留学生は侵略者!? メフィラス星人現る!   作:あじめし

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投稿が遅れてすみません…!


第21話「まだ見ぬ勇姿」(前編)

 私は自宅に帰るなり、大きなため息をついた。

 非常に疲れた一日であった。結局私は、早坂冥奈の代わりに早坂(弟)に事情を説明するはめになった。早坂は、私と早馴に謝りつつも「帰ったら姉さんにがつんと言わなくちゃ!」と息巻いていた。

 私は制服のポケットからスマートフォンを取り出し、机に置いた。それから、充電器にセットしてあったタブレット端末を手に取る。

 外出時の情報収集のため、市販のタブレット端末をモデルに自作したミニコンピュータである。隠してある“円盤”のコンピュータとリンクできる優れものだ。今まで使っていたスマートフォンよりも高スペックで、かつ操作性の良い品だ。私は早速電源を入れ――

 

ピピピピ

 

 スマートフォンに着信が入った。知らない番号である。

 

「もしもし」

『レオルトン君。私よ、冥奈よ』

「……何故私の番号を?」

『樫尾君から聞いたの』

 

 どいつもこいつも……私の個人情報をなんだと思っているのか。

 

「ご用件は」

『ねぇレオルトン君。私の所でアルバイトしない?』

「アルバイト、ですか」

『そうよ。私、沙流市のはずれにある研究所で働いているのだけど、今お手伝いが欲しかったのよ。君って賢そうだから、お願いしたいのよ』

 

 アルバイトか。高校生ならしていてもおかしくないし、ある意味良い経験になるかもしれないな。

 それに研究所というのが、興味深い。私は先ほどのタブレットで、彼女の話す研究所を調べてみた。コンピュータ関連の研究機関で、日本でも相当高い水準の研究を行っているらしい。

 

『週一回、放課後に来てもらえれば良いのだけれど』

「私で良ければ、ぜひ」

『助かるわ。私の目にかなう人がなかなか居なかったのよ。君、誇ってもいいと思う』

「それはどうも」

『明日の放課後に迎えに行くから、校門で待ち合わせましょう。それじゃ、失礼するわ』

 

 私はスマートフォンを置いた。

 早坂冥奈と関わるのは面倒だが、人間の科学水準を見定める良い機会である。新規導入端末のグレードアップに繋がる情報が得られると喜ばしい。

 

 

 

   第21話「まだ見ぬ勇姿」

 

              侵略星人 ジャダン

              冷凍星人 グロルーラ

                          登場

 

 

 

「こんにちは、レオルトン君」

 

 次の日の放課後に校門にやって来ると、既に早坂冥奈が待っていた。

 

「お待たせしました」

「問題ないわ。このまま直接研究所に向かうけど、良いかしら?」

「大丈夫です」

「じゃあ乗って」

 

 私は、白いオープンカーの助手席に乗り込んだ。学園から出てくる生徒たちが次々と視線を向けてくる。どうやら目立ってしまったようだ。

 そして車はゆっくりと動きだし、市街地から遠ざかるごとにスピードを増していった。

 

「冥奈さんは、コンピュータの研究をなさっているのですか?」

「そうよ。今は人工知能の研究の真っ最中でね。大量のデータの入力をしなければならないから、人手が欲しいってわけ」

「なるほど。しかし部外者の私が、大事な研究データに触れても問題ないのですか?」

「いいのよ。その解析は私しかできないもの」

 

 それから彼女は、自分からは何も話そうとはしなかった。心なしか、昨日に比べると大人しく見える。

 その後10分程経ち、彼女が在籍する研究所が見えてきた。周りを森に囲まれているものの、建物自体は非常に現代的な外観である。

 早坂冥奈は駐車場に車を停めた。私たちは2階の荷物検査と金属探知機のチェックを済ませ、ようやく建物の中に入った。

 

「君、なんだか楽しそうね」

「そうですか? まぁ、研究所というものに入るのは初めてですからね」

 

