活動報告に「キャラアンケートのお願い」投稿しました!
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「俺は……なんて無様な、情けない男なんだ!!レオルトン、俺は腹を切る!」
現実世界、私の部屋に戻って草津の意識を回復させると、彼は突然服を脱ぎだした。
「草津!!な、何してんのよ!」
「放せ愛美!!俺は生き恥をさらすことはできん!」
目をつむりながら草津を必死に止めようとする愛美。
とうとう下着一枚まで迫った草津。
「きゃぁぁ!!」
「何があった」
愛美の悲鳴を聞いて隣から駆けつけてきた雪宮。
「……何、これ」
「あぁ雪宮さん。気にしなくて大丈夫です」
「……戻る」
彼女は玄関ドアを閉めた。
「ちょっとニル!この変態をどうにかして!」
「変態とは何事か!せめて身を清めるくらいは許してくれても良いだろう!」
「落ち着いて下さい、草津。別に被害者がいたわけではないのですから」
「それでは、俺の気が済まん!」
「死ぬくらいなら、私と協力してアプリ騒ぎを止めましょう」
草津の動きが止まった。
愛美は彼の全裸を見まいとクッションに顔を押し付けている。
「俺に……名誉挽回のチャンスをくれるのか?」
「そうですね。しかしその前に服を着て下さい」
更なる汚名が加わる前に、だ。
「……承知した!」
草津が服を着直したところで、私と愛美、そして草津がPCの前に揃った。
私はもう一段回グリッドマンの最適化を進め、草津にも認識できるようにしてみた。
「グリッドマン。出てきてもらえますか」
画面上に再び現れるグリッドマン。先ほどの騒ぎには全く動じていないようだ。
「新しいウルトラ戦士か?いや、それにしては機械っぽいというか……」
『草津。私の名はグリッドマン。ハイパーワールドからこの世界にやって来た。私はニルと合体し、コンピューターワールドに現れた怪獣と有害なプログラムを止めなければならない』
「合体だとぉ!?レオルトン、お前……まるでヒーローじゃないか!おめでとう!!」
「別に嬉しくないです」
興奮を隠せない草津に、私は説明を続ける。
「先ほど愛美さんには、その戦闘補助をやってもらいました。草津には、その役目を代わってもらいたいのです」
「待ってよ、ニル!じゃあ私は何をすればいいの?」
「愛美さんは帰宅してください」
「それは嫌!私も、草津と一緒に手伝うから!」
強情な彼女のことだ。もう何を言っても残ると言い張るのだろう。
「……分かりました。では2人にはPCから戦闘を観察してもらい、オペレーションやいざという時の連絡役をやってもらいましょう。いいですね、グリッドマン」
『協力に感謝する!』
「草津は、どうですか?」
「無論だ!俺はお前の親友だぞ。一人で戦わせてなるものか」
快い返事に、私は心の中で感謝の言葉を述べた。
「さて、せっかくこうしてチームを組んだのだ。早速だが名前を付けねばな!愛美、いいアイデアは無いか?」
「えぇ~別にそういうのはいいよ。めんどくさそうだし」
「冷めたやつだな、まったく。レオルトンはどう――いや、お前に聞いても同じか」
その通りだ。
「ならば俺にいい考えがある。今日からこのチームの名は……グリッドマン同盟だ!」
「暑苦しいなぁ」
ぼやきながら、愛美は少し楽しそうだった。
「2人とも。遊びではないのですからね」
「ちゃんと分かってるよ。私たち、ニルの役に立ちたいの」
愛美と草津は、真剣な面持ちで私を見つめていた。先ほどの物言いは、大きなお世話だったようだ。
「ではグリッドマン。そろそろ説明をしてもらいましょう。貴方の目的と、今回の騒ぎの元凶についてしっていることを」
『了解だ、ニル。私が追ってきたのは、ハイパーワールドから逃げ出した“ある存在”を捕まえるためだ。奴の名は――魔王カーンデジファー!』
外伝中編「グリッドマン同盟、結成」
電光超人 グリッドマン
魔王 カーンデジファー
登場
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グリッドマン同盟の結成から遡ること1年近く前――
沙流学園の廊下に張り出された期末試験の結果。成績優秀者の名前が、右から順に並んでいる。
その男子生徒は早足でそこに現れ、その視線はすぐさま一番右に注がれた。
しかしそこにあった名前は、彼のものではない。
代わりにすぐ左側――つまり第二位の場所に彼の名は記されていた。
「……くそっ」
彼は誰にも聞こえないように、小さく叫んでその場を去った。
逃げるように足を急ぐ彼の脳裏には、同じ言葉が何度もよぎる。
次は必ず勝つ。絶対に一番に――
「お!ここ居ると思ったわ!」
そんな彼の行く手を遮ったのは、明るい茶髪の男子生徒二人組だった。
