GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回からは「極楽愚連隊西へ」の話に入って行こうと思います。まぁ前回からいきなり時間を飛ばしてしまうわけですが、そこはご了承ください。あと様々な+αを加えていきますので面白い事になると思っていますので楽しみにしていてください。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


リポート12 吸血鬼の夜
その1


 

リポート12 吸血鬼の夜 その1

 

GS協会の上層部の立て直し作業を続けていると壁掛け時計が音を立てる。キーボードから指を放し背伸びをしながら

 

「あーもうこんな時間かあ」

 

日付が変わる前に家に帰ろうと思っていたが、また日付を跨いでしまった。

 

(今日も泊りかなあ)

 

美神さんの所でやったクリスマスパーティから、ずっとこの部屋に泊まっている。流石に疲れてきたのが判るなあ……それに視界の隅にある自慢の髪を見て溜息を吐く

 

(あー髪がごわごわしてきたなあ……)

 

泊まりもこれで5日目。自慢の髪もごわごわして来ているし、枝毛も見える

 

「うん。今日は帰ろう」

 

人員整理も大分出来てきたし、1度家に帰って休もうと思い荷物を片付けていると

 

「ああ、良かった。神代君。まだ居たんだね」

 

「唐巣神父?どうしたんですか?こんな時間に」

 

にっこりと笑いながら私の部屋に入ってきた唐巣神父。その脇には旅行鞄が置かれている

 

「ブラドーが目覚める予兆があるそうでね、弟子のピート君とシルフィー君から連絡があった」

 

吸血鬼ブラドーが……中世の時代を荒らしまわった最も強大な吸血鬼……と言うのは風評で本当は穏健派であり、自身の吸血衝動を抑えることが出来ないのでブラドー島に結界を張り、自分も眠りについている吸血鬼だ。彼が目覚める事は本来はありえない話で、何か特別な理由があるはずだ……例えば魔族の介入とか

 

「そう言うわけで私もブラドー島に向かう事にした」

 

「そんな!?1人で何とかなる相手ではないですよ!?」

 

魔族が動いていたとして、ブラドーが操られているとなるといくら唐巣神父でも1人でどうこうなる相手ではない、唐巣神父は穏やかに微笑み

 

「目覚める前に何とかできる可能性があるからね、私が行くのが一番早い。もし目覚めていたらピート君とシルフィー君を日本に向かわせる」

 

なるほど美神さん達も連れて行くって事ね。でもそれは最悪の場合だ、だけどそれならば態々私の所に来る必要はないはずなんだけど……

 

「そしてそうなった場合は神宮寺君を派遣して欲しい」

 

「な!?ブラドー島のバンパイア達を全滅させるつもりですか!?」

 

妖怪や悪魔を憎む神宮寺を送るのは私は断固拒否だ。魔族だけではなく、ブラドー島の吸血鬼も殺される危険性がある。穏健派のブラドー島の吸血鬼を敵に回すようなことはしたくない、だけど唐巣神父は

 

「そうならないように私達も監視する。だがブラドーの動きにあわせて魔族が本格的動くと不味い、備えは必要だ」

 

そう言われると反対できない。だけどいきなり神宮寺への依頼権を使ってしまうのは惜しい

 

「それについては私に考えがある、ブラドー島には稀少な魔導書があるからね。彼女も来たがるだろう、あくまで提案と言う形で彼女に声をかけてくれないか?」

 

提案。私の依頼ではなく、あくまで提案。そして行くか行かないか?を決めるのは神宮寺にあると見せかけて、その実行くしかないっと……

 

「唐巣神父少し黒くなりました?」

 

「あ、あはは……さてどうだろう?」

 

私の知ってる唐巣神父より少し黒いと告げると乾いた笑い声を上げる唐巣神父。もしかすると案外気にしているのかもしれない

 

「と、言う訳で頼むよ。神代君2~3日様子を見てくれれば良いからね」

 

そう笑って出て行く唐巣神父。どうもめんどくさいことになるかもしれないわね……

 

「早く帰りましょう」

 

きっと精神的にも肉体的にも疲れると思う、だから今日は家に帰って休もう……いや

 

