GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回からは少しだけ戦闘回に入って行けると思います。ここからは原作とは違う流れに入っていきます。ブラドーがどうなるか楽しみにしていてください。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


それと活動報告の方にて、GS芦蛍についてのお知らせがありますので、そちらもよろしくお願いします


その4

 

リポート12 吸血鬼の夜 その4

 

他の家から持ち込んできた食料。主に保存の利くソーセージや黒パンがメインだ、少し固い上に味気ないが、除霊の現場に来ていると思えばそれも苦ではない

 

(自家製のワイン……大体読めてきたわね)

 

これはかなり古い時代の食文化と言える。それもかなりの昔……

 

(エミ気付いた?)

 

(まあね?あたしも黒魔術系だし、大体掴めて来てるわよ)

 

この島全体がブラドーの領地。そして教会のない村……導き出される答えは1つだけだ……

 

(とは言え無理に聞き出すわけには行かないか)

 

この村の住人である、ピートとシルフィーちゃんも恐らく……そんな事を考えていると

 

「……出来た。こんな物でもマシになる」

 

シズクが机の上に鍋を置く、ソーセージと拝借した畑から取ってきた葉野菜のスープ。シズクは横島君と自分の分だけを皿に入れて

 

「……あとはセルフ。自分でよそって」

 

そう呟いて横島君の隣でスープとパンを齧るシズク。色々手伝ってくれるのは嬉しいけど、もう少し社交性があると良いなあ……

 

「美味い!このスープ美味いなあ……」

 

横島君が美味い美味いと良いながらスープを飲んで嬉しそうにしているシズク。それに対しいて渋い顔をしている蛍ちゃんとおキヌちゃん

 

「……下手な味付けは必要ない。素材を生かすのがポイント」

 

にやりと笑うシズク。その幼女のような姿からは想像できない黒さだ。

 

「みーん」

 

横島君の前で口を広げるチビ。横島君はスープをすくって冷ましてから

 

「あーん」

 

「みーむ」

 

ぱくんっとスープを咥えているチビ。妖怪だけど完全にペットとかにするノリね

 

「クーン」

 

油揚げが主食のタマモが寂しそうに鳴いているが、流石に油揚げはないので我慢してもらうしかない

 

「タマモごめんな。家に帰ったら油揚げを沢山用意するからなあ」

 

タマモを膝の上に乗せて頭を撫でている横島君……私もある程度食べて体力を蓄えておかないと……横島君達の手前本格的に動くのは明日と言ったが

 

(もしかすると今夜中に動きがある)

 

首筋にピリピリと感じる嫌な予感。これは襲撃があるかもしれない……

 

「ふむ。悪くはない……もう少し熟成していたらなおよし」

 

ワインを吟味しているカオス。私もワインをグラスに注ぎ軽く煽る。本当はもう少し飲みたいところだけど酔いが回っても困るしね、程ほどにしておかないと……私はそんな事を考えながら、少しだけ甘いワインを口に含んだのだった……

 

 

横島と並んで食事をしながら周囲を窺う。月が昇るに連れて周囲の気配が感じにくくなっている……

 

「……」

 

シズクも今までの妹しての雰囲気よりも、水神としての雰囲気が強くなってきている。その力で感じ取っているのだろう敵が近づいてきている事を……

 

「皆さん。念の為に僕が見回りに行くのでここで待っていて……「馬鹿な事を言うな小僧。この気配に気付いてない訳ではあるまい?ここは動かず大人しくしておれ」

 

ドクターカオスがピートさんを押しとめる。ここで単独行動をされると困るし、結界を中から開けては意味がない

 

「そうだよ?兄さん。大人しくしていようよ」

 

妹のシルフィーさんにも言われ大人しく椅子に座り、ワインを手にするピートさん……

 

「ふぁー美味かった」

 

満腹満腹と笑っている横島。もう少し霊的能力が目覚めていたら気付いていたかもしれない……

 

「……」

 

あのほんわかとしている冥子さんでさえ、引き締まった顔をしている。やはりプロのGSと言う所だ……きっちりしてる所はきっちりしてる……だけど今の横島にそこまで期待するのは酷と言うものだ……徐々に高まってい邪悪な気配……そして重々しい鐘の音が響いた瞬間

 

「「「ギシャアアアア!!!!」」」

 

窓を突き破り何かが飛び出してくる。ドクターカオスの話だと吸血鬼って事だったけど

 

(グール!?それに吸血鬼化した狼!?)

