艦隊これくしょん ~絶望の海に盾は舞う~   作:主(ぬし)

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最高の戦記を歴史に刻め

完勝の瞬間を見せつけるために

Are you ready?

古の記憶など捨て

5-4のゲージを壊せ!


※【艦これ】ミッドウェータイムラバー【替え歌】より抜粋


AL作戦/MI作戦

1942年6月5日

北太平洋 ハワイ諸島北西 ミッドウェー諸島沖 北約100キロ

 

 

「いったい、誰が―――」

 

 

 その日沈むはずだった(・・・・・・・)艦娘、蒼龍は呆然と水平線を見つめていた。彼方では、敵空母ヲ級2隻が今まさに轟沈せんと身体中から鮮血の如き火柱を噴き上げながら海中に没しようとしていた。突然帰るべき場所を奪われた敵機の群れは平静を失い、その隙を突いた蒼龍の艦載機によって瞬く間に海の藻屑と消えた。

 敵の撃破。だが蒼龍に勝利の喜びは無い。彼女の戦果ではない(・・・・・・・・・)からだ。自慢の九九式艦上爆撃機は敵の迎撃機に全て破壊され、蒼龍には敵空母を沈められるだけの戦力は残っていなかった。それどころか、敵の新型航空機の猛烈な攻撃に為すすべなく晒され続け、艦載機も次々に撃ち減らされ、まさに絶体絶命に陥っていたところだった。空母の数においても、艦載機の数や性能においても、圧倒的に敵が優っていた。絶望の戦いを強いられ、勝てる道理は微塵もなかったはずだった。

 ドォン、と腹を震わせる爆音が海面に巨大な波紋を立てる。立て続けに2つ、激しい爆炎が海上に屹立した。測ったように同じタイミングで、敵空母の燃料と弾薬が誘爆し、轟沈したのだ。いや、実際に測った(・・・)のだろう。時間と標的を狙いすまし、正確無比な攻撃を2隻の機関部と弾薬庫にそれぞれ同時に命中させたに違いない。その攻撃はどこから放たれたのか。今この瞬間も敵の猛攻の前に苦戦しているであろう赤城も加賀も飛龍も、こちらに援護の艦載機を飛ばす余裕はないはずだ。

 では、誰が敵を倒したのか……?

 

 

 

「―――油断しちゃ、ダメだよ」

 

 

 

 果たして、いつの間に近づかれたのか。背後からそっと囁かれたその声に、蒼龍は肩を跳ね上がらせて身体を反転させた。振り返ったと同時にギリと弓を構える。しかし、声の主の姿は見えない。素早く視線を左右に走らせ、やがて“灯台下暗し”という昔ながらの諺を思い出して、ゆっくりと視線を足元に落とした。

 

「……貴女が、助けてくれたの?」

 

 すぐ足元、海面からちょこんと頭だけ出した潜水艦(・・・)が、じっと蒼龍を見上げていた。問われた潜水艦は、短いツインテールを揺らしてこくんと小さく頷く。エックス()字を象る大きな髪留めが印象的な少女だった。潜水艦による雷撃なら、同時に2隻の空母を狙い撃つことも可能だろう。それには高性能な潜水艦と長射程の魚雷が必要とされるが、蒼龍の運が良かったのか、この艦娘は両者を完璧に備えていたようだ。

 でも、こんな娘、見たこと無いわ。

 深海棲艦でないのは確かだが、まったく見覚えのない艦娘だった。だというのに、なぜか他人という気がしない。青みがかった黒髪と精悍な容貌は、どこか鏡で見る蒼龍(じぶん)に似ている気がした。まっすぐにこちらを見つめる双眸は深い深い親愛と哀愁をいっぱいに湛えているようで、溢れる感情に濡れた瞳に蒼龍は少しだけたじろぐ。感謝を伝えようと口を開きかけ、潜水艦の震える声がそれに先んじる。

 

「本当はね、会えない(・・・・)はずだったの。助けられない(・・・・・・)はずだったの。でも、奇跡が起きた。だから私は助けに来れた。私はいつでも一緒にいるよ。広くて静かな水底(みなそこ)から、お母さん(・・・・)のことを見守ってるよ」

「えっ、ちょ、ちょっと待って―――」

 

