今週は毎日投稿しまして、最終話まで激走していきますので、最後までお楽しみください!!
※昨日の分を既に読んでしまった方へ、改めてのお知らせです。
=========================================
沙流市上空に空いた空の割れ目。その向こう側は異次元空間に繋がっている。
仄暗く、荒れた大地にそびえ立つ神殿こそ、異次元人ヤプールの居城であった。神殿の中心に据えられた巨大な玉座に、キングヤプールは腰を下ろしていた。
『テリブルゲート発動まで、あとどれ程か』
「はっ。あと10分もかかりません」
キングの問いに、小さなヤプール人が答える。その回答に対してキングは、満足そうに頷いた。
『メフィラス星人とゾフィーは見つかったか?』
「いえ……目下捜索中でございます」
『急ぎ奴らを討つのだ。テンペラー星人とマグマ星人にも伝え――』
キングの言葉が途絶える。
ヤプール人はその続きを黙って待っていたが、キングは突如として嬉々として笑い出した。
『そうこなくてはな……!』
キングは立ち上がった。足元のヤプール人を踏み潰し、地球へ通じる割れ目に向かい空を飛ぶ。
そして彼は、凄まじいマイナスエネルギーを纏いながら、再び沙流市の大地に立った。巨体が地面を揺らし、周辺の建物があっけなく崩れ去った。
『仲間も引き連れずに私に立ち向かってくるとは……流石は宇宙警備隊の長だな、ゾフィーよ』
そう言ったキングの目の前に、光の巨人――ゾフィーが上空から降り立った。
『ヤプール。貴様の野望は、私が終わらせる』
悠然とした、しかし全く隙のない構え。偉大なる戦士ゾフィーがキングの前に立ちはだかった。
『いい気になるなよ……ゾフィー』
真紅のマントを揺らめかせ、キングが一歩踏み出す。
しかし次の瞬間には、ゾフィーの鋭いパンチがキングの腹部にめり込んだ。その一発でキングの肉体には風穴が空く。
『まだだ!』
続けてゾフィーの回し蹴りが炸裂。キングの身体は、遠方の森林地帯目がけて吹き飛ばされた。巨体が木々を押しつぶし、地鳴り、そして大きな揺れが巻き起こった。
『もう終わりか……?』
キングはすっと立ち上がり、右腕を前に出す。そこから何発もの光線が放たれた。
同時にキングの身体の傷はどんどん再生していく。ゾフィーは再生を止めるべく前進するが、光線を受け止めるのに手一杯だった。彼は沙流市の被害を少しでも減らすため、あえて避けなかったのだ。
『それでは私には勝てぬぞ!』
再生が完了したところで、キングは腕をL字に組む。
『ラス・オブ・スペシュウム!!』
先ほどの光線とは比べ物にならない禍々しい光線が、キングの腕からゾフィーに向かって伸びた。
『ハァ!!』
ゾフィーはバリアを形成し、それを受け流した。
しかしバリアは光線の出力に耐えられず、巨大な爆発と共に砕け散った。ゾフィーはその場に膝をついた。
『あっけないな……ゾフィーよ』
『……いつ私が、力尽きたと言った?』
ゾフィーは爆風で負った肩の傷を抑えながらも、立ち上がる。
『貴様は、私が倒す!』
彼は大きく飛び、浮いたまま無数の光線を飛ばす。
『ぬるいわっ!』
その光線を身に受けながらも、キングは再びラス・オブ・スペシュウムを放った。だが後ろに何も庇う物の無いゾフィーは、無駄のない動きでそれを避け、一気にキングとの距離を詰めた。
そして上空から降下しながら、蹴りを入れる。キングは顔面にそれを受け、地面に叩き伏せられた。
『くぅ……』
『ハァァァ!!』
倒れたキングにまたがり、ゾフィーがゼロ距離で光線技を繰り出す。流石のキングも、わずかにうめき声をあげた。しかし左腕の刃でゾフィーの胸を突き、ひるんだゾフィーの脇腹を蹴り付け、突き放した。
