今週は毎日投稿しまして、最終話まで激走していきますので、最後までお楽しみください!!
=======================================
『サクマくんは回避しながら、艦隊の戦闘パターンの解析を急いで! カオルは吉田機の援護、長距離射撃のサポートよ!』
星川聖良率いるCREW・GUYS・JAPANメシア隊は、地上と大気圏に分散して艦隊との戦闘を繰り広げていた。
しかし戦力を分断されている状態で、大軍を相手取るのは困難を極めていた。特に大気圏で艦隊の地球進入を阻止していた星川、サクマ、カオル、吉田の4機は、まさに死地にあった。
『数が違いすぎるよ! このままじゃ……』
『泣き言いわない! 地球は我々の手で守らなきゃいけないのよ!』
カオル隊員の弱気な言葉に、星川隊長の檄が飛ぶ。しかし彼女の言葉にも、わずかとも余裕は無かった。
『ですけど、このままじゃ活路がですね……』
『活路ならありますよ!』
サクマ隊員に呼応するように、1人の青年の声が響き渡る。
紫に塗装された機体が星間連合の円盤艦隊の間を潜り抜け、星川機の前に現れた。
『その機体はスペーシーの』
『ハルザキ カナタです! 星川さん、絶望の暗雲は取り除けます』
『っ!? ハルザキくん、それは――』
多数の円盤が、オゾン層を越えて現れる。
『そんな! 円盤がまだ!』
飛来した円盤からサクマ機は回避できないほどの光線が放たれる。
『諦めてはいけない』
集中砲火を食らったサクマ機を、何者かが拾い上げて弾幕を抜けた。
サクマ機を救ったその声の主は――
『せ、セブン……』
呆気にとられたサクマの情けない声に、星川たちの視線が集まった。
赤い巨躯、全てを切り裂くアイスラッガー――ウルトラセブンが、彼らメシア隊の窮地に現れた!
『仲間がいる限りどんな強敵とも勝つことができる。私はそう信じている』
セブンの参戦によって、地球と連合艦隊の戦いは更なる激化を見せる。
地球の最も長い一日は、まだまだ明けようとはしなかった。
第38話「さらばメフィラス星人」
異次元王 キングヤプール
極悪宇宙人 テンペラー星人
暴君 マグマ星人
登場
ビルを出てから、15分が経過した。
しかし未だに“装置”の隠し場所には到達できていない。敵にエネルギーを感知される恐れがあるため、テレポートなどを使えないができないのだ。
このままでは埒があかない。少し危険ではあるが、私は人間の文明の利器を使うことにした。道端に放置されていたバイクを動かし、無人の街を疾駆する。
いや、生者がいなくなった街といったほうが正しいだろう。廃墟ととともに、人の死体が転がっている。
多くの人間が死んだのだろうか。
私が人間たちの精神を傷つけ、星間連合が介入し、ヤプールの軍団が地上を席巻している。もはや、地球と人間の命は風前の灯だ。
――私が招いた事態だ。
相手の戦力を、そして侵略作戦を実行に移す機会を見誤った。
それでも私は、この地を救うと決めた。たとえ災いの原因を、自分が作ってしまったとしても。
落とし前は、この手で付けなければならない。
「……ここは」
私はバイクの足を止めた。
知らず知らずのうちに、私は通学時に使っていた通りに差し掛かっていた。通りに面していた商店はいずれも、シャッターを閉めている。やはりここからも人間の気配は感じられなかった。
……ここに来ることも、もはや無いのだろう。
「随分余裕があるじゃないか? メフィラス星人」
後方から響く声を聞くと同時に、私はバイクから飛び降りた。
その瞬間、バイクが爆発する。何者かの攻撃だ。
「勘の良い奴め」
上空から現れたのは、テンペラー星人とマグマ星人だった。彼らは不敵な笑い声を上げながら、燃える地面の上に降り立った。
「ヤプールに殺されたと思っていましたが」
「ふんっ! 俺様があれしきの攻撃で死ぬと思ったのか?」
「ええ。貴方がたのリーダー共々、死んでくれれば良かったのですが」
「リーダー? あぁ、ババルウのことか……!」
奴は吐き捨てるように言った。
「奴のことなどもう知らん。俺はヤプール側に付く」
テンペラー星人がバイクの残骸を踏み潰しながら、私の方ににじり寄る。
同時に通りの向こう、私の前方と後方の両方から黒い宇宙人の軍勢が接近してくる。ヤプール人だ。
「メフィラス! お前“装置”をどこへやった? そいつをよこせ!」
私はテンペラ―の問いには答えず、周囲の状況を分析する。ヤプールの雑兵ならまだしも、テンペラー星人とマグマ星人を同時に相手取るのは至難の業だ。
どう切り抜けたものか――
「むっ!? なんだ、これは!?」
突如、テンペラー星人たちの周りの炎が消え、凄まじい冷気が漂う。
そして、彼らの足は氷漬けとなって地面に固定されてしまった。
「ニル=レオルトン。行って」
路地裏から静かに姿を現したのは、銀色の鎧に身を包み、氷の刃を手に持つ宇宙人――グロルーラだった。
「人間たちから、お前の作戦を聞いた。援護する」
「まさか草津たちから?」
「そう」
彼女が既に、かなりのエネルギーを消耗しているだろうことは一目で判った。身体のあちこちに再生しきれていない傷が残っている。
それに対してテンペラーの戦闘力は強大であり、マグマ星人は狡猾で残忍だ。そこにヤプール人の軍勢とあれば、グロルーラ一人では――
「何も考えないで。問題は無い」
グロルーラのぶっきら棒な言葉と共に、周りの建物の間から一斉に、武装した人間たちが現れた。あの制服、あの翼のエンブレムは――GUYSの初期対応班だ。
「人間を舐めるんじゃァねェぜ!! なぁ、早坂!」
「はいっ! GUYSの皆さん、お願いします!」
そして、彼らの先頭に立っているのは樫尾と早坂だった。彼らの合図で、GUYSの隊員たちがヤプール人たちに一斉射撃を開始する。
「レオルトンっ!! 草津の野郎から全部聞いたぜ!! こっちは任せろやァ!」
銃撃戦のさ中、樫尾は私のもとまで走ってくる。生傷だらけのその姿は、彼がずっと戦いに身を投じていたことを容易に想像させた。
「馬鹿な……なぜそんな危ない真似を――」
「馬鹿はてめェだ! 仲間が困ってるんだ! 助けて当たり前だろぅ!」
「私が何者か、あなたたちは知っているのですか?」
「うるせぇ! こういう時は四の五の言わねェで、ダチを信用しろ! オレはお前を信じる!」
彼は、私の胸を握り拳で小突いて早坂とGUYS隊員の方へ向かった。
「ニルくん! 後で、必ず会おう!」
離れた所から、場にそぐわない笑顔で手を振る早坂。
彼らは知っている。私が何者であるのか。何をしたのか。
それでも、彼らは私を仲間だという。
「また、後で――」
私は、早坂たちに背を向けた。そして思い切り跳躍し、近くの建物の屋上に飛び上がった。
テンペラーたちが怒鳴り声で私の名を呼ぶが、振り返らない。
戦力的には、樫尾ら人間たちとグロルーラが不利なことは百も承知だ。それでも私は前に進む。
彼らの奮闘を、その力を信じたいのだ。
―――その2に続く