活動報告に「キャラアンケートのお願い」投稿しました!
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「聞いて下さいカーンデジファー様!今日クラスの不良が、あのプログラムで狂暴化して殴り合いを始めたんです!」
カーンデジファーと出会ってたった一週間ほどで、ヨシオは自分が生まれ変わったように感じていた。
彼の部屋は相変わらずカーテンの閉め切られて陰気な雰囲気であったが、彼の心境はこれまで味わったことのない興奮で満ち溢れていた。
「それに、全国で交通事故が頻発してるんです!あの馬鹿な奴ら、『ウルトラGO』に夢中で我を忘れてるんですよ!」
ヨシオが作り、カーンデジファーによって強化されたウイルスアプリの影響は大きくなる一方だった。
最初にヨシオが狙ったのは、金を巻き上げていた不良二人組だった。適当な他人を装ってアプリの招待メッセージを送ると、2人はすぐに『ウルトラGO』の虜となった。そこからどんどんアプリは広まっていき、学園生徒のほとんどが熱中することになる。アプリはその他の人々も巻き込んでいき、スマホ中毒による様々な弊害が社会に現れ始めたのだ。
『現実世界に混乱が起きているようだな。儂の復活の時も近い……』
「ん?なんだ、これ」
ヨシオは、PCに表示されたウイルスアプリ管理画面に目を剥いた。
突然のアラート。あるスマートフォンに侵入していたウイルスが、突然削除されたのだ。
「ありえない……!カーンデジファー様のお力で、人間の技術じゃこのウイルスもアプリ自体も消せないはずなのに!」
それから立て続けにウイルスアプリは消されていき、ヨシオは焦燥と怒りを募らせていったが、何とか対抗しようとした。
「……なんだ、こいつ?」
ヨシオはあるスマートフォンに先回りして調べたところ、別のプログラムによってウイルスが破壊されていく過程を目にしていた。
「GRIDMANだって?こいつが、僕のウイルスを消していたのか!」
『狼狽えるな!ヨシオ、ウイルスを強化するのだ』
「はい!カーンデジファー様!」
ヨシオは本来勉強に充てている時間までをも犠牲にし、GRIDMANに対抗できるウイルスを作り出す。
カーンデジファーがそれに力を与え、コンピューターワールドにおける“怪獣”が完成する。
ヨシオはまだ知る由もない。
彼の知らない所――コンピューターワールドで、熾烈な戦いが繰り広げられていることを……。
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「……本当に言わせる気ですか、この私に」
「当り前だろう!同盟の勝利に関わる問題だ」
あくまで真剣に、草津は主張しているわけだが……。
「そうそう、それぐらいニルには朝飯前でしょ……ぷふっ」
絶対愛美は面白半分で賛成しているな。
「ほらニル、そろそろ行かないとだよ」
笑いをこらえながら彼女は、私をPCの前に立たせた。
「……グリッドマンが言い出したことですから、私は仕方なくやりますからね」
「はいはい。さぁ早くっ」
「言っておきますが、私は全然乗り気ではありません」
私は自室の真ん中で、アクセプターが装着された左腕を構える。
『……どうしたニル!早く行かなければ怪獣を止められない!』
「分かりましたよ。言えばいいんでしょう、言えば」
アクセプターの青いボタンを押して、私は息を吸った。
「……アクセス――フラッシュ!」
それから1週間、私たちグリッドマン同盟の戦いは着実に成果を上げていた。この間に数回の戦いを経験し、当初は到底受け入れられなかった変身時ポーズと掛け声にもそろそろ慣れてきた。その姿に相変わらず愛美は笑いを我慢できないようだが。
「レオルトン、見てくれ」
とはいえ彼女も草津も驚異的な順応力で我々の戦いをサポートしている。ある日草津は現実に存在していた兵器をモチーフに、コンピューターワールドのグリッドマンを強化する支援プログラムを完成させていた。