今度はキングがゾフィーの身体に馬乗りとなった。
『死ねゾフィー!』
キングが腕の刃をカラータイマー目がけて振り下ろそうとした時、ゾフィーは腕を前に突き出した。
『M87光線!!』
ウルトラ戦士最強の光線技が、キングの胸を貫いた。
とてつもない爆炎が両者を包む。
空をも覆い尽くさんばかりの黒煙の中、一方の姿だけが、徐々に晴れていく粉塵の中に現れた。
『私の勝ちだな……ゾフィー!!』
立っていたのは、キングヤプールだった。
ゾフィーは倒れ、動く気配はない。
『見たか人間ども……もはや最強のウルトラ戦士ですら、私には勝てない』
乱れた呼吸を整え、ゆっくりと胸の傷を回復させながら、キングは空気を揺らすほどの高笑いを響かせていた。
『絶望しろ人間。この地球は私の物――』
倒れたままのゾフィーを踏みつけようとしたキングの足が、何にも触れずに地面に降ろされた。
『それは幻影だ、キングヤプール。私はここにいるぞ』
ゾフィーはいつの間にか、キングの頭上から彼を見下ろしていた。
『いけ!! ラス!』
丸い膜のように、光のフィールドがキングとゾフィーを囲む。
『やっと私の出番ってわけね』
そのフィールドの中に、巨体の戦士姿に変身した百夜過去が入り込む。彼女は首の骨を鳴らしながら首を左右に傾げた。
『この中なら全力でオッケーね?』
『もちろんだ。やってくれ』
ゾフィーがその場から姿を消し、キングヤプールの背後に再び現れる。
そしてキングを羽交い締めにして、その動きを奪った。
『ヤプール、お前の再生能力が遅くなっていたぞ……体力が尽きかけているな』
『だからどうしたというのだ?』
キングの全身から黒いオーラが放たれる。それはゾフィーの身体を蝕み、彼の身体に強烈な痛みを与え始めた。
そのオーラはどんどん黒くなっていく。超高密度のエネルギーを腕に充填している百夜を前に、キングが抵抗を強めているのだ。
『何故お前が生きている? ソールクラッシャー。レゾリューム光線で塵と化したはずだが』
『はぁ? 未来ちゃんと熱い夜を過ごすまで、私が死ぬはずないじゃない』
彼女は必殺技の構えを取る。
『人間の想い……それを侮ったお前の負けだ!!』
ゾフィーは、そう叫んで渾身の力でキングの動きを封じている。
『未来ちゃんの身体、返しなさいよねっ!!』
百夜のレクシュウム光線が、最大限の威力で放たれた。
周囲の建造物が、その威力に耐えられず砂のように崩れていく。
虹色に輝く一閃の光は、キングヤプールの胸に残されていた、ソルのカラータイマーに直撃した。
『ぐあぁぁぁぁっ!!!!』
あまりの衝撃にゾフィーは吹き飛ばされ、残されたキングは胸を抑えて苦しみだす。ゾフィーとの戦闘で消耗しきっていた彼は、百夜のエネルギーを弾くことはできなかった。
『まだまだぁ!!』
百夜は全身のエネルギーを振り絞り、光線へと変えて放つ。
やがて、ソルのカラータイマーに注がれていた光は消えていく。
キングヤプールの悲鳴も、徐々に聞こえなくなる。
そして、彼の身体は真正面に倒れた。
『久々に……疲れたわ』
全エネルギーを使い果たした百夜はそう言って、膝をつく。
だが、そんな百夜の目に入った光景は、彼女を戦慄させた。
『愚策だったな……出来損ないめ!』
奴は、百夜の最大限の光線を受けたはずだった。
それでもなお、キングヤプールは立ち上がったのだ。
『……冗談が、過ぎるわね』
キングが指先から撃った光線が、動けないでいる百夜の肩、腹部、そして胸を貫いた。
『未来、ちゃん……』
百夜の巨体が光となって消え去ってしまう。
ゾフィーが生み出した光のフィールドも無くなり、彼自身も立ち上がるのがやっとという状況だった。
まさにこの瞬間――絶望が地球を支配した。
―――その3に続く