ソードアート・オンライン 幻影の暗殺者   作:双盾

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攻略会議

俺達が攻略組として名を馳せてからかなりの日々が経過した。

そんな中で、全プレイヤー、全ギルドに召集がかかった。

第1回、ボス攻略会議の始まりだ。

 

「今日は集まってくれてありがとう。俺はディアベル、気持ち的にナイトやってまーす」

 

ディアベル率いる聖竜連合が主体、俺達黒猫団が戦闘調整にあたる。

しかし流石ディアベル、若いだけあって活力があるのが分かるなぁ。

かくいう俺も22なのだが。

 

「……今日、オレ逹のパーティーが、あの塔の最上階へ続く階段を発見した。つまり、明日か、遅くとも明後日には、ついに辿り着くってことだ。第一層の……ボス部屋に!」

 

本題を切り出したディアベル。その言葉に集まったプレイヤーに衝撃が走る。

ここまでくるのに1月かかった。その中で黒猫団が急成長を遂げたのだ。素晴らしいと思うと同時に時間がかかり過ぎているとも認識させられた。

 

「オレたちは、示さなきゃならない。ボスを倒し、第二層に到達して、このデスゲームだってクリアは不可能じゃないってことを、証明しなければならないんだ!!」

 

「ちょお待ってんか、ナイトはん」

 

プレイヤーの士気が高まる中で、水を差す人物が1人。

斬新な髪形をしたプレイヤーだ。

 

「そん前に、こいつだけは言わしてもらわんと、仲間ごっこはでけへんな」

 

「意見は嬉しいが、まずは名乗ってからにしてもらえるかな?」

 

「フン、わいは《キバオウ》ってもんや」

 

キバオウ、ね。すっげぇ強そうなのにアイツ自身はすっげぇ弱そうだな。

騎馬王?それとも牙王か?どっちにせよ中二全開だなぁ。

 

「こん中に、五人か十人、ワビ入れなあかん奴らがおるはずや」

 

……ほーん。そういう人ですか。

ああいう輩の目はよく見てきたから、名乗る前からわかっていたが。

こいつも安全なやつじゃねえな。

 

「詫び?誰にだい?」

 

「、決まっとるやろ。今までに死んでいった二千人に、や。奴らが何もかんも独り占めしたから、一ヶ月で二千人も死んでしもたんや!せやろが!!」

 

やはり、そういう輩だ。

俺の周りに蔓延っていた人種だ。

事情を知らないくせに自身の憶測と偏見だけで行動し、発言する。そういった輩になるまいと生きてきたがその結果が俺だ。

生きていく上ではあんな人間にならざるを得ないんだろうか……

彼らの怒りの矛先にいるのは…………

 

「キバオウさんのいう『奴ら』っていうのは―――――【ベータテスター】そうだね?」

 

「きまっとるやろ」

 

召集されてきたプレイヤーの内の数人の顔が強張るのが見て取れる。

これ以上言わなくとも分かるだろう。

ベータ上がりに対しての賠償、装備やコル、更に罰が待っている。

ベータ上がりの全員が最善を尽くしたとは言えないが、それでも、この場に集まっているのは最前を目指して最善を尽くしてきた人間だろう。

そんな彼らにこの仕打ちは酷過ぎる。

そんなこと許せない。

 

「付き合ってられん」

 

「なんやと!?」

 

「馬鹿が喚くだけの集まりならば他でやれ。これが会議だと言うなら俺一人でもボスに挑むぞ」

立ち上がり立ち去ろうとする俺を、近くにいた黒い髪の少年に止められる。

いや、正しくは、服を掴まれただ。

その場をディアベルが収めようとするが、キバオウとやらは一向に落ち着かない。

 

「わいは何も間違ったことは言っとらんやろが!!」

 

「間違いしかないだろうが」

 

「どこが間違いや!!」

 

「まず情報の独り占め、これは配布された攻略本がベータ上がりが作ったものだ」

 

懐から攻略本を取り出して見せる。

著者は鼠のアルゴだ。今は無料配布されていたらしいが、俺はそれを知らなかったので1000コルも支払ってしまった。大損である。

 

「次に初心者を見捨てた、これも違う。ベータ達は急いで攻略部隊を編制してボス部屋の捜索にあたっていただけだ。死者のおおよそ半分がベータ上がりだったんだぞ」

 

俺は

 

「お前みたいな勝手な考えを押し付ける輩が大っ嫌いなんだよ!!事情もしらずに喚き散らしやがって!!」

 

これほどまでに怒りを抑えられなかったことがあっただろうか?