画面上にCGの戦闘機3機が表示され、その隣のグリッドマンが大きく頷いた。
「オリジナルを拝借し『ウルトラホーク』という!」
「これが向こうの世界ではグリッドマンの武装に変化するのですね」
「そうだ。このPCで俺と愛美がコードを打ち込むと、お前たちのもとに発射されるのだ。愛美のアイデアを俺が形にしてみたぞ」
「ニルたちの助けになるといいけど」
少し照れ気味に、愛美が言った。
「愛美さん、ありがとうございます」
「う、うん」
「お前ら俺の前でムードを醸すなよ……胸が苦しくなるわ!!」
少年少女が謎の戦士と協力して世界を守る――まるで子供の夢のような状況だが、コンピューターワールドにおけるグリッドマンと怪獣の戦いは少しずつ激しさを増していった。
『ハァ!テアァ!!』
グリッドマンの回し蹴り、そして鋭いパンチ。
「ギャァァァス!」
しかし怪獣の堅い装甲が、その2発を無力化していた。
『堅い!大丈夫か!?』
『草津、問題ない!』
草津の作り上げた3種のウルトラホークの活躍で怪獣には連戦連勝だったが、怪獣はグリッドマンとの戦いから学ぶように、徐々に強化されていった。
今回現れたのは、初めて私が経験した戦いで相対した怪獣の“強化版”とも言える存在だった。全身が黒くて堅い鱗のような鎧で覆われており、グリッドマンの蹴りやパンチをものともしない。機動性は以前よりも落ちているようだが、グリッドマンとの肉弾戦を防御力で優位に立とうとする意志を感じる。
『ニル!ホーク2号を出すよ!』
愛美の声と共に、草津の作ったプログラム『ウルトラホーク2号』が飛来する。
「ギャァァァス!!」
だがその時、飛行するウルトラホーク2号の存在に怪獣が気づいてしまった。怪獣の長い尻尾がしなり、上空のウルトラホークを下から突き上げた。
『ぐおぉっ!』
『草津っ!きゃぁっ!』
愛美と草津の悲鳴。ホークへの攻撃にジャンクが耐えられなかったのか?
しかしウルトラホーク2号は飛行を続けている。とにかく急いで決着を付けねば。
『合体だ!』
グリッドマンの背に、キャノン型に変形したホーク2号が合体する。
両肩に一門ずつの大砲が装備され、グリッドマンが砲撃態勢を取った。
『バスターグリッドマン!!』
機動性は落ちるが、高火力砲撃による絶大な攻撃力が特徴のスタイルだ。
『グリッドォォ、ツインバスタービーム!!』
通常のグリッドビームの何倍もの威力の光線が2本放たれた。
怪獣はわずかに耐える動きを見せつつも耐え切れず、紫色の鉄塔と共に消え去った。
『急いで戻るぞ!ニル!』
怪獣と鉄塔の破壊を確認してすぐ、私たちは急いで帰還した。
たったわずかの時間だ。しかし現実世界で起こった異変を前に、その時間は途方もなく長く感じられる。
――無事でいてくれ、2人とも。
グリッドマンと共に空を飛び、私はPCの画面から抜け出す。部屋中に白い薄煙が充満していた。
「草津が、私を庇って……」
愛美に支えられた草津は、負傷していた。
額からは一筋の血が伝って落ちている。左腕は服が切り裂かれており、額以上の出血量であった。
「まさかホークが攻撃されるとはな……油断していた」
痛みに顔を歪ませる草津。
部屋にはジャンクのパーツが散乱していた。「火を噴く」を通り越して爆散に近かったのかもしれない。一番大きなパーツが草津を襲ったようだった。
私たちは急ぎ病院へ行き、草津は検査と手当てを受けることになった。
夕日差す待合室には、私たち二人だけだった。私と愛美は並んで座っていたが、何も話さず無言のまま時間だけが過ぎていった。
「……私の落ち度です。草津と貴方を危険に巻き込んでしまった」
「それ、草津の前では言わないで」
また無言の時間がやって来る。
彼女の言葉に反して、私は同じ思考を繰り返そうとしていた。
もっと良い方法があったのではないか。
また誰かを巻き込んでしまうのではないか。
「……少し出てきます。草津をお願いします」
愛美の返事を待たず、私は一度病院を出た。
急いで解決せねばなるまい。
これ以上大切な彼らが傷ついてしまう前に。
―――その4に続く