和葉「突然どうしたんですか」
いやね、最近気づいたんだ。純愛も好きだけどそれと同じくらい狂った愛が好きなんだとね。
和葉「…そうですか(ドン引き)」
(その反応は)知ってる。ヤンデレメンヘラバッチ来い。ただし二次元に限る。
和葉「それはそうですよ」
※人によっては不快感を感じる場所があるかもしれません。それでも良いって人はどうぞ。
翌日、約束通りKOBに所属することになったキリトは本部へと来ていた。勿論、アスカとキリハも同行している。理由として、まずはメンバー全員にキリトが所属したことを伝えること、キリトに手を出させないようにアスカが自分の嫁と伝えること(無論キリトにぶっ飛ばされた)。それだけならキリハが同行することはない。では何故キリハもここに来ているのかというと、キリトのKOB衣装の姿を見るためだった。
「…俺、地味なので良いって言ったよな?」
「それが一番地味なんだよ。うん、やっぱ似合ってる」
今までの黒ずくめから一変、白を基準とし所々に赤いラインが彩られた(キリトとキリハからすれば)派手な姿になっていた。
「…何笑ってんだよ…姉さん」
「い、いえ…何でもありません…似合ってますよ」
と言いつつキリトを見ようとせず肩が震えていた。明らかに笑いを堪えている。
「笑いたきゃ笑えよ…」
言った瞬間、小さく笑い始めた。笑えよとは言っても、やはり笑われたら笑われたでムカつくので回し蹴りを放つ。まぁ難なく避けられたが。それでも諦めずに一発かましてやろうと攻撃を続けた。あははと笑いながらキリハは避け続ける。それを苦笑しながらアスカは眺めた。
「あ、そうだキリト。団長が呼んでたぞ」
剣を抜こうとしてピタリと止め、アスカへ振り向いた。
「ヒースクリフが?」
「納得出来るかぁ!!!」
「まだ言ってるんですか。いい加減黙らせますよ?」
岩に座っていたアスカが突然叫びだしたが、笑顔で刀をちらつかせるキリハに流石に口を閉じる。
「はぁ…佳奈がKOBに入ったからこれからずっと二人でいられると思ったのに…」
ガックリとアスカはこうたれる。イラッとするがアスカがこうなるのは仕方ないと思うので放置する。
アスカがこう言ってる理由はキリトがここにいないからである。現在キリトはKOBのメンバー三人とともに、迷宮区近くの狩り場へ向かっている。というのも、何故かキリトの実力を証明しなければならなくなったからだ。「実力なら既に証明されてるだろうが!!」とはアスカの言葉だ。
キリハは、恐らくキリトがアスカに相応しいかどうかを見たいんだろうなぁと思ってる。なにせメンバーの中に女性プレイヤーが一人いて、明らかにアスカに好意を抱いていたからだ(確かエリーと言ったか)。だから取られたくないのだろう。この表現は適切ではないが。
訓練場所として選ばれたのは五十五層の迷宮区前、キリトが遅れをとるなど万が一にもあり得ないし、一応キリハとアスカも同じ階層にいる、とはいえ
(嫌な予感がするんですよねぇ)
メンバーにクラディールがいることが不安だ。一応先程、キリトに対して謝罪はしたがあれはどちらかというと形だけの謝罪だった。
(何事もなければ良いのですが)
そういえば、とふと思ったことを口にする。
「明日加、佳奈と結婚はしないんですか?」
結婚とはいってもあくまでシステム上の、だ。相手に『プロポーズメッセージ』を送り、それを承諾すれば結婚完了。なんとも味気ない。
結婚をすると互いのステータス、持ち物が共有されるらしい。持ち物はともかく、ステータスを見せると言うことは自分が出来ることは相手に筒抜けであり、命綱を預けるようなものだ。メリットよりデメリットが大きい故に、恋仲までは行っても結婚まで行かないプレイヤーが多数だ。
まぁこの二人はそんなこと気にしない、どころか相手に自分の全てを知ってほしいという感じなので問題ない。
「ん?あぁ、したよ」
アスカはあっけらかんと答えた。特に驚くことでもないので、いつ結婚したのかと更に問いかけた。
「ラグーを狩ってきてくれたとき。俺の家に行って二人で食った後さ、そういえばまだ結婚してないことに気づいて勢いで」
「アホですか」
結婚とは勢いでしていいものだったか。だがまぁ、二人が結婚しているならキリトに何かあればすぐに気づける。アスカが常にキリトをマップで追っているので場所も心配ない。と、アスカは突然立ち上がり、キリト達が向かった狩り場へと走って行った。突然の事ではあったがキリハは慌てず後を着いていく。
「佳奈に何がありました?」
「麻痺の状態異常を食らった」
アスカは無表情のまま淡々と答えた。それを聞いたキリハも無表情になり殺気を放ち始めた。
この階層に麻痺状態にしてくるモンスターはいない。考えられる可能性は一つ。キリトは嵌められたのだ。プレイヤーによって。
(クソっ…!油断した…!)
