GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回の話で戦闘回は終わりの予定です、その後は事後処理の話を入れてレポート10に入ろうと思っています。それと横島の前回の攻撃とかの事も解説して行こうと思っています。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


その7

 

 

リポート9 黒魔術師小笠原エミのスカウト その7

 

神代琉璃ねえ……唐巣先生の応急処置で既に歩けるだけの体力と霊力を回復させている彼女を見て

 

(そんなに大した霊能者には見えないけど……)

 

私よりも2歳年上でGS協会会長……その肩書きは大した物だけど、果たして戦力として数えて良いものなのか?出来れば戦力になってほしいと思っている。本当ならばここは休んで欲しい所だけど、そんな事を言える状況ではなくなってしまった。黒坂のほうは徹底的に叩きのめした上に結界札と縄で縛ってあるから無視しても良い。当面の問題としては

 

「大丈夫横島?」

 

戦力としては未知数の横島君が完全に戦闘不能になってしまっている。横島君も護らないと行けなくなってしまった以上、GS協会会長と言う地位にいるのだから自衛手段があると思いたくなるのは当然の事だろう

 

「あーあんまり大丈夫じゃねえな」

 

ふらつく足元を蛍ちゃんに支えられ、バンダナで左目を隠している横島君。さっきの霊力の篭手の反動なのか、左目が一時的に失明しているようなのだ。

 

(一体誰があんな危険な物を……)

 

あれは霊力を圧縮して自身の身に纏う。防御力や攻撃力は確かに上がるだろう……だけど今の横島君には危険すぎる。霊力をコントロールする事の出来ない横島君には危険すぎる

 

「横島君。さっきの篭手は使ってはいけないよ、今の君では体にどんな障害が出るか判らないからね」

 

唐巣先生がそう言うと横島君は小さくうなずき、手を振りながら

 

「使いたくても使えませんよ。手痛いわ、足痛いわ、目が見えないわ……もう踏んだりけったりですわ」

 

そう笑う横島君。後悔しているように見えるから多分もう使う事はないと思うけど、あの篭手の危険性をしっかりと説明して使わせないようにしないと、今は一時的な失明と手足の麻痺で済んでいるけど、もっと酷くなる可能性も考えないといけない

 

(厄珍に薬を頼んでおきましょう)

 

自然回復を待っていたのではかなりの時間が掛かると思うから無事に帰れたら厄珍から薬を取り寄せよう。何かの副作用が出ても困るし

 

「横島君~冥子の事務所に来ない~日給で2万よ~蛍ちゃんもどうかしら~」

 

「じゃああたしは4万ずつ。これでどう?」

 

さっきの霊能力の篭手を見たせいか、エミと冥華おば様が熱心に横島君と蛍ちゃんをスカウトしているの見て

 

「家の事務所の人間を引き抜こうとしないでください!!!」

 

こんな事をしている場合じゃ無いのにと思いつつも、そう怒鳴らずにはいられなかった……

 

「ミミ!?」

 

「きゅーん!?」

 

美神が怒鳴った時。横島の足元のチビとタマモが尻尾を付き上げて怯える素振りを見せていたりするのだった

 

 

 

 

蛍と横島君達の話を聞きながらも私は脳内でムルムルとの話し合いを続けていた

 

(人間を憎むのは判るが、そうそう行動に出ないで欲しい)

 

ムルムルは中立派の魔神だ。だが今回の事で過激派になられると困る……ソロモンの魔神の中でも有数のネクロマンサーのムルムルが敵に回ると考えただけでも恐ろしい

 

(別に人間などはどうも思っていないさ、憎んでもいないし、復讐しようなんても思っていない)

 

その言葉に一安心しているとムルムルの声が大きくなる。どうやらまた近づいたようだ……

 

(だから我は今まで通りだ、人間には干渉しない。過激派にも協力しない。それが最大の譲歩だ、アスタロト)

 

人間は憎まないが、協力もしない。あくまで中立を貫くというムルムル。出来れば協力して欲しかったが、中立派なのままでも構わない

 

(それで構わない。ただ気が向いたら今来る人間を見てみてくれ、面白いぞ)

 

横島君や美神令子はきっと面白い。ムルムルも気に入るかもしれない

 

(考えておこう。我はあまり人間は好きではないからな)

 