 

話が違う。それは吸血鬼よりかは格は劣るが、凶悪な悪魔の姿

 

「なに!?なぜグールが!?ええい!マリア!破魔弾発射!!!」

 

「イエス・ドクターカオス」

 

ドクターカオスも驚いているようで素早くマリアに指示を出す。それと同時に

 

「横島君!撤退準備!!!」

 

机を入り口のほうに蹴って簡易のバリケードを作って叫ぶ美神さん。私も疲れたのか眠っているチビを抱えて

 

「急いで!」

 

周囲の気配がドンドン多くなる。このままでは撤退するのも難しい

 

「おっしゃ!判った!」

 

除霊道具の詰まった鞄を背負い。脇にシズクを抱え頭の上にタマモを乗せて脱出準備をした横島。

 

「うっとうしいですこと、消えなさいな」

 

複数の魔法陣を自身の周りに展開する神宮寺を見てエミさんが

 

「あたし達を巻き込むつもり!?」

 

確かにあの位置なら私達を巻き込みかねない。それに神宮寺はにやりと笑う事で返事を返し

 

「失せなさい」

 

パチンっと指を鳴らすと漆黒の炎が走り。グールと狼を焼き尽くす、私達を器用に避けてだ

 

「この神宮寺くえす、自分の魔法を操る事などわけないですわ」

 

髪をかき上げて笑う神宮寺に私達が眉を顰めていると

 

「こっち!地下室に1回隠れよ!」

 

床を空けて階段を出すシルフィーさん。外に出ると囲まれる可能性があるけど

 

「そんなところに隠れて大丈夫なの!?」

 

逃げ道がない所に隠れるのは危険なのでは?と叫ぶ美神さん。外に出るか、朝まで地下室で応戦するか……その2択と思った瞬間

 

「急ぎたまえ!このままだとドンドン敵が増えるだけだ!」

 

地下室から顔を出した唐巣神父。最初見たときはいなかったのに

 

「唐巣先生!?いままでどこに!?」

 

「良いから早く!このままだと危険だ!」

 

地下室に戻っていく唐巣神父。ここはついて行って見るべきね、荷物を持っている横島を最後尾にして階段を下りると更に隠し通路が見える

 

「なるほどね!探してもいない筈だわ」

 

そう笑って地下に駆け下りていく美神さん達に続いて私達も地下へと駆け下りたのだった……

 

 

 

膨大な魔力と見知った霊力を感じて来たが正解だったようだ、地下通路に転がり落ちてきた美神君達に

 

「大丈夫かい?」

 

ううっと呻いている辺りを見るあたり、結構ダメージを受けているようだ

 

「だ、大丈夫です。それよりお久しぶりです、唐巣先生」

 

腰を摩りながら立ち上がる美神君にそれほどじゃないけどね?と返事を返し全員が立ち上がるのを待っていると

 

「貴方でしょう?唐巣和宏……神代琉璃に私を利用するように手引きしたのは?」

 

魔導書を手にしている神宮寺君の顔は不機嫌極まりない。プライドの高い彼女には誰かに利用されると言うのは我慢ならないのだろう

 

「その通りだよ、だけど君の知識欲を満たす魔導書はここには山ほど眠っている。それを見る機会が出来たんだ、そう悪いものじゃ無いだろう?」

 

ふんっと鼻を鳴らし腕を組んで離れる神宮寺君。本当に気難しい子だ……だけど来てくれてるから正直に感謝したい

 

「まぁなんにせよだ。この通路も安全ではない、更に別の通路に進むよ」

 

ランタンを手に美神君達を先導し、1つだけはなれた岩の頭を回すと重々しい音を立てて岩が開く

 

「凄い……700年住んでるけどこんな通路知らない……」

 

「私もだよ」

 

驚いているピート君とシルフィー君の言葉に横島君が

 

「あーなんやあ!やっぱり普通の人間やなかったんやなぁ?あー良かった良かった」

 

あははと笑う横島君にピート君とシルフィー君の視線が集中すると、横島君はさっと蛍君の後ろに隠れて

 

「わいなにかした?」

 