(そうだ、こうしましょう)

 

私が徹夜しているのはGS協会の職員なら皆知っている。そろそろ休んでも良いんですよ?と声をかけてくれる職員も多数いる。机の上に

 

『皆様のお言葉に甘えて明日1日休ませて頂きます 神代琉璃』

 

サインと判子を押した紙を机の上において私は5日ぶりに家へと帰るのだった……

 

 

 

大雨が降る中。GSの勉強をかねて、美神さんの事務所で待機してるんだけど……多分今日は出動はないわね……

 

「みッ!」

 

クリスマスプレゼントの横島の衣装がよっぽど気に入ったのか、ポーズを取っているチビと

 

「キューン♪」

 

まだサンタの衣装を着こんで横島に甘えているタマモ。そして横島も

 

「よしよし、可愛い可愛い」

 

チビとタマモの頭を撫でていて勉強する気配はなさそうだ

 

「……ん」

 

目の前に置かれるマグカップ。匂いからしてコーヒー

 

「ありがとシズク」

 

横島がいるならと事務所に入り浸っているシズク。お茶やコーヒーを入れたり、資料を見て今のGSの事を学んでいたりと結構楽しんでいるように思える

 

「……横島。緑茶」

 

「ん?ありがとな~シズク」

 

ぐりぐりとシズクの頭を撫でている横島。あの外見でも一応神様で龍神なのに

 

「……気にしないで良い」

 

横島の隣にチョコンと座るその姿は妹か何かのようにしか見えなくて、本人もそれで良いような態度をしている。それで良いのか水神……

 

【美神さんは今日は霊的に良くない日だから、依頼は後日ならお受けするそうです】

 

電話対応をしているおキヌさんを見ながら、ソファーで寝転んでいる美神さんに

 

「良いんですか?それなりに良い依頼だったんじゃ?」

 

報酬は500万。墓地の幽霊の除霊で夜の仕事だが数時間で終わりそうな物だったはずだけど……

 

「まぁね。追加報酬でワインとかを出してくれるって気前は良かったけど、こんな雨の日の墓地は嫌よ。他にも変な妖怪が来るかもしれないから」

 

まぁ確かにそれは判らないでもない、雨に関する妖怪も多くいるしね

 

「……私は雨は好き」

 

そりゃ水神だから雨は好きでしょうよ。両手で湯飲みを抱えているシズクを見ながらマグに手を伸ばすと

 

「それになんか私の霊感が囁いてるのよ。何かとんでもなく大きな事件があるってね?」

 

ウィンクをする美神さん。確かに美神さんの霊感なら当たっているかもしれないわね……

 

「よしよし」

 

「み」

 

横島に顎を撫でられて気持ち良さそうにしているチビを見ていると

 

ピンポーン

 

ほらね?何かあるって言ったでしょ?そう笑って雑誌を横に置く美神さん。私は広げていた参考書を片付けながら

 

「横島もダレたら駄目よ」

 

もしかすると大きな依頼があるかもしれないんだからと呟き、私も玄関へと向かった。そこには

 

「美神令子さんですね?唐巣神父の使いで来ました」

 

「よろしくお願いします」

 

ピートさんともう1人、似たような顔つきをした少女の姿があった……こ、こんな所でも逆行の影響が……どんどん私の知らない出来事が増えてくる事に思わず眩暈を感じるのだった……

 

 

 

唐巣神父の使いで来たと言う2人の外国人。片方は超が付く美少女だが……

 

「ちくしょー!!なんだかとってもドチクショオオオオ!!!」

 

どうしてこんなにも俺との差があるんだよ!!思わず涙を流しながらワラ人形に釘を打ち込んでいると

 

【横島さんの方が私は好きですよ?】

 

「……良い男は3日で飽きるが、普通の男は3日で慣れる」

 

笑顔のおキヌちゃんの言葉と励ましているのかそうじゃ無いのかシズクの言葉。そして

 

「キューン?」

 

「みーん」

 

心配そうに俺を見上げているタマモと肩の上のチビ

 

「うう。ありがとなーチビ、タマモ」

 

チビとタマモを抱き上げてソファーに座ると

 

