留学生は侵略者!? メフィラス星人現る!   作:あじめし

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「===」のラインで囲まれた部分は、視点が主人公のニルくんから移っています。読みづらかったらごめんなさい。


第3話「その名はソル」 その4

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 キングジョーブラックの戦闘力は、かつて一度はウルトラセブンを打倒したキングジョーを遥かに上回る戦闘力を持っている。

 今回ソルと対決する機体は試作型だが、それでも十分な戦闘能力は持ち合わせていた。

 

(こいつ……速い)

 

 ソルは舌打ちしたい気持に駆られた。

 極限まで装甲を薄くし、軽量化を図ったことで高速戦闘を可能にしているキングジョーブラックは、自らの身体を脚部、腰部、胸部、頭部+腕に4分割し、その不規則な動きでソルを翻弄していた。

 そして、4機から同時に放たれる、4条のビーム攻撃。ソルは右腕に埋め込まれた、光り輝く鉱石から“ソール・ブレード”を展開してそれを弾く。

 

(待っていても埒が明かない)

 

 ソルは秘技“ミラージュ・ライティ”を発動し、高速移動を開始する。4つに分離した内の頭と腕の部分に攻撃を仕掛けるためだ。

 キングショーブラックの動きに対抗できるようになったソル。しかし他3つの部分の攻撃によって、なかなか思うように戦えなかった。

 

(これでは体力を消費するだけ)

 

 ソルは高速移動を止め、相手の動きに注目した。

 分割された4つの部分は、不規則かつ高速の動きで宙を舞っている。

 連射されるビームは、4機のどれからも放たれる。ソルにはその攻撃パターンは読めないが、ぎりぎりでビームを避けることは可能だった。

 しかし彼女に攻撃する余裕は無い。一度の攻撃ですら致命傷となり得るキングジョーブラックの装甲だが、その一撃が遠いのだった。

 ビーム攻撃の回数は徐々に増えていった。それでも機動速度が下がらないのは特化された冷却機能の賜物である。オーバーヒートによる機動鈍化を待つことを諦めたソルは、再びミラージュ・ライティを最大発動して高速移動を始めた。

 

(ここで捕まえる!)

 

 キングジョーブラックは、高速化したソルに対しビーム攻撃を激化させた。4機の身体からの一斉放射は、もはやビームの嵐といってもいい。

 ソルは器用にそれをかわしたが、徐々にビームが彼女の肉体をかすり始める。

 

『そのまま……ずたずたに削ってやれ!」

 

 機内からキングジョーブラックを操るペダン星人は、勝ち急いだ

 そんな慢心から生まれた隙を、彼女は見逃さなかった。ソルは発動していた腕のブレードを一瞬で鞭状に変化させ、攻撃に集中して回避運動を疎かにした腰部に鞭を絡ませて捕えた。他の3機はビーム攻撃を止めることは無かっため、ソルは捕えた腰部を盾にして破壊した。

 それと同時に、腰部と管制機能を共有している脚部が機能を停止し、地面に落下する。

 しかし腹部と頭部+腕は合体し、上半身として飛行を続けていた。

 

『キングジョーブラックよ! 奥の手だ! ペダニウムランチャー起動!!』

 

 上半身は必殺技の発射態勢に移る。

 それと同時に、まるで光学迷彩のようにキングジョーブラックの鋼鉄の躯体が姿を消した。

 エネルギー感知に長けているソルは、透明化したキングジョーブラックがどこかで強大なエネルギーをチャージしている事を感じ取っていた。

 そして感じ取れるが故、その攻撃はソルでは耐えられないこと、ソルが避けた場合の地上へのダメージもすぐに理解できていた。

 

(撃たせる前に落とさねば!)

 

 ソルは動きを止め、消えたキングジョーブラックのエネルギー反応を探る。強力なステルスから漏れ出る微弱なエネルギーを、彼女は全神経で追った。

 

(……そこだ)

 

 ソルが瞬間的に最高速度で動き、ブレードで空を斬った。

 そしてその刃は、キングジョーブラックの上半身を縦に、真っ二つに切り裂いた。二つに割れたキングジョーブラックの上半身は、チャージしかけたエネルギーと一緒に爆散、消滅した。

 キングジョーブラックを破壊したソルは、再び白い光となって姿を消した。

 

 

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「くそっ! 覚えていろウルトラウーマンソル! 次は必ず――」

「やはり生きていましたね、ぺダン星人」

「誰だ!」

 

 薄暗い下水道に足音が響く。ペダン星人がこちらを振り返った音だ。

 

「キングジョーとともに死んだと見せかけたようですが、私は見逃しません」

 

 私は暗闇の中から姿を見せる。同時にペダン星人の姿も目に入った。ソルとの戦闘に敗れたせいか、彼の宇宙服は所々破損しており、割れたゴーグルからは、その醜悪な眼差しが垣間見える。

 

「この前の地球人か。あの時は殺し損ねたな」

「だったらどうしますか?」

「貴様、何を調子に乗っているんだ?」

 

 奴は震える腕で、拳銃を構えた。

 

「命乞いをしろ! 許してやらんこともないぞ」

「光の戦士に敗れ、こんな汚い場所に逃げ込んだ者が……私を殺せるとでも?」

「貴様! 地球人の分際で!」

 

 私は左手でペダン星人を指さした。そして念力をこめてその指を動かす。するとペダン星人が身体の自由を奪われ、身体を震わせながら銃口を自らの頭に向かって動かし始め、銃口は彼のヘルメットの側面に当てられた。

 

「か、身体が……貴様、まさか!」

「私は侵略者。この地球を手に入れるものです」

「黙れ! この惑星はわれらペダン星人のものだ。いずれ我が星から援軍が――」

 

 私は指を軽く折り曲げた。

 その瞬間、奴の銃が火を噴きヘルメットを貫く。ペダン星人の身体は糸の切れた操り人形のように、だらんと地面に倒れ伏した。

 

「戻りますか。人間の生活に」

 

 いずれこうなるとは思っていた。私以外の宇宙人がこの地球を手に入れんと現れ、私と対決する日が。

 しかし、思った以上に早い。さすがは宇宙人たちの羨望の的、とも言うべきか。

 だが私のやることは一つである。

 

「他の侵略者は抹殺する。それだけです」

 

 

 

 

 

 明くる日。

 

「おはようございます」

「あぁ、おはよ」

 

 偶然、私は登校中に早馴に出くわした。学園から見ると同じ方向なため、途中で出会うのもおかしくは無かった。

 

「この前は家に連れ込んでしまってすみませんでした」

「だーかーら! 連れ込むって言い方やめてよ」

 

 静かな朝に、彼女の大声は周りに響いていた。彼女はそれを察知して、口をつぐむ。

 

「で、いきなり何なの?」

「あれ以来、少し避けられているようだったので、なんとかこの仲違いを解決したいと考えていました」

「別に、気にしなくていいって。アンタは何も悪くないから」

 

 早馴は突然、両手で自らの両頬をペチン、と掌で叩いた。

 

「助けてくれて、ありがとう」

「え?」

「ちゃんと言えてなかったから。でも、言うタイミングがいまいち無くて」

 

 そういえば、この前学園を飛び出してきた時も、彼女は私に何か言おうとしていたような。

 

「とにかく! ちゃんと、言ったからね」

 

 早馴は少し顔を赤らめて、学園の方向へ歩いて行ってしまった。

 多くの人間を欺きながら、他の侵略者を殺している私が、その人間から礼を言われる――そんな屈折した状況に、私は違和感を覚えずにはいられない。

 しかし決して、嫌な気分ではないのであった。

 

 

―――第4話に続く


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