青い顔をしている横島君に美神君と小笠原君が感心したようで頷く、僕も正直感心していた、霊能者としてはまだまだ未熟だが、その感性の高さには正直驚かされる。きっちり学べば最高峰のGSだって夢ではない

 

「へーちゃんと気付いてたんだ。関心関心」

 

「元々そう言うのに特化しているからね。考えてみれば当然ってワケ」

 

2人にもそう言われたピート君とシルフィー君は

 

「黙っているつもりはありませんでしたが、唐巣先生に会うまでは黙っていたほうが良いとおもいまして、僕の名前はピエトロ=ド=ブラドー。ブラドー伯爵の息子です」

 

「私はシルフェニア=ド=ブラドーって言うんだ」

 

2人がフルネームで名乗ると横島君が首を傾げながら

 

「でもよ?吸血鬼って太陽の光が駄目なんだろ?でも普通に出歩いてなかったか?」

 

良いところに目をつけたね。中々観察眼は悪くないようだ

 

「覚えておけ、小僧。吸血の中にはハーフが存在する。ハーフは普通の吸血鬼と違っていくらかの弱点を克服しているものがいるのだ」

 

ドクターカオスがそう言うとなるほどなーと頷いている横島君。これからどんどんそう言う専門的な知識を身につけていくと良いね

 

「なんで教えてくれなかったのよ?」

 

美神君がそう尋ねる。まだ説明不足だったようだね、敵はブラドーじゃ無いんだと

 

「違います。確かにボケてアホな父親ですが、それなりに尊敬できる父親でした」

 

本当にピート君はブラドーが嫌いだね。僕は少し話をしたけど、そう悪い人物じゃなかったけど……

 

「……でした?何があったの?」

 

小柄な少女がそう尋ねる。だけどその体に満ちている霊力を見る辺り……

 

(彼女がシズクか……神代君が言っていたミズチの)

 

そんな上等な存在が味方をしてくれるとは助かる……水を使いこなす事が出来るシズク君なら吸血鬼にもかなり対抗出来る筈だ

 

「お父さんは今操られているんだ。お父さんは目覚めたくなかったんだ……」

 

シルフィー君がそう呟く。僕もそれは感じていた……ブラドーは目覚めたくなかったんだ

 

「目覚めたくなかった?どう言うワケ?」

 

小笠原君の問い掛けにピート君は首の十字架を握り締めて

 

「ブラドーはいや父は。吸血鬼を特別優れた存在とは思っていませんでした……ただ人間よりも少しだけ長生きして強い力と魔力と霊力を持つ事が出来る存在。だが人間は異質な存在を恐れる……だからこの島で俗世と隔離された世界を作り、そこで暮らす事を考えました。それがこのブラドー島です」

 

吸血鬼が血を吸う。確かにこれは事実だが、なにも血で無ければならないわけじゃ無い。別の方法もある

 

「事実バラの花とかでも充分だしね」

 

そう笑うシルフィー君。この島の住人はバラから生気を分けて貰って暮らしている。だから島の裏側にはバラの畑が大量にある。この島の住人の生きる糧だからそれはとんでもない数が育てられており、中々壮観な光景だった

 

【じゃあなんでブラドー?さんは暴れてるんですか?】

 

「うむ。ワシもそれが気になっている。中世の時代に一度戦っているしな」

 

おキヌ君とドクターカオスの言葉にシルフィー君は

 

「中世の時代にドクターカオスと戦ったのは、私と兄さんの母……その遺体を奪われた父がそれを奪い返すために……この島を後にしたんだ」

 

この話を聞いたドクターカオスが渋い顔をしている……

 

「あの領主の言葉は偽りだったわけか……悪い事をしてしまったなあ……」

 

頬をかいているドクターカオス。あの時代は吸血鬼=悪と言う時代だった。吸血鬼と分かり合おうとする人間なんていなかったんだ

 

「お母さんのいない世界に用はないとお父さんは眠りに付く事でこの島を永久なる結界を張り、吸血鬼の楽園を作ろうとしたんです。だからお父さんは目覚めたくなかった……眠っていたかったんです」

 

その話を聞いたとき僕は人間以上にブラドーは人間らしいと思った。ただ一人愛した女性に対する想いを貫こうとするその姿は同じ男として充分に尊敬できた

 

「何があったの?」

 

そしてそのブラドーが目覚めた理由……ピート君は顔を歪める。僕もその話を聞いたときは顔を歪めた……

 

