GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです、今回の話は人骨温泉とおキヌちゃんの話になります。癒しキャラのおキヌちゃんを真っ黒にするという暴挙(?)だけどきっと黒いおキヌちゃんでもいいと言ってくれる人がいると信じます。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします



レポート4 幽霊少女と蛍と狐
その1


レポート4 幽霊少女と蛍と狐 その1

 

美神さんの除霊と言う名目の慰安旅行に来る事になった私と横島、そしてタマモは電車の窓の外を見つめながら

 

「どんどん山奥に入っていくな。タマモは山は好きか?」

 

「クウ?」

 

膝の上のタマモは小さく首を傾げている。あんまり興味がないようだ

 

「もう少しで降りる駅だからね、準備してなさいよ」

 

いつもの派手な服装ではなく山歩きに適した服を着ている美神さん。私は飲んでいた緑茶のペットボトルの蓋をしめながら

 

(大分印象が違うのよね)

 

私の印象ではもっとがめつい印象だったのに、最近の美神さんは少し優しい気がする。お父さんとも話をしたけど、若干だけど逆行の影響が出ているのかもしれないとの事だけど……かなり強力に自分に暗示をかけているのでまず解ける事はないそうだ。逆行前の責任を感じているのかもしれないというのがお父さんの出した結論だ。私ももしかすると思っているので、多分この推論は当たっているのかもしれない

 

「さーて、ここからは山歩きよ。頑張って行きましょうか」

 

珍しく自分のリュックを背負って歩いていく美神さん。今回の除霊はかなり楽勝らしいので持って来ている道具も少ないから、横島も普通に山を登っている

 

「コン♪」

 

尻尾を振りながら横島に早く早くとでも言いたい様子のタマモを見ながら

 

「元気だなあ。やっぱり狐だから自然の方がいいのかな?」

 

そうじゃなくて横島と一緒だから楽しいのよとは口にしないで

 

「判らないわ。私は狐じゃないからね」

 

タマモの考えていることは判らないと言うと、横島は頭をかきながらそれもそうやなと呟き

 

「タマモー。あんまり先に行くなよ、危ないからなー」

 

「コーン」

 

横島の心配する声とは逆に嬉しそうに鳴いてまた走り出すタマモを見て

 

「ああ、だから待てって言ってるだろ!?」

 

「こコーン♪」

 

追いかけて来る横島を見て、更に嬉しそうに鳴いて走り出すタマモとそれを追いかける横島を見ていると

 

「本当に横島君とタマモは仲が良いわね。見ていてなんか幸せな気分になるわね」

 

子狐のタマモと横島が遊んでいる姿を見ると確かに幸せな気分になるのよね。だけどその理由は判っている。今のタマモの姿が子狐だからだ、これがもし人型ならきっと私は相当嫉妬しているという確信がある。

 

「さてと!もう少しで温泉だから頑張って行きましょうか」

 

そう笑って歩き出す美神さんの後ろをついて山を登っていると

 

「ッ!」

 

誰かに見られてる気配がして振り返るが、姿はないだが強烈な敵意を感じた……今のは一体?

 

「どうかした?」

 

私が立ち止まっていることに気付いた美神さんがそう声をかけてくる。私は軽く首を振り

 

「なんでもないです、今行きます」

 

美神さんの後を追って歩き出すのだった……暫く歩くと

 

「いないなー。タマモー!タマモーどこだー!」

 

茂みを掻き分けてタマモを探している横島がいた。結構必死そうな声をしているので、相当探しているようだ

 

「どうかしたの?」

 

横島は美神さんの声に横島は振り返りながら、頬をかいて

 

「いや、タマモが山の中に入って行っちゃって。悪いっすけど先に行ってくれます?タマモを見つけてから行きますんで」

 

道理。道理なのだが、妙に嫌な予感がする。とんでもなく悪い予感が

 

「私も残って探そうか?」

 

ここに横島を残したら駄目だと判断してそう言うが横島は首を振りながら

 

「駄目駄目。まだ雪も残ってるだから、女の子が体を冷やしたらあかん。ワイもすぐ行くからホテルで休んでてればいいわ」

 

大阪の口調が出ているときは駄目だ、何を言っても横島は駄目だという。それに美神さんも

 

「そうね。暗くなると危ないから、先に行くわ。あんまり見つからないなら明日捜せばいいから戻ってきなさいよ?」

 

「うっす!暗くなる前に見つけてホテルに向かいます」

 

そう笑う横島。本当は嫌な予感がするから私も残ってタマモを探したいんだけど、この雰囲気では残ることは出来そうにない

 

「気をつけてね。横島」

 

私に出来るのは横島にそう声を掛ける事だけだった。だが私は後に後悔する、ここで残って横島と一緒にタマモを探すべきだったのだ……美神さんと横島が駄目だと言っても残るべきだったのだ。何故ならこの時、横島の近くにはタマモは既にいたのだ、だが

 

「うー!うー!」

 

【ごめんね、大人しくしててタマモちゃん】

 

暗い瞳をした幽霊の少女がタマモをしっかり押さえて、横島の所に向かえないようにしていたのだ。そして彼女は

 

【早く向こうへ行って。貴女達は邪魔なの】

 

どす黒い瘴気を撒き散らしながら、その少女は美神と蛍を睨んでいたのだった……

 

 

 

美神さんと蛍に先に行ってもらい。残ってタマモを探しているのだが

 

「いないなー、どこに行ったんだ?」

 

おかしなー普段は呼んだらすぐ来るのに……探しても探しても姿の見えないタマモに徐々に不安になってくる

 

(うーん。ここじゃないのか?)

 

この茂みに入ったと思うんだけどここじゃないのか?別の茂みに手を伸ばし、その茂みを掻き分けてタマモを探していると

 

「うおお!?」

 

地面から伸びてきた白い腕に肩を捕まれ、そのまま地面に押し倒される

 

(あかん!?幽霊か!?)

 

破魔札は鞄の中だし、俺だけでは霊力を使うことが出来ない。抵抗しようとしたが、俺を押さえ込んでいる幽霊の顔を見て、抵抗する事を完全に忘れてしまった。何故なら

 

【会いたかった。横島さん】

 

泣き笑いのその顔を見て、何故か抵抗しようと言う気持ちがなくなってしまった。俺が身体を起こせないように押さえつけているのに痛みがない。それなのに身体が動かない、一体どうやっているのだろうか

 

【ずーと、ずーとっ!私はここで待ってたんですよ。横島さん】

 

愛おしいという顔で俺の頬を撫でる巫女服姿の少女。幽霊なので少し冷たいが、しっかりと触られている感触がする。だけど嫌だとか気持ち悪いとか言う感じはない。目の前の少女の慈しみに満ちた顔を見ると、そんな気持ちは沸いて来ない。だが1つ気がかりな事がある

 

(どうして俺の名前を……)

 

当たり前の話だが、俺に幽霊の知り合いはいない。だが彼女は俺を知っている、蛍と同じだ。俺は知らないのに向こうは俺のことを知っている……

 

「君は誰なんだ」

 

【……おキヌと言います。ずっとずっとここで横島さんを待っていました】

 

待っていたって何で?と言うかおキヌちゃんは何で俺の名前を知っているんだ?それに押さえつけられているので動けない。いつまでも美神さんと蛍を待たせるわけには行かないので

 

「美神さんと蛍が待ってるから。話はホテルで【なんで私がいるのに他の女の人の名前を言うんですか!】

 

さっきまでの優しい顔はどこへやら、一気に恐ろしい表情になったおキヌちゃんは

 

【私はもう決めたんです、我慢しないし、悪い子になるって】

 

悪い子って何!?それに何時決めてしまったの!?強烈な嫌な予感に逃げようと身体をよじるのだが、ぴくりとも身体は動かない

 

【もうここでぱくっと食べてしまいましょうか。相すれば横島さんは私の……ふふふふふふふふふふふ】

 

いやーッ!!!怖い!この子怖いよーッ!!!!!心の中でそう叫ぶ、どす黒い瘴気を撒き散らし、ふふふと笑うおキヌちゃんはとんでもなく怖い。

 

【と言うわけでぱくっと美味しく横島さんを頂いてしまおうと思います♪】

 

「やめてーッ!」

 

食われる!?妖怪に魂を食われる!その恐怖でそう叫んだ瞬間

 

「コーンッ!!!」

 

青黒い炎が俺とおキヌちゃんの間に放たれる。これは

 

「タマモ!?」

 

「コーン♪」

 

尻尾を振りながら駆け寄ってきたタマモを抱き上げて、少し距離を取る。おキヌちゃんは別にダメージを受けた素振りはないが

 

【なんでなんでなんでなんで、私の邪魔をするんですかあ!!!】

 

そう怒鳴り全身から黒いオーラを撒き散らすおキヌちゃん。気配は邪悪なのだが、悪い子ではないと言うのは判る。だから

 

「えーとおキヌちゃん!俺の話を聞いてくれないか!」

 

駄目もとでそう叫ぶ。今俺には何の装備もない、だから言葉を使って説得するしかない。それに悪い子になると言っていたが、俺にはあの子が悪い子には見えなかった。

 

(どうせ駄目だとおもうけど……)

 

だが俺の予想に反して、おキヌちゃんは嬉しそうに笑い、両手を頬においていやんいやんと言う感じで宙に浮きながら

 

【おキヌちゃんって呼んでもらえた……えへへ♪】

 

思ったより単純なのかもしれない。いや、俺も大概単純だけどさ……

 

【話聞きますよ。横島さん】

 

物凄く嬉しそうに笑いながら俺を見るおキヌちゃん。さっきまでの邪悪な笑みとオーラはどこへやら……

 

「えーとじゃあ、人骨ホテルに行こうか?」

 

まずは美神さんと蛍に相談に乗ってもらおう。俺じゃあどうすればいいのか判らないし

 

【はい!じゃあ憑いて行きます】

 

背中にぴとっと張り付くおキヌちゃん。背中に当たるのは柔らかい感触

 

(ふおおおお!?これは!?これはまさか……この柔らかさはあああああ」

 

蛍より少し大きくて、女性らしい柔らかさに満ちているし、背中に当たるつんとした感触は間違いなくあれだ

 

【ふふふふ♪横島さーん♪】

 

嬉しそうに背中にしがみ付いて、すりすりしてくるおキヌちゃん。幽霊なのに感じる甘いにおいに

 

「だばだばだば……あかん……これはあかん」

 

ここまで女性と密着したことは数える程度しかない。しかも巫女服の美少女……溢れる鼻血と幽霊とかでもいいかもしれないと悶々とした妄想が頭に広がるが

 

「コンッ!」

 

「あいだあ!?サンキュータマモ」

 

肩の上のタマモの噛み付きでその妄想から引き戻されながら、俺は人骨ホテルに向かって歩き出したのだが

 

【横島さーん♪】

 

胸を背中に押し当て、嬉しそうに。そして甘えた声を出しているおキヌちゃんに心臓が爆発しそうなくらい、高鳴るのを感じるのだった……時折タマモが頬を舐めたり、噛み付いてくれなかったら。俺はとんでもない過ちを犯していたかもしれないとおもうのだった……

 

 

ああ。暖かい。それに良いにおい……横島さんの背中に憑いたまま人骨ホテルに向かう中。私は

 

(どうしてタマモちゃんが)

 

まだこの時期には居ない筈なのに……横島さんの肩の上から敵意を見せるタマモちゃん。だけど狐の姿のままなら何の恐怖も感じない。それに尻尾の本数も少ないから、怖いとおもう要素がない

 

(今気をつけないといけないのは美神さんだけ)

 

まだ敵は少ない、今のうちにリードすれば。私が生き返ったときにきっと横島さんは私を見てくれる、そうなるように頑張っていこうと思い、横島さんの背中に憑いて人骨ホテルに向かい。そこで私は驚きに目を見開いた

 

(ルシオラ……さん。いや蛍ちゃんですか?)

 

ロビーで横島さんを待っていたのは間違いなく蛍ちゃんだ。だが気配が違うことを考えると、この世界のルシオラさんと融合して別の存在になっているのかもしれない。蛍ちゃんは私と横島さんを見てつかつかと歩いてきて

 

「邪魔よ」

 

物凄くイイエガオで霊力を込めた手で私の肩を掴んで

 

【きゃあ!?】

 

無理やり私を横島さんから引き離し、私が横島さんに近づけないように横島さんの前に立つ。そう、そうですか……判りました

 

【貴女は私の敵なんですね?私から横島さんを奪うんですね!】

 

まだこの時期に居ない筈の蛍ちゃん。だから大丈夫だと安心していた、だが一番危険なのは美神さんではなく。この蛍ちゃんなのだ

 

「は!何言ってるの?横島は私の!無理やり奪おうとしているのは貴女のほうよ」

 

この短い会話で私は完全に理解しました。私が幸せになるためには蛍ちゃんが邪魔なのだと、なら排除しないといけないですね。私が幸せになるために

 

【ここで消えてもらいましょうか】

 

霊力を高めてオーラを纏いながら浮かび上がる。今の私は霊脈と繋がりがあるので神魔にも負けない自身がある。それになによりも横島さんへの愛で負けるわけがない!!!

 

「上等よ、今すぐどっちが上か教えてあげるわ」

 

破魔札を手に私を睨む蛍ちゃん。だけど負ける気はない。300年待ったんですよ?どうして私が我慢しないといけないんですか、もう私はきっと一生分我慢した。だからもう我慢はしないと私は決めたのだからッ!!!!

 

「ううう……タマモぉ……俺怖い」

 

「くーん、くーん」

 

視界の隅でタマモちゃん震えている横島さんを見て私は

 

【少し霊力を抑えたらどうですか?横島さんが怖がってますよ?】

 

「貴女の瘴気が怖いんじゃないの?」

 

どうやら私と蛍ちゃんはもう会話で分かり合える段階ではないようですね。仕方ありません、私が幸せになるために

 

【「潰す!「します」】

 

ホテルのロビーで私と蛍ちゃんの戦いの幕が切って……

 

「依頼の場所で喧嘩するなッ!!!」

 

突然聞こえてきた声に振り返ると。エントランスから私と蛍ちゃんを睨んでいる美神さんが何かを投げるのが見える。緩い放物線を描いて飛んできたのは

 

(【精霊石!?】)

 

それは小さな小さな精霊石のかけら。欠片とは言え、その威力は折り紙つきで……目の前で爆発したその欠片に

 

「へも!?」

 

【ふみゃっ!?】

 

美神さんの怒声と共に投げつけられた、小さな小さな精霊石のかけらのせいで私と蛍ちゃんは同時に意識を失ってしまうのでした……

 

「蛍ーッ!?おキヌちゃーんッ!?」

 

意識を失う寸前に聞こえた横島さんの声、だけど私が二番目だったことに若干のイラつきを覚えながら、私は意識を失ってしまうのでした……

 

レポート4 幽霊少女と蛍と狐 その2へ続く

 

 




黒いおキヌちゃんは可愛い。異論は認めます!しかし私の中ではこれがおキヌちゃんが一番輝くと思うので、次回も当然おキヌちゃんの話になりますが、今回よりは少し冷静な感じで進めて以降と思います。横島へは暴走特急で進んで行きますけどね。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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