家族(仲間)と自分探しの旅[一時凍結] 作:Eucliwood
どうぞ、最後まで見ていって下さい。
主の~ってよくね?を詰め込んだものです。
一話目はほぼ説明のようなものになっております故、本編は二話からとなると思います。
僕は死んだ。
唐突に死んだ。
自分自身も何が起こったのかよく分からない。
ただ、自分が『死んだ』という事は分かっていた。
己が何者なのかも分からない。
自分はどういう人物だったのか、そもそも人だったのか。
名前は何だったのか、何歳だったのか、どんな性格だったのか、それ以前に人ではなかったのか。
何も分からない。
ただただ、深い闇に飲まれるように僕は意識を失った―――――
*???:???:???*
―――自然の香りがした。
優しく、微かに頬を撫でるような風が心地よい。
僕は、両の瞳をその世界に向けた。
辺りを見回せば、そこは草原だった。
草原のなだらかな凹凸がある地面。
遠くにはとても広い森と、その森の中央に大きく反り立った高山があった。
そしてその向こう側、微かに見えるのは、広大な海だった。
目の前にはとても幻想的な世界が広がっていた。
ふと、僕は視線を下ろす。
どうやら草原の上で寝ていたようだ。
僕は服を着ていた。
漆黒のゴシックロリータの服を纏い、肩からは、アクセサリーの頭蓋骨が付いた悪趣味なショルダーバッグをかけていた。
僕は服の上から身体に異常がないか確かめる様に触診していく。
どうやら僕は少女のようだ。
この身体の大きさだと二桁に入ったばかりの年齢だろう。
視界の端に見えるのは自分の髪なのだろう。
紫紺色の艶やかなショートヘアー。
袖口から見えるのは日の下に立った事が無い様な白い肌。
僕はこんな姿だったのか…?
それに……
過去の記憶がない。
まるで今ここで生まれたかの様に。
未だに理解が出来ず、現状を整理するので精一杯だ。
しかし、ここでただ呆然としていても何も変わらない。
僕は立ち上がり、小さいショルダーバッグの中身を確認する。
中には様々なものが入っていた。
黒い布地に赤と黄色、そして青で花びらを表現された小さい巾着袋が一つ。
眼鏡ケースと、黒と青で縁取られた眼鏡が一つずつ。
ショルダーバッグの内側の約三分の一を占めていた御節箱の様な綺麗に漆塗りがされた箱が一つ。
明らかに高価な小紋柄で藍色の手拭いが一つ。
そしてサイコロの様な小さな白い箱が一つ入っていた。
僕は一つ一つ調べていった。
まずは巾着袋。
中身を覗くと禍々しい色合いをした玉があった。
何に使うのか分からず、取り敢えず保留にしておく。
次は眼鏡をかけてみる。
特に変わった様子はない。
しいて言えば先程より遠くの景色がハッキリと見えるようになったくらいだ。
今度は大きな箱。
中身は大量の紙束が入っていた。
僕はこの紙束が何なのか知っている。
そう、お金だ。
何となくそう分かった。
根拠は全くないが、そう認識できた。
軽く見ただけで数千万のお金が入っていた。
最後に白いサイコロの様な箱。
開け口がなく、ただの白い箱なのだろうか。
そう思いながら白い箱を左右にフルフルと揺らした時だった。
いきなりその白い箱が眩い光を放った。
僕はついその箱を落としてしまった。
その箱の光が収まると何やら空中に文字が浮かんだ。
SFの様なウィンドウが文字と共に浮かんでおり、僕はその文字を読んでみる。
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| 名前:シキ |
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| 性別:女 |
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| 年齢:10 不老不死の為値は変化なし |
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| 体力:130580/130580 |
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| 魔力:124000/124000 |
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| 特殊技能: |
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| 不老不死 |
| 『永久に若く、死なない いかなる傷、打撃、病気、苦痛にも耐えられる』 |
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| 魔眼:トラレント・ワド |
| 『任意のものの数秒先の未来を見通す』 |
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| 魔眼:ヒズワン・ワド |
| 『トラレント・ワドの上位互換 |
| 人によって千差万別の能力を持つ 基本能力は皆同じ |
| 全ての能力値を通常の2倍~10倍まで上昇可能 |
| 任意の相手を一時的に操作可能 |
| 一定範囲の重力操作が可能 |
| 相手の魔力の流れ、及びその魔力を一時的に操作可能』 |
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| 魔眼:タイス |