「ヨシオくぅん、いつものよろしく!」
二人はにやにやしながら彼の両脇に回り込み、その肩に意味ありげに触れた。
「……わかり、ました」
その後3人は体育館裏に向かった。
二人組が合図をすると、ヨシオはブレザーの内ポケットから封筒を取り出す。中には一万円札が数枚入っていた。
「おいおいヨシオ、何してんだよ」
「す、すみません。すぐに取り出すので」
「馬鹿言ってんじゃねぇよ。全部だよ、全部!」
「待って下さい!それは塾の月謝も入っていて……」
「知らねぇよ!」
ヨシオの封筒に手が触れかけた時、茶髪の彼らの背後から足音が響いた。
「おや。こんな所に人が居るとは」
黒髪長身の男子生徒は、無表情のまま軽くため息をつく。その態度が気に入らなかったのか、二人組がヨシオをよそに黒髪の少年を囲んだ。
「おい。生意気だな、てめぇ」
「痛い目見たくなかったら早くどこかに――」
「黙りなさい」
彼の放った一言で、二人組は急に怯えるように震え始めた。
「貴方たちのような下らない人間に興味はありません。消えなさい」
「は、はい!すみませんでしたっ!!!」
半べそをかきながら、二人は全速力でその場を去った。
残されたヨシオは、目の前の少年を呆然として見つめているだけだった。
「何か?」
「い、いや……その、ありがとう」
「何故感謝するのです?別に貴方のために追い払ったわけではありません。それより貴方もここから居なくなってほしいのですが」
彼と目が合った瞬間、ヨシオはとにかく逃げ出したい衝動にかられたのだった。彼はその眼に酷く見下されているように感じたのだ。
彼は脱兎のごとく走り出し、教室の席に飛び込むように座り込んだ。
ヨシオから金銭を巻き上げ続けていた二人組も既に教室に戻っていたが、彼に何を言うでもなく大人しくしていた。
ヨシオはひとまず安心したが、彼にとっての一番の問題はそれではない。
金など親から貰えばいい。
問題は、テストだ。
優秀な研究者の父を持つ彼もまた、優秀であることを要求されていた。学園でのテストなど当然一番でなくてはならない。これまではずっと、ヨシオは父親からの求めに応じ続けた。ろくな人付き合いもせず、趣味など持たずに勉学だけに集中した結果、彼は優秀でいることができたのだ。
しかしあるテストの結果が、彼を絶望の淵に立たせた。
彼は生まれて初めて、勉学で“二番目”の烙印を押されたのだ。
そしてその烙印は、一年近く彼を苦しめることとなった。数回の試験はいずれも二番。一番の称号はいつも、彼の手から零れ落ちるように離れていくばかりだった。
「ただ今帰りました……」
家に帰るのが億劫な毎日が続いていた。かつては自分が優秀だという自負を持って家の敷居を跨いでいたのに、今は苦痛に満ちた帰宅が常であった。いつもと同じように彼が恐る恐るリビングに入ると、この日は読書中の父親の姿があった。
「ヨシオ」
名前を呼ばれただけで、彼の全身から汗が噴き出た。鞄から取り出した一枚の紙は、指に触れていたところに手汗が滲んでいた。
「……この出来損ないめ。この一年何度負け続ければ気が済むのだ。夕食は後にして勉強してこい」
テストの結果を見るまでもなく、父は冷たい言葉を放った。ヨシオは試験の結果用紙をぐしゃりと握りつぶしながら、逃げ出した。
そして真っ暗な自室に引きこもり、彼は鞄を投げ捨てた。
落ちた鞄から飛び出したスマートフォンが、暗闇で光を放つ。
目の端でヨシオが捉えたその画面には、あの不良たちからのメッセージが表示されていた。
『最近貰ってなかったし金貯まってるだろ?笑』
『そろそろ取り立て再開しまーすww』
彼はうずくまって頭をかきむしった。
「くそっ!くそっ!くそっ!」
自分から金を巻き上げようとする奴らに、
追い打ちをかけるように責め立てる父親に、
あの見下したような目つきの少年に、
そして自分から“一番”を奪い続ける奴に、
ヨシオは尋常ではない憎悪を抱いたのだ。
彼は飛び起きてPCデスクの前に座り、キーボードを叩く。“ウイルスアプリ”と表示されたプログラムを立ち上げ、その起動キーにマウスポインターを合わせる。
「全部めちゃくちゃにしてやる!」
その時、ヨシオのPCから青黒い稲妻が走った。
それはヨシオに襲いかかり、その身体を吹き飛ばした。
「な、何だ!?」
驚愕するヨシオをよそに、突如画面が切り替わる。
そしてその画面上に現れる黒い影。
邪悪に満ちた嗤い声が部屋いっぱいに響き渡った。
『ふっはっはっはっは!!』
黒いマント、赤い眼、機械的な様相の顔面や腕。とても人間には見えない恐ろしい姿であった。
『悪意と憎悪に満ちた貴様の心。それに貴様の作った醜悪なプログラム。気に入ったぞ』
「な、何だお前」
『わしの名は、魔王カーンデジファー!!』
ヨシオの退屈で憎らしい日常が、大きく変わった瞬間だった。