そう言って黙り込むムルムル。珍しく饒舌だと思っていたが、すぐだんまりか……

 

「気配が濃くなりましたね。そろそろ幽夜が近いかもしれないですね」

 

振り返りながら呟く。唐巣神父も気付いているのか険しい顔をしている

 

「蛍君と横島君は下がっていたまえ。ここは私達が先頭に出る。勿論冥華さんもですよ?」

 

良い判断だ、見習いを前に出すような愚行はしないかと安心し、スーツから神通棍を取り出す。

 

「私が行きます」

 

別の部屋においてあった、旧GS協会の制服に身を包んだ神代君が前に出て扉を蹴り開ける。見かけによらず随分とアグレッシブな子の様だね。地下でありながら月の見える場所には青年がいた。全身からは魔力と霊力を同時に発生させている

 

「ようこそ、お待ちしていたよ。GSの皆様、そして琉璃……」

 

穏やかな笑みを浮かべつつ、サーベルを抜き放ち構える。その構えはムルムルのそれと全く同じ

 

「ここまで来たんだ、態々語り合う事もなかろう。私が勝てばGS協会はますます悪くなる、そちらが勝てば浄化できるかも知れんな……」

 

サーベルの切っ先をこちらに向けにやりと笑い

 

「何時の時代も思いを通すは力ある者のみ、私を打ち倒すことが出来なければそちらが悪だ。さぁ始めよう」

 

その瞳は何もかも諦めきったような光を宿していて、私は感じてしまった。

 

(まさか神代幽夜の目的は……)

 

だとしたら全力で当たることが礼儀となる、私は少しだけ魔力の封印を緩め神通棍に霊力と魔力を注ぎ込んだのだった……

 

 

 

くっ!強い!?これが降魔術の一族の力……元々の身体能力・霊能力はそれほど高くないが、降魔させる神によってはとんでもない力を発揮する。それが神代一族と唐巣先生から説明では聞いたけど

 

「その程度か?若手NO1GS?」

 

挑発するかのように笑う神代幽夜を睨み返しながら

 

「うっさいわね!!!」

 

鍔迫り合いをしていると挑発するように言う神代幽夜の胴に蹴りを叩き込み、身体の中に霊力を叩き込もうとするが

 

(つー!?なんて固さよ!?)

 

蹴ったこっちの足が痺れた。しかも叩き込もうとした霊力も完全に霧散してしまった……そのせいで只の蹴りになってしまったせいで、足が完全に痺れている……しかも蹴った感触は生身の人間を蹴ったとは思えない感触に眉を顰めていると

 

「何してるのよ!?馬鹿じゃ無いの!?」

 

「うっさい!」

 

エミが破魔札を投げた隙に離脱する。これはかなり不味いわね……目視出来るほどに圧縮された霊力と魔力の壁を突破する手段がない……しかも物理も殆ど効果がないとなると本当に全滅の危険性が出てきてしまった

 

「唐巣先生。眼鏡外したらいけます?」

 

今の遠距離をメインとする唐巣先生ではなく、眼鏡を外した昔の唐巣先生ならと思って尋ねるが

 

「厳しいね。あの高密度の霊力と魔力……突破するのは難しい」

 

唐巣先生でも難しいとなるとかなり難しいわね。冥華おば様とエミが支援をしてくれているから、ある程度は接近戦を仕掛けることが出来るけど

 

(私の力だと難しいわね)

 

悪霊なら霊力の戦いになるから、腕力は関係ない。だけど相手は生身の人間、ある程度の筋力がないとダメージを与えるのは難しいだろう

 

「くっ!どうしてこんなことをしたのですか!?」

 

神代琉璃が霊刀を構えて幽夜に切りかかる。彼女にとっては叔父に当たる人物だ。家族と戦うのは嫌だろう

 

「何故今になって言葉で語ろうとする?私はお前の敵と言ったはずだ……ならば言葉ではなく!」

 

霊刀を弾き間合いを取る幽夜、その構えに寒気を感じ、ネックレスの精霊石を引きちぎる

 

「力で語れ!!!」

 

霊力と魔力を込めた斬撃を繰り出そうとする幽夜目掛け精霊石を投げつけ

 

「精霊石よ!」

 

印を結んで精霊石に霊力を込めて結界を作り出す。その精霊石の結界で1度は幽夜の刃は止まったが……

 

「この程度ッ!!!」

 

力強く踏み込んで更に刃を深くめり込ませる。するとその場所から結界に皹が入っていく……

 

「嘘!?」

 

買えば2億はする、純度80%の精霊石の結界を力を込めただけで粉砕した!?なんて化け物!?

 

「おおおっ!!!」

 

「!?」

 

芦さんが神通棍で幽夜に殴りかかる。吹っ飛ばされると思った瞬間。両手で握っていたのを片手にもちかえ

 

「ふっ!!」

 

「うぐっ!?」

 

流れるように間合いに入り込み、襟首を掴んで地面に叩きつけ

 

「今の君は霊力も物理も効かない、ならば根競べと行こうじゃ無いか!」

 

殆ど一瞬しか押さえつけることが出来なかった芦さんだが、幽夜の顔色は良くない。何か知られたくない事を知られてしまったようなそんな表情だ

 

「それだけの降魔……どれだけ維持できる?見たところかなり弱ってきているようだし……後30分ほどではないかな?」

 

一瞬整った幽夜の顔が大きく歪む、もしかしてあの強化っていつまでも続かない?良く見ると幽夜の額には汗が浮かび、息も若干乱れている。それは微々たる変化だったが、確かな変化でもあった

 

「耄碌したね。そんな基本的なことを忘れているとは」

 

唐巣先生が眼鏡を外して全身に霊力を込めて向かっていく。時間を稼ぎ幽夜が降魔を続けることが出来なくなればこちらの勝ちだ。あまり綺麗な勝ち方ではないが、これしかないと私も判断し私も手にしていたボウガンを蛍ちゃんに投げ渡す

 

「美神さん!?」

 

慌てている蛍ちゃん。無理もない、私は道具使いだ。道具ありきだが、霊力が効かないのだから素手でいくしかない。サーベル対策は神通棍でなんとかなるはずだ

 

「エミ!冥華おば様!フォローよろしくお願いします!」

 

霊力による遠距離攻撃が出来ないのなら、ボウガンは邪魔。離脱と防御はエミと冥華おば様に任せるしかない……返事を待たず私は幽夜へと向かって走り出したのだった……

 

 

 

強い……美神さん達を相手にしているのに1人で余裕の色を見せている。神代幽夜を見て俺は正直言って恐怖した

 

(あれだけ強い美神さん達が相手にならないなんて)

 

美神さんは強さは良く知っている。その美神さんの師匠の唐巣神父も強いのは当然なのに

 

「くっ!!重い!?」

 

「美神君。下がりたまえ!」

 

手にしているのは片刃の西洋剣1本だけなのに、左右からの挟み撃ちも、前後からの攻撃も完全に対応している……

 

「蛍。何とかならんのか?」

 

左目が見えないので距離感が掴めない。それに安定しない陰陽術と破魔札では美神さん達を巻き込みかねない……同じ理由でタマモも無理……

 

「駄目よ。横島」

 

俺が何をやろうとしたのか気付いた蛍が俺の手を掴む。確かにさっきの一撃で足もふらついているし、左目が見えてないので距離感も掴めない。だけど何もしないと言うのはできない……

 

「そんなに心配しなくても良いわよ!見てなさい!横島君!蛍ちゃん!一流のGSの戦い方っていう物ね!」

 

そう笑ってウィンクする美神さん。その顔は自信満々と言う感じをしていて何とかしてくれるという気がする

 

「何が出来るつもりだ?」

 

余裕の色を崩さない幽夜。身体から溢れている緑と赤の光がバリアになって攻撃が殆ど届いていない……それで一体何をするつもりなのか……目配せをして左右に走る美神さんと唐巣神父。その2人の間をエミさんと冥華さんの霊力の攻撃が走る……

 

(あれ?あれは当てるつもりじゃ無い?)

 

その霊力は地面を走っている。とてもではないが、当てる事を目的にしているようには見えない……

 

「これで準備完了~横島君、蛍ちゃん~離れるわよ」

 

俺と蛍の手を引いて下がる冥華さん。これから何が起こるのか判らず美神さん達を見ていると

 

「美神さん!唐巣神父!下がって!」

 

神代さんが手にしていた刀を地面に突きたて何事か呟くと、幽夜を覆っていた光が消える

 

「これは!?」

 

「神代家当主だけの秘術よ!!今です!」

 

詳しくは判らないけど、あの術で幽夜の降魔術を無効にしたって事なのか?

 

「殺しはしない!だが罪は償ってもらうよ!」

 

「このおっ!!!」

 

唐巣神父の鋭い拳と美神さんの神通棍が一閃され、幽夜の手にした剣が根元から砕け散り、その拳が幽夜の胴を貫いたのだった……

 

「見たぁ~あれが一流のGSの戦い方よ~」

 

冥華さんの言葉に頷く事しかできない、普通に戦うのではなく、地面に魔法陣を描きながら、それを気付かれないようにしつつ戦う……それは相手と周りを完全に把握してなければ出来る戦術ではなくただただ凄いとしか言い様がなかった……

 

 

 

地面に倒れている叔父さんを見る。昔は優しい人でこんな事をする人ではなかった。私が会長になった時に叔父さんに里に帰る様に言った……霊力の使えない叔父さんに少しひどいことを言ったかもしれない。だけど私は

 

(そんなつもりではなかった)

 

叔父さんの身体の調子が悪いのは知っていた。だから里に帰るように頼んだのだ、その時の言葉は今も覚えている

 

【今までありがとう。叔父さん、だけどもう大丈夫。叔父さんもゆっくりして】

 

今までの教えの礼をして、もう働かなくても暮らせるだけの退職金も渡した。叔父さんもその時は判ったと言ってくれた、だけど除霊の帰りに黒坂と一緒に現れて私を水晶の中に封印した……

 

(どうして……)

 

こんな事をしたのかが判らない……叔父さんは私達を見て

 

「これで良い。ありがとう」

 

礼を言われた意味が判らない。何を考えていたのか……それが私には判らない

 

「何が目的だったのこんな事をして?」

 

美神さんの問い掛けに叔父さんは小さく笑い

 

「私の書斎にGS協会の膿を纏めた書類が置いてある。琉璃……それでGS協会を正しい形に導け」

 

「何が!何がしたかったのですか!?私には叔父さんが何をしようとしていたのかが判らない!」

 

今更そんな事を言うなら最初から一緒にGS協会を良くしてくれれば良かった

 

「私は長く生きれない身体だった……だがそれを人並みの寿命に伸ばしてくれた当主には感謝している。だがあの人が作ったGS協会は私利私欲に満ちた屑どもがはびこる場所になった。それが私には耐えられなかった……だからこんな形にはなったが、GS協会を正しい形にしたかった……」

 

叔父さんはもう何もその目に写していない瞳で美神さんと唐巣神父を見て

 

「琉璃をお願いします。この子はまだ弱い……どうか私の姪っ子をよろしくお願いします……」

 

そう言うと同時に叔父さんの身体は灰になり消滅する。限界まで神卸しをしていた影響なのだろう

 

「うっ……」

 

目が熱くなる。叔父さんの真意を理解できなかった、だけどGS協会を良くしようとしていたのは判る……だけどこんな形じゃなくて、もっと私に色々な事を教えて欲しかった……

 

「あー神代さん?良かったらどうぞ」

 

ふらふらと歩いてきた横島君から差し出されたハンカチで目元を拭っていると

 

【ふむ。くだらぬ……人間はやはり下らぬ】

 

背筋が凍るような冷たい声。振り変えるとグリフォンに跨った騎士が私達を見下ろしていた、あれが「ムルムル」ソロモンの魔神の1柱……なんて威圧感……叔父さんをくだらないと言ったあの魔神に文句を言いたいのに口を開くことが出来ない

 

「みみみみ」

 

「くうーん」

 

グレムリンと妖狐は尻尾を高く突き上げて頭を低くして怯えている。美神さん達も顔を青くして喋る事が出来ない中

 

「てめえ!神代さんに謝りやがれ!この馬鹿野郎が!!!」

 

横島君だけが立ち上がりムルムルを指差し、そう怒鳴るのだった……

 

 

 

ほほう……面白い小僧だ。我を前にして立ち上がるだけではなく声をかけるか

 

「よ、横島君!謝りなさい」

 

緋色の髪の女がそう怒鳴るが、バンダナをした小僧は

 

「いやっす!確かにあの人は悪いことをしたかもしれない。だけどな!死んだ人間を悪く言うんじゃねえ!ムルフルだが死霊公爵だが知らないがな!てめえの価値観を俺達に押し付けるんじゃねえ」

 

我の魔力はこの場を支配している。それなのにこれだけ動く事ができ、喋る事が出来る

 

(この男が面白い人間か?)