| 『魔眼:ヒズワン・ワドのユニークスキル |
| 一定時間時の流れを停止可能』 |
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| ビルドアップ |
| 『身体能力の上昇』 |
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| ペインキャンセラー |
| 『一定のダメージ無効化』 |
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| 不可視の手:ベクトハンド |
| 『通常、目には視えない手を出現させ、ある程度の範囲内で操作可能』 |
| 一定の重量ならば物体を持つ事も可能 覇気使いのみ手が見えてしまう』 |
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| 邪神の加護 |
| 『人間の成長限界値を大幅に底上げする 全ての能力値に影響』 |
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| 鑑定眼 |
| 『任意のものの詳細情報を把握可能 使用中常に魔力を消費する』 |
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このウィンドウを見た僕はある事を思い出した。
「シキ……ポゴスヨ ホンノ ハノラソケロ(シキ……僕の名前…)」
弱々しい言葉と共に透き通るようで、凛とした声が出た。
しかし、僕が思って出した言葉と声に出た言葉が全く一致しなかった。
思ってる言葉がちゃんとでない。
意味の分からない言葉に変換されて声が出てしまう。
どうなっているのだろうか。
取り敢えず、この件についても解決策が出来るまで、極力声を出さないでおこう。
それに、気になる事もまだある。
シキ……
そう、僕はシキだ。
四季 亞咲華、それが僕の名前。
何となく、それが名前だと確信した。
ウィンドウではシキとしか表示されていないという事は、これからはシキと名乗るのが正解なのだろうか。
―――本来の名前が分からない以上、シキと名乗るしかない。
僕はこれからシキと名乗ろうと思いながら、何をすべきか考える。
まずは情報が欲しい。
情報がなければ安心して行動する事は出来ないだろう。
どこかで人を見つけなければ。
ひとまず、僕は海の方角へ足を運ぶ事にした―――――
*海岸:シキ:昼*
とりあえず海の前には来たが……
海に来ても何もないだろうと思っていたが、停船していた船があった。
僕はあまり船には詳しくないようだが、目の前の船がスループ形式の古い船だということは何となく分かった。
それと、この船には見たところあまり兵器は積んでいないようだ。
数門の大砲しか外見からは見えない。
それほど大きい造りではない。
三角帆には頭蓋骨が縄に縛られているような絵が描かれていた。
少し中を覗いてみたいと思い、どうやって甲板へ上がるか思考する。
先程ウィンドウに魔力と書かれていた部分と、特殊技能の一覧に重力操作が可能という趣旨が書かれていた事を思い出し、試してみることにした。
発動方法が分からない故、だめもとでイメージしてみる。
イメージに集中する為、目を閉じる。
自身の重力が軽くなり、月にいるような軽やかさで甲板まで飛ぶ―――
そうイメージした。
すると、身体が異常に軽くなった感じがした。
なるほど、イメージで発動するのか。
イメージはこの能力だけの発動方法かもしれないが、分かっただけでも便利になる。
僕は甲板まで軽くジャンプした。
すると、身体がふわりと山なりに飛んだ。
結構ゆっくりした動作だ。
僕は甲板に着地し、近くにあったドアに目を向けた。
ドアは少し開いており、中の様子が覗いて見える感じだった。
僕はドアの隙間から中の様子を見た。
中は様々な大きさの樽や木箱が大量に置かれている事から倉庫と判断した。
僕はドアを開け、中に入った。
人がいない事は覗いた時に確認していたので、堂々と入った。
一番近くにあった樽の蓋を開けた。
開けた瞬間に強い酒の臭いがした。
中を見れば少し濁った液体が入っている。
もしかしてここにある樽全てに酒が入っているのだろうか。
違う樽も開けてみたが、案の定全て酒だった。
では木箱はどうだと思い、一番大きな木箱を開けた。
中には大砲の弾、銃、それと鉛玉、つまり銃弾が入っていた。
かなり使い込まれているものもあれば、真新しいのもあった。
僕は一番新しそうな銃を一つと、麻で出来た小袋に入った銃弾をひと袋拝借した。
僕はその後、人がいない事をいいことに、船の中を全て周り、使えそうなものがあれば拝借して、もう一度甲板に戻った。
拝借した物品は、銃と銃弾の入った小袋を除けば、刃渡り30cm程のナイフと、机の上の籠に入っていた胡桃ほどの一口サイズの赤い果物を数個。
甲板に戻った僕は、赤い果物を口に含みながら、操舵室にあった太い棒の事を考えていた。
恐らくあれは操縦桿の役目を果たすものなのだろうが、下の部分が随分と削れていた。
あれを踏まえて考えるに、この船は長いこと航海しているのだろう、そしてなによりこの果物が甘くてとても美味だ。
僕は最後にどうでもいい事を思いながら、一つのある事をしようと思った。
…………気づかれないだろうか?