恐らくキリト自身、アスカといられると思っていて今の現状なのだから気落ちしていたのだろう。普段なら警戒心のもと絶対に口にしない他人から渡された水を口に含んでしまった。その時、視界に映った笑みを見た瞬間、マズイと思い水を投げ捨てたが時既に遅く麻痺にかかってしまった。それは他のメンバーも同じだった。その中でクラディールだけが嗤いながら立ち上がる。そこで全員がこの水に麻痺毒を盛ったのがクラディールだと気づいた。
「ヒャッハハハ!!」
クラディールの振り下ろした大剣がパーティーリーダーのゴドフリーを貫きポリゴンへ変えた。クラディールは地面に突き刺さった大剣を抜いてゆらりと立ち上がり、エリーに向かう。今度こそ死なせてたまるかと、ようやく取り出せたピックを唯一少しだけ動かせる左手首のスナップだけで投げつける。しかし狙いは外れ、顔にかすっただけとなった。クラディールはエリーを殺さず、しかし毒ナイフを一度突き刺してからキリトへ向かった。
「まさか、黒の剣士様が女だったとはなぁ」
「ハッ、その女にデュエルで負けた気分はどうだったよ」
キリトは冷や汗をたらしながらもそう言う。クラディールは目をつり上げ手に持っていた毒ナイフを勢いよくキリトの右肩へ突き刺した。痛みをほとんど遮断されてるとはいえ、突然襲ってきた痺れにうめき声を上げる。
「ぐっ…」
「今の状況分かってんのか、あぁ?」
分かっていない訳がない。クラディールはやろうと思えばいつでもこちらを殺せる。だから、これは時間稼ぎだ。
「にしても…殺すのは勿体ねぇなぁ…」
クラディールはキリトの全身を舐め回すように見てこう呟いた。
「殺す前に愉しんだ方が得だよなぁ」
エリーの方を向いて口を三日月のように吊り上げる。エリーは「ひっ」と悲鳴をあげ震えだした。当たり前だ、これからされることを考えれば恐怖するに決まってる。
クラディールは今からのことを考えると愉しくて仕方なかった。まずはどうしようかと思い、嗤う─
「─アハッ」
一瞬、その声を出したのが誰なのか、分からなかった。クラディール、ではない。勿論エリーでもない。ならば…。
バッとクラディールが振り向きキリトを見た。声を出したのはキリトだ。その表情に恐怖は浮かんでいない。そのかわりに、笑みを浮かべて嗤っていた。
「アハハッ」
「な…何笑ってやがる…」
この状況で嗤っていることに気味が悪くなったクラディールは無意識のうちにそう呟いていた。それにキリトは口元に笑みを浮かべたまま答える。
「いや、悪いなぁ。可笑しくなったんだよ。お前が俺らのことで愉しむって言ったのがさぁ」
「何が可笑しいっ…?」
クラディールは気づいた、気づいてしまった。今キリトの浮かべてる笑みは、相手を嘲る笑みだということに。
「可笑しくもなるぜ。だってお前─
─
瞬間、クラディールは吹き飛んだ。壁に激突し、自分を吹き飛ばした人物を確認した。クラディールを吹き飛ばしたのは─
「覚悟はいいな?クラディール」
─アスカだ。後ろにはキリハもいた。
「では僕はエリーさんを回収してくるので」
本当は僕が殺したかったのですが、とは言わずにキリハはクラディールの横を通り抜ける。クラディールは反応することが出来なかった。何故アスカ達がここにいるのか理解出来なかったからだ。
訓練場所を知っているのは知っていた。アスカが攻略組トップクラスの速さを持つのも知っていた。だが、だからといって
(何故、こんなにも早くここに来れた!?)
