留学生は侵略者!? メフィラス星人現る!   作:あじめし

7 / 167
第3話「その名はソル」 その1

 謎の宇宙人から走って逃げてきた私たちは、とりあえず私の家にやって来た。

 早馴も杏城も、息も絶え絶えという状態で――

 

「って、どうしてレオルトンさんのお家にやって来ましたの! ごほっ、ごほっ」

 

 呼吸でさえ辛い状態で突然大声を出した杏城は、その苦しさにせき込み始めた。

 

「はぁ、はぁ……逢夜乃、ちょっとうるさい」

「そんな、はぁ……場合じゃありませんわ」

 

 私のベッドに倒れ込んでいる早馴に対し、杏城は半ばあきれた表情を浮かべていた。

 

「それより愛美さん。そんな風にレオルトンさんのベッドに寝転んだら失礼ですわよ」

「そんなのどーでも――」

 

 早馴は突如、むくりと起き上がった。そして、まじまじと自分が先程まで寝ていた場所を見つめ、その端に置いてある私の枕を手に取った。

 

「……へ、ヘンタイ!!」

 

 枕は私の顔面に投げつけられた。

 

「ど、どどどうしてアンタのベッドに寝させられてるの!? って、ここアンタの家じゃない!!」

「近くでしたから。それに早馴さんは自ら横になりましたよ」

「そういう問題じゃないもんっ!逢夜乃、帰ろっ」

「あ、え、ええ。レオルトンさん、この度は助けていただいてありがとうございました」

 

 玄関で靴を履いている早馴を尻目に、逢夜乃は丁寧に一礼をした。

 

「お二人がご無事なら良いのです。しかしこのままお二人で帰るのは危険に思われますが」

「確かにそうですわね」

「私が送りましょう」

「それはありがたいですけど、レオルトンさんはよろしいの?」

「もちろん」

「じゃあお願いしますわ」

 

 杏城はにこりと笑ってそう言ったが、早馴は未だにご機嫌斜めだった。

 その後、私たち3人は早馴の家へと向かった。私の家とあまり変わらない大きさのアパートメントだった。早馴の計らいで、今夜杏城は早馴の家に泊まることになった。どうやら2人とも今夜は家に1人らしく、それならばいっそ一緒に一夜を越そうと決めたらしい。

 

「わざわざありがとうございました、レオルトンさん」

「いいえ。では、今夜は戸締りに気を付けて、また明日お会いしましょう」

「ええ。ほら、愛美さんもお礼言いましょう?」

「……ありがと」

 

 早馴はしぶしぶながら、しかし何故か照れくさそうにそう言った。

 私はそっと、早馴の部屋の扉を閉めた。

 周りに敵の気配はなかった。

 

 

 

 

第3話「その名はソル」

 

 

策略星人 ぺダン星人

宇宙ロボット キングジョーブラック試作型

                     登場

 

 

 

 問題は2つ。

 まずGUYS本部での襲撃、その後市街地で早馴と杏城を襲った犯人の正体。

 そしてもう一つは、その襲撃者から私たち3人を守った「女子制服姿」の何者かの正体。

 確実に分かることは、襲撃者は宇宙人であることだ。あんな宇宙服のような格好の人間犯罪者がいるとは、常識的に考えにくい。

 だがもう1人。おそらくこの学園に通うある女子生徒も、その宇宙人に対抗できる強さを持つ特別な存在だ。

 宇宙人から人間を守る――そんなことができるのは“奴”だけだ。

 

「おはよ」

 

 思考中の私に声をかけたのは、早馴だった。彼女はいつもより少し早い時間に登校してきた。おそらく杏城と一緒に登校したからであろう。

 

「昨日は大丈夫でしたか?」

「あー、うん」

「それは良かった。杏城さんは?」

「一緒に来たけど、職員室寄ってから来るって」

 

 彼女の返事はどこかそっけなかった。やはり昨日の私の部屋での一件を引きずっているのだろうか。

 

「あの、昨日は申し訳ありませんでした」

「え?」

「部屋に連れ込んでしまったことです」

「部屋に連れ込んだだとォ!?」

 

 背後から野太い驚嘆の声が聞こえた。

 

「樫尾さん、おはようございます」

「樫尾さん、おはよ」

「お、おう」

 

 樫尾は訝しげに私と早馴の顔を見比べた。

 

「レオルトン……お前、愛美を家に連れ込んだって本当か?」

「連れ込んだというのはいささか語弊があります。昨日不審者に襲われて、一旦私の部屋に避難しただけです。杏城さんもご一緒でした。ですよね、早馴さん」

 

 何故か言い訳がましい口調になってしまったが、事実は事実だ。

 

「うん。誤解させてごめんね、樫尾さん」

「いや、俺の方こそ悪かったな。ところでレオルトン、お前に伝言があるんだ」

「何でしょうか」

「昨日だったか。草津に連れられて部活乱入をしただろう?」

「まずかったですか」

「いや、そいつをどうこう言うつもりはねェ。ただな、昨日回ってない部活があっただろ?」

「そういえば、剣道部には行きませんでしたね。さすがに入りにくかったので」

「その剣道部の顧問の先生がな、ぜひお前に来てほしいと言ってるそうだぜ」

「自分に剣道部に入れと?」

「そこまでかどうかは知らん。まぁ、行くだけ行ってみろや。さすがに強制はしないだろうよ」

 

……これは面倒なことになってきたぞ。

 

 

―――その2に続く


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。