ここからはオリジナルの要素を加えていこうと思っています。ノッブとかそこらへんですね。それでは今回の更新も同かよろしくお願いします
外伝リポート 外史からの来訪者 その4
ミズチタクシーによってノスフェラトウの攻撃を回避出来た私達だったけど、強烈な乗り物酔いに加え、ノスフェラトウの霊力に当てられて著しく体力と精神力を消耗していた
「……唐巣先生、1度休んでからGS協会に集合でいいですか?」
体感時間的には1時間かそこらだと思っていたんだけど、時計を見ると早朝4時。夜7時に結界の中に突入したことを考えると9時間ものあの結界の中に居たことになる。恐らくだけど、あの結界の中は時間の流れがおかしかったのかもしれない、犬や猫の身体が完全に腐敗したことも考えると私の予想は当っているだろう。
「ああ。その方が良いだろうね、精神的にも体力的にも弱っている。一応琉璃君に連絡だけ入れてから休むとしよう」
唐巣先生も同じ意見だったのか休もうと言ってくれた事に安心し
「蛍ちゃんと横島君も11時頃に事務所に来てね?」
事務所に来る時間を話してから車で家まで送ろうか?と尋ねると
「……横島は心配ない、私が連れて帰る」
「え!?ま、またミズチタクシーはいやあああああ!?」
がぼんっと音を立てて横島君を水の塊が飲み込みあっという間に消えていくのを見て
(これちょっとした衝撃映像よね)
水の塊が凄い勢いで動くので、鮫が獲物を襲っているようにも見える。
「じゃ、私はお願いしてもいいですか?美神さんも疲れていると思いますけど」
申し訳無さそうに言う蛍ちゃんに気にしなくて良いわよ?と返事をし、久しぶりにコブラをガレージから出して、蛍ちゃんを優太郎さんのビルの前まで送り届けてから事務所に戻り
「もしもし?琉璃?ちょっとやばいことになってるから、近隣に居るGSを戻しておいたほうがいいわよ?ノスフェラトウが復活したみたいだから、きちんと報告に行くけど……ちょっと精神的と体力的にやばいから少し休ませて貰うわ。昼前には行くから」
GS協会の留守電に必要な情報だけを入れてから
「おキヌちゃん、10時に起こしてちょうだい」
【わ、判りました。ゆっくり休んでください】
最低限の霊力が回復する時間だけ仮眠を取るから、10時に起こしてとおキヌちゃんに頼み私はベッドに潜り込むのだった……
ぺっと言う感じで水の塊から吐き出される。目が回っている上にめちゃくちゃ吐きそうだ
「お、おねがいだからもうミズチタクシーはやめてくれへんか?」
高速で移動出来るし、反撃を受けることも無いから安全なのは判る。だが身体に来る負担が半端無いので出来れば止めてくれないかとお願いするが
「……今の弱っている段階では雑霊でも危険だ、それに……」
それに?そこまで言った所でシズクが力なく倒れてくる。それを咄嗟に受け止めると
「……水を使い切ったから……あそこからここまでお前を守る力が無かったから……」
そう言って意識を失ったシズク。冷たいのはいつも通りだけど、それがいつにもまして冷たい気がする
【早く水を与えるんだ。最初のノスフェラトウの霊波を防ぐにもかなり水を消費している、いくら水神ミズチといえど限界を当に超えている】
心眼の言葉を聞くよりも早く家の鍵を空け、浴室の中にシズクを横にし水道の蛇口を捻る
「……」
意識を取り戻す気配は無いが、蛇口から出る水がどんどん吸収されていく……そのうち意識を取り戻すだろう。俺に出来ることはこれくらいしかない、早くシズクが目を覚ましてくれる事を祈り浴室を出ると
「ん?」
そのまま自分の部屋に戻ろうとしたが、やけにリビングが騒がしい事に気付きチビとモグラちゃんが何かしているのかな?とリビングを覗き込むと
【ははは!お前達面白いのう!】
ノスフェラトウの再封印の前に拾った幽霊の子が起きていて、チビやタマモ達と遊んでいた
【うん?おう!お主か!この家の家主は!拾ってくれて助かった!そのままほったらかしはちと酷いが、暖かい寝床に美味い食事!感謝しておるぞ!】
美味い食事?その少女の周りに転がっているカップラーメンのゴミとお菓子の袋。そしてそんな少女の側で
「みむう……」
「うきゅ……」
「くう……」
なんかぐったりしているチビ達を見る限りでは、相当振り回されているのが判る。と言うか、よくカップラーメンに入れるお湯を用意出来たな……と感心していると思わず欠伸が出る。い、いかんマジで眠いなあ……
【む?相当疲れているようじゃな。ワシは待って居るからお前さんが起きてから話をしよう!ではな!よく休め!】
かっかっと笑う少女。なんとまぁ豪快とでも言うのか、勝手に俺の家の物を食われているけどなんかしょうがないなあと思えてくるから不思議だ
【む?あの娘……】
心眼が何かを感じ取ったみたいだけど、正直眠すぎるので今聞いても判らない……