─キリトのことが心配でマップで確認してたとしても、麻痺したかどうかはわからないはずだ!異変を確認できたのもゴドフリーを殺したときのはずだ!何故だ!?─
「─何で俺達が早く来れたのか
クラディールが失敗したのは、今朝のアスカが言った「キリトは俺の嫁」という発言を無視したことだ。いや、無視というより冗談だと思った、と言ったほうが正しいか。
「ま、待ってくださいアスカ様…。これは訓練…。そう、訓練中の事故で…」
「黙れ」
クラディールの言い訳を一括したアスカは、急接近し
「ヒィッ!?」
それから、肩、頬、二の腕、脇腹、アスカは突きを全て
「お、俺が悪かった!!助けてくれっ!!」
ピタリと引いた腕を止める。
「ふーん、そうか。助けてほしいか。ならお前にいくつかの選択肢をやるよ」
そう言ってアスカは指を立て始めた。
「一つ目、首をはねられる。
二つ目、
三つ目、転移結晶で逃げる」
「に、逃げていいのか…?」
「あぁいいぜ」
三つ目の選択肢を聞いたクラディールは希望を見つけた、と思いこんだ。
切り落とされていない左手でポーチから転移結晶を取り出し、コマンドを言った─
「─かひゅ」
が、口から出たのは空気の抜けたような声と血のエフェクトのみ、コマンドを言えなかった。それは何故か。
「四つ目、喉を貫かれる」
アスカがクラディールの喉を、いつの間にか左手に持っていた
「かっ…な、何故…」
そんなクラディールの疑問をアスカは淡々と無表情で、首を傾げて答える。
「なに言ってるんだ?俺は逃げてもいいとは言ったが、
クラディールは目を見開いた。ついで呪詛を吐く。
「この…悪魔がっ…」
それに対してアスカは、だから?と答えた。
「俺は
何が、と思ったがすぐにアスカが何のことを言っているか分かった。喉を貫かれるという明らかな致命傷を受けているにも関わらず、未だに死んでいないのだ。
「ようやく気づいたか。ま、これも簡単なことだ。今お前を貫いてる
何故そんなことをする?意味が分からない。理解出来ない。いや、したくないだけかもしれない。
「何で最低ランクの武器で貫いてるか、理由を教えてやろうか。それはな─
─お前の顔を恐怖で染め上げたかったんだよ」
ゾクリと悪寒が走り、今まで気にしていなかった自身のHPを気にしてしまった。かなりの時間が経っているはずなのに未だに半分までしか減っていなかった。そこから少しずつ、一ドットずつ減っている。クラディールのレベルは攻略組とまでは行かずとも、そこそこ高く大剣を使っているためSTRも高い。故に、楽に死ぬことが出来ない。
その事を認識した瞬間、クラディールは絶望し表情を恐怖に歪んだ。
「そう、その顔を見たかったんだ。
ニタリと口を吊り上げ、右手の
─狂ってる─
クラディールはそう思った。アスカが、だけではない。キリトもだ。何故あの時、キリトが「お前死ぬのにな」と言ったのか。それは、アスカがクラディールを殺すことが分かっていたことに他ならない。
「このっ…狂人共がっ…」
「知ってるさ、そんなこと。だって」
アスカは
「ぎっ、あが…」
「こういうことが出来るんだからさぁ」
五センチ程突き立てた後、捻りを加えて更に突き立てていく。
「痛みは遮断されている、だからショック死することが出来ない。自分が死んでいくっていうことを実感しながら死ね」
死にたいのに死ねない。その恐怖をアスカは知らない。だけど、それが想像をはるかに超える恐怖だろうと予想はしている。
「ん?」
半分程まで突き刺してから、ようやくクラディールが気を失っていることに気づいた。恐怖に耐えかねたのだろう。舌打ちを一つして思い切り突き刺し、ポリゴンへ変える。
振り向いたアスカに、キリトは飛び込んだ。それを危なげもなく支える。
「ありがとな明日加。俺の為にあいつを
「俺が出来ることなら何でもやってやるさ。佳奈が望むことならな」
そう言ってアスカはキリトへ軽く口づけをする。んっ、とキリトは受け入れる。更にもう一度口づけをしようとして─目の前を刀が通り過ぎた。
