留学生は侵略者!? メフィラス星人現る!   作:あじめし

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第38話「さらばメフィラス星人」その5

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 ―――時は、わずかに遡る。

 

 

「まったく。冷や冷やさせないで欲しいものですね……ソル」

 

 沙流市の端、小高い山の森林に隠していた“円盤”に寄りかかり、ソルの身体が取り戻された瞬間を目にした。

 

「メフィラス星人……お前、頭がおかしいのか……?」

 

 足元に倒れているマグマ星人に、私は視線を落とした。樫尾達の攻撃をかい潜って私を追いかけてきた彼だったが、さすがの私も一対一なら負けてやることはできない。絶命寸前の彼は、もはや立ち上がろうと奮闘するそぶりすら見せなかった。

 

「そうですね。貴方がた侵略者にとっては、私の思考はもはや理解不能でしょう」

「我々“星間連合”ならば……この地球を手に入れることができたはずなのに……」

「それは無理です。少なくとも、私を理解しようとしない貴方がたにはね」

 

 私はその場を離れ、ポケットから取り出したリモコンのスイッチを押した。

 背後で巨大な爆発が起こる。“円盤”に仕掛けてあった自爆装置が作動し、私が作った“装置”もろとも消し炭になったのだ。

 

「さて、最後の仕事です」

 

 私はテレポーテーションで移動し、目的地に赴いた。

 そこは、私が捉えられていた異次元空間の中心――ヤプールの神殿の前である。

 

「隠れていないで出てきたらどうですか? 異次元の王よ」

 

 しばしの沈黙ののち、巨大な玉座にうっすらと影が現れた。

 その影は瞬く間に実体となり、正体を露わにした。

 

『私を追って来たのか? たった一人で』

 

 キングヤプールの、静かながらも迫力のある声が聞こえた。

 

「やはり、まだ生きていましたね」

『ソルの肉体を得られなかったのは残念だが……我が本来の肉体も、もはや完全に復活しようとしている』

 

 彼の言う通り、ソルの肉体を乗っ取っていた時とは全く違う姿が私の前に立ちはだかっていた。刺々しい真紅の肉体、両腕の甲と肩から鎌のように曲がって生えている鋭い刃、全身のあらゆる場所から、凄まじいマイナスエネルギーが感じ取れる。

 そして真紅のマントを肩にかけ、王冠を思わせる黒色の装飾を身に着けるその姿は、先ほどよりも一層“王者”を思わせていた。

 

『地球は終わりだ』

「どうあってもテリブルゲートを発動する、と」

『その通り。既に準備は整っている。3次元の矮小な世界は、この異次元に呑みこまれて崩壊するのだ』

 

 彼はそう言って私を見下した。

 

『……それでもなお、絶望しないのか。メフィラス星人』

「窮地には慣れています。それに言いましたよね――」

 

 私は、胸元にかけられたペンダントを外し、ポケットにしまった。

 

「――お前を止める、と」

 

 たった6カ月だ。

 私がこの惑星に降り立ってから、それしか経過していない。

 しかし私は、この地球を気に入っているのだ。何故ならこの地で私が得た経験は、大事なものだったからだ。

 

「ですから私も、持てる全てで戦います」

 

 ペンダントの代わりに手にしたのは、銀色のカプセルだ。

 

『それほどのハイパーエネルギー、まだ隠し持っていたのか』

 

 ――ハイパーエネルギー。強力な力を手に入れることができるが、未熟なものが使えばその身を亡ぼす。いわば諸刃の剣だ。私は銀色のカプセルを砕き、ハイパーエネルギーを開放する。

 さらに隠し持っていたゴーデス細胞入りの注射器3本を胸に突き刺し、私は本来の姿に巨大化した。

 

『芸の無い奴よ……。それで私を倒せるとでも?』

『いいえ。最期ですから……切り札を使います』

 

 ゴーデス細胞の副作用で意識が朦朧としながらも、左腕のブレスレットを、自ら砕く。

 砕け散った破片が、私の肩や胸、全身に吸い込まれていく。

 それと共に、銀色の鎧が私を包み込んだ。

 そして最後に、白色のマントが私の背中に揺らめいた。

 

『なんだ、その恰好は? さしずめ"魔王"といったところかね?』

『魔王ですか、悪くはないですね』

 

 その反応を見てキングは、何かに気付いたように私に向かって尋ねた。

 

『……コントロールしているのか、ゴーデスを』

『ええ。ゴーデス細胞にも対応する強化アーマー、重装鉄鋼(ダブルブレスト)です』

『少しは楽しませてくれるのか、メフィラス?』

『いいえ。ただ――』

 

 私は超速でキングに迫り、その顔面を殴りつけた。

 

『殺すだけです。お前を』

 

 玉座ごと後方に倒れたキングは、すぐに空中に浮いて私を対面した。

 

『良かろう……来い、メフィラス星人!』

 

 激戦を前に、私は、一人の人間の顔を思い浮かべた。

 少しは、償えるのだろうか。

 せめて――彼女の笑顔を護ることくらいは、できるだろうか。

 

 

―――そして最終話へ


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