「僕の名前はピエトロ。唐巣先生の弟子をしていますピートと呼んでください」

 

「なにがピートじゃあ!」

 

何でいきなりやろうを渾名で呼ばなければならないのかと思いそう怒鳴ると

 

「同じく唐巣先生の弟子をしているシルフィニアだよ♪シルフィーって呼んでね」

 

「シルフィーちゃんだね。よろしく」

 

伸ばされた手を握り返すと同時に右隣の蛍から

 

「ヨコシマァ!」

 

「はぶう!?」

 

ハリセンで頭をどつかれて机に顔を打ち付けている間に美神さんは

 

「ふーん……なるほどね」

 

ピートから受け取った手紙を見た美神さんはそれを畳みながら

 

「それで?私達はどこへ行けば良いのかしら?」

 

場所が書いてなかったのかそう尋ねる美神さんにシルフィーちゃんが

 

「地中海だよ!そこのブラドー島って言うところ」

 

地中海……それは初めて行くかもしれない海外の旅行地と言える……

 

「僕とシルフィーからはこれ以上は、詳しくは唐巣先生に聞いてもらえますか?」

 

申し訳なさそうに言うピートとシルフィーちゃん。確かに中途半端な情報だ。詳しい情報を伝えるのがGSとして要求され

 

るのにこれはあまりにお粗末ではないだろうか?蛍も同じを事を考えているのか渋い顔をしている

 

「まぁ唐巣先生の頼みだから引き受けたいとも思うけど、唐巣先生貧乏だから報酬払えないでしょ?だから私はパス」

 

そう笑って手を振る美神さんだけど、俺と蛍には判った。報酬を理由にこの依頼を断ろうとしていると

 

「そう言うと思ってこれを持ってきました」

 

「きっと気にいるよ」

 

ピートとシルフィーちゃんが机の上においたのは、金で出来た鷹の像と黄金の首飾り。俺でも判る高価な品だ

 

「こちらの像は時価20億はくだりません、こっちの首飾りは7億ほど」

 

あわせて27億!?なんちゅう代物を持ち込んでくるんや……美神さんはその2つを見て

 

「随分と気前が良いのね?」

 

警戒しているような視線でピートとシルフィーちゃんを見ている

 

「僕には不要な物ですので」

 

「私には大きすぎるしねー」

 

にこにこと笑う2人に美神さんは深い溜息を吐き

 

「判ったわ。この依頼受ける。先生にそう伝えておいて」

 

本当は断りたいと思っているのが判る。だけどこれほどの報酬まで用意されては断れない

 

(案外黒いのか唐巣神父)

 

人が良さそうに見えていたけど、案外黒い人なのかも知れない。俺は少しだけ唐巣神父の評価を改めた

 

「ありがとうございます。では後日ローマ空港で、では僕とシルフィーは他のスイーパーの所を回るので」

 

そう言って立ち上がり、衣装掛けからコートと帽子を手にするシルフィーとピートに

 

【美神さんだけじゃないんですか?】

 

おキヌちゃんがそう尋ねるとシルフィーちゃんが長い金髪をコートの中にしまいながら

 

「そうだよ。とっても手強い相手だからね、準備はちゃんとしてね?」

 

そう笑ってピートと一緒に出て行く、シルフィーちゃん。残された俺達は

 

「大丈夫っすか?」

 

渋い顔をしている美神さんに尋ねる。美神さんはうーんと呻きながら

 

「何とかなると思いたいわね。シズクは手伝ってくれるの?」

 

俺の隣で煎餅をかじっていたシズクは湯飲みを机の上において

 

「……人間も退魔師も嫌い。だけど横島が手伝って欲しいって言うなら考える」

 

じーっと俺を見る美神さんとシズク。少し考えてから

 

「手伝ってくれるか?」

 

「……仕方ないから手伝ってやる」

 

にこっと笑うシズク。美神さんはその言葉に笑みを零し

 

「さてと、準備を始めるわよ。横島君、雨の中悪いけど厄珍堂に行ってくれる?」

 

「うっす」

 

ささっと書かれた美神さんのメモを受け取る、大量に書かれている品物の数々。これはかなり大変やなぁ

 

【横島さん、合羽です】

 

おキヌちゃんが差し出してくれた合羽を受け取り着込むとシズクが傘を手に玄関に向かう

 

「待っててもいいんやで?」

 

「……私はミズチ。水が多いと調子が良くなる、この大雨は私には恵みの雨」

 

なんかよう判らんけど、この雨を吸収するって事なんか?