「「あっぶな!?」」
「別にいいんですけどね?場所を考えてください」
すっかりキリハのことを忘れていた。
「あれ?エリーは?」
「君があいつを殺す前に帰って貰いました」
アスカの疑問に答えてキリハは身を翻す。
「ヒースクリフさんには僕から報告するので、君達はホームで続きを楽しんでくださいね」
ヒラヒラと手を振りながら本部へと向かう。後ろから何か聞こえたが、無視をした。
キリハ視点
(はぁ…明日加に人を殺させてしまいましたねぇ…)
そう思いため息をつく。ラフコフ討伐戦で明日加が誰も殺していないと聞いてせめてあの子だけは、と思っていたのですが…。まぁ佳奈に危害を加えて、今まで無事ですました子なんていないので仕方ありませんか。
ただ、明日加と佳奈があそこまで歪んでいるとは思いませんでした。まさか、明日加はクラディールを殺すと佳奈が信じていたなんて誰が予想できますか。
確かに
考えてみれば、あの二人があそこまで歪んでいたのは当然かもしれませんね。
(ですが)
二人が歪んでいようと、僕のあの子達に対する態度は変わりません、変わるはずがない。二人が道を踏み外したのなら引きずってでも連れ戻す。決して手を離すことはしない。どこまでいこうと、佳奈は僕の妹で、明日加は未来の弟なのですから…。
さて、気持ちを入れ替えてヒースクリフさんに報告をしにいきましょうか。ちょっと問い詰めたいことがあったのですが、やめにしましょう。
…いや、本当は問い詰めたいんですけどね?
ここまで読んでいただきありがとうございました。誤字脱字、又はおかしな所がありましたらご報告よろしくお願いします。
明日加と佳奈がホームで何をしているか、知りたい人は僕の予想で良ければお話しましょう。知らなくていいと言う人は戻ってくださいね。無駄話もあるかもしれませんし。
あぁそうそう、これからする話は相当歪んでいて狂っていると思うので気を付けてくださいね。
では始めますよ。
恐らく、というか確実に佳奈が刺された場所に噛みついているでしょうね。痛みを遮断しているシステム、ペインアブソーバーレベルを0に、つまり現実と同じ痛みにして。
あの二人はお互いを大事に思っていますが、同時に相手を傷つけて良いのは自分だけとも思ってます。だから、自分以外の誰かに付けられた傷があった場合、それを塗りつぶすかのように傷のある場所に強く、それこそ歯型が残るほど強く噛みつきます。そして、同じ傷を相手につけてほしい、そういう思考からお互いに噛みつきあいます。だから現実世界では、二人の体を比べると全く同じ場所に同じ歯型がついています。高校に入るまでは『そういうこと』をしないよう言われてますから、恐らくその代わりでしょうね。あぁ勿論、稽古などでついた打撲傷などはバラバラですけどね。因みに、この事を桐ヶ谷家は知っていました。でも止めることはしませんでした。恐らく、僕ら含めて桐ヶ谷全員が多少なりとも歪んでいたのでしょうね。明日加の家族が知っているかどうかは知りませんが。
ん?誰かに付けられた傷ではない、事故などでついた傷はどうするのか、ですか?その場合は噛みつきはせず、相手と同じ傷をつけるだけです。例えば、相手が刃物で誤って切ってしまった場合、自分の同じ場所に同じ刃物で傷つける。火傷してしまったら同じ物で火傷をつける。ね?狂ってるでしょう?
たちが悪いのは二人とも、自分達の感性が他人とかなり違っていることを自覚しながらも直す気がないということです。一応、基本的な感性は一般の人と大差ないので普通に生活しているだけなら、二人の異常性を垣間見ることはないでしょう。二人に危害を加えなければ、ですがね。
そろそろ終わりにしましょう。二人の異常性を伝えることが出来ましたかね?聞いてくれた方はありがとうございました。では、またお会いしましょう。
え?僕はどのくらい歪んでいるかって?
さぁ、どうでしょう?皆さんのご想像におまかせします