 グレーのリノリウムが貼られた床に白い壁――というものを想像していたが、実際は一般的なオフィスビルと変わらないような内装だった。彼女は何人かの所員と挨拶を交わした後「第一研究室長室」という立札のかかった部屋に通された。

 

「ここが私のオフィス。研究スペースにはそこの扉から入れるけど、君は入れないわ。ごめんね。お仕事はこの部屋でやってもらいます」

「承知しました」

「さて、まずは本題に入ろうかしら」

 

 彼女は、私に応接用のソファーを勧めた後、自分のデスクに座った。

 

「本題。お仕事のことですか」

「違うわ。ゆっきーのことよ」

 

 数秒間、私たちの間に沈黙が訪れた。

 と言うよりは、私が反応に困っただけであった。

 

「……之道くんが、どうかしましたか?」

「どうしたもこうしたも、あの子はこのままじゃダメになってしまうわ!」

 

 早坂冥奈は自分の額を両手で押さえながら、あーとか、うーとか声を上げていた。

 

「前にも言ったけれど、あの子は自分より強い女性に魅力感じるようなのよ。けれど、それではいつまで経ってもあの子は成長できないわ!」

「雪宮さんのことを、諦めさせるということですか?」

「端的に言えば、ね」

 

 少々お節介すぎる気もするし、第一本当に早坂が雪宮に惹かれているかも、私は確信を持ってはいない。

 

「そこで君にお願いがあるのよ。ゆっきーのこと、説得してもらえないかしら?」

「私から、ですか?」

「そうよ。あの年頃じゃ、お姉様の言うことになんて反発するに決まっているわ」

「お言葉ですが、弟さんの好きな人ぐらい、自由にさせてあげれば良いのでは?」

 

 少なくとも、私は自分の配偶者を他人に決めさせたいとは考えられない。そもそも配偶者自体必要ないのだが。

 

「ふん、若いのによく言うわね。取りあえず、仕事でもしながら色々考えてみてごらんなさい」

 

 彼女は数枚の書類を私に差し出し、何か聞きたいことがあれば電話をしろと言った。そして自らは、研究スペースへ通じる扉の向こうへ消えた。

 それから1時間。私はコンピュータの前に構え、書類に記された通りの作業を続けていた。初のアルバイト経験と考えて興味が沸いたが、今となっては単調な作業に飽き飽きしてしまった。既に殆どのノルマをこなし、部屋の端にあったサーバーで淹れたコーヒーを飲んでいる。

 あまりに暇だ。そうだ、このコンピュータを使って研究所のデータにアクセスしてみるか。

 その後の一時間は、私としては大変有意義な時間であった。特に関心を引いたのは、早坂冥奈が3日前に提出していたレポートである。それは数百年前、私がまだ故郷に居た頃、我が同胞の一部が確立した“生体スーパーコンピュータ”の先駆けとなった理論であった。人間の頭脳でそれを構築するとは、大したものだ。

 

「進捗はどう?」

 

 突如部屋に入って来た早坂冥奈が、皿にケーキをのせてやって来る。私は素早く画面を切り替えた。

 

「もうじき終わりそうです」

「お疲れ様。これ、同僚からの差し入れなのだけど――」

 

 突如、部屋の中の照明が消える。

 

「何、停電?」

 

 真っ暗の中、彼女は冷静な声を発していたが、やがて耳をつんざくような警報音が鳴り響いた。

 

『所内の皆様に連絡です。ただ今第3区画入口にて火災が――』

 

 警報と共に流れた放送も、そして騒がしい警報音も、ぷつりと途絶える。

 

「……ただの火災じゃないのかしら?」

 

 流石の早坂冥奈も、若干危機感を帯びた声色だった。

 

「レオルトン君、念の為避難を――」

「お手洗いへ行ってきます」

「ちょ、ちょっと!こんな時に何言ってるのよ!」

「すぐ戻ってきます。早坂さんはお先に」

 

