁなるほど、そのことでありますか。確かにそれは自分であります」

 

 目の前の人物、『辻斬り』は「自分、そんな風に言われてるでありますかぁ」と、どこか嬉しそうに、ニヤケながら言っていた。

 

「貴方が僕の後ろにいたのは、僕に斬りかかるためで合っていますか?」

 

「御明察。かなり察しが良い童でありますな。非常によろしい。しかし後ろが通じぬとなれば─」

 

 その言葉を聞いた直後、目の前に『辻斬り』の顔があった。

 

「─前しか有りませぬな」

 

 居合いを放つ。スパッと何か軽い物が切れる音が聞こえた。

 

「(今のを避けるか…。この童、自分より使える)

御見事。全く以て宜しい。今までの烏合共とは違うようだ」

 

 『辻斬り』はキリハを見る。キリハは五メートル程離れたところにいた。両者の間に斬られた髪の毛が舞う。キリハはチラッと右手を見る。そこには微かなダメージ痕があった。

 

(避けきれませんでしたか)

 

 キリハは目の前に『辻斬り』の顔が現れた瞬間、後ろに回避をした、にも関わらず少しとはいえ斬られた。『辻斬り』が目の前に現れ、突然のことで反応が多少なり遅れたが、それ以上に居合いが疾かったのがあるだろう。

 

(恐らくは何かしらの武術を─っ!!)

 

 背後から聞こえた風切り音に反応してしゃがみこんで即座に前転し、そのまま確認する。

 

「余所見はいけませぬな」

 

 そこには、先程まで前方にいたはずの『辻斬り』が刀を横に振った状態でいた。意識をそらしたのは一瞬だったはずだ。だが『辻斬り』はその一瞬の隙をつき、キリハに気付かれず背後をとった。

 厄介な相手だ、とキリハは思った。突然目の前に現れた移動方法、何より、相手が隙を見せたことを見逃さない観察眼。恐らく、モンスター相手より対人戦が得意か。

 口に笑みが浮かんだのを自覚しながら、意識を入れ替え居合いの構えを取る。

 

─あぁ、楽しい闘いになりそうだ─

 

 

 

(確実に背後を取ったと思ったが…)

 

 一方の『辻斬り』は二度も攻撃が避けられたことにニヤケながらも驚愕していた。『辻斬り』は、自身の技を一般人がさばくのは難しいことを理解していた。実際、今まで戦ってきた烏合共のほとんどが最初の一撃で倒せた。数人は一撃目は耐えられたが、二撃三撃と続けていくと命乞いを始めた。

 が、目の前の少女はどうだろうか。命乞いをするわけではなく、怯えを見せたわけでもない。逆に戦闘態勢を取り始めたではないか。

 ゾクゾクッ、と身体が歓喜に震え、元々ニヤついている笑みが更に歪むのを自覚した。『辻斬り』は探していたのだ、老若男女関係なく自分と殺し合い(戦い)が出来る強者を。『辻斬り』は腰を低くし、刀を顔の右横に縦に構える八双の構えを取った。

 

(さぁ、最後まで殺り合おうではないかっ…!!)

 

 基本的に居合いはカウンター狙いの防御の構えだ。故に相手が居合いの構えを取った以上、こちらから仕掛けることは危険だ。

 

(さぁ、どう来る?)

 

「名前…」

 

「はっ?」

 

 ポツリと呟かれた言葉にあっけにとられる。仕掛けてくるなら刀を抜いて攻撃してくるかと思っていたからだ。

 

「いえ、そう言えば貴方の名前を聞いていなかったな、と。これから闘い合うんですから名前くらいは知っておいた方が良いでしょう?」

 

 キリハは構えを解かずにそう言う。ついで「あ、僕の名前はキリハです」と付け加えた。何を考えているか分からないが、相手が名乗った以上こちらも名乗らなければならないだろう。

 

「自分はエンバであります」

 

 『辻斬り』改め、エンバが名乗るとキリハはニコリと笑った。

 

「そうですか。ではエンバさん、今から─」

 

 突如、視界からキリハが消えた。次に声が聞こえたのは

 

「─楽しく闘いましょう」

 

「っ!」

 

 下からだった。即座に刀を斜めに振り下ろしながら視線を下に向ける。そこには姿勢を低くし、ちょうど居合いを放っているキリハがいた。ガキンッ、と刀同士の打ち合う音が響く。

