留学生は侵略者!? メフィラス星人現る!   作:あじめし

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明けましておめでとうございます!突然の体調不良で投稿がずいぶん遅くなりました……すみません!
その代りボリュームたっぷりの最新話になりますので、ぜひお楽しみください!


外伝4話「囚われの地球」その1

 時刻は午前7時になろうとしていた。

 窓の無い“円盤”の中では、時計のデジタル数字だけが時間感覚を取り戻させる。

 約4時間、私はコンピューターの前に座っていた。その間にGUYS・NYの“UNION奪還作戦”が実行され、UNIONシステムの中枢AI『アレクシス』への強制アクセスが試行された。残念ながらAIがアクセスを拒否し、それを突破できずに終わった。

 しかもGUYSのアクセス元が感知されたことで、逆に『サテライトレーザー』の餌食になってしまった。発信元の地上基地は壊滅状態に陥っているという。

その間私は、UNIONシステムを奪還するためのプログラムを完成させていた。

 それはグリッドマンとの共闘の中で私が収集していた戦闘データを基にして作られている。草津と共に作った強化プログラム『ウルトラホーク』自体がコンピューターワールドで怪獣に対抗できたことから、人工プログラムであってもカーンデジファーに有効である可能性が高い。

もちろんグリッドマンが持つ特殊なエネルギーまでは再現できない。そのためコンピューターワールドの修正など、攻撃力以外の彼の力を再現することはできなかった。

 仮にこのプログラムを『アナザーグリッドマン』と名付ける。

 その名の通り、グリッドマンを模した人型のCGがモニター上で動いている。私がコンピューターワールドの怪獣をモデルに作った模擬戦用プログラムを、いとも簡単に撃滅していた。人工のウイルス駆除プログラムとしては、地球上で最強と言える。

 私は早速、GUYS奪還作戦の指揮を執る一人である星川聖良に連絡を取った。

 

「星川隊長。私に考えがあります」

『この番号、何故知っているの?』

「説明は後です。GUYSの回線はUNIONシステムに繋がっているかもしれませんから、一応」

 

 私は作戦の概要を伝えた。私が『アナザーグリッドマン』を放ちAI『アレクシス』を攻撃する。その混乱に乗じて実戦部隊が戦闘を仕掛け、無力化するのだ。

 

「しかし懸念点があります」

 

 それはスピードだ。

 グリッドマンと共闘していた場所が露見したように、敵との接触時間が長ければアクセス元が割れてしまう。私たちの居場所は、グリッドマンとの出会いから約2週間かかって割り出された。現在のようにGUYSの監視塔や衛星も活用すればもっと早くできるはず。実際GUYSの基地はたったの15分で攻撃された。

 つまり最小限の時間でUNIONシステムのAI『アレクシス』を掌握、もしくは破壊しなければならない。

 

「こちらは既に準備ができています。もしそちらの司令部で合意が取れれば、いつでも」

『承知したわ。でもレオルトン君』

 

 星川の口から“彼女”の名が発せられた。

 

「いえ、“彼女”は――」

 

 突然通話が不安定になり、星川からの返答が聞こえなくなった。もう宇宙に上がっているのだろうか。

 

「星川さ――」

『ふっはっはっはっは!!貴様がグリッドマンの正体か……レオルトンとやら!』

 

 突如、私のコンピューターに青黒い稲妻が走る。

 これはまさか……。

 

「お前がカーンデジファーですね」

『ふっはっは!良く分かったな』

 

 次の瞬間には、私の目の前のモニターが別の画面に切り替わる。

 黒いマントに赤い眼。機械仕掛けのような容貌の人物が、嗤いながら私を見据えていた。

 捕捉されたことは間違いない。しかしどこから露見した?星川との通話を傍受されただけでこの“円盤”にはたどり着けないはず。

 だとすれば、考えられることは――

 

「全て“見える”ようになったのか」

『何か察したようだが、もう遅いわ!貴様の企みは、全てお見通しだ……罰を与える!!』

 

 船内にけたたましい警報が鳴り響く。

 広域レーダーが高エネルギーを感知。

 危険を知らせる赤い光が、私の周囲を真っ赤に染め上げた。

 