 

「落ち着けジン。お前の言うことの方が正しいのは皆知ってるから落ち着け」

 

「っ!!済まない」

 

ケイタに言われてハッと我に返った。

再び腰を下ろしてキバオウの言い分を聞く。

 

「ッチ」

 

舌打ちを1つ残して元々座っていた場所に座るキバオウ。

ディアベルが仕切り直す。

 

「みんな、思うところはあるだろうけど、今だけはこの一層を突破するために力を合わせて欲しい。どうしても元テスターとは一緒に戦えない、って人は、参加してくれなくても構わないよ。ボス戦では、チームワークと連携が何より大事だからさ」

 

思う所程度ではない。

この騒動で、アンチベータテスターが居ることはハッキリした。キバオウのような過激派が居ても不思議ではないことも。

ベータだとわかっているプレイヤーに対して制裁と称した恐喝が起きる可能性は0ではなかった。それが今の騒動によってかなり上がる可能性だってある。

ただ、そんな事態にならないようにと願うことしかできないのは、とても悔しかった。

 

 

 

 

攻略本にはこれからするはずだった偵察を省略するだけの情報が記載されていた。

ボスの名前と武器、体力の減少による変化、取り巻き、弱点など。

しかし、ここまで詳細に記載されているが、最後のページには、安心するなと伝えたげな一言があった。

 

【情報はSAOベータテスト時のものです。現行版では変更されている可能性があります】

 

そう、いくらベータ上がりが情報を持っていようとも、ベータ時と正規時では状況が変わっているのかもしれない。いや、変わっているんだ。

現にログアウト不能という大きすぎる変化があったのだから、他にも何かしらの変化があると見込んだのだろう。

まあ何にせよ、この情報をもとに攻略に向けて準備していくだけだ。

 

「よし、みんな攻略本の内容を頭に叩き込んだな?それじゃあこれより攻撃隊及び支援部隊の編制の時間だ!!ソロの人達はパーティーを組んでくれ!!」

 

ディアベルが次の指示を出す。

既に俺達はパーティーになってい為心配はいらなかった。しかし…………

 

「…………」

 

「…………」

 

約2名、ボッチな人間が目に留まった。

1人はアスナ、もう1人は気弱そうな少年だ。

 

「お前ら、ウチに来るかい?」

 

 

「ええ」

 

「あ、ああ。よろしく頼む」

 

こいつらは恐らくリアルで友人とかいなかったな。まあ俺も彼女どころか友人すらいなかったけど。

全員がパーティーを組んだ所でディアベルが指示を出す。

 

「では役割を決める」

 

それぞれのパーティーの平均レベルを聞いて回り、それぞれに役割を与えるディアベル。

しかし、俺達の所、正確にはキリトの前に来ると、少し、素人では分からないほど微かに、ディアベルの顔が動いた。

だが、それも束の間のことで、

 

「黒猫団には俺達と一緒にボスの討伐の主戦力として、攻撃部隊を頼む」

 

「了解した」

 

ディアベルは次のパーティーに向かった。

今回のボスの攻略に支障が出なければいいのだが…………

 

 

 

 

一通りの役割分担が終わる。

ディアベルは、時計を見る。

時刻はすでに夕刻。配置場所や口論などの所為で中々時間を食ってしまったから時間が伸びてしまった。

 

「うん、もう夕暮れか。仕方ない。第1回ボス攻略会議はここまで。第2回は明日の午前9時にここで行う。以上!!解散してくれ」

 

「オーー!!」

 

「うぃーっす」

 

「りょーかい」

 

それぞれがばらばらな返事で解散していく。

俺はアスナ、今回新しくメンバーに加わったキリトに向き直る。

 

「お前ら、どうする?」

 

「どうするって?」

 

「俺達はこれから多分夕食だが、来るか?」

 

その言葉に、アスナは目を煌めかせ、キリトは悩む。

俺はキリトに言う。

 

「キリト、夕食は、夕食に限った話じゃないが、人数が多い方が旨い。そう思わないか?」

 

「そう…だな。そうさせてもらうよ」

 

食事のメンバーが増えたことを黒猫団の皆に知らせる。

皆は「おおー!!」とか「女子が増えた!!」とか「食卓が華やかになるぜ!!」とか言っている。今でも十分華があるとおもうんだけどなぁ。

まあそうと決まれば…………

 

「まずは食材を取りに行くぞ!!」

 

「「「「おおーー!!!」」」」

 

「「そこから(かよ!!)(なの!?)」」

 

掛け声に応えるケイタ達と、食材を集めるとこから始めることに驚くあまり、ツッコミを入れてしまう2人。

そんな風に驚いていたが、結局夕食の食材は集めるのを手伝っていたりした訳だ。

ちなみに夕食は美味しくいただきました。


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