「まさか……でもそんな……ありえない話じゃ無いけど……」

 

蛍君と美神君がピート君の言葉に眉を顰める。横島君が首を傾げている中、神宮寺君が

 

「地獄に落とさられたわけですね?そしてそこでその記憶を魔族に見られた、これ幸いと身体を奪って利用してやれ……と、そう言うことですわね?」

 

あの時代で吸血鬼と婚約したピート君達の母親は地獄に落とされた……そしてそこで実体を持たない魔族に記憶を見られて……ブラドー島に眠っているブラドーの存在に目をつけた魔族。それが今回の事件の首謀者と言う事だ

 

「なあ!?そんなことがあるのかよ!」

 

横島君がそう怒鳴る。怒鳴りたくなる気持ちは判らない事ではない……だが時代によってそう言う悲劇もありえるのだ

 

「その魔族の支配からのブラドーの救出。それが今回の依頼になる。幸いまだブラドーはその魔族の支配に抗っている……だが時間がない、あと数日持つかどうかと言う状態だ」

 

ブラドーの魔力と霊的防御をもってしてもなお、魔族の支配から完全に脱するのは難しい

 

「ですが唐巣神父。あまりに戦力が足りませんよ」

 

外はグールにレギオンと悪霊とゾンビに満ちている。確かに人数が足りないだろう

 

「それは心配ないよ。蛍君……」

 

通路の先の広間には若いパンパイヤにハーフバンパイヤ達が武装していて

 

「ブラドー伯爵を魔族から解放するぞ!」

 

「偉大なるブラドー伯爵の為に!!!」

 

確かにブラドーは少しボケている。中世時代の知識しか持たないから無理はないが、しかしそれでも

 

「彼は島民に愛されているんだ。偉大な吸血鬼の長として……そして悲恋の吸血鬼としてね」

 

太陽に触れる事ができない、そして人間とは余りに寿命が違う。それでもなお人間を愛し、届かぬ光に手を伸ばしたブラドー……それはなによりも人間らしいといえた

 

「改めてお願いします。私のお父さんを助けてください」

 

「僕からもお願いします。よろしくお願いします」

 

揃って頭を下げるピート君とシルフィー君。僕は近くの岩に腰掛け美神君達の返事を待つのだった……

 

 

 

ピートとシルフィーちゃんから聞いた話はあまりにしんじがたいものだった。だけど……俺はそんな吸血鬼がいても良いんじゃないか?と思った。俺はチビやタマモと一緒に暮らしていて思った。悪魔や妖怪だって人間と共存できるって

 

「コン?」

 

「みー?」

 

起きてきて肩の上でグルーミングをしているチビと頭の上にいるタマモ。それに

 

「……人外と人か……別れがあると知っていてもなお……愛し、愛された」

 

【羨ましいと思ってしまいますね、不謹慎だとは思いますが……】

 

ぼそぼそと呟いているシズクにおキヌちゃん……

 

「美神さん?受けるんですよね?この依頼」

 

俺がそう尋ねると美神さんははぁっと溜息を吐きながら

 

「本当なら断るわよ。魔族相手なんて洒落にならないから……だけどここまできた以上。やるしかないでしょ?」

 

そう笑う美神さんに続いてエミさんも

 

「ま、そう言うワケ。乗りかかった船だし、最後まで付き合うわよ」

 

カオスのじーさんも手伝うと言ってくれる。だが俺には何の力もない、だけど

 

「俺だって出来る限りの事は手伝うぜ!ピート、シルフィーちゃん!2人の父親を取り返そうぜ!」

 

2人の父親を助けたいとおもう。この気持ちだけはきっと美神さんや唐巣神父には負けていないと思う……

 

 

ピートから聞いたブラドーの話。それを聞いた蛍とカオスそしておキヌは揃って渋い顔をしていた、逆行の記憶を持つ蛍達の記憶と今回の事件は全く違う話になっている。少しずつずれていると思っている矢先に起きた全く違う事件。それは逆行の記憶を持つ蛍達の知識が役に立たなくなってきている証拠だった……

 

リポート12 吸血鬼の夜 その5へ続く

 

 




次回は戦闘回に入って行こうと思います。色々な視点をやってみようと思います。ブラドーが善人と言う事でどういう展開になるのか?そこを楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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