『死ぬがいいっ!』

 

 警報と赤い警告灯が空間を支配する。

 しかし次に私が認識できたのは、視界を奪う程にまばゆい光だけであった。

 

 

 

 

   外伝4話「囚われの地球」

 

         電光超人 グリッドマン

         魔王カーンデジファー

         

                 登場

 

 

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 時刻は午前6時半。

 地球大気圏上は静かだった。

 しかし恐ろしい程の緊張感が漂っている。

 巨大戦艦『カーンスクアッド』は悠々と青い惑星の上を航行していた。現在は不気味なぐらい動きを見せていない。先の“UNION奪還作戦”時に『サテライトレーザー』が一度起動したきり、攻撃行動には出ていない。

 逆に言えば、誰も手を出せていないのだ。

 約4時間前――『UNIONシステム』が暴走した際、地上からの要請で包囲網を展開したGUYSスペーシーの部隊は全滅していた。AI『アレクシス』が操る『メシア』やその他の兵器による連携攻撃の前に、部隊はわずかな撃墜戦果を挙げただけで敗退したのだ。それは『UNIONシステム』の真骨頂である“AIコントロール下高度連携戦闘”を知らしめる機会になったと言わざるを得ない。

 一方の地上も、静かであることは変わらなかった。

 CREW・GUYS・JAPAN隊長の星川聖良は地上基地『セイヴァーミラージュ』の凄惨な状況を前にしていた。

 約4時間前に地下研究施設を飛び立った戦艦『カーンスクアッド』によって蹂躙された地上基地は、殆どの戦力を失っていた。主力であった戦闘機『メシア』は全機が乗っ取られていた。補助戦力としてのアロータイプやガンクルセイダーも、離陸した『カーンスクアッド』との戦闘で破壊され、その残骸は片づけられることも無かった。

 幾多の戦いに耐え抜いていた基地が、まさか自らの戦力で壊滅させられるとはだれが想像していただろうか。もちろん、ぼろぼろの滑走路に立っている星川も例外ではない。

 しかし彼女の“予感”によって為されたことが、基地の人員に希望を支えていたことも確かだ。

 

「あんたが隠してた“翼”整備が終わったぜ」

 

 職人というにふさわしい男性が、タオルで額を拭いながら星川に声をかけた。

 

「アライソ整備長、私は預かった機体を大切にしていただけです」

 

 翼に“ファイヤーシンボル”を宿したガンフェニックスとガンブースターは、地下格納庫で今も活躍の時を待っているのである。

 

「リュウの奴が赴任先に持って行ったと思ってたから連絡をもらった時は驚いたよ。“俺達の翼”の整備をお願いしますなんて言われたんだから」

「“砦”はなくしてしまいましたから、“翼”だけでも守らなくてはと思いまして」

「そんな風に思ってくれるあんたならって、あいつは置いていったんだろうな」

 

 彼は星川の背中を軽く叩いて、また作業現場に足を向けた。

 

「まっ、墜落させたら何言われるかわからんがな」

 

 軽口を残したアライソの後ろ姿を見送ってから、星川もその場を後にする。

 GUYS・NYの“UNION奪還作戦”が失敗してから、GUYSは沈黙している。平時からGUYSに不信感を持つ各国軍が奪還作戦を構想中だが、地上監視塔や人工衛星に何か動きを察知されれば宇宙から狙撃されてしまう。星川が立案したマケット怪獣によるAI『アレクシス』攻撃作戦はいまだ総本部から何の返答も無かった。

 

「まるでかごの鳥ね……」

 

 星川が司令部に戻ろうとした時、胸ポケットの中でプライベート携帯電話が振動した。非通知番号からの着信だが、躊躇なく出てみる。

 

「星川」

『星川隊長。私に考えがあります』

 

 ニル=レオルトンの声だった。

 

「この番号、何故知っているの?」

『説明は後です。GUYSの回線はUNIONシステムに繋がっているかもしれませんから、一応』

 

 かつて地球を侵略しようとしたが、結局は地球を滅びから救ってしまった彼。

 

「……聞かせてちょうだい」

 

 今の星川に迷いは無かった。

 ニルに聞かされた作戦は、非常にシンプルだった。だが人知を超える技術をもつメフィラス星人の作ったプログラムならば、AI『アレクシス』を止めることが出来るかもしれない。

 

「地上の戦力は旧型機の『ガンフェニックス』と『ガンブースター』しかないけれど、GUYSスペーシーやNY本部と連携すれば十分な戦力になると思う」

 

 恐らく骨が折れる仕事だな、と星川はつい苦笑いを浮かべた。

 

『こちらは既に準備ができています。もしそちらの司令部で合意が取れれば、いつでも』

 

 彼の提案に合意しつつも、星川には一つだけ疑問があった。

 

「彼女は――ソルは来ると思う?」

『いえ、彼女は――』

 

 電波障害のようなノイズが星川の耳に入る。それを機にニルからの返答は無くなった。

 彼は相当に離れた所、例えば宇宙にいるのだろうか?

 それを星川が問おうとした時には、通信は途絶していた。

 電話の画面を確認する彼女。しかし、非通知の番号に発信することはできない。

 

(まぁいいわ。必要な仕事は分かっているから――)

 

 星川が基地内に戻ろうと歩を進めた時、今度はGUYS専用端末の『メモリーディスプレイ』のシグナルが鳴り響く。画面に現れたのは、司令部のオペレーターだった。

 

『隊長!カーンスクアッドがサテライトレーザーを展開しています!』

「っ!!予想される着弾地点は!?」

『……今そちらに送ります!』

 

 彼女を映すウインドウの横に、世界地図が表示される。レーザーの照射範囲として赤い円が現れ、日本をはじめとして中国、ロシアまでをも含む広大な領域を囲み始める。

 無論、この地上基地も標的になりうるということだ。

 

「退避指示を――」

 

 星川の叫び空しく、鉛色だった空が突然淡い桃色の光に包まれる。

 次の瞬間、空から一筋の閃光が地上に突き刺さった。光に遅れて爆発音のような低い音が遠方から聞こえてきた。

 

「……レオルトン君!!」

『隊長!今着弾地点を特定中……出ました!沙流市郊外の森林地域です!』

「初期対応斑を出動させて!私も後ほど急行する!」

 

 星川は全速力で基地の司令部に駆け込んだ。一刻も早く現場に向かいたい気持ちを抑え、彼女はGUYS総本部から駆けつけていた文官のサタキに事の次第を話した。もちろんメフィラス星人の正体については伏せていたが、彼は星川の話に驚くばかりだった。

 

「現在確認中だが、GUYS、各国軍含め公式に作戦発動をしている事実は無い」

 

 サタキはGUYS全体の中でも、外部組織との関係を最も良好に保っていた人物である。その彼の知らぬ間に大きな動きをできる公的な組織は無いはずだった。

 

「であれば、先ほどの襲撃は間違いなくメフィラス星人が標的でしょう」

「しかし待ってくれ。NY本部はUNIONシステムに攻撃を加えたために捕捉されたが、彼も君もまだ何もしていない」

 

 サタキの疑問に答える形で、部屋の端でタブレットを操作していたサクマ隊員が立ち上がった。

 

「多分、全部見られてるんですわ。インターネットを介して」

 

 サクマが更に何か言いかけたその時、司令部内の全てのモニターが変調をきたした。画面は全て同じ、暗い背景に黒マントの人物が映る映像に切り替わった。

 

『ふっはっはっは!!愚かな人間どもよ!わしの名は、魔王カーンデジファー』

 

 サクマの個人タブレットも、全く同じ映像を流していた。

 それどころか、地球上の様々な機器が同じように漆黒の魔王を映し出していたのだ。

 

『貴様らが作り上げたインターネット世界は、たった今全てわしが支配した!』

 

 赤い眼が、無数の人間を蔑むように光を放つ。

 

『先ほど愚かにも、わしに逆らおうとした者に痛い目を見せてやったのだ。これを見てみよ……』

 

 画面が切り替わる。それは数時間前にレーザーに撃ち抜かれたGUYS・NYの基地が崩壊しているさま。次は沙流市郊外に向けてレーザーが放たれ、地上から爆炎と黒い煙が上がっている光景であった。

 

『わしの気に食わぬことをしてみろ……その瞬間、宇宙から貴様らの居場所に向かって同じ攻撃を仕掛けてやる。よいか?わしはインターネットを介して貴様ら人間の動きを全て見張っているのだ!地球はもう、わしの手の中だ!!』

 

 醜悪な笑い声を締めに、映像は全て元に戻った。

 しばしの沈黙を経て、サクマ隊員が話を再開する。

 

「とまぁ、カーンデジファーが説明した通り、ネットを通じてこちらの動きは筒抜けってことで」

「サクマ君、何か対応策はあるかしら?」

 

 努めて冷静さを保っている星川の問いに、サクマは肩をすくめるばかりだった。

 

「そりゃね、誰も居ない、何もない山奥や砂漠ならネット環境なんて無いですから、カーンデジファーに聞かれないように話すことぐらいではできるでしょうよ。ただ実際に動かす戦力がある場所が完全オフライン環境なんてことありませんから、実質地球上全て監視下に置かれてるのと同じですわ。いやぁー便利になり過ぎって良くないっすね!」

 

 サクマの空気を読まないニヒルな笑みも、この場では何の効果も無かった。

 

「しかしAI『アレクシス』は世界中の情報を処理できる程の性能なのだろうか?当初の設計では、せいぜいUNIONシステムに組み込まれた兵器や監視塔と連携する程度だったはずだが」

「サタキさん、さすが目の付け所が良いっすね。ワイも同じことを考えたんすけど、星川隊長のプライベート通話を傍受されてた時点で『アレクシス』の性能は想定上に強化されてますね。あの宇宙人?カーンデジファーってやつが手を加えたんですね、多分」

 

 宇宙人の仕業であると分かった時点で、人智を超えた力が働く可能性はGUYSに名を連ねる者なら誰もが否定できない。

 だからこそ、この場には大いなる絶望が蔓延しているのだった。

 

 

 

 

 ニルの潜伏していた“円盤”が攻撃を受けた時、愛美と草津はまだニルの自宅跡地の前に立っていた。

 遥か空高くから撃ち下されたレーザー光を目にしていた2人は、それがニルを襲ったものだと直感していた。

 そしてカーンデジファーの映像ジャックで現場の映像が出され、二人がスマートフォンでそれを目にしてからは確信にいたっていた。ニルが語っていた“円盤”の在り処を示す特徴的な地形や自然物や、おおよその距離感など、様々な要素が揃ってしまっていた。

 愛美の足元に落ちて、そのままのペンダント。それは片割れで、もう片方を持つのはニルであった。

 愛美はそれを拾い上げることもできずに立ちつくし、やがて膝をついた。

 

「……やだ」

 

 彼女の口から洩れる言葉。

 

「やだ……ニル……」

 

 彼女が握ったままのスマートフォンの画面は真っ暗だ。しかし項垂れる彼女の表情が、そこにはくっきりと鏡のように映っている。

 

「……まだだ……まだ終わっていない!」

 

 愛美の背後で、草津が叫ぶ。

 

「そうだろ親友よ!!」

 

 草津はニルの電話番号を呼び出した。

 ――この番号は電源がオフに――

 

「お、おっと……番号を……間違えた、か?」

 

 同じ番号。正真正銘のニルの番号を何度も呼び出す草津。

 

「……まだ……まだだろう……レオルトンっ!!」

 

 草津はスマートフォンを地面に投げつけ、画面の割れたそれに視線を落とす。

 

「俺は……まだお前と、もっとお前と一緒に――」

 

 二つの電子音が、二人の耳に入った。

 その小さな通知音は、平時なら誰にも気づかれないぐらい小さな音だった。だが不思議なことに、ニルのことで頭がいっぱいの二人の意識を呼び戻すことができたのだ。

 

「……愛美!」

 

 視線を上げた草津と、同時に振り返っていた愛美の目が合う。草津が駆け寄り、二人は互いのスマートフォンの画面を見せ合う。

 

――ジャンクを探せ。カーンデジファーに悟られるな。

 

 そのたった一文の無題メール。

 差出人は不明。

 そしてそのメッセージには、動画ファイルが添付されていた。

 

「開こう……いいな?」

「う、うん」

 

 愛美がファイルを再生した。

 最初に現れたのは、オレンジ色の髪の毛を二つに結んだ、少女のような少年だった。カメラの真ん前まで近づいてきて、話し始めた。

 

『あーあー。マイクテストマイクテスト』

『ボラー、もう始まってるよ』

 

 画面外からの男性の声。

 

『おいヴィット!それ早く言えよな!』

『え~。ボラーが勝手に始めたんじゃない』

『んだと~!』

『お前たち、緊急事態だぞ。ふざけている場合ではない』

 

 カメラが大きく揺れる。誰かが動かしたのだ。

 

『もう録画しているのか』

 

 カメラを覗き込んだのは、鋼鉄のマスクで口元を覆った強面の男だった。

 

『マックス!カメラ持っていくなよ!俺が話してんだろ』

『駄目だ。お前たちに任せると内容が伝わらない』

『うるせぇ!カメラ返せ!』

『止めないか!』

 

 最初に出てきたボラーと呼ばれる少年が、マックスに飛びかかる。

 カメラに映る背景がぐるぐる回る。

 映像を見ていた愛美と草津は、一度顔を見合わせて、

 

「これ、何」

「分からん。だが悪戯ではないと思う」

 

 2人が視聴続行を決め、画面に目を戻した。

カメラは二人の頭上に投げ出され、黒髪の優男の手元に渡ったようだ。彼の整った顔が写り込むも、彼は嫌そうに一瞥するだけだった。

 

『僕は遠慮するよ。キャリバー、よろしく』

 

 カメラが手渡される。受け取ったのは、無精ひげを生やして髪もぼさぼさの男だった。

 

『お、俺の名はサムライ・キャリバー。わ、我々はグリッドマンの味方だ』

 

 その言葉に、愛美と草津が再度かを見合わせ、小さく頷く。

 

『お、お前たちは、そちらの世界でグリッドマンと共に戦っている。そうだな』

 

 既に録画された映像ではあるが、愛美たちは思わず返事をしていた。

 

『じゃ、ジャンクは、まだ無事だ。だが最適化しなければならない。グリッドマンの真の力を、覚醒させるんだ。て、添付ファイルに、必要な手順を書いておいた』

 

 草津が画面をタッチし、ファイルの有無を確認するも、それを開く前にサムライ・キャリバーの言葉に耳を傾けた。

 

『こ、こちらが戦いに加わることは、まだできない。だからお前たちの行動に、全てが懸ってい――』

『キャリバーてめぇ!一人でやっちまったのかよ~』

『ご苦労だ』

『お先でーす』

 

 カメラの視界が動き、他の3人が部屋を出ていく様子が映っていた。そして再びキャリバーの顔に戻る。

 

『な、何があっても、仲間のことを信じろ。お、俺が言えることは、それだけだ』

 

 そして動画は終了した。

 

「この添付ファイル……コンピュータ用語だらけで俺にも意味はさっぱり分からん。だがともかく、ジャンクを見つけることが先だな」

「そう、だね」

 

 ニルが居ない今、グリッドマンの助けになれるのは愛美と草津しかいない。

 その事実が否応なしに、彼らを奮い立たせた。

 泣いてる暇はない――愛美は立ち上がり、涙を拭った。

 

「ニルのことは……今は信じる」

 

 そして彼女は、足元のペンダントを拾い上げる。そして鞄の中のポーチに大事にしまい込んだ。

 

「ジャンク見つけて、ニルの帰りを待とう」

「ああ、そうだな!ところで愛美、一つ俺から提案したいのだが」

 

 小首を傾げる愛美に、草津はしたり顔で言い放つ。

 

「グリッドマン同盟の復活だ!しかも、グレードアップで再結成だ!!」

 

 彼らの眼に、まだ希望は宿っていた。

 

 

 

―――その2へ続く


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