 

念話でアスタロトに尋ねる。アスタロトは小さく頷き、くっくっと笑っている

 

【ふむ……それは失礼した。我は死を良く知る存在だ、人間とは価値観は違う】

 

「なら少しは考えてから喋り「お前が考えてから喋れ!!!」へぼお!?」

 

緋色の髪の女に頭を掴まれ地面に叩きつけられ痙攣している小僧。くっくっく確かに面白い人間だ

 

【問おう。そこの娘、その人間の魂、本来ならば地獄に運ぶが道理】

 

われを操ろうとしたのだ、それだけでも十分に死罪に値する。元々地獄に連れ去るつもりだったが、気が変わった

 

【汝が望むなら魂を解放しようではないか。返答はいかに?】

 

「お、お願いします!叔父さんの魂を解放してください」

 

我の魔力の中でもしっかりと口を開いた娘に頷き、捕まえていた魂を解放する……

 

【ふふふ、そこの小僧、名は?】

 

この我にこれだけ強気で話しかけてきた小僧は初めてだ、魔界に帰る前に名を聞こうと尋ねる

 

「横島忠夫」

 

邪?変わった名だが……面白い小僧だ。膨大な霊力をその身に宿している。だが今はまだ目覚める気配がない、その霊力が目覚める事はないかもしれんが、今の人間にしては珍しい透明な心を持っている。こんな心を見たのは何時振りだろうか……アスタロトの言うとおり面白い人間だ

 

【この小僧に感謝しろ。人間、本来なら貴様らも殺す所だが、面白い事を見せてもらった礼だ。特別に見逃してやる……ではな】

 

ゲートを作り魔界に帰る。その途中で我は小さく笑いながら

 

(本当に面白い小僧だった……)

 

あんな人間もいるのなら、人間も早々悪いものではないな。あの堅物のアスタロトが人間と一緒にいるくらいなのだから……

 

 

消えていったムルムルに安堵の溜息を吐く、あれだけの魔神に啖呵を切った横島に

 

「おたく、本当にあたしの事務所に来ない?」

 

精神も強い、まだまだだけど伸びる事がわかっているのでスカウトするが

 

「止めろって言ってるでしょうが!」

 

令子がそう怒鳴る。もう少し早く会う事ができればなあと思わず苦笑する

 

「とりあえず、神代幽夜が残した書類を回収して戻ろう」

 

唐巣神父の言葉に頷く、ここまで瘴気に満ちた場所をずっと走り続けていた。体力も霊力の消耗も激しい。不正の情報を探すのは次の捜索の時にするしかない……

 

「横島君!」

 

琉璃がそう叫んで倒れていく横島を抱きとめる。その額には大粒の汗が浮かんでいて、呼吸も荒い……

 

「大丈夫横島!?」

 

倒れた横島に駆け寄る蛍。その顔には心配そうな顔色と不安そうな色を浮かべていた……それだけ横島を想っていると言う事よね……なんか微笑ましいワケ……

 

「クーン、クーン……」

 

「みみ!みみー!!」

 

チビとタマモが心配そうに横島の頬を舐めている。本当に随分懐いているワケ……これは間違いなく、横島の才能なワケ……潜在霊力に陰陽術に妖怪に好かれる才能。とんでもなく恵まれているワケ

 

「霊力の~消費のし過ぎね~早く連れ出して休ませて上げましょう~」

 

さっきの啖呵が火事場のクソ力と言う所だったワケ……まぁあの魔神に啖呵を切った精神力は素直に凄いとしか言えない

 

「そうだね。横島君の状態が心配だ、横島君は私が担いでいこう」

 

唐巣神父が横島を担ぐ、あたしと令子は隣の部屋から幽夜が集めた不正などの証拠を纏めた書類を抱え旧GS本部を後にしたのだった……

 

 

リポート9 黒魔術師小笠原エミのスカウト その8へ続く

 

 




次回でリポート9は終わりになります。内容としては話のシーンが多くなると思います、一応あともう1回はエミのスカウトを入れたいと思っています。あとは横島がどうなったのか?もかいてみようと思っています。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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