留学生は侵略者!? メフィラス星人現る!   作:あじめし

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第36話「異次元王の降臨」その1

 

「おーっほほほほ! そのまま人間の戦闘機を落としてしまいなさい!」

 

 “星間連合”の宇宙艦隊を指揮するのは、ババルウ星人の腹心ボーグ星人である。彼女はかん高い嗤い声をあげながら、艦長席から立ち上がった。

 

「ババルウ様の言いつけは絶対よっ! 一刻も早く地球に侵攻を――」

「艦長!右翼駆逐艦が撃沈されました!」

 

 オペレーターの宇宙人の報告に、ボーグ星人はヒステリックにわめいた。

 

「人間の分際でっ!!」

「更にもう2隻の撃沈……これは、う、ウルトラマンですっ!!」

「何ですって!!」

 

 ボーグ星人が管制室前方のフロントガラスにずかずかと近づいた。

 

「宇宙警備隊……もう来たのね!!!」

 

 ボーグ星人が乗る中央戦艦から遥か離れた場所に“彼”は居た。

 

「サクシウム光線!!」

 

 黒い宇宙に、青い光線が煌めいた。

 その一条の光は巨大戦艦を貫き、爆炎の中に消し去った。

 そう、彼の名は―――ウルトラマンエイティ!

 

「まだまだ切りは無いが……負けられん!」

 

 エイティは、迫る弾幕と小型戦闘機を華麗に避けながら、残りの巨大艦隊に真っ向勝負を挑むのだった。

 

 

 

 一方の地上。フェニックスネストが複数の超獣によって撃沈された時、セイヴァーミラージュに2人の人物が監視網をすり抜けて潜入していた。

 

「下がってください。電子ロックを解除します」

 

 GUYS・JAPAN初期対応班のヒロ=ワタベがドアの施錠を解除し、扉が開かれた。

 

「隊長!!」

 

 拘束されていたカオル=ホユイ隊員が嬉しげな声を上げた。

 開かれた扉の向こうには、CREW・GUYS隊長の星川聖良の姿があった。

 

「GUYS,sally go!」

 

 星川の言葉に、隊員たちは一斉に頷く。

 

「GIG!」

 

 人間、そして光の戦士たち―――地球を護る者たちの戦いが、始まろうとしていた。

 

 

 

 

   第36話「異次元王の降臨」

 

              暴君 マグマ星人

              極悪宇宙人 テンペラ―星人

              暗黒星人 ババルウ星人

              異次元王 ヤプールキング

 

                           登場

 

 

 アメリカ・NYから沙流学園に帰還していた雪宮悠氷の眼前には、異様な光景が広がっていた。

 普段、生徒たちは教室で黒板に向かって鉛筆を走らせている時間であるはずなのに、学園内の秩序は崩壊していた。

 学園内では生徒間のいさかいが絶えず起こっており、それをいさめるはずの教員たちは一人も残っていなかった。

もちろん生徒たちにも少なからず、学園を出た者も居た。しかし市街地で起こっているパニックに巻き込まれるのを避け、多くの生徒が学園内に籠る羽目になっていた。

 雪宮は職員室に入り、備え付けのテレビの電源を入れた。全てのチャンネルで沙流市を中心に起こっているパニックについて報道していた。他人同士が突然喧嘩をはじめ、殆どの人々が仕事を放棄し、都市機能は麻痺している状況だと報道されている。

 

「あれ……剣道部の雪宮センパイ、ですよね?」

 

 雪宮が振り向いた先、職員室の出入り口の扉が開かれた。

おずおずと顔を出したのは、長瀬唯だった。

 

「私、長瀬唯っていいます。1年生です」

「あなた、おかしくなって無い?」

「おかしくって、皆みたいにイライラして、乱暴になることを言ってるんですか?何か知ってるんですか!?」

 

 唯はすがるような表情で、雪宮に駆け寄った。30分ほど前に生徒間の乱闘騒ぎに巻き込まれていた彼女は、足の所々に青あざを作っており、右の頬は若干赤く腫れていた。

 

「私は何も知らない。でも、誰のせいでこうなったかは、分かる気がする」

「それって――」

 

 付けっぱなしになっていたテレビの映像が、急に切り替わった。

 

「メフィラス星人」

 

