留学生は侵略者!? メフィラス星人現る!   作:あじめし

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第3話「その名はソル」 その3

 謎の宇宙人との接触から1週間がたった。

 その間、私はこれまで地球に攻めてきた宇宙人についてのデータを集めたり、周辺の捜索をしたりなどもした。しかし手掛かりを見つけることは出来なかった。何度か小さなエネルギー反応も感知したが、どれも一瞬で消えてしまって追うことが出来ないでいた。

 だからといって何か日常に変化があるかといえば、何もない。

 唯一変ったことがあったとすれば……

 

「今日もお休みですか…」

 

 杏城は、空いた零洸の席を見て不安げに呟いた。

 

「一体どうしたのだろうな。逢夜乃もこんなに心配しているというのに」

 

 杏城は、草津が頭に触れようとしたのを優雅に避け、言葉を続けた。

 

「あの、草津さん一ついいですか?」

「いいだろう」

「最近わたくしのことを下の名前でお呼びしますけど、なにか心境の変化ですか?」

「もしかして嫌だったか? だとしたら済まなかった」

「い、いえ! 別に嫌ではありませんけど……」

「そうか!! 感激しているのか!! いやぁ、嬉しいぞ」

「そ、そこまで言ってませんのに!」

「ははは照れるな照れるな!! 愛美も構わんか?」

「どーぞ勝手にすればー」

 

 早馴はつまらなさそうに文庫本を読んでいたが、やがてため息と共にそれを閉じた。

 

「元気がありませんね、早馴さん」

「草津の相手すると、なんだか胃もたれすんの」

 

 早馴はあまり私に目を合わさずにそう言った。

 やはり先週から気になっていたのだが、私は早馴に、心なしか避けられている気がする。原因は全く分からないが。

 

「草津さんのことは置いといて、心配じゃありません? 零洸さん」

 

 再び杏城が零洸の話題に戻した。

 ここ1週間、零洸は2回しか登校してこなかった。担任によれば家庭の事情ということだが。

 

「ご病気か何か、でしょうか」

「そう案ずるな、逢夜乃。零洸の欠席、遅刻、早退の多さは前と変わっていないだろう?」

 

 草津の言葉に、杏城も苦笑いを隠せなかった。

 最近聞いたことだが、零洸は何かと学園を休むことが多いらしい。(それでよく学級委員が務まるものだが)

 しかし見た感じは、彼女は決して不良少女には見えない。恐らく何か別の理由があるのだろう。

 

「あのさ」

 

 唐突に、早馴が私に声をかけてきた。

 

「何でしょう?」

「この前――」

 

 早馴の言葉を切る様に、上着のポケットに入れていたスマートフォンが鳴りだした。

 画面には『巨大エネルギー反応感知。場所ハ沙流市近郊廃工場内』という文字が並んでいる。

 地球では感知できないような特別なエネルギーが発生した時、円盤の装置からスマートフォンへの通信で知らせるプログラムである。こうも早く引っ掛かるとは。

 

「……すみません皆さん。家庭の事情で早退しますので先生によろしくお伝えください」

「え、ちょっとお待ちに――」

 

 杏城の声を無視して、私は教室を飛び出した。

 場所は近い。今から向かえば何か分かるかもしれない。

 

 

 

 

 

「そっちに行ったぞ、香織(カオル)

「分かってる!」

 

 急いで駆け付けた甲斐があった。

 廃工場周辺ではGUY隊員たちと何者かの戦闘が繰り広げられていた。私はその光景を少し離れた機材の山積みの陰から窺っている。私の目の前には、男女の隊員が銃を構えて何者かを追っていた。

 

「隊長、こちらブイレ。ターゲットを捕縛用電磁ネット発動地点まで誘導」

 

 どうやら追われていた者はGUYSの罠にはまったらしい。

 その時、工場内から青い光が見えた。

 

「やったね」

「ああ。奴もさすがに身動きが取れなくなっただろう。GUYSの基地に乗り込んで来るようなヤツにしては、大したことなかったな」

「こちら帆夕依 香織(ホユイ カオル)。日向隊長、B班は――」

 

 その時、唸るような地響きが足元からやって来た。

 

「これは!?」

 

 男の隊員が、女の方を支えながら、周辺を見回した。

 

「あれ見てっ!」

 

 女隊員が指さす先、ここから遥か離れた森林地帯に突如巨大な鋼鉄ロボットが現れた。

 

「キングジョー!? でも黒いよ!?」

 

 奴はただのキングジョーではない。かつてウルトラセブンと対決し、苦しめたという宇宙ロボットの後継機――キングジョー“ブラック”である。

 

「くそっ! GUYSのレーダーが見逃したってのか?」

「ふはははは。ブラックのステルス性能を舐めるな!!」

 

 工場の壁が爆破され、その粉塵の中から宇宙服の男が現れた。

 キングジョーの姿を見た瞬間、すぐに奴の名前が思い浮かんだ。

 奴――早馴と杏城の前に現れた宇宙人――は、かつて地球でウルトラセブンに敗れた“ペダン星人”だったのだ。

 

「てめぇ、電磁ネットを抜け出たのか!」

「あの程度では俺を止められん。ふんっ!」

 

 銃を構えた男の隊員の腕を、ペダン星人のビーム銃から放たれた光線がかすめた。

 

「人間ども、我々の科学力を見せてやる。キングジョーブラックよ! 街を焼き払え!!」

 

 その時、キングジョーブラックの前に白い光が煌く。

 

「ソル! 来てくれたのね!」

 

 女の隊員が天を仰いで声を上げた。

 キングジョーの正面に立つ“奴”の姿は、私も直に目にするのは初めてだった。

 線は細く、女性の身体つきだった。銀色の肌に覆われた彼女は儚げな光を放つが、弱々しさは微塵も感じられない。むしろ経験の豊富さと強さを身に纏わせていた。

 あれこそ、ウルトラマンメビウスに代わりこの地球を護っている光の戦士“ソル”である。

 私の倒すべき敵であり、地球侵略における最大の障害だ。

 

「ソルめ、やはり現れたか! 俺が直接血祭りにあげてやる!」

 

 ペダン星人は強烈な閃光弾と共に姿を消した。

 私もこの場には用は無い。隊員たちに気付かれぬよう、そっとその場から去った。

 

 

―――その4に続く

 


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