家族(仲間)と自分探しの旅[一時凍結]   作:Eucliwood

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はい、第二話まできていただけて幸いです。

この話から本編となるような感じですので、
よければ最後までどうぞ。

私もこんな広大な海の世界をのんびりと、
幻想的に巡りながら過ごしてみたいものです。


- 仲間 -

 

 

 

 *海:シキ:昼*

 

 

 

 海へ出て2日がたった。

 

 海へ出た後、この船を僕好みに整理&整備+αした。

 

 まず、ベクトハンドの舵取り用の2本を一時的に掃除用として代用した。

 

 僕にとっては酒なんて必要ないし、他にも様々な不必要なものは全て海へ投げた。

 

 その後、船の中を一掃してほこり一つない綺麗な船にした。

 

 この船の部屋はキッチン、操舵室、寝室、第二寝室、倉庫、錨綱格納庫、バスルームがある。

 

 この部屋も全て掃除、整理したから、以前と比べて大きな変化がある。

 

 まず、倉庫には殆どものがない。

 

 あるのは食料が入った木箱が数十個と銃と銃弾、そして大砲の弾が入った木箱が数個。

 

 第二寝室は空き部屋となっている。

 

 寝室には元々大きなベッドがあったから綺麗にして使っている。

 

 錨綱格納庫には錨を巻き上げるキャプスタン、オール、浮き輪、ロープ、小舟等の必需品のみを残し、あとは全て海の底へ沈んだ。

 

 バスルームは風呂、トイレで兼用だった。

 

 風呂に使うお湯は船底から海水を汲み上げ、ろ過をして真水にしたものを火にかけて使用している。

 

 船の事以外にも、僕の魔力を使った能力の事でも分かった事がたくさんある。

 

 まず、僕の魔力は能力とはまた別の力らしい。

 

 能力を使っても、ウィンドウに表示される数値には一切の変化は見当たらなかった。

 

 そして、魔力を使おうと思った瞬間に、頭の中に様々な魔法の知識が流れ込んだ。

 

 魔法はとても便利で、火をつけたり、水を出したり、電気を出したり等の生活面で重宝できそうなものもあれば、シールドを張ったり、空間移動が出来たり、雷を落としたり等の攻撃面での自己防衛に大変使えるものもあった。

 

 ただ、便利なだけあって、そう何度も使えるよは言い難いものあった。

 

 確かにウィンドウに表示されている僕の魔力量なら何回でも使用できるが、一つ一つの魔法には使う際の呪文のような詠唱が必要なのだ。

 

 使用する魔法の影響力が大きいものほど、詠唱が長い。

 

 そして、勿論の事魔力消費も多い。

 

 魔力消費に関しては僕の魔力なら問題ない。

 

 だが、詠唱時間はどうにもならない。

 

 詠唱時間を短くできる魔法もあるが、その魔法自体も詠唱が必要なのだ。

 

 無詠唱と言って、詠唱しなくても頭で発言すれば使用することもできるが、この方法で使用した魔法は一度使うと、少しの間タイムラグがあるのだ。

 

 所謂クールダウンというもの。

 

 生活面での魔法は無詠唱で使用しても、タイムラグはないに等しいのだが、攻撃面の魔法を無詠唱で使用するとタイムラグがどうしても生まれる。

 

 そう甘くはなかったようだ。

 

 だが生活面では困るどころか便利なものなので、積極的に使用している。

 

 攻撃面の方も、そもそも自分から争うつもりは今のところないので、使用する機会もあまりないと考えているからそれほど重大な問題ではない。

 

 だいたいは魔法で処理し、処理しきれないものは能力で補うといったスタンスでいく。

 

 魔法がとても便利すぎて恐ろしい。

 

 服も自分の想像したものが創れるし、いちいち水を汲み上げなくてもいいし、ランプの火もいちいちマッチでつけなくても目力―まぁ無詠唱の魔法を使用しているだけだが―で火がつくから、船に積んである物品が必要最低限以下でも暮らしていける。

 

 むしろ裕福に暮らしている。

 

 魔法に必要な魔力も消費すれば、徐々に回復するので、放っておけばいつの間にか全開だ。

 

 これから苦労するなと思っていたのだが杞憂に終わったということだ。

 

 ……あの赤い果物はラックという名前だったのか。また食べたい。

 

 寝室にあった図鑑で知識を得て、どうでもいい事を考えながら僕は今後の予定を考える。

 

 ベクトハンドには真っ直ぐ前進させているが、これからどうしたものか。

 

 結構頻繁に外の甲板に出て辺りを見回しているが、一向に島が見えない。

 

 どこかに村や街がある島や大陸を見つけたいのだが……

 

 ……もう一度甲板に出るか。

 

 そう思い、僕はまた甲板に出る事にした。

 

 甲板に出て、辺りを見回した。

 

 すると、先程まではなかった島が西側の方に見えた。

 

 「ベクトハンド、ノホイオサヨヂド キロガガポイロ(ベクトハンド、取舵一杯。)」

 

 そう言いながら、ベクトハンドにイメージを送る。

 

 そして、僕は手に持った魔法で創った単眼鏡を覗き、島の様子を見る。

 

 島には小さな村が見えた。

 

 島自体は小さいが、ちょっとした村とそのはずれにある場所に少し大きな屋敷のようなものがあった。

 

 よし、ついに人と会える。

 

 ただ僕の言葉が通じるかどうかだ。

 

 この世界での言葉はこれでいいのか、それともこの身体が覚えているこの言葉がおかしいのか、どちらにせよ念のため魔法で創ったメモ帳とペンを持って行こう。

 

 

 

 *海辺:シキ:昼*

 

 どうしようか……

 

 現在、僕は非常に困っていた。

 

 目の前にはうつ伏せで倒れた男。

 

 体中がボロボロで、執事服であろう綺麗な服は見るも無残になっていた。

 

 船をとめ、島に降りた途端にこのイベント。

 

 僕は運がいいのか悪いのか。

 

 ひとまず生死の確認からだ。

 

 僕は男の背中に耳をつける。

 

 小さいが、一定のリズムを崩さずにトクットクっと聞こえる脈。

 

 大丈夫、まだ生きているらしい。

 

 だがこの怪我だといずれ死んでしまうだろう。

 

 面倒な事は出来るだけ避けたい。

 

 僕は興味のある時しかつっこまないのだ。

 

 だが、目の前で生きているのを確認した男が、帰るときには死んでいたなどというのは寝覚めが悪い。

 

 罪悪感は全くといっていいぐらいわかないが、それは気に食わない。

 

 それに何となくだがいい人のような気がする。

 

 本当にどうでもよかったら放っておく。

 

 「キロワコチモ ウンン(癒しを)」

 

 僕は魔法で男の怪我を治す。

 

 完全に治ったのを確認し、男を揺らして起こす。

 

 いい人っぽいと直感が言っているし、そうであれば一番いいんだが。

 

 僕が揺らすと、男は小さく呻き、身体を起こした。

 

 「…ぅ……ここは…?」

 

 男がぼんやりとした感じで声を出した。

 

 「シヨ ザボ ヌホキロナホ?(気がついた?)」

 

 僕が声をかけると、男はハッっと僕の存在に気づいて此方を見つめる。

 

 いや、見つめるというよりかは観察、もしくは警戒に近いものを感じる。

 

 この男は、執事じゃない。

 

 警戒の中に殺気が混じっている。

 

 どうした僕の直感、仕事しろ。

 

 確実にやばそうな相手に僕は自身の直感に文句を言う。

 

 でも―――――

 

 どこかに孤独で、冷たいものを感じる。

 

 「……誰だ…?」

 

 男が僕に問う。

 

 「ポゴスヨ? ポゴスヨ マント シキ(僕? 僕はシキ)」

 

 僕がその問いに答えると、男はさらに警戒した。

 

 「…何を言っているのかさっぱりだ。」

 

 ……やはりか。

 

 どうやら僕の言葉はこの世界の共通言語ではないようだ。

 

 どこかの一部地域のみの言葉か、それとも……

 

 とにかく、言葉は通じない。

 

 念のために筆記用具を持ってきてよかった。

 

 だが、文字も通じなかった場合はどうしようか。

 

 僕はメモ帳にペンで自己紹介を書き、それを男に見せた。

 

 『僕はシキ。この島に先程来た。』

 

 メモ帳を見ると、男は疑問に思ったのか、僕に問う。

 

 「言葉を知らないのか?」

 

 …気づいてくれると信じていたよ、執事くん。

 

 そして、文字は通じたようだな。

 

 これからは人との会話はこれでいくか。

 

 僕は続けて言葉を書き、それを見せる。

 

 『知らない。でもわかる。』

 

 「そうか……私の事を知っているか? あぁ、いや、先程来たばかりと言っていたな。」

 

 男はどうやら自分の事を知られたらまずいらしい。

 

 それはそうだろう。

 

 どこにボロボロの執事が岸辺で倒れているのかという話だ。

 

 何やらあったのだろう。

 

 打撲傷が多く見られた事からこの男は肉弾戦でフルボッコにされた可能性が高い。

 

 『知らない。でも、執事じゃない。』

 

 それを見た男は納得したかのような感じを思わせた。

 

 「分かったか…貴様はどこか普通ではない。

 そんな気がした。

 俺は百計のクロ、聞いた事くらいはあるだろう? とある海賊にやられてこの始末だが。」

 

 ……すまない、誠にすまないな、執事くん…いや、クロ。

 

 全く知らない。

 

 うん、本当に知らないのだ。

 

 当たり前だ、僕はこの世界で目が覚めてまだ2日だ、分かる方がおかしいのだ。

 

 百計のクロ……名前からするに、賞金首かなにかか?

