GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回の話はパイパー編その2となります。あんまりメインで登場してなかった「神代琉璃」さんも参加させようと思っています。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


その2

リポート17 ハメルーンの悪魔 その2

 

横島達が教会から脱出してから1時間。シルフィーは格上と言えるパイパー相手に善戦した……だがそれはあくまで善戦止まりであり、しかし横島達が逃げるには充分すぎる時間……1時間を稼ぐ事が出来た

 

ちゅら♪ちゅら♪ちゅらー♪らー♪

 

「へいっ!」

 

「やっぱ……無理かぁ……」

 

パイパーとシルフィーの戦いでボロボロになった教会の中に響く、間抜けな笛の音色と無念そうなシルフィーの声。

 

「ふー随分と手間取らせてくれたな」

 

パイパーは額の汗を拭いながら、涙を目に浮かべながらも自身を睨んでいるシルフィーに背を向けて、宙へと浮かび上がった。本当なら子供になった唐巣とシルフィーを人質として、連れて行きたい所だが、予想以上に体力と魔力を消費してしまった為。この場は引くことを選んだ……全てはハーフヴァンパイヤと侮ったパイパーのミスだ、確かにシルフィーはハーフではあるが、ピートと違い吸血鬼としての力を大きく引き継いでおり、更に自身の力を使うことに躊躇いが無い。ピートは人間よりであるが、シルフィーはどちらかと言うと吸血鬼よりなのだ。だからこそパイパーの笛に対する抵抗力も高く、そして自身の運動神経も高く、パイパーはシルフィーを子供にするのに、相当な量な魔力を消費することになったのだ

 

「くそ……出来損ないと油断した。まさかこのオイラがここまで苦戦するなんて……」

 

パイパーの身体はうっすらと透けている。そう……このパイパーは本体ではなく分身だった、消えかけている身体に舌打ちしながら

 

「にしても、今の悪魔祓いは相当強力なのが揃っているみたいだね……急いで金の針を手に入れないと」

 

パイパーは今もまだ自分を睨んでいるシルフィーを睨み返し、空中に溶ける様に消えていくのだった……

 

 

 

そしてシルフィーが捨て身の覚悟で1時間の時間を手にした横島達はと言うと……

 

「きゃっきゃっ♪」

 

「……」

 

楽しそうに笑う令子ちゃんと大事そうにぬいぐるみを抱えているくえすちゃんを連れて遊園地を歩いていた

 

「なぁ?こんな事をしてて良いのか?」

 

俺の手を小さい手で握り締めているくえすちゃんと、今度はねー?今度はねー?と言いながらアトラクションを見ている令子ちゃんを見ながら蛍に尋ねる。今遊園地に来ているのは俺と蛍。それにシズクとおキヌちゃんだ。ドクターカオスとマリアはテレサと合流して、パイパーに対する対策と隠れ場所を探している。チビがグレムリンなので機械がたくさんある遊園地に連れて来る事が出来ず、同じ理由でタマモもドクターカオスに連れて行って貰っている

 

「……美神と神宮寺が遊園地、遊園地と叫んでいる以上。遊園地に何かあると思う、だから問題は無い」

 

いつもの平坦な口調のシズクだが、その頭には動物の耳を模したヘアバンドと風船を手にしている

 

「楽しいか?」

 

表情が無表情だから、楽しんでいるか判らず尋ねるとシズクはそっぽを向いて

 

「……少し」

 

照れているように思えるから、もしかしたら図星なのかもしれない……でもまぁ、こうして楽しそう?にしているシズクを見るのは斬新でなんか微笑ましい気持ちで居ると

 

【うーん。でもシルフィーさんとかも心配だし、いつまでも遊んでいるわけにも行かないですからね。どうしましょうか?】

 

俺の隣を浮きながら訪ねてくるおキヌちゃん。俺自身もどうすれば良いのか判らない……

 

「横島?あのぬいぐるみを取りなさい」

 

俺のズボンを引いてUFOキャッチャーを見つめるくえすちゃん。それに気付いた、令子ちゃんも俺にぬいぐるみを取れと言う……こんな事をしてる場合じゃ無いのになぁ……

 

「私とおキヌさんでどうするか話し合うから、ぬいぐるみを取って来てあげて?」

 

蛍に言われてぬいぐるみを取れと言うくえすちゃんと令子ちゃんに引っ張られながら、UFOキャッチャーの機械の前に向かうのだった……

 

「あれがいいですわ。あれを取るのです」

 

「令子あれがいい!」

 

UFOキャッチャーの台の上に登ってあれが良いと言う令子ちゃんとくえすちゃん。2人が指差すのは猫のぬいぐるみ……2人とも猫が好きなんだなあと苦笑していると

 

「……私はあれ」

 

そして以外にも自分も欲しいと言うシズク。はぁっと溜息を吐きながら3人が欲しいと言うぬいぐるみを取るのに集中するのだった……

 

 

 

 

 

小さくなった美神さんと神宮寺、それとシズクの欲しいと言っているぬいぐるみを取ろうとしている横島の背中を見ながら

 

(これからどうする?おキヌさん)

 

私は当然。このパイパーの事件の話は知らない、この事件を知っているのはおキヌさんだけだ。これからどうする?と尋ねると

 

(確か……冥子さんに電話して助けに来てもらうように電話するんですけど、パイパーが割り込んできて連絡出来なかった筈です。えーとそれでそれで……本体は……どこでしたっけ?)

 

この後どうなっているのか?思い出そうと頭を抱えているおキヌさんを見ながら、近くの公衆電話を見つめる。電話かぁ……電波を利用してこっちを探しに来るって訳ね……でも電話をしようがしまいが、これだけ霊力の集まっている集団を探すのならば、パイパーなら楽勝だ。それなら多少のリスクは覚悟をして、電話をするべきだ

 

「判ったわ。電話しましょう。但し電話をするのは冥子さんじゃないけどね……」

 

この場合で冥子さんを呼ぶのは得策ではない、だって冥子さんは霊的な防御力はそれほど高くないし、性格も子供っぽいからこの場合は頼りにならない。

 

【じゃあ誰を呼ぶんですか?】

 

不思議そうな顔をしているおキヌさん。ドクターカオスとマリアさんとテレサを呼んでいる、だから仲間を増やしすぎるのは得策ではない、数が増えればそれだけパイパーに見つかる可能性が増す。だからこのまま行動するのが得策だろうけど

 

「もし私とか横島が子供になっちゃったら、それこそ大変だからね。来てくれるか、怪しいけど……神代さんを呼ぶわ」

 

GS協会長として霊的な事件には詳しい筈だし、それに巫女でもあるからある程度はパイパーに対する耐性があるはずだし、しかしその代わりGS協会会長と言う自由に動ける立場ではない。……来てくれるか?と言うに不安を感じながら、近くの公衆電話に向かうのだった……

 

『もしもし?誰かしら?美神さん?それとも唐巣神父?』

 

この番号を知っている人数が少ないのか、掛けて来たであろう人物の名前を言う神代さんに

 

「いきなりごめんなさい。神代さん。私です、芦蛍です」

 

『蛍ちゃん?どうかしたの?』

 

怪訝そうに尋ね返してくる神代さん。今の所パイパーの妨害があっては困る、口早に今の私達が巻き込まれている事態を説明する

 

「悪魔パイパーに襲われて美神さんと神宮寺が子供になってしまいました。今はドクターカオスとマリアとテレサに協力を頼んでますが……」

 

私の言いたい事を理解したのか神代さんは

 

『判ったわ。後で合流するわ、協会に保管してある精霊石も持って行くから。後でおキヌちゃんを迎えに回して、パイパーが来るといけないから電話を切るわ』

 

プツっと言う音を立てる電話。パイパーの乱入があるのは考えていたけど、なんとか電話が出来た事に安心していると

 

「ふーなんとかぬいぐるみは取れたわ。それで如何する?これからの方向性が決まったのか?」

 

大事そうにぬいぐるみを抱えている小さくなった美神さん達を連れて来た横島。電話を元に戻そうとすると

 

『へっへー!見つけたよーッ!!!』

 

電話から聞こえてきたパイパーの声。しまった!電話をあえて妨害しなかったのは油断させる為に

 

「蛍!?パイパーか!?」

 

険しい顔をする横島に頷き、少しでも時間を稼げるようにと電話に札を貼り付ける。これで電話を利用した移動は出来ないはず

 

「危ないから逃げるよ。令子ちゃん!くえすちゃん!」

 

足元の2人を抱えようとする横島だったけど、美神さんはその手を回避して

 

「いやだぁ!ジェットコースターに乗るのー!!!」

 