 私は彼女の呼び声にも振り返らず、廊下へ続く扉を開け放った。廊下も同様に暗闇で、視力が人間のそれとは比べものにならない私でなければ、足元すら見えない。

 私は第3区画へ足を向けた。所内の地図は、先程コンピュータで調べたばかりだ。

 やがて目的地に近づくにつれ、複数の足音が聞こえる。靴音ではない、柔らかい足音である。

 私は第3区画へ通じる廊下の手前にある曲がり角から、その先の様子を窺った。

 

「やはり、か」

 

 私の視線の先では、異形の影がうごめいていた。豚に似た醜悪な顔を付けた2足歩行の宇宙人。しかし尻尾のせいで、明らかに人間ではないと一目で判る。彼らは廊下一杯にひしめいており、何やら話し込んでいた。

 

「ハヤサカメイナという女を探すのだ」

「そいつを捕まえ、宇宙船に戻るぞ」

「地球侵略に利用してやろう」

 

 直接見たことの無い種族だが……以前ガッツ星人の円盤から盗み出したデータの中に、彼らに関するものがあった。

 奴らの名はジャダン。遠い銀河で悪逆の限りを尽くした異星人である。奴らの狙いは…おそらくこの研究所の技術、中でも早坂冥奈の研究結果だろう。

 その時、彼らの一人が私の存在に気付き、鋭い目をこちらに向けた。

 光線銃の赤い閃光が瞬く。私は後退してかわすが、光を受けたコンクリートの壁には穴が開いた。

 

「誰かいるぞ!」

「殺せ!」

 

 そして同時に、大勢の足音がこちらに向かって近づいて来る。

 

「この蛮族どもめ」

 

 私は堂々と彼らの前に立ち、両手から光線を放つ。先鋒を務めていた2匹が撃たれ、倒れる。しかし後方の連中は、倒れた仲間を気遣うことなく歩を進める。

 私は彼らの銃撃を交わしながら後退し、途中の扉を開いた。その向こうは、広い空間が広がっている所員食堂である。

 追手たちは扉を破壊し、一気になだれ込んでくる。私はその瞬間を狙い、柱の影から何発も光線を撃ちこんだ。

 

「司令官、奴は人間ではありませんぜ! 光の戦士か?」

「関係ない! 殺せ!」

 

 30秒ほどの銃撃戦を経たが、一向にジャダンの数は減らない。このままではじり貧というやつだ。私は意を決し、左手にエネルギーを充填させる。それは鋭くとがった形を成し、エネルギーブレードとなった。

 そして一気にその場を飛び出し、銃撃を交わしながら奴らに向かって突進する。一番前で構えていたジャダンの喉元に、ブレードの先端を突き刺す。

 私はブレードを引き抜き、その後ろに立つジャダンにも斬撃を見舞う。奴の両手は斬り落とされ、重厚な光線銃が床に落ちた。

 

「っ!!」

 

 そこに、予想外の方向から何かが飛んでくる。私は寸でのところで、背後から飛んできたそれを避ける。飛来物は両手を失ったジャダンの額を貫いた。やがて飛来物は数を増し、数体のジャダンを死に至らしめた。

 私は目の端で、その方向にあるものを捉えた。

 

「お前は――」

「邪魔」

 

 凄まじい冷気と共に、人影がジャダンの一団に突っ込む。そして彼らをなぎ倒しながら、人影は踊るように食堂の窓際まで動いた。

 

「何故お前が、ここに居る……雪宮」

 

 窓から差し込んだ月明かりに照らされたのは、青く光る銀色の鎧を身にまとった雪宮、いやグロルーラだった。

 

 

 

―――後編に続く





今回のエピソードから、登場宇宙人・怪獣の解説を入れてみます!
毎回書きますので、読んで下さいね~


侵略星人 ジャダン

登場作品:ザ☆ウルトラマン

 ジョーニアスをきりきりまいさせる作戦を立て、エネルギーを補給させに撤退させるなど、侵略星人の呼び名通りの実力をもつ。
 ストーリー上ジャゴンや母艦との戦闘シーンはありませんでしたが、ソルとGUYSに戦わせたい相手でした。

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