 

 百計って言うから……こいつ頭がキレるのか?

 

 名前だけじゃ何も分からないか。

 

 『知らない、悪い。』

 

 それを見るとクロは以外そうな顔をした。

 

 「俺の名前を知らないのか……まぁ、いい。

 俺の計画は潰れた。

 ……今回は見逃してやる、気が変わらん内にどこかへ行け。

 俺は海賊だ、お前のようなガキは一瞬で殺せる。」

 

 海賊だったのか。

 

 僕がもらった船にも海賊の帆があった時点で、この世界は海賊がたくさんいるのが常識と捉えてもよかったのだろう。

 

 それにしても完全に舐められてる。

 

 …気に食わない。

 

 自分は強い、自分はお前より圧倒的に強い。

 

 そういう見下した目線をされるのは別にいい。

 

 だが先程ボロボロだった奴に言われるのは気に食わない。

 

 『そっくりそのまま返す。』

 

 僕は「いつでもかかってこいや」という様な趣旨を添えた文面を見せる。

 

 それを見たクロは眉を寄せる。

 

 「……本気で言っているのか?」

 

 『もちのろん』

 

 「……貴様にそのような力があるのか?」

 

 これは見せた方がいいのだろうか。

 

 どうしようか。

 

 そしてここで力を誇示した場合、戦闘に突入、上手くいけば仲間として利用できる。

 

 一人だとやはり心細いからな。

 

 強さには自信があるが、それも力のみだ。

 

 生活魔法は使い慣れたが、戦闘魔法はほぼ全くといって慣れていない。

 

 片手で数える程度しか使っていなのだから当たり前か。

 

 戦闘面でもこのクロは使える。

 

 参報としても、戦闘面でも使えるというのは、現状ではとても手に入れたい。

 

 見せた方が良さそうだ。

 

 では何を見せるか。

 

 どんな魔法がいいだろうか。

 

 そうだ、まずはクロの服を一瞬で新品に直して、その後に闇魔法を見せれば、少しはビビってくれるだろうか。

 

 僕はそう結論して二つの魔法をする。

 

 「ロソボゾエオ(戻れ)」

 

 僕が魔法を唱えると、クロの服が新品に戻った。

 

 「!? これは…」

 

 さらに続けて詠唱する。

 

 「チモソソヨスヨ ハノウオ ムトサヨシヨ ワコリソ ヒノ ノホダドタモエオヨン(漆黒なる深き闇に閉ざされん)」

 

 僕が詠唱すると、僕の横の空間が歪み、そこから深いドス黒い靄と赤黒い手が複数生える。

 

 「なんだ…これは……」

 

 驚いているようだ。

 

 これなら上手く行けば仲間になってくれるかもしれない。

 

 ここで畳み掛けよう。

 

 僕は自分の乗ってきた船の方を向き、もう一つ魔法を使う。

 

 「シヨナホエオ(来たれ)」

 

 僕が魔法を唱えると、船はゆっくりと此方へ向かってくる。

 

 「一体……」

 

 よし、ここだ。

 

 『どう? 戦う?』

 

 僕はクロに問いかける。

 

 「…いや、実力が違いすぎる。

 やめておく、それで? 俺よりも圧倒的、いや、下手をすれば大将クラスのその力を使って、俺を殺すか?」

 

 何故そうなるし。

 

 僕はまたメモ帳を見せる。

 

 『仲間になる、これ願い。』

 

 それを見たクロは唖然としていた。

 

 僕だってそうなるだろう。

 

 圧倒的な実力差を見せられ、殺されると思いきや仲間になれなんて。

 

 何か企んでいるとしか思えない。

 

 『何も企みなない、ただ一人は寂しい。』

 

 これ本音だったりする。

 

 「……俺を仲間にしてどうする? そもそも、俺がお前の仲間になったとして、メリットは? それと、俺がお前を裏切る可能性もあるぞ?」

 

 その質問は妥当だな。

 

 『メリット:クロを強くさせる、裏切りの件:信用してる。』

 

 クロを強くさせるのは、僕の魔法でそれにぴったりなのがあったはずだ。

 

 裏切りの件については、正直今の段階では信用してない。

 

 むしろ利用するつもりでいる。

 

 これで仲間には……やはり無理か?