大泣きしてジェットコースターを叫ぶ美神さん。ああっ!もう!こんな事をしている場合じゃ無いのに

 

【パイパーが来て危ないんですよ!ジェットコースターはまた今度にしましょう?】

 

おキヌさんが美神さんの目線に合わせて言うと、大人しく横島に抱き上げられていた神宮寺が

 

「遊園地です。遊園地に行きましょう」

 

だから今遊園地に居るじゃ無い!散々遊んでおいて何を言うのよ

 

「今まで遊んでたしょうが!ほら早く逃げますよ!!」

 

横島が逃げ回る美神さんを抱き抱えようとすると美神さんの目に知性の色が戻ってくる

 

「ちぎゃうの!れっしゃの乗ってゆくの!!んでパイパーをやっつけるの!」

 

パイパーをやっつける?もしかしてパイパーを倒す手段を知っているの?美神さんは鞄から何かを取り出す、それは金色の小さな針……これがパイパーの弱点の金の針!

 

「落としたら危ないからそれは戻しておいて?」

 

それが無ければ、私達はパイパーに勝つことが出来ない。だからこそ鞄の中に戻してくれる?と言うと美神さんはにぱっと笑って

 

「あーい!」

 

笑って鞄の中に金の針を戻す美神さん。これがあればなんとかなるかもしれないけど……今の状態でパイパーと戦うわけには……如何するか私が考えると背筋に悪寒が走る

 

「おーほっほ!!!見つけたよー!!!」

 

空中からパイパーが姿を見せる。くっ……思ったよりも早い……

 

「……くらえ」

 

シズクが先制攻撃と水鉄砲を放つが、パイパーは手にしている笛で水をシズクに弾き返す

 

「っぐう!?」

 

水神であるシズクでも、自分が放った攻撃をそのまま弾き返されて吹っ飛ばされる。

 

「さーてお嬢ちゃん?おいらの大事な金の針を返して貰おうか?」

 

横島が懐に手を伸ばして、札を取ろうとしているのをその手を掴んで推し留める、今下手に攻撃して横島まで子供になってしまうと不利なんて話ではない。その最悪の事態だけは防がないといけない

 

(なんでだよ!?少しでも攻撃をすれば逃げるチャンスが!?)

 

(駄目よ!いくらなんでもパイパーには効果が薄いわ!)

 

陰陽術は確かに魔族には効果のある物が多い。だけど中級とは言えパイパークラスの魔族に今の横島の陰陽術が効果を出してくれるとは思えない

 

(今は霊力を温存して、逃げる事を考えて!)

 

向こうは美神さんか神宮寺が持っている金の針を奪おうとしている。だから私と横島に対する警戒は薄い……今ならなんとかして逃げれるかもしれない……それにしてもおキヌさんは役に立たないわね、折角事件を経験しているんだから、もっと早く思い出して欲しいわね……なんとかして逃げる方法を考えていると、美神さんが

 

「べーだっ!!!」

 

舌を出してパイパーを挑発する美神さん。パイパーはその額に青筋を浮かべる……判りやすいほどに怒っているのが判る

 

「くっくっく……おいらは素直で可愛い子供が大好きなんだよ!だから世界中の大人を皆子供にして楽しい世の中にしたいのさ!」

 

自分に対抗出来る人間がいなくなってから自分の世界を作るってことね……なんとも趣味の悪い魔族だ

 

「だからその為にはその金の針が「くらいなさいな」

 

パイパーが演説している隙に神宮寺と美神さんが同時に抱えていた猫のぬいぐるみをパイパーに投げつける

 

「んんぎゃあああ!?」

 

その猫が顔面に当たり、悶絶しているパイパー。今がチャンス!美神さんと神宮寺を連れて逃げようとするが

 

「このおっ!!!」

 

パイパーが怯んだ隙に逃げようとしたのだが、横島が拳を握り締めてパイパーに突っ込んでいく

 

「横島!?」

 

【横島さん!?】

 

あの臆病な横島がパイパーに突っ込んでいくなんて思ってなかったから、私もおキヌさんも反応が一瞬遅れた

 

「くっこの!へいっ!!!」

 

一瞬だけパイパーが笛を吹いて、笛から放たれた光が横島を弾き飛ばす。地面に叩きつけられる前に抱き抱えるが、私の腕の中で小さくなっていく横島。くっ!まさか横島まで……これは正直予想外だ

 

「……頭を下げろ!」

 