 

「くっ…。」

 

「先程の仕返しです」

 

(今のは自分の『跳歩(とんぼ)』と同じ…。いや違う、全くの別物…)

 

 エンバはキリハを弾き飛ばしながらそう思考する。

 エンバの考えは合っていた。エンバの使う『跳歩』は、極限まで動きをそぎ落とし、低く、速く、滑るように跳び“そのまま前に行く”移動方法だ。これは人の視覚が二次元的にしか捉えられないことを利用した移動方法であり、結果、相手から見たら先程のキリハのように“突然目の前に現れた”かのようにしか見えない。

 それに対して今キリハが行った移動方法は単純明快、ただ“速く動いた”だけ。そんなことは理解した。だが問題なのは、何故速く動いただけの行動に自分が反応出来なかったか、だ。

 

(この童…キリハと言ったか…。先の問答は自分の名を聞く以外に、自分の思考を戦闘から僅かでも逸らすことが目的だったのでありますな…)

 

 少し冷や汗を垂らしてなおニヤケながらそう考えた。この考えも概ね正解だ。ただ一つだけ、キリハが今のように動くときに相手の思考を逸らすのは()()()に行っていることだ。ただし、それを行うのは相手と初対面である事が大半であり、既に闘った相手、キリトやアスカなどには行わない。行えない、と言った方が正しいか。理由は単純であり、思考を逸らす話題がないのだ。

 厄介な相手だ、とエンバは思った。この世界にいる烏合共は皆、モンスターとばかり戦っており対人戦には慣れていないと思っていたが…。

 

(キリハ殿は対人戦にも慣れている…)

 

 キリハは既に刀を鞘にしまっており、再び居合いの構えを取っていた。そこで相手の戦闘スタイルが把握出来た。自分と違い、キリハは最初の一手のみ居合いを行うのではなく、純粋な居合い使いなのだろうと。

 

(いや、まだ決めつけるのは早い)

 

 もしかしたらフェイクの可能性もある。もしかしたら、そもそも刀だけを使うのではないのかもしれない。もしかしたら卑怯な手も使うかもしれない─。

 エンバは、相手が()()()()()()()()()()()()()()()()として考え続ける。自分より弱ければ、それはそれで良し。いくつもの策を考えておいて損はないのだから。

 

 

 

(常にニヤケていますねぇ)

 

 癖なのだろうか、とキリハは内心首を傾げた。まぁ、そんなことは関係ない。久し振りに闘いを楽しめそうな相手が現れたのだ。余計なことは考えず、楽しく戦うことのみを考えよう─。

 キリハは殺し合いが嫌いだ。昔誤って強盗犯を殺してしまった時も、ラフコフのメンバーを殺した時も良い気はしなかった。当たり前だ、どちらも相手を殺すつもりで殺したのではないのだから。

 最初から殺すつもりで行くのならそこには何もいらない。喜怒哀楽の感情も、殺してしまったという後悔も、何も。和葉(キリハ)佳奈(キリト)はそうやって教えられ、鍛えられてきた。

 あぁそうだ。和葉(キリハ)は殺し合いが嫌いだ、大嫌いだ。けれど─闘いは別だ。戦闘、決闘、どちらも決着をつけるのに相手を殺す必要はない。どのような結果であれ相手を戦闘不能にさえすればいいのだ。ならば

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?─

 

 ニィッと口角が歪んだのを自覚した。キリハはこういう感性が、一般のそれと比べかなり歪んでいた。殺すつもりはなかった、が結果的に死んでしまったのなら仕方ない。常にそう考えてきた。今まではデュエルをしていてたから死ななかった。だけど今回はデュエルではない。なら死んでしまっても仕方ない。何故なら、絶対に死なない保障なんてどこにもないのだから。

 キリハは体勢を低くして正面から疾走した。

 

(疾いっ…が)

 

 捉えられない程ではない。エンバは冷静に自身の間合いに入るまで待つ。そして、あと一歩で間合いに入る、瞬間、再びエンバの視界からキリハが消えた。エンバはそれを目で追い右へ刀を振るう。それをキリハは特に驚くこともなく顔を左に反らして躱し、一閃。がしかし、エンバは跳躍をして回避、そのまま上から振り下ろす。キリハは左腕を引いて逆手に持った鞘で弾き、その勢いで回転し後ろ回し蹴りを放つ。エンバは弾かれた勢いを利用して回避し、両者の距離が空いた。

 

(ステータスは僕の方が上…技術は同等…ですか…。ふふふ、本当に楽しいですねぇ)

 

(予想以上に強い…。ステータスで劣ってる分技術で補うしかないが…。()()を使うしかないか…)

 

 スッとエンバは刀を左腰に居合いのように構えた。表情は変わらずニヤケたままだが、雰囲気ががらりと変わったのがキリハには分かった。何か仕掛けてくる。恐らく、奥の手に近い何かを。

 

(本来ならそのような手は使わせないに限るのですが…)

 

 受けてみたいと、相手の技術を、未知の技を見てみたいと、思ってしまう。警戒心よりも好奇心が勝ってしまった。とは言っても警戒心がなくなったわけではない。油断は禁物、故にキリハは確実に防げるように、刀を鞘から抜き防御の構えを取る。

 

(迎え撃つつもりか…面白い…。防げるものなら防いでみよ!!)

 

 エンバは跳歩を使いキリハに近付く。直後、刀を持った右手を振るう。跳歩は視覚では捉えきれない。ならばと、跳歩を視覚以外で見切ったキリハは正確に防御した。そしてキリハが目にしたのは、計画通りと言わんばかりに嗤ったエンバと、キリハの刀を()()()()()()()()()()()()だった。

 

鬼蜻蛉(おにやんま)

 

「なっ!?」

 

 普通なら有り得ない出来事に驚愕の声を上げながらも顔を無理矢理後ろに反らした。それを逃さずエンバは足払いをかける。避けることも出来ず体制を崩し、宙に浮いたキリハに刀を振り下ろした。宙に浮いているキリハは体を捻って回避して片手で着地、地面を押して後方へと逃げる。ここが仮想世界だからこそ出来る力技である。

 

(逃がさん!)

 

(逃がして…もらえませんよねぇ)

 

 がしかし、エンバは即座に追撃に入り距離を空けさせない。エンバが刀を持つ腕を振るう。それを今度は防御するのではなく弾き返す。

 

「っ!(もう対処してくるか!!)」

 

 刀を弾いたキリハはあえて突っ込み刀を振るった。エンバはそれを受け止め、つばぜり合いとなる。そのまま、キリハはエンバに話しかけた。

 

「貴方のそれ、エクストラスキルですね。しかもユニークスキル」

 

「…御明察。やはりキリハ殿はかなり察しがよろしいようだ。名前は《蜻蛉切(とんぼぎり)》、自分の任意のタイミングで武器をしならせるスキルであります」

 

「おや?スキル名だけでなく効果まで教えてくれるとは、親切ですね」

 

「ははっ、キリハ殿ならこれが如何な代物か解っていると思った故」

 

「正解です。しなる所までは分かりましたが、そういう武器なのか、しならせるスキルなのかまでは分かりませんでしたけどね」

 

 ふふふ、ははは、と二人は笑い合う。分かっているとは思うがこれ、つばぜり合いをやりながらの会話である。

 

「僕だけ知っているのはフェアではありませんね。僕のユニークスキルは《大鎌》、効果は鎌を扱えることと、斬った相手を問答無用で黒鉄宮送りにするスキルです」

 

「ほぉ…願わくばそれとも一合打ち合いたいでありますな」

 

 ニヤニヤと嗤いながらそういうエンバに、キリハは困ったように笑った。

 

「そうしたい所ではありますが…困ったことにこれ、後者の効果はオンオフの切り替えが効かないんですよ。ですのでこういう闘いには向かないんですよねぇ」

 

「ソレの『斬る』とは如何なるモノでありますか?」

 

「かすってもアウト、です」

 

「…流石に全ての攻撃を回避する自信はありませぬなぁ」

 

「ですよね…。

さて、雑談はこれで終わりにして─」

 

「─仕斬り直しと相成ろう」

 

 先程までの雰囲気から一転し互いが互いを弾き返した。距離が空くがすぐさまゼロになり金属特有の甲高い音と火花が散る。押し返して、刀をしならせて、弾いて、蹴りを放って、投げ飛ばして。二人は防御という手段を捨て、あらゆる動作を全て攻撃につなげた。

 キリハが左下から中斬りを放ち、エンバはそれを弾こうと刀を振るった。しかしエンバの刀は空を切る。キリハの右手を見ると何も握ってなく、刀は左手に持ち替えられていた。

 

─五月雨─

 

「っ!?」

 

 ギリギリで腹をへこませながら後ろに下がり、そのまま後転する。足が地面に着いた瞬間、体を低くしながら接近、ついで鬼蜻蛉を放つ。避けられる、がすぐに刀を持ち替え間髪入れずもう一度鬼蜻蛉を放った。躱されるが連続で放ち続ける。

 

鬼殺蜻蛉(おにごろしやんま)

 

 唐竹、袈裟斬り、逆袈裟、反撃の隙を与えない。現実でこの技を使おうものなら腕に負担がかかるが、ここは仮想世界、故にいつまでも放ち続ける。

 流石に全てを弾き躱すことは不可能に近く、いくつかかすってしまった。ずっとこの技を続けていれば勝てるか─んなわけあるか。

 キリハは左腰にさしてある鞘を逆手で抜きながら弾いた。

 

「このスタイルはあまり好きではないのですが」

 

 エンバの不規則な斬撃を右の刀と左の鞘で踊るように弾き続ける。これ以上は無駄うちと踏んだエンバは後ろへ下がる。が、それをキリハは許さない。鞘に刀を収め距離を詰め、一閃。エンバは後ろに跳躍して躱し、更に後ろへ跳び続ける。いつまで下がり続けるのか、キリハは追撃をやめた。十メートルほど下がった所でエンバは口を開いた。

 

「やめであります」

 

「…はい?」

 

 聞き間違いだろうか。居合いの構えのまま間抜けな声をあげてしまった。

 

「やめ、と言ったであります。これ以上続けても決着がつかない、あるいは自分が負けてしまう」

 

 聞き間違いではなかった。証拠に先程までの戦意が嘘のように消えている。

 キリハには、何故エンバがやめと言ったのか分からない。同時に思う、これからもっと楽しくなるはずなのに、と。

 

「負けることだけは勘弁であります。自分が負けるとしたら、ソレは我が最期也。……今はその時では無し!故に!いざさらば!」

 

「え、あ、ちょっと!?」

 

 早口で捲したてたと思ったら、あっという間に行ってしまった。止める間も無く、その場には片手を伸ばしたキリハだけが残ることとなった。

 しばらくその体制のまま固まっていたキリハであったが、やがてポツリと呟いた。

 

「…行きますか」

 

 当然、迷宮区へと向かう。この場に他の誰かがいたらこう言っただろう。“お前、疲れてないの?”と。

 迷宮区へ向かっていると遠くから

 

─はーはっはっはっ!!此度は自分の読み勝ちでありますなぁ!!お主の名、覚えたでありますぞキリハ殿ー!─

 

 また殺りにくると、そう彼の叫び声がした。

 

 

 迷宮区にて、先の戦闘が不完全燃焼で終わったことに腹が立ったのか、キリハが必要以上にモンスターを攻撃していたのは余談だろう。




エンバ…この子の口調ホンットムズい…
和葉「友達に確認して貰いながらでしたねぇ」
大変だったぁ…
和葉「というか、僕が使った《五月雨》って」
あ、うん。そうだよ。『家庭○師ヒッ○マンRE○ORN』からの技だよ。




ここからはエンバの設定です


基本設定

  流浪人。SAO内での通り名は『辻斬り』。自分が何処に居るかも把握しておらず、気に入った者に喧嘩をふっかける日々を送っている。タダ飯が好き。好き嫌いはないが、肉が特に好物。
  戦闘方針は基本的に守備重視。故に隙を作り一撃で決めるか、搦め手を執りなぶり殺すか、初撃必殺を行う。中でも搦め手が好き。AGIがん振りのスピード型。
  勝つためなら卑怯な手(唾かけ、砂かけ、急所への攻め、負傷箇所への執拗な攻め等)も辞さないが、事前工作は嫌う。戦うときはその場に有るもののみを使用することを誓っている。
  負けるときは逃げる。ただし、彼は決着が付かずに逃げたときは勝つまで追い続ける。良い迷惑だ。「負けたら殺されずとも自ら腹を切りましょう」とは本人の談。
  容姿はそこそこ整っている。常にニヤニヤと不敵な笑みを浮かべるが、殺意を込めた一撃を放つ際に笑いがふっと消える癖がある。この癖を見た者は居るが、皆エンバに殺されているので、エンバ自身気付いていない。今回、その癖は出なかった模様。なお、エンバは殺したい時に殺すのではなく、殺す価値がある者、又は気に入った者にのみ殺意を込める。因みに和葉はエンバのお気に入りに認定された、頑張れ。
  目の下には常にクマがあり、光がない。一目見ただけでは不気味な容姿である。
  服装は日本帝國陸軍冬制服のような着物。丸きり軍人の装いである。左に刀を差しているが、彼自身はどちらの手でも刀を振れる。
  口調は語尾に「~であります」が付き基本的に軍式敬語。ただし、人を小馬鹿にしたような話し方なので(本人もそう思っているが直す気はない)よく絡まれる。彼的には本望なので、むしろ歓迎している。
 現実での愛刀は「秋津(あきつ)」。いわゆる日本刀だが、その剛性としなやかさは天下一と言っても過言ではない。その名の通りとんぼの羽のように非常に軽く、エンバの斬撃の速さの基となっている。


跳歩(とんぼ)
 人の視覚が二次元的にしか捉えられないことを利用した歩法。極限まで動きを削ぎ落とし、低く速く滑るように跳ぶことで「そのまま前に行く」。奥行きの三次元を突いた歩法であり、受けた者は「いきなりエンバが目の前に来た」としか知覚出来ない。突破するには立体機動装置の訓練でも受けておくか、視覚以外で察知するしかない。今回、エンバが始めに使った技。
赤跳歩(あかとんぼ)
 跳歩で敵の不意を突いた後、ノンタイムで側面に移動する歩法。跳歩自体、一切体勢を崩さず移動する代物なのですぐに側面に回りこめる。故に突破は難しく、死角に移動されること必至である。今回は出番がなかった。
空通(あきつ)
 これまた体勢を崩さず高速で摺り足を行いながら、時折跳歩の要領で跳ぶことでさらに素早く、滑らかに移動する歩法。まるでとんぼが空を跳ぶように速く、方向を変えることも自在である故、「空を通る」と名付けた。こちらも出番はなかった。
・とんぼ返り
 柄の先に手のひらをあて、まるで柄を小さな棒のように使い、斬撃の方向転換を自在にする技。正直ダサい。こちら(ry
・とんぼ落とし
 思い切り足払いをし、相手が宙に浮いたところを鋭く斬りつける技。エンバはこれを必殺として最も多用する。跳歩や赤跳歩の直後にこれを使うと効果的。名前は出なかったが、和葉が驚愕した後に使用した。
鬼蜻蛉(おにやんま)
 脱力し腕をムチのように激しく振るうことで刀身を歪ませ、不規則な斬撃の形を作り斬りつける。防御の上からでも刀がしなるので当たる。エンバの間合いにいる場合、完璧に防御することは難しいだろう。突破法はエンバの間合いから抜けることだが、エンバの歩法は体勢を一切崩さず移動するものばかりなので、間合いの詰め直しも追撃も得意である。よって、どちらにせよ回避は難しい。エンバの愛刀「秋津」のしなやかさがあって初めて形を成す技である。今回はスキルの効果でしならせ使用した。
鬼殺蜻蛉(おにごろしやんま)
 鬼蜻蛉を連続して行い、更に速く、鋭く、形を複雑にして斬りつけるエンバの奥義。腕を振るう度に速く、鋭く、形が複雑になるので、初期段階で破らねばならないが、エンバは両手を巧みに使い絶え間無く繰り出すので突破は難しい。ただし、これを限界まで行うとあまりの負担により腕の肉が爆ぜ、使いものにならなくなる。よってエンバは腕に痛みを感じた時点でこれを止める。実例は彼の剣の師がその剣士生命と引き換えに伝授した時。まさしく奥の手である。ただし、今回は仮想世界だった故、和葉が疑似二刀で弾かなかった場合ずっと続けていた可能性がある。

エクストラスキル
ユニークスキル『蜻蛉切(とんぼぎり)
 習得条件は不明。効果は手に持っている武器を任意のタイミングでしならせる事が出来るスキル。ソードスキルの最中には使えない。
 しならせる事しか出来ないスキルだが、SAOにはしなる武器がそもそも存在しないので初見殺しのスキルとも言える。
 “手に持った武器”が効果の対象に入るので、装備せずとも拾った武器あるいは奪った武器でもしならせる事が可能。

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