 

 「……フッ…フハハッ……そこまで馬鹿だと思わなかったよ。

 でも、まぁいいか、俺にはもう何もない。

 デメリットはなしで強くしてくれる…それもとんでもない能力をもった人の傍ならこれほど安心な事はない。

 …………いいでしょう、このクロ、仲間になりましょう。」

 

 これは正直予想外だ。

 

 まさか本当に仲間になってくれるとは。

 

 棚から牡丹餅とはこれのことか?

 

 いや、使い方を間違っているか、まぁいい。

 

 とにかく頼もしい仲間が出来た。

 

 これだけでもとても嬉しい事だ。

 

 『よろしく』

 

 「よろしくお願いしますね、シキお嬢様。

  …シキお嬢様のフルネームは…?」

 

 執事がしっくりとはまってらっしゃる。

 

 クロにはこのまま執事をしてもらおう。

 

 あ、そういえば、名前か。

 

 ん? 待て。

 

 今まで苗字のシキを名乗っていたが、名前が最初か。

 

 という事は……

 

 『アザカ・シキ』

 

 「…という事はアザカお嬢様ですね?」

 

 『シキでいい。』

 

 正直シキでいくと決めたからこのままいきたい。

 

 「かしこまりました。

 では、シキお嬢様とお呼び致します。」

 

 僕はクロに首を縦に振って了解の合図をし、船の前にいく。

 

 前々からこの船の外見もそうだが、内装なども変えたいと思っていたから、ちょうどこの機会に改装しよう。

 

 『今から船改装する、後ろ下がってて』

 

 僕が文面を見せると、クロは後ろに下がったあと、質問をした。

 

 「改装というと……ここで、ですか?」

 

 そう。ここで。

 

 僕はクロに心の中で答え、イメージに集中するため、目を閉じる。

 

 そんな真剣な僕を見て、クロは開きかけた口を閉じて、後ろで見ていたのを閉じる瞬間に見えた気がした。

 

 船の改装。

 

 見た目は…………そうだな。

 

 僕のこの身体のイメージに合わせて、宵闇のように真っ黒な船がいい。

 

 マストは多い方がいい、そうだな……三本がいい。

 

 横帆七枚、縦帆三枚がちょうどバランス的にはいいな。

 

 船体と帆は真っ黒な、それでいて綺麗で怪しげのある艶めいた船体がいい。

 

 二層の砲甲板に……たくさん門が欲しい。

 

 だがあまり多すぎると今度は船のスピードが衰えるからな。

 

 四十門の大砲を搭載しよう。

 

 船にもうひとつ特徴が欲しいな。

 

 そうだ、艦首にも砲身をつけよう。

 

 でも普通のでは面白くない。

 

 連射できるのがいいな。

 

 ただ、この世界観にも合わせたい。

 

 そうだ。

 

 八本束ねた回転式の八連式カノン砲を二基八門搭載しよう。

 

 船首にも特徴を飾りで魅せたい。

 

 そうだな、あまりないようなものがいい。

 

 ケルベロスの口の形にしよう。

 

 独特感溢れるな。

 

 僕はそうやって色々なかっこいいを詰め込み、ついに頭で完成した。

 

 さて、これを魔法で創るのか…………正直僕の魔力でも足りるかどうか。

 

 ……まだ完全に信用したわけじゃないが、クロに僕の事を頼むしかない。

 

 僕は集中を切らさないように半目でメモ帳に文章を書く。

 

 僕はクロに見えやすいようにメモ帳を広げた。

 

 『改装すれば倒れる、後は頼んだ。』

 

 一瞬の間をおいたあと、後ろから声がかけられた。

 

 「かしこまりました、シキお嬢様。

 このクロにお任せを。」

 

 ……信じてみるか。

 

 僕は改めて集中し、製作に取り掛かった。

 

 魔力を放出し、一箇所に固める。

 

 固めると同時にイメージを送る。

 

 そして固めた状態を維持したまま、放出。

 

 その瞬間、僕は身体にくる急激な疲労感で意識が遠のいた―――――




今回は初となる仲間(家族)との出会いです。

現在は疑いをもって、利用している感じですが、これからどうなるのでしょうか、主もある程度は話の軸をつくっていますが、細かくはつくってないので楽しみです。

そして船の事ですが、これは某有名な海賊映画の二つの船の構造を参考にさせていただき、それをグツグツと混ぜたものです。

最後に、主人公の言語法則がこの段階で分かった方、尊敬します。

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