 不可解な台詞を言うだけ言って、その潜水艦はすうっと海中に姿を没した。慌てて視線で追いかけるものの、漆黒の輪郭は絵の具を水に溶かすようにあっという間に海中に溶けていく。驚くべき潜行速度に蒼龍はギョッとして手を伸ばすが、すでに届く距離ではなかった。せめて潜行音を捉えようと耳を澄ますが、機関の駆動音どころかタンクへの吸水音すら聞こえなかった。なんという静粛性、なんという運動性。その驚異的な性能とそれを実現した未知の建造技術に考えを至らせ、蒼龍はゴクリと生唾を飲み下した。なぜ気が付かなかったのだろう。そもそもにして、蒼龍のすぐ背後にいたはずの潜水艦が、蒼龍にすら気づかれないまま、どうやって遥か遠く水平線上に浮かぶ2隻の空母の機関部と弾薬庫を正確に狙い撃てたのか。既存の潜水艦など話にならない。現在、開発が進められている最新鋭の伊二百一型潜水艦でも足元にも及ぶまい。

 一体何者だったのか。それに、“お母さん”とはどういう意味なのか。だいたい、私はまだ結婚どころか経験(・・)だって―――。

 

「って、こんなことしてる場合じゃない! 飛龍たちを助けに行かないと!!」

 

 数秒の混乱を乗り越え、蒼龍は頭を振って思考を切り替えると仲間の救援へと駆け出した。物思いに耽るのは生き残った者にだけ許される権利だ。

 

 

 

 その後、救援に駆けつけた蒼龍の必死の反撃によって、被害甚大だった赤城と加賀は辛くも窮地を脱することが出来た。それとは逆に、貴重な戦力である空母2隻と大量の艦載機―――しかも新型ばかり―――を喪失したことで深海棲艦側は勢いを失い、戦力の再編成に大いに手間取ることとなった。その虚を、戦力を維持した飛龍と蒼龍の空母部隊、そして後方から進軍してきた大和、武蔵、長門の戦艦部隊は見逃さなかった。空母の消失によって満足に制空権を確保できなくなった深海棲艦にとって、最強の大型戦艦3隻による殴り込みはまさに悪夢だったろう。さらに後方からは修理と補給を終えた瑞鶴と翔鶴が榛名と霧島を伴って参戦し、戦況は一変。艦娘たちによる第二次攻撃は成功し、深海棲艦を見事撃破することに成功した。MI作戦は誰も欠けることなく勝利に終わり、それからの戦いの行く末を運命づける上で大きな転換点となった。

 蒼龍は終戦まで飛龍とともに第一線で活躍し、戦後は後輩の指導と家庭(・・)の平和の維持に貢献した。

 

 

 

 

 

 

 平成27年6月5日

 ハワイ米軍基地パール・ハーバーへの寄港を終え、日本への帰還の途についていたそうりゅう型潜水艦壱番艦『そうりゅう』から、突如6本の89式長魚雷が消失するという事件が起きた。厳格に管理されていた搭載兵器の原因不明の消失に、海上自衛隊上層部は騒然となった。しかし、消失したと思われる時間帯が、ちょうど旧海軍の空母『蒼龍』の眠る海域に差し掛かった時であったことを知ると、彼らは経験から何かを悟ったように、事態の舵を沈静化の方向に向けた。これには、当時のクルーたちが一様に語った「助けなければと思った」という不可思議な証言も何らかの影響を与えたとみられるが、定かではない。

 

 

 潜水艦『そうりゅう』

 日本国海上自衛隊が所有する、非大気依存(AIP)通常動力型潜水艦そうりゅう型の壱番艦である。原子力を用いない通常動力型としては世界最大の艦体を有する本艦の最大の特徴は、先進技術を用いた世界最高レベルの静粛性と、通常動力型としては世界随一の長時間潜行能力である。ディーゼルエンジンと合わせて本艦に採用された『スターリングエンジン』は通常の内燃型機関のように内部で爆発が生じることがない外燃型機関であり、エネルギー効率も非常に優れている。そのため、潜水艦の弱点とも言える機関部の騒音が抑えられ、かつ長時間の潜水行動が可能となっている。また、漆黒の艦体表面を隙間なく覆う吸音ゴムタイルは音波やレーダー波を吸収し、相手からの発見を困難とする。

 なお、本艦の外見的な特徴として、船尾に備え付けられた舵の形状がある。音波の反射を少なくし、機動力を向上させるため、本艦の舵はエックス字(・・・・)の形状となっている。




これも、元はTwitterでちょちょいと晒した妄想を清書したものです。
ニワカな素人がウィキペディアを見たり、コンビニで売ってる500円ちょっとの本を読んで書いたものなので、間違った描写があるかもしれません。その時はご指摘いただければ幸いです。教えてエロイ人!!

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