僕は、操舵室に向かって、あの棒を操縦してこの船を頂こうかなと考えていた。
幸い誰もこの船には乗っていないので、容易な事だ。
だが、気づかれないかが心配なのだ。
船を動かす時、大きな音がするかもしれない、そもそも僕は動かし方を知らない。
そんな僕が無理やり動かしても大丈夫なのだろうか。
打開策を考えながら僕は操舵室についた。
結局有力な方法は思いつかず、能力で何とかなるだろうかと淡い期待を抱きながら、ジャンプした時の感じを思い出しつつ、イメージに集中する。
今度はこの船を僕の思うように動かす様子を想像する。
「…ラソ、カロナホイオ…サヨ(……まぁ、当たり前…か)」
僕の抱いていた淡い期待は粉砕された。
船は全く動いておらず、第三者から見たら僕はおかしい人と見られるだろう。
そう簡単にはいかないか。
この船を動かせそうな能力はあっただろうかともう一度白い箱を左右に振ってウィンドウを出現させ、能力一覧を見る。
ふむ、そういう様な趣旨が書かれている能力はベクトハンドくらいか。
しかしこれは『ある程度の範囲でのみ』と書かれている。
それに『一定の重量ならば』と記載されている。
まずは試してみるか。
先程もだめもとだった事もあり、とりあえず試してみることにした。
この能力の発動方法はどうすればいいのだろうと思った瞬間、何となく頭で能力名を発言すればいいと思った。
これは身体が覚えているのだろうか。
とにかく試してみることにした。
{不可視の手:ベクトハンド}
そう頭の中で発言すると、腰の部分から透明な手がうねうねと生えてきたのが感覚で分かった。
左右2本ずつ、計4本の手が僕の腰から生えた。
僕はイメージで動かしてみた。
手は真横に伸びていって、腕が腰から出てきた。
4本とも2m程まで真横に伸びた。
もっと伸びると感覚的に分かり、僕はこれならと思い、船を掴んで向きを強制的に変えようと手にイメージを送る。
すると、透明な手は操舵室の壁をすり抜け、どんどん距離を伸ばしていった。
少し立つと、ゆっくりと船の向きが変わるのが分かった。
壁をすり抜ける事もできるのか、これは相当便利な能力だと僕はまた一つ能力について知識を得る事が出来た。
落ち着いたら能力についても、この身体についても色々調べた方が良さそうだ。
僕はそう思いながら、甲板に向かった。
手は一度イメージを送れば、集中しなくても送ったイメージの作業が終わるまで自動で動いてくれるようだ。
自立行動が可能な能力になるかもしれないと将来有望な能力に笑みを心の中で浮かべた。
甲板に出れば既に船の向きが変更し終わっており、真っ直ぐ進めば広大な海へ出れる。
僕はベクトハンドをもう一度発動し、今度は2本のベクトハンドを海底まで伸ばし、足のように使って、歩かせるようにする。
もう2本は船の左右に添えて、向きを調整する。
これで船の前進、後進、取舵、面舵の代用が出来る。
僕はこの船の持ち主に勝手にお礼をしつつ、広大な海へ出航した。
行き先は僕すらも分からない―――――
今回は主人公の説明と世界観を重視してみました。
そして、主人公は意味不な言語を喋っていますが、実はこれには法則性があります。グロンギ語に惹かれてつい自分でつくってみたものを使用しています。もしお暇でしたら解読してみてください。
それでは、また次話で。