 

「気をつけてね?横島」

 

心配そうな顔をしている蛍に買い物だけで大げさやと返事を返し、俺とシズクは雨の中厄珍堂へと向かったのだった……

 

 

 

柩から譲り受けた魔導書を読み進める中。紅茶のカップに手を伸ばす

 

(素晴らしい物ですわ)

 

これは私の探していた魔導書ではないが、それでも充分に素晴らしい……

 

「電話?一体誰ですの」

 

本を読み進める邪魔をされた事で眉を顰めながら電話を手に取る

 

「どなたですか?」

 

私は表立ってGS事務所を構えていない、電話をかけてくるのは暗殺か破壊工作を頼む権力者かそれとも柩のどちらかしかいない

 

『神代琉璃だけど?』

 

神代琉璃……まさか電話をしてくるとは……思っても見ない相手に若干驚いた

 

「ご依頼ですか?」

 

『ううん違う提案。今ねブラドー島の吸血鬼が暴れてるんだって、行って見ない?』

 

軽い口調の神代瑠璃に眉を顰めながら

 

「はぁ?なんで私がそんな事をしなければなりませんの?」

 

大体GSとして行動するなといっておいて提案もくそもないと思うのですが……

 

『ブラドー島には稀少な魔導書があるんですって?手伝ってくれるなら閲覧許可を出してくれるって言ってるけど?』

 

吸血鬼ブラドーの所有している魔導書……それは確かに稀少な物だろう……

 

「良いですわ。貴女の思うように動いて差し上げましょう」

 

私を利用しようとするなんて許せるものではないが、その稀少な魔導書を閲覧できるのなら利用されたとしても我慢できる

 

『じゃあよろしくね。ローマ空港で待ち合わせをしてるGSがいるから合流してね』

 

言うだけ言って電話を切った神代琉璃に若干の腹立ちを感じながらも、今は従うしかない。私は読んでいた魔導書を閉じて本棚に戻し

 

「準備をしますか」

 

私は除霊具を使うタイプのGSではない、私は魔導書さえあればそれで充分だ。念の為に拳銃も所持していますが、あんまり殺しすぎるとまたGS免許の剥奪をされても困る、数冊の魔導書を鞄に押し込むだけにするとしますか

 

「……まぁ良いですか」

 

クリスマスの夜に出会ったバンダナの男に押し付けられたハンカチをついでと鞄に押し込む。なんだかんだで洗濯して何度

 

か使ってしまった……

 

(ふん、らしくないですわ)

 

こんなみすぼらしい物を使うとは私らしくないと思う反面手放す事が出来ない。それが自分の弱さだと判っているのに手放すことが出来ない。その弱さに溜息を吐きながらブラドー島に向かうための準備を始めるのだった……

 

(もうどうせ会うことなんてないですしね)

 

あのクリスマスの夜にあったバンダナの青年。きっと彼にもう会うことはないだろう……

 

「興味ないですわ」

 

そう呟いた物の、私の脳裏には能天気に笑うバンダナの青年の姿が浮かび

 

「腹ただしいですわ!」

 

勝手に人の心に入ってきて、そのまま出て行ったあの青年に対する苛立ちばかりが募る……

 

「もう良いですわ。今日は寝ます」

 

明日準備すれば充分に間に合う筈。寝室に向かい、着替える事も無く眠りに落ちるのだった……だが私は知る由もない、ローマ空港であの少年と再会し、そこから私の進む道が少しずつ変わり始めることを……

 

リポート12 吸血鬼の夜 その2へ続く

 

 




くえすを出すのは大分先の予定だったのですが、予想よりも良く動くのでブラドー島編で出すことにしました。これが+αの1つですね。そしピーとの妹もそのプラスの要素のひとつです。どう動くのかを楽しみにしていてください、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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