シズクの声に振り返ると噴水の手を入れて、大量の水を吸収しているシズクの姿が見える。私は気絶したまま、小さくなっていく横島を抱き抱え、背中に美神さんと神宮寺を背負い走り出す

 

「くっこのお!舐めやがって「吹っ飛べ!このはげッ!!!」ぶぼおいおおおおおお!?」

 

シズクが放った消防車の放水に匹敵するであろう、凄まじい水鉄砲がパイパーを飲み込んだ隙に私とおキヌさんはパイパーに背を向けて、遊園地の出口に向かって走るのだった……

 

 

 

 

 

蛍ちゃんから電話があった時。私はGS協会ではなく、久しぶりに帰ってきた自宅に居た。秘書の善意で家に戻っていたのだ、では何でGS協会の会長室にかけた電話が自宅に来たかと言うと、特別な事例に備えて美神さんや唐巣神父に伝えておいた番号は転送電話になっており、会長室で20秒コールされると私の家に繋がるように設定してある

 

「それにしても悪魔パイパーかあ……GSとしての復帰戦の相手にしてはかなりの難敵ね」

 

自宅の除霊道具を収めてある部屋から、6個の精霊石と私が見習いのときに使っていた霊刀を取り出す。今家宝の刀は神代家お抱えの鍛冶師に預けて、私用に打ち直している。本当ならあっちの方が良いんだけど……贅沢は言ってられないので我慢する

 

「後は……」

 

持っていく除霊道具の準備を終え、部屋の一番奥のクローゼットに向かう。そこに収めてある巫女服を取り出す……

 

「これを着るのも久しぶりかしら……」

 

最近はGS協会長としての行動をしていたから、スーツを着ていたけど……除霊現場に出るのだからスーツではなく、巫女服を着ていくべきだ。これは霊糸で編んでいる上に、神代家の霊術を合わせた物で、霊的な防御力もすごく高い上に非常に高価な巫女服だ……

 

「ふー……」

 

身体を清めてから巫女服に袖を通す。気持ちが昂ぶって行くのが判る……大きく深呼吸をしてから霊刀を腰に携え、

 

「さーて!行きますかッ!」

 

つま先に金属を仕込んだ特性のブーツを履いて、私は家を後にした。美神さん達がどこにいるかは判らないけど……なんとかする手段がある

 

「お願い、上手く行ってよ!」

 

鳥の形をした紙型を投げる。冥華さんから教わった簡易式神は霊力を伴って鳥の形へと変化する

 

「美神さんを探して!」

 

「キュイッ!」

 

私の指示を聞いて翼を羽ばたかせる式神の後を追って、私は美神さん達を探して走り出すのだった……

 

 

 

 

 

横島達がパイパーに襲われている頃。妙神山でも一つのトラブルが起きていた

 

「うきゅッ!うきゅうッ!!うきゅうううううッ!!!!」

 

「困ったのー……」

 

妙神山の一室の中で困り果てた老人の声が響く、その視線の先には小さな生き物が居た……

 

「そんなに会いに行きたいのか?あの横島って言う退魔師の卵に」

 

ロンの言葉に暴れていた生き物は暴れるのを止めて、ロンを見つめて尻尾を振りながら

 

「うきゅッ♪」

 

机の上で顔を上げる生き物。それは黒く毛に覆われた小柄な動物……そう、モグラだ。判っただろうか?妙神山で暮らしている土竜のモグラちゃんだ。修行の末小さくなる事を覚えたモグラちゃんは、ハムスターと同じ程度の大きさに変化することを覚えたのだ

 

「はぁ。仕方ないのう……行くかのう?」

 

竜族に属するロンとモグラちゃんは自由に行動するわけには行かないのだが、こうも鳴いて暴れると仕方ない、ロンはやれやれと深い溜息を吐いて、机の上に手を伸ばす。モグラちゃんはそれを見て嬉しそうに鳴きながら

 

「きゅッ!」

 

嬉しそうに鳴いてロンの手の中に乗るモグラちゃんの頭を撫でて、ロンはそのまま妙神山を後にし、東京へと向かうのだった……

 

 

 

 




リポート17 ハメルーンの悪魔 その3へ続く

神代さんに加えて、モグラちゃんとおじいちゃんも参戦です。モグラちゃんは子供になってしまった、横島達の遊び道具になる可能性が高いですね。本格登場をする琉璃さんがどんなかつやくをするのか楽しみにしていてください、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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