 雪宮がそう口走ったのを聞き、唯もテレビ映像を見た。メフィラス星人はソルの敗北を知らせ、自らがこの地球を守ると発言していた。

 唯はその言葉に驚いたものの、すぐに怒り交じりの険しい表情を浮かべた。

 

「ソルが、そう簡単に負けるなんて信じられないもん!」

 

 唯は画面に向かってふん、と鼻をならした。

 

「この宇宙人が悪者だと思います。雪宮センパイはどう――あ、ちょっと待って下さい、電話が……もしもし!?リュールくん?!」

 

 唯は電話の相手に、自分たちの居場所を教えた。10分程経ち、電話の主だったリュールが息を切らせて入って来た。

 

「唯ねーちゃん! 大丈夫だった!?」

「リュールくんこそ!」

 

 2人は互いに、小さな身体を抱きしめ合った。

 

「唯ねーちゃん、アヤねーちゃんたち、帰って来てないよね…?」

「うん、2年生は修学旅行でアメリカだから……」

「そっか……。唯ねーちゃんは、これからどうするの? おうちに帰るの?」

「ううん、途中何が起こるか分かんないから、ここに隠れてようと思う。リュールくんは?」

「アヤねーちゃんたちのこと、迎えに行きたい……!」

 

 リュールの幼い眼には、確固たる意志が燃え上がっていた。

 

「……彼らが帰ってくるとしたら、駅」

 

 雪宮は、剣道部顧問教員の机に立てかけてある竹刀を手に取り、出入り口に向かって歩き出した。

 

「ついて来て」

「むむむ! 雪宮センパイだけに良いカッコさせませんよっ!」

 

 唯は非常用のヘルメットを被り、もう1つをリュールに被せてその手を取った。

 

「逢夜乃センパイたちを迎えに行こう!リュールくん!」

「う、うん!」

 

 彼ら3人は縦1列に並び、足早に廊下を進んだ。ガラスの割れる音、怒声、すすり泣く声、非日常的な音が唯の心を不安にさせたが、それでも彼女は歩みを止めなかった。

 

「止まって」

 

 雪宮が足を止めた。

 その瞬間、何かが割れるようなばりばりという音が、空気を揺らした。

 そして巨大な地響きと揺れが襲い来る。雪宮は後ろの2人を地面に伏せさせた。地震によって廊下のガラスが一斉に割れ、その破片が3人の頭に降り注いだ。

 揺れが小さくなったのを見計らい、雪宮は窓枠から外の様子を確認した。

 

「空が……割れている」

 

 穏やかな青空に巨大な“穴”が開いていた。そこからは巨大怪獣が次々に投下されていた。

 そのさらに奥には、まるで“神殿”を思わせる古めかしい建造物があり、そこにうごめく黒い人影たちを、雪宮は視認していた。

 

「か、怪獣なの!?」

 

 雪宮と同じように立ち上がって外を見たリュール、そして唯も、その絶望的な光景に目を奪われていた。

 

「み、見てください! あれ、逢夜乃センパイ達じゃないですか!?」

 

 唯が指差した先、100メートル近く離れた場所、怪獣の出現によって崩れた建物の影から、逢夜乃と草津、そして早坂と樫尾が姿を見せていた。

 そこに迫るように、無数の黒い人影が行進していた。明らかに人間には見えない彼らは、空が割れた裂け目から次々と降下してきている。

 このままでは、4人は宇宙人たちと遭遇してしまう。

 

「……私が囮。あの4人と一緒に逃げて」

 

 雪宮は竹刀を捨て、窓枠から飛び出した。

 そして走り出し、黒い宇宙人たちに向かって氷の弾丸を放った。

 彼らの行進が止まり、彼らの視線は雪宮に集まった。

 そして雪宮は氷の刃を握りしめ、一団との戦闘を開始した。

 

「……唯ねーちゃん、アヤねーちゃんたちを助けよう」

「リュールくん!?」

 

 リュールも外に出て、天に向かって右腕を挙げた。

 

「白銀の鱗纏いし龍よ、碧き眼の眼光を悪しきものに向け我を守護せよ!」

 

 空から一筋の青い光が差し込む。その光に導かれるように、白いドラゴンが天から舞い降りた。

 

「唯ねーちゃん! 行こう!」

「あ、え、うん!」

 

 2人を背に乗せたドラゴンは、低空を保ちながら逢夜乃たち4人に向かって飛翔した。

 

 

―――その2に続く


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