「じゃあ後で……」
【うむ!】
なんか普通に馴染んでいる少女に首を傾げながら、俺は自分の部屋に戻り眠りに落ちるのだった……
欠伸をしながら歩いて行った青い服を纏った小僧を見つめていると
「みーむう!」
「うきゃーっ!」
毛玉のような生き物がワシに爪を向ける。言葉を喋る事は出来ないが、その態度を見れば判る。あの小僧を攻撃すると言うのなら自分達が相手になるぞ!と言っているのだと
【安心するが良い、ワシはあの小僧に敵対するつもりはない】
宿と飯を無償で用意してくれた相手に敵対するつもりは無いし、攻撃するつもりも無い。だから安心せよと言うと
「グルルル」
【うむ、それは保障せん!】
あの毛玉とはベクトルの違う敵意を見せてくる狐にそう言う。あの態度を見れば判る、あれは自分の物に手を出すなと言う女としての反応。だからそれについては保障しないと言うと飛び掛ってきた狐。それを反射的に掴んで後ろにぽいっと投げ捨てる
「コーン!?」
「みむう!?」
「うきゅー!?」
投げ飛ばされた狐を心配している毛玉2匹に軽く投げたから大丈夫じゃと声を掛け、奇妙な四角い箱に視線を向ける
『新宿方面からゾンビが現れ、人間を襲い血を吸うという事件が発生しています』
……間違いない奴だ。ワシはあれを倒す為にこうして現世へと戻ったのだ、なんとしてもこのワシの手で討ち取らねば
(しかし、今のワシにそれだけの力があるか……)
こうして意識を取り戻すことは出来たが、霊力は殆ど残っていない。仮に回復するまで待つとしてもどれだけ時間としての猶予があるかも判らない……2、3日あれば回復すると思うが、果たしてそれだけの時間があるじゃろうか?
『なお当カメラマンがその姿を映しましたが、不審な人物の目撃情報が多発しており、その人物は自分のことを織田信長と名乗りゾンビを操っている点から、この事件になんらかの関係があると思われます』
その箱に一瞬映った男の姿を見た瞬間。怒りで目の前が真っ赤に染まる……
「みーむう……」
怯えの混じった毛玉の声に我に返る。背後から現れかけている物を見て
【いかんいかん、こんな所で霊力を使っては】
具現しかけたそれを霊力に戻し、やたらふかふかと柔らかい椅子のようなものに腰掛け
【くああ……ワシも寝る。お前達の主人が起きたら起こしてくれ】
霊力を少しでも回復させるために今は睡眠と食事が大事だ。毛玉2匹にそう声を掛け、ワシは目を閉じ眠りに落ちるのだった……
「寝てるなー?起こした方がいいのかな?」
「みむ?」
「うきゅー」
「ぐるう」
毛玉の鳴き声と小僧の声が聞こえてうっすらと目を開く
「あ、起きた?大丈夫?どこか調子悪い?」
心配そうに尋ねて来る小僧。勝手に物を食べて、好き勝手やっているワシを心配してくれるとは、生粋のお人好しじゃな。こういう善人が悪い奴に騙されて痛い目を見るが
「みむむー?」
「うきゅ?」
「グルルル」
この毛玉達やあの額当てに浮かんでいる目がそれを警戒し、この小僧を守っているのだと理解する
(猿に似ていると思ったが、それ以上かも知れん)
猿は人間に好かれていたが、この小僧は動物や怪異に好かれるのかも知れぬな
【うむ、問題ない。大分調子はいい】
本来の霊力には程遠いが、十分動けるだけの霊力は回復した
「そっか、それなら良いけど……」
幽霊だからそもそも調子が悪くなることなんて無いんじゃがなと心の中で呟いていると
「それで君の名前は?」
名前か……うーむむ、これは少し考えるなあ……うーむ
【ノッブ!ノッブじゃ!ノッブと呼んでくれ】
「ノッブちゃん?」
首を傾げる小僧にそれで構わないと返事をしてから、小僧を指差して
「お前の名前は?」
ワシがそう尋ねると小僧は毛玉を抱き抱えて笑いながら
「横島忠夫だ。んでこれがチビ、これがモグラちゃん、んでタマモと心眼」
毛玉の名前が判明した所で額当てを見て
【心眼?】
そ、心眼と笑う横島。もしやこの男は悪魔祓い師なのじゃろうか?もしそうならばぜひ力を貸して貰いたい所じゃが
【主殿、その幽霊……もしや】
横島のポケットから球体が飛び出し、ワシの正体を言おうとするので咄嗟にシーッ!シーっ!と口元に指を当てる。ワシも感じ取った、あの球体の中に居る何かはワシと同じ存在じゃと、だが今はそれを知られるわけには行かないので黙っててくれと言うとその球体は私の気のせいでしたといってポケットの中に戻った。ふ、ふう。危ないところじゃった……
「……横島?時間は大丈夫か?それとその幽霊も起きたのか」
む?なんじゃあの口の悪い童は……だけど凄まじい威圧感を感じるので、今敵対するのは無謀だと思い黙る
「シズク起きたのか、良かった。心配してたんだぞ」
その童に駆け寄って安心したと笑う横島。よほど心配していたのか、その顔に安堵の色が浮かんでいる。暫く話をした後時計を見た小僧が慌てて荷物を鞄に詰め込みながら
「あ、そうやな。早く美神さんの所に行かないと、ノスフェラトウの事で話をしないと」
ノスフェラトウ!何とかしてノスフェラトウと戦わせる流れに持って行こうと思っていたのにどうも最初から戦うつもりだったと言うのなら都合がいい
【ワシも行く!ワシも連れて行け!】
ええ?って困惑する横島に嫌だと言ってもついて行くからな!と言うと顔色の悪い童が
「……役に立つかもしれない。連れて行ってもいいと思うぞ」
まさかの支援に驚いたが、こうして見ているとこの童も見た目通りの存在ではないとわかり、ワシの正体にも気付いているからこその連れて行くといいと言ってくれたんじゃと理解する。
「シズクがそう言うのなら、一緒に行こうか?チビ達は留守番だぞ?危ないからな」
ちゃんとチビに留守番するように言う横島は童の手を取ってからワシの方を見て行こうと声を掛けてくる
【うむ、よろしく頼むぞ】
善人の横島を利用するようで良い気分ではないが、ノスフェラトウを討ち取る為にワシはこうして現界した。その目的を果たす、それだけを考えて横島の師匠が待つと言う場所に向かうのだった……
私が指定した集合時間の5分前に横島君がシズクと共にやって来たんだけど……
「横島?その隣の何?」
蛍ちゃんが引き攣った顔で尋ねる。何故ならば
【うむ!これは美味じゃ!】
メロンパンをむしゃむしゃ食べてる幽霊の少女と一緒だったからだ……幽霊をつれてくるのは何となく判る。横島君は人外の遭遇率が高いから、でも幽霊のほうに問題がある。なんで普通に物を食べてるの?
「美神さん。幽霊って物食べれましたっけ?なんか家に帰ったらカップラーメンとか食い荒らしてたんですけど、この子」
……なんでそんな幽霊を普通に連れて来たんだろうか?
「……よ、横島君?落ち着いて、その幽霊の子と出会った経緯を教えてくれないか?」
唐巣先生が引き攣った表情で横島君にそう尋ねながら、小声で私に
(美神君。あの幽霊の子を霊視して見るといい、桁違いの霊格の持ち主だ)
そう言われて注意してその少女を霊視してみる。するとその少女の外見からは想像出来ないほどの莫大な霊力を持ち合わせていた。これは人間霊ってレベルじゃない、人間よりも上位の神や精霊に属する存在だ
「えーっとノスフェラトウの除霊の前に倒れてるこの子を見つけて、家に連れて帰りました」
なんでそこで連れて帰るって選択肢が出てくるのか?その発想になる理由が私には判らない
【なんで幽霊の子を拾ってくるんですか!?そう言う子を拾ってくるなら私を家に置いてください!】
「なんでやねん」
思わず横島君が突っ込みを入れている。おキヌちゃんもなんか色々と壊れてるわね
(美神さん……あの幽霊の子……なんかどことなく義経に似てません?)
蛍ちゃんも霊視をしたのか、額に汗を浮かべて尋ねて来る。確かに……外見が似ているわけじゃないけど、雰囲気が似ている気がする
る気がする
【うむ、とても美味じゃった。横島、今度は生クリーム入りを買ってくれい】
普通にメロンパンを食べ終えて次のメロンパンの注文をしている幽霊の少女
「後でね?今はそんなことをしている場合じゃないからノッブちゃん」
ノッブと呼ばれた少女はうむと頷き、私達を見据える。血のように紅い目がジッと私達を値踏みしているように見える
【気軽にノッブとでも呼んでくれい。ちとノスフェラトウには浅からぬ因縁があるんでな、ワシも同行させてもらうぞ】
ノスフェラトウと因縁があり、人間霊よりも上位の存在に昇華している幽霊のノッブ……
(なーんか、今回もきな臭くなってきたわね)
まさか今回もガープとかが絡んでいるんじゃないでしょうね……普通こんな高位の存在がなんの媒介も無く具現化出来るわけが無い……ノスフェラトウだけでも相当不味いと言うのにガープも絡んでくるんじゃ手の打ち様がなくなるんだけど
【プクー】
「ああ、おキヌちゃん。俺は別におキヌちゃんを蔑ろにしてる訳じゃないんだ」
ノッブが近くに居るせいで頬を膨らませて、いかにも怒ってますとアピールしているおキヌちゃんを宥めている横島君を見て溜息を吐きながら
「GS協会に急ぎましょう。ゾンビの出現情報が多くなって来ているから早い内に対策を取らないと」
今はそんなことをしている場合じゃない、朝の電話でGSを琉璃が呼び戻して防衛しているのでそこまで被害は出ていないが、時間と共にもっとゾンビの数が増えてくると数の差でやられる。拮抗している今の内に作戦を決めましょうと声を掛け、私達はGS協会へと向かうのだった……
外伝リポート 外史からの来訪者 その5へ続く
次回は対策会議やノスフェラトウの